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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第5回日印インド太平洋フォーラムにおける林芳正外務大臣ビデオ・メッセージの発出

[場所] 
[年月日] 2022年11月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

日印インド太平洋フォーラム

 ナマスカール。こんにちは。

 第5回「日印インド太平洋フォーラム」の開催にお祝いを申し上げます。

 前回の本フォーラムの開催以降、国際情勢は大きく変化し、ポスト冷戦時代の終焉とも言える秩序の動揺が生じています。そして、今、我々の眼前には、力による一方的な現状変更の試みや威圧が躊躇なく正面から行われる、国際秩序への挑戦が展開されています。

 特に、ロシアによるウクライナ侵略という暴挙は、国際秩序の根幹を脅かすものであり、世界のいかなる国・地域にとっても「対岸の火事」ではありません。中でもロシアがウクライナにおける核兵器の使用を示唆していることは極めて憂慮すべき事態です。核による威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用は決してあってはなりません。また、台湾海峡でも中国によるこれまでにない規模の軍事演習が実施され、EEZを含む日本近海へ弾道ミサイルを着弾させました。さらに、先月の我が国上空を通過する弾道ミサイルを含め、北朝鮮による極めて高い頻度での弾道ミサイル発射といった暴挙は、到底看過できるものではありません。

 このように国際秩序が多くの挑戦に直面している中、基本的価値と戦略的利益を共有する日印両国の協力、連携は益々重要になっています。実際、両国は幅広い分野において関係を飛躍的に強化しています。安保・防衛分野では、両国の外相、防衛相が参加して9月に東京にて第2回日印「2+2」を開催しました。この会議で、「自由で開かれたインド太平洋」の実現という共通の目標に向けて協力していくことを確認し、また、インド太平洋のみならず、いかなる地域においても力による一方的な現状変更の試みは認められないことを改めて確認しました。

 日印経済関係も強化されています。本年3月の岸田総理訪印の際には、今後5年間で官民合わせてインドに対し5兆円の投融資を行うという目標に一致しました。以降、多数の日本企業がインドへの投資を発表していると承知しています。今後、インドにおけるビジネス環境の改善を通し、日印経済関係が更に発展していくことを期待します。

 また、本年は、日印外交関係樹立70周年です。これまで既に日印両国で様々な行事が行われていますが、加えて、10月以降、日本の水際措置が大きく緩和されました。今後、両国の間で人的交流が更に活性化されていくことを期待します。

 日印両国が共有する、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPというビジョンは、地域全体の平和と繁栄を実現することを目的としています。このFOIPの実現に向けて、日本政府は、従来の取組に加え、サイバー、デジタル、グリーン、経済安全保障といった新たな切り口からの取組も推進すべく、来年春までに新たなFOIPプランを発表する予定です。もちろん、インドをはじめ同志国との協力も不可欠であり、日印の二国間協力や、日米豪印での協力を推進します。来年、インドは日米豪印外相会合をホストするとともに、G20議長国を務めますが、日本はG7議長国を務め、国連安保理にも加わります。来年は、両国が更に連携してインド太平洋、そして国際社会を共にリードする極めて重要な一年となります。私は、引き続きジャイシャンカル外相と協力していくのを大変楽しみにしています。

 日印両国の「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を更に推し進め、「自由で開かれたインド太平洋」を実現していくべく、本日ご臨席の皆様にも、引き続きご協力をいただければ幸いです。

 ダンニャワード。ありがとうございました。

(了)