データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア欧州会合開会式における小泉総理あいさつ

[場所] 
[年月日] 2004年10月8日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

議長、

ご列席の皆様、

 今回の首脳会合の成功に向けて周到な準備を行われた議長国ベトナムのカイ首相及び関係者に対し、敬意を表します。

 前回の首脳会合から2年の間に、東アジアでは、地域全体に大きな変化が生まれました。文化、民族、伝統などの多様性を踏まえつつ、調和して、共に働くコミュニティの形成に向けたダイナミズムの誕生です。

 ASEANが、安全保障、経済、社会文化、それぞれの分野で共同体形成に取り組む一方、日本、中国及び韓国もASEANとともに東アジア・コミュニティ形成に向けて歩み始めています。この地域での経済連携等の様々な機能的協力の進展は、コミュニティ形成の基盤となるものです。

 安定し繁栄したコミュニティには、民主的統治、法の支配、人権の擁護と促進、先進的経済システムに支えられた市場という共通の原則が必要です。昨年12月の日本・ASEAN特別首脳会議において、私とASEAN首脳は、このような考えを日本・ASEAN関係の今後の基本的原則とすることに合意しました。

 今回、欧州側から10か国、アジア側から3か国が新たに加わりました。これにより、ASEMは、このようなダイナミズムの中心にあるASEAN+3と、拡大して力強い発展を続けるEUとの対話と協力の場となりました。

 新しく拡大したASEMが発展していくためには、今回の会合において、我々は4つの責任を果たさなければなりません。

 第一に、新規参加問題を解決したように、連帯と連携の精神の下でASEMの協力を拡大させることです。

 第二に、効果的な多国間の取組を強化するとの観点から、国連改革に関する議論を深めるとともに、一致してテロや不拡散などの脅威に取り組むという強い意思を示さなければなりません。

 第三に、ASEMにおける協力の再活性化を推進することです。経済パートナーシップの緊密化や、グローバル化の時代における文化の多様性の問題について、具体的な取組を始めなくてはなりません。

 第四に、ASEMの将来像についての作業を開始することです。新規参加により新たな段階に到達したASEMの可能性をさらに広げていくことが重要です。

 我が国は、今回の会合の成果を踏まえ、来年5月、第7回外相会合を京都で開催し、ASEMに更なる推進力を与えていく考えです。

 今回の会合に参加した全ての首脳の英知と協力の精神、そしてカイ首相の指導力により、この会合が多大な成果を収めることを確信しており、私もその成功に貢献したいと思います。