データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 島サミット総理メッセージ仮訳 私たちをつなぐ太平洋の「キズナ」

[場所] 
[年月日] 2012年5月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 「困ったときの友人は真の友人」。この広く使われているが正鵠を射た格言は,昨年の東日本大震災後,太平洋島嶼国によって最もはっきりと体現されました。私たちは,未曾有の国難に際してミクロネシア連邦及び他の太平洋島嶼国から頂いた,思いやり溢れる励ましと支援をいつまでも忘れません。日本国民を代表し,この場を借りて改めて深い感謝の意を述べたいと思います。

 今月25日及び26日,私は,日本と太平洋島嶼国の間で1997年から3年毎に開催されている首脳会議である,第6回太平洋・島サミット(PALM6)を主催する予定です。PALM6は,日本の南に位置する島嶼県であり,また,太平洋島嶼国と特有かつ類似の特徴を共有する沖縄で開催する予定です。また,PALM6では,私たちの更なる協力のための5つの主要課題,すなわち,自然災害への対応,環境と気候変動,持続可能な開発と人間の安全保障,人と人の交流及び海洋問題について議論する予定です。私は,モリ大統領及び他の首脳と率直な議論を交わすことを楽しみにしています。これらの課題は,私たちの地域の人々の福利にとって極めて重要であるとともに,日本と太平洋島嶼国が国際社会のために共に貢献することができる分野です。私は,太平洋島嶼国首脳と共に,PALM6を真の成功に導く決意でおります。

 日本は,対等な立場の開発パートナーとして,太平洋島嶼国と力をあわせてその国造りに取り組んできました。未だ我が国が震災復興を含む大きな諸課題に直面しているということは否定できません。しかし,私は,PALM6で,日本がこの地域への関与を弱めはしないということを宣言する考えでおります。逆境にあることを,この地域から後込みすることの言い訳にしてはなりません。むしろ,私たちは逆境によって,「キズナ」,すなわち友情による結びつきの重要性を学びました。日本と太平洋島嶼国の「キズナ」は,私たちが太平洋を共有しているという事実,そして,この偉大な大洋に育まれた共通の島人精神に深く根ざしたものです。そして,国難に際して太平洋島嶼国から心からの支援を頂いたことにより,私たちは,この地域への関与を続けなければならないという確信を得たのです。

 この「キズナ」は,当然フィジーにも広がっているものです。強固な基礎をもつ民主政を確立するというフィジーで進行中のプロセスは,この地域の安定と繁栄にとって極めて重要なものです。日本のメッセージは明確かつ一貫しています。フィジー国民は,他の太平洋島嶼国の人々と同様,私たちの友人です。私たちは,フィジーが2014年までに自由で公正な選挙を実施するため引き続き具体的な措置をとることを期待しており,この目的のため,フィジー政府と緊密な対話を維持する考えです。私たちは,前向きな一層の展開があることを願っています。

 太平洋で私たちをつなぐもの,そして,私たちを,共に手を携え未来に向かわせるもの,それが「キズナ」です。私は,日本と太平洋島嶼国が,太平洋の平和で繁栄した未来を実現するため,長く続く友好と協力に基づき,共に行動を続けていくことを心から願っています。

日本国総理大臣 野田佳彦