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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・太平洋島嶼国首脳会合 安倍総理挨拶

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2015年9月28日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 皆様、本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。5月の第7回太平洋・島サミット(PALM7)でのお約束のとおり、今日こうしてニューヨークで皆様と再会でき、大変嬉しく思います。

 PALM7は、日本と太平洋島嶼国のパートナーシップを一段高い次元に引き上げる歴史的な会議でございました。皆様の御貢献に、改めて感謝申し上げます。福島県いわき市で、私たちは、双方向のパートナーシップを実践し、太平洋を平和で豊かな海とするとの誓いを高らかに宣言しました。この誓いを一早く形にすべく皆様と共に取り組みたいと考えています。約束を確実に行動に移し、迅速に実施する。これが日本の協力の強みであります。本日は、PALM7で皆様と約束した重点協力と支援策の進捗を共に確認するとともに、さらなる協力強化のための方策を議論したいと思います。

 PALM7において、私たちは、防災、気候変動、環境、人的交流、持続可能な開発、海洋・漁業、貿易・投資・観光という協力の重点分野を確認しました。日本はこれら重点分野を中心に、今後3年間で太平洋島嶼国に対し、550億円以上の支援を行うことを約束しました。そして、PALM7の開催からわずか4か月の間に早速案件の実施を開始しました。

 防災については、太平洋島嶼国の自然災害に対する脆弱性を踏まえ、自然災害に強靱なインフラ整備など、包括的な支援を進めています。また、『早期災害警戒能力強化支援』を国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)と連携して実施します。

 人的交流については、3年間で4,000名の人材育成及び人的交流を行うことをお約束します。太平洋島嶼国の将来を担うリーダーを育成するための長期人材育成プログラム「Pacific-LEADS」を新たに立ち上げました。さらに、各国の観光を促進するため、来月東京で、太平洋島嶼国観光大臣会合を開催いたします。

 最優先課題である気候変動については、我が国は、各国の気候変動対策能力を抜本的に強化するための支援を進めていくことをお約束しました。まず、緑の気候基金(GCF)について、日本はそのトップドナーとして、太平洋島嶼国による活用を促進しています。先日も東京で各国専門家を招いたワークショップを開催しました。島嶼国を対象とする案件の形成や採択に向け、引き続き可能な取組を行います。また、地域の気候変動対策拠点として、サモアに太平洋気候変動センターを整備すベく、太平洋地域環境計画(SPREP)と連携を進めています。年末にパリで開催されるCOP21は、全ての国が参加する、公平で実効的な新たな国際枠組みの採択に向け、皆様とも協力していきたいと考えます。

 漁業も日本と太平洋島嶼国をつなぐ重要な協力分野です。太平洋の恵みを享受する仲間として、海洋資源の持続可能な活用に向け協力したいと考えます。

 日本の支援が、各国の持続可能な発展に貢献し、豊かな太平洋の確立に資することを心から期待します。引き続き、PALM7の成果を踏まえ、またサミットで高まった気運を失うことなく、幅広い分野での協力を力強くかつ着実に進めてまいります。

 本日は是非、皆様からも、PALM8、更にその先を見据え、私たちの連携を一層強化するための方途について、率直な御意見をいただきたいと思います。