データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回国連防災世界会議ハイレベル・セグメントにおける安倍内閣総理大臣ステートメント

[場所] 仙台市
[年月日] 2015年3月14日 
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 議長、

 御列席の皆様、

 未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から4年が経ちました。被災から力強い復興を見せる、ここ仙台において、国連及び各国政府の協力を得て、第3回国連防災世界会議を開催できることを、光栄に存じます。

 総理就任以来、私は、毎月のように被災地を訪問して参りました。多くの住民の方々から、「震災に負けない、災害に強い社会を作りたい。震災前よりも、より良いふるさとにしたい」という声を伺いました。

 この切なる想いを出発点に、単に災害前の状態に戻るのではなく、災害前よりも強い社会を作ることを目指す、「Build Back Better」という考え方の下、東日本大震災からの復興に取り組んでいます。

 住宅地をより安全な地域に移す、堤を高くする、避難路・避難ビルを整備する、防災教育や訓練を徹底するなど、災害に強い街づくりを進めています。

 20年前の阪神・淡路大震災では、家屋の倒壊や火災により、多くの命が奪われました。その経験を糧に、耐震や免震の制度を更に強化する取り組みを進めました。

 東日本大震災と福島第一原発事故を踏まえ、長期的視点に立って、更なる防災投資に取り組んでいます。

 被災者に寄り添う、きめ細かい復興を実現するために、現場主義を徹底し、地方自治体、民間企業、NGO、研究機関、メディアと連携していく必要があります。さらに、地域の活力を生む企業、地域コミュニティを支援するNPOと協力し、被災者の生活を支援することが重要です。

 東日本大震災の際に最もつらい立場に置かれたのは、女性や子ども、高齢者や障害者の方々でした。このような方々に配慮し、同時に、これらの方々にも、積極的に参画して頂きながら、防災に取り組んでいく。このような「人間の安全保障」の考え方に立った、防災へのアプローチを大事にしていきます。

 多くの自然災害を経験しながら、防災の知見と技術を積み重ねてきた我が国は、国際社会でも災害の犠牲者を少しでも減らすため、協力を進めてまいりました。この貢献をさらに力強く進めるため、ここに「仙台防災協力イニシアティブ」を発表します。

 このイニシアティブでは、人材育成や制度の整備などのソフト面での支援、質の高いインフラ整備を中心とするハード面での支援、そして、グローバルな協力と広域協力の推進の3つのアプローチを効果的に組み合わせた、日本ならではの防災協力を実施します。

 そのため、今後4年間で、計40億ドルの協力を実施します。そして、各国の防災を牽引し、災害後の「より良い復興」を担う、各国の行政官や地方リーダーなどの人材を、計4万人育成していきます。

 防災は、先進国、途上国を問わず、最重要課題です。災害の被害者の9割が集中する途上国にとっては、持続可能な開発や気候変動への適応という観点からも大きな課題です。ポスト2015年開発アジェンダや、気候変動の新しい枠組作りにおいても、「防災」を最重要課題に位置付けていくこと、つまり世界における「防災の主流化」が必要です。

 議長、

 4年前に東日本大震災が発生して以来、世界中から差し伸べられた支援に、改めて感謝申し上げます。そのおかげもあり、復興は急速に進んでいます。この機会に皆様方には、東北の力強い復興の姿を御覧頂ければと思います。

 防災とは誠に、共助の取組であります。御恩返しの意味も含めて、日本の知見と技術を生かして国際社会に貢献したいと思います。日本の新しい防災協力イニシアティブ、そしてこの会議で採択される仙台宣言とポスト兵庫行動枠組に基づき、防災協力を一層推進していくことをお約束して、私の発言を締めくくりたいと思います。

御静聴ありがとうございました。