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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」野田総理挨拶

[場所] 
[年月日] 2012年4月15日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 皆様、おはようございます。

 「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」へ、ようこそお越し下さいました。各国からお集まりいただいた皆様を心から歓迎いたします。

 昨年3月11日に発生した東日本大震災から一年余りの歳月を経ました。まずは、この間、世界各地から惜しみなく寄せられた温かい支援と励ましに対し、日本国民を代表して改めて感謝を申し上げます。

 この未曽有の大震災は、幾多の反省や教訓をもたらしましたが、私たち人類全体に投げかけられた最も根源的で大きな問いかけは、何だったのでしょうか。私は、「持続可能な社会とは何か」という点にあったと考えています。

 我が国には、古来より自然との共生を重んじる思想があります。草や木にも魂があると信じることで、人間が大自然の「恵み」にも、「脅威」にも、謙虚になろうとしてきたのです。震災後の日本から世界に向けて、自然と調和した文明のあり方を問いかけていくことは、我が国の伝統にも根差した歴史的使命の一つです。

 折しも本年は、持続可能な成長を誓い合った歴史的な「地球サミット」が開催され、「気候変動枠組条約」が採択されてから20年という節目の年です。昨年のCOP(コップ)17の成果を受け、気候変動に対処する枠組づくりも、新たな段階に入っています。本年こそ、人類全体が「持続可能な社会」の実現に向けて何をなすべきか 問い直し、コミットメントを新たにする絶好の好機です。

 その責任の大きな部分を担うのは、ここに集う東アジア首脳会議のメンバー国に他なりません。

 言うまでもなく、この地域は、今や世界経済をリードする成長センターです。しかし一方で、この地域は世界最大の「温室効果ガス排出地域」でもあるという現実も直視しなければなりません。

 これまでの資源多消費的な成長が、子供や孫たちの世代においても持続可能だといえるでしょうか。残念ながら、答はノーです。繁栄が資源・エネルギーのひっ迫や気候変動を伴わない「低炭素成長」を模索することは、今や歴史の「必然」なのです。

 昨年11月の東アジア首脳会議で、私は「東アジア低炭素成長パートナーシップ構想」を提唱しました。本日始まる「対話」は、この構想に関する具体的取組の第一歩です。

 私からお伝えしたい最大のメッセージは、低炭素成長の実現は、世界各国が共に「ウィン・ウィン」の関係を築くことができる、ということです。

 世界有数のエネルギー効率を誇る「省エネ」先進国の我が国をはじめ、他国の知見や経験を共有することで、地域全体の低炭素成長は必ず前進します。この地域から世界に対し、低炭素成長の新たなモデルを示すべく、活発な議論が行われることを期待します。

 大震災後も、「持続可能な社会」の実現に向けて貢献しようとする我が国の積極的な姿勢は不変です。そのことをお誓い申し上げ、私からの歓迎の挨拶といたします。ありがとうございました。