データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2012年3月20日から23日のサバーハ・アル・アハマド・アル・ジャービル・アル・サバーハ・クウェート国首長殿下の国賓訪日に際する共同声明

[場所] 
[年月日] 2012年3月22日
[出典] 首相官邸
[備考] 概観
[全文]

1. サバーハ・アル・アハマド・アル・ジャービル・アル・サバーハ・クウェート国首長殿下は、ハイレベル代表団とともに、日本国天皇陛下の招待により、2012年3月20日から23日の間、国賓として日本を訪問した。2011年が日本とクウェート国との外交関係樹立50周年であったことを想起し、この訪問は、友好的、協力的で互恵的な両国関係を更に強化することとなった。

2. 3月22日、サバーハ首長殿下は、野田佳彦日本国内閣総理大臣と会談し、二国間関係を更に促進することの重要性を再確認した。野田総理大臣は、1963年の国民議会の設立以来のクウェートにおける民主的プロセスの進展を高く評価し、2012年2月の平和的かつ透明性のある形での第14期国民議会選挙の実施を歓迎した。日本側は、地域におけるよりオープンで民主的な社会の先駆者としてのクウェートの取組への強固な支持を再確認した。双方は、平和的、民主的で繁栄した中東に向けて共に取組を継続するとの意思を再確認した。

3. 野田総理大臣は、2011年3月11日の東日本大震災後のクウェートから日本への500万バレルの原油の無償供与、並びに、サバーハ首長によるアクアマリンふくしまの復旧のための300万ドルの追加的な寄付及び福島の被災者のための日本赤十字社への200万ドルの追加的な寄付に深い謝意を表明した。サバーハ首長殿下は、日本の迅速な回復への確信を表明しつつ、震災の被害者とその遺族に対する哀悼の意を伝えた。野田総理大臣は、「開かれた復興」を加速化するための日本の取組及び日本食品の安全を確保するための取組を説明した。野田総理大臣は、被災地の最近の放射能レベルに関する情報を含め、遅滞なく必要な情報を提供し続けるとの日本のコミットメントを改めて表明した。クウェート側は、日本からの食品輸入規制を解除することを誓約した。

4. 双方は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験と教訓をクウェートと共有することを通じた原子力安全分野における協力の重要性を強調した。

5. サバーハ首長殿下は、クウェート国政府を代表して、日本の財政支援を含む、1990年代のイラクによるクウェート侵攻後のクウェート復興のための日本の支援への深い謝意を表明した。野田総理大臣は、2004年から2008年の間にイラクの人道支援を目的とした日本国自衛隊による航空輸送任務を円滑ならしめたことへのクウェートへの謝意を表明した。

(ビジネス環境)

6. 双方は、二国間の経済及び技術協力を強化することの重要性を強調し、両国間の貿易、投資及びビジネスを更に進展させるために共に取り組むコミットメントを表明した。この関連で、双方は、2012年3月22日の投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定への署名を歓迎した。

7. クウェート側は、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とクウェート国との間の条約の早期発効に向けて最大限の努力を払うことにコミットした。

8. 双方は、日本と湾岸協力理事会(GCC)加盟国との間の自由貿易協定に関する交渉を2012年に再開するために共に取り組む意図、及び、本協定の早期締結に向けて緊密に協力することを再確認した。

9. 双方は、貿易関係、投資、産業協力を含む幅広い事項について議論するため、1995年以来の年次の日クウェート民間合同委員会の開催及びクウェート投資セミナーの開催を歓迎した。

10. 双方は、インフラ建設分野における協力の拡大の重要性を強調した。クウェート側は、日本企業に対し、クウェートでのインフラ・プロジェクトに積極的に参入する期待を表明し、日本側はクウェートのかかる分野への関心を歓迎した。日本側はクウェートでの独立造水発電事業(IWPP)といったインフラ投資への関心を表明し、クウェート側は日本のかかる分野への関心を歓迎した。クウェート側は、2011年10月の国土交通省及び日本の建設企業の代表から成る日本のミッションのクウェートへの派遣を歓迎した。

11. 双方は、クウェートにおける水資源の確保の重要性を再確認し、二国間の水関連ビジネスを促進することの必要性を強調した。この関連で、双方は、シュアイバ・ノース発電造水プラントの建設における進展を歓迎した。クウェート側は、本プロジェクトの円滑な実施に向けた協力を行うことをコミットした。

12. 日本側は、日本企業によるクウェートでのビジネス参入の意図を指摘し、クウェートのオフセット・プログラムが見直されることへの期待を表明した。クウェート側は、日本の懸念に留意し、双方は、同問題の成功裡の解決へ向けた議論を継続する意図を確認した。

(政治分野における協力)

13. 2010年6月に両国外務大臣によって東京で行われた第一回日クウェート政府間合同委員会を想起し、双方は、あらゆるレベルで、政治、経済、エネルギー、投資、文化、科学技術、観光及び教育を含む幅広い分野で対話を更に促進する意図を共有した。中東における最近の情勢、両国が果たす地域及び国際的な役割、並びに、日本国外務省とクウェート国外務省との間の二国間協議に関する覚書を考慮し、双方は、双方にとって都合が良い時期に、適切な方法で、安全保障対話を開始することを決定した。

(地域及び国際的な問題での協力)

14. 双方は、最近の地域及び国際情勢をレビューした。

 ・双方は、シリアにおける暴力の拡大への深刻な懸念を表明し、シリア政府に対して武力の行使の停止並びに政治的安定及び経済的・社会的発展に向けた民主的改革の早期開始を強く促した。双方は、シリアにおける危機の平和的解決に向けたアラブ連盟の粘り強い努力を高く評価した。双方は、2012年2月16日に採択された国連総会決議A/RES/66/253及び関連するアラブ連盟の決議の重要性を強調した。双方は、シリア政府に対し、コフィ・アナン博士(国連及びアラブ連盟のシリア共同特使)によって示された6項目の提案の全面的かつ即時の履行を求めた。

 ・双方は、イランの核開発に関する深刻な懸念を共有し、国際社会がこの問題を平和的・外交的に解決するために協力するとの意図を再確認した。

 ・双方は、イラク政府及び国民が、現下の政治的諸課題を対話を通じて平和的に解決し、治安情勢の安定と経済復興の推進に向けて取り組み、国連安全保障理事会決議に従って隣国の主権を尊重することを希望した。

 ・双方は,朝鮮半島の平和と安定という目標に向けて、北朝鮮に対し、2005年の六者会合共同声明及び国連安全保障理事会決議1718号及び1874号における非核化のコミットメントを真剣に履行する意思を再確認し、先般、米朝間で合意された内容を含めて、具体的行動によって示すことを引き続き求めていくことで一致した。この関連で、日本側は、2012年3月16日に発表された、関連する国連安全保障理事会決議に反する「人工衛星」の発射に関する深い懸念を表明し、クウェート側は、日本のそのような懸念を共有した。双方は、関連する国連安全保障理事会決議を全面的に履行するコミットメントを再確認した。日本側は、拉致問題を解決する重要性を改めて強調し、クウェート側は、同問題の早期解決の重要性を強調した。

15. 双方は、国際場裡における協力を強化する意図を表明した。双方は、現在の国際社会の現実を反映するため、常任理事国及び非常任理事国の議席数拡大を含む国連安全保障理事会の早期改革を実現するために共に取り組むことの重要性を再確認した。

(エネルギー協力)

16. 双方は、世界の原油市場の安定が世界経済の健全な成長にとって不可欠であるとの認識を共有した。クウェート側は、その能力の範囲内で日本の原油需要に応える用意があることを表明し、日本側は、クウェートによる原油の安定供給に謝意を表明した。双方は、エネルギー部門における二国間協力を更に強化する決意を新たにした。

17. 日本側は、クウェートでの2012年3月の国際エネルギーフォーラムや2011年4月のアジア・エネルギー産消国閣僚会合の主催を通じたクウェートのエネルギーの安定供給のためのイニシアティブを高く評価した。

18. 双方は、石油精製、油田の水処理、養殖の分野における共同研究プロジェクト、専門家交流プログラム、訓練及び会議の開催を通じた、日本の研究機関、大学、日本国際石油交流センター(JCCP)とクウェート科学研究所(KISR)との間の科学技術協力の進展と成果に関する認識を共有した。双方は、このような協力を更に促進し、追加的なテクノロジー分野を含めるための協力を更に拡大することの重要性を共有した。

19. 日本側は、最先端技術を用いた新エネルギー・環境戦略の策定計画及び「グリーン・イノベーション」に向けた取組について説明した。双方は、再生可能エネルギー及び省エネルギーでの協力の重要性を強調した。この関連で、双方は、クウェート国政府と豊田通商との間の太陽光複合発電に関するプロジェクトの重要な進展を歓迎し、本プロジェクトへの継続した支援を行う意図を表明した。

(その他の分野での協力)

20. 双方は、海上自衛隊によるクウェートへの寄港やクウェート海軍による日本への寄港の機会を捉えた親善訓練を含む実務者交流及び部隊間交流といった両国間の防衛交流・協力を推進することの重要性を確認した。日本側は、クウェートによる自衛隊員のクウェート軍統合指揮幕僚大学への招請に留意した。

21. 双方は、教育、文化及び科学技術の分野での二国間協力を促進し、留学生の交換やクウェート大学日本語教育ユニットに作られた日本語コースのイニシアティブを含め、これらの分野での人的交流を更に促進することを決定した。双方は、クウェートにおける日本国際協力センター(JICE)とクウェート行政管理委員会との間の人材育成に関する技術協力の進展と日本の研究者とクウェート科学研究所(KISR)との間のナノテクノロジーに関する協力を歓迎した。

22. 双方は、日本の先進的な医療技術を促進するために2011年5月にクウェートで行われた医療会議の開催を歓迎し、両国の「医療交流」を含む医療分野での協力を進展させる意思を表明した。

23. 双方は、日本国環境省とクウェート国環境庁との間の環境保全に関する協力を推進することの希望を表明した。双方は、環境意識の重要性を認め、クウェートの環境意識センターの監督及び運営に関する協力の可能性を検討する意図を表明した。クウェート側は、日本の研究者によって行われたクウェートにおける大気及び海洋汚染に関する調査の結果を高く評価した。双方は、環境問題に関する二国間協力の可能性を引き続き追求し、日本で発展した環境教育プログラムである「Kids’ ISO 14000プログラム」を推進し、支援する意思を再確認した。

24. クウェート側は、外交又は公用目的により、それぞれの国に入国することを希望する日本国民及びクウェート国民であって、外交又は公用旅券を所持するものに対する査証の要件の免除についての提案を示し、日本側はそれに留意した。

東京にて

2012年3月22日