データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム ハイレベル・ラウンドテーブルにおける安倍総理大臣スピーチ

[場所] 
[年月日] 2014年9月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

皆様おはようございます。

本日は世界24か国6つの国際機関そして日本国内からも様々な分野で活躍されている皆様にお集まりいただきました。各分野で活躍する女性が世界中から一堂に会しまた包括的に議論を行う。我が国がこの会議を主催することを誇りに思います。

日本では男性の中に女性が一人だけという状況を「紅一点」と言います。今日は逆ですが孤立感を味わうことを恐れず勇気をもって議論に参加させていただき皆さんのパワーを頂きたいと思います。

 (昨年の国連総会で)女性が輝く社会を作る。ちょうど1年前国連総会の場で私はそうお約束しました。この「WAW!」はそのお約束を実現するための一歩です。

日本は約束を守り行動する国です。女性が置かれている状況は国によって様々だと思います。しかし今日ここに集う皆さんは女性にとって未来をもっと明るくしたいという共通の思いを抱いておられるはずです。この場を知恵を共有し解決策を見いだすスタートとしていきたいと思います。

 (教育や保健など基本的な権利を保障する)

世界を見渡しますと女性に生まれたというだけで自立する機会を奪われ医療ケアや教育など基本的なサービスを受けられないという悲しい状況が未だに見られます。また紛争下では女性の名誉と尊厳が深く傷つけられた歴史があります。

深刻な反省のもとに21世紀こそ女性に対する人権の侵害のない世界にしていく。この決意を皆さんと共有したいと思います。

パキスタンの農村に10歳から12歳の女子の就学率が1割にも満たない地域がありました。我が国の支援で女子学校などの整備を行い女子学生が学校に通いやすい環境づくりを進めています。

教育や保健といった基本的な権利は世界のどこでも保障されなければなりません。女性も男性と平等に学校に行ける。妊産婦の方々が安心して医療ケアを受けられる。そのために世界は一丸となって行動する必要があります。

 (経済的自立が女性の地位を向上させる)

そして女性の皆さんが経済的に自立する能力を身に付けることは誇りと希望に満ちた人生を歩むために不可欠ではないでしょうか。

今年の1月私はコートジボワールで女性向けの職業訓練施設を訪問しました。日本から贈られたミシンで裁縫を学び華やかな色の洋服やカバンを作っていました。誇らしげに完成した作品を見せてくれたキラキラした瞳と笑顔が忘れられません。

ケニアではスラムのお母さんたちが作るフェルトのぬいぐるみが大ヒット商品になっているそうです。スラムでは若くしてシングルマザーになる例も多い。日本の女性菊本照子さんは職業訓練工房を立ち上げぬいぐるみ作りを教え始めました。今はお母さんたちが自ら材料を購入し帳簿付けまで行う。デザインにも斬新なアイディアが生まれているそうです。

世界の女性が技術を習得しそれを生かして家計を助け経済的に自立するお手伝いをする。我が国は女性の皆さんの挑戦を引き続き世界のあちこちで応援していきたいと思います。

 (世界に向けて支援を続ける)

昨年私は国連総会の演説で女性を中心に据え3年で30億ドルを超す支援を行うとお約束いたしました。今その支援は着実に実施されています。すでに18億ドルの支援が行われケニアの菊本さんの活動も関係者の皆さんの熱意をODAが後押しすることで大きく花開いています。

また私は「国連の女性政策を担うUNWomenの活動を尊重し有力貢献国の1つとして誇りある存在になることを目指す」とも申し上げました。ムランボ=ヌクカ事務局長がここにおられます。日本はこの1年で拠出金を5倍に増やしました。今後もより多くのプロジェクトを支えていきます。ここで嬉しいお知らせがあります。UNWomenの日本事務所を来年東京に開設することとなりました。新事務所を拠点に国連との連携をさらに強化していきます。

 (終わりに)UNWomenは来年の世界女性会議20周年に向けた活動を展開しています。今月のテーマは「女性と経済」。日本はこれを受け持ち本シンポジウムの成果を世界と共有したいと考えています。

日本には「三人寄れば文殊の知恵」という諺があります。本日は3人どころか100人の方々に集まって頂いています。それぞれの知見を惜しみなく提供していただき世界の女性がそして男性もともに女性が輝く社会づくりに参画する。そのための具体的な行動につながる提言をいただきたい。そして大いに発信していきましょう。

この社会革命ともいうべき取組は1年では完結しないでしょう。皆さんにはそれぞれのお国に成果を持ち帰っていただきたいと思います。そして来年もまた東京に集いましょう。ありがとうございました。