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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第69回国連総会サイドイベント「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて」における岸田外務大臣開会挨拶

[場所] ニューヨーク、ロックフェラー財団
[年月日] 2014年9月22日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

御列席の皆様,

日本国政府を代表して,加盟国,国際機関,市民社会,全ての来賓の方々に,このイベントへご出席頂いたことを御礼申し上げます。

ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限が近づく今,あらゆる年齢の全ての人の健康的な生活と幸福のために,2015年より先を見据えて行動を続ける用意が,我々には求められています。

今日,三大感染症や母子保健を含む未達成のMDGs,非感染性疾患(NCDs)による疾病負荷の増加,国内における保健サービスへのアクセス格差,さらにエボラ出血熱等の公衆衛生危機など,我々は数多くの世界的な保健課題に直面しています。

昨今のエボラ・アウトブレークについては,脆弱なプライマリー・ヘルス・ケアによる状況の悪化がみられました。日本は,「人間の安全保障」の観点から,国際機関と連携し,総額約500万ドルの緊急人道支援を供給するとともに,WHOを通じて延べ4名の日本人専門家を派遣しており,さらに最大23名の日本人専門家を派遣すべくWHOと協議しています。日本の富山化学工業及び富士フイルムが開発した有力な候補薬を一定の条件下で提供することも含め,現在,更なる必要な支援策を検討しております。我々は今回のアウトブレークに対処するために団結した対応が必要です。

今日のこのような複雑で多様な保健課題に取り組むには何が必要なのでしょうか。私は,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC),すなわち全ての人が利用可能で強靱な保健システムがキーとなると信じています。

UHCは,全ての人が基礎的な保健サービスを必要な時に経済的に困窮すること無く受けられることを意図しています。さらに,UHCは質の高いプライマリーヘルスケアサービスを効果的に受けられるように障壁を取り除くことを目指しており,特に最も脆弱で周縁化された人々を対象にしています。

昨年の国連総会では,日本は「ポスト2015:保健と開発」というサイドイベントを主催し,安倍総理は2015年より先のUHC主流化を推進することを約束しました。日本は他のグローバルパートナーと連携して,この動きをリードするよう行動してきました。

日本は,世界銀行やWHOと協力してUHCモニタリング・フレームワークを開発し,これはUHC実施における信頼性の向上に大きな貢献をしました。また日本は,フランスやタイと連携してUHCというコンセプトの啓発を行うとともに,他の加盟国を説得してきました。その結果,UHCは持続可能な開発目標(SDGs)オープンワーキンググループの中で,適切に認識されるようになりました。

すべての人の健康を向上させ,包括的で持続可能な開発を実現するため,我々は「まさに今」動き出す時だと信じています。

それぞれの国の事情によりUHC達成に向けた取組は異なるのは当然ですが,例え医療が不十分な低所得国であっても,UHCを目標として取組を始めることに早すぎることはありません。日本は,健康で教育レベルの高い中間層に支えられて高度経済成長を続けました。現在は、高齢化社会で非感染性疾患や認知症に対応しています。こうした経験を国際社会に共有していく用意があります。

UHCの視点に基づくアプローチはポスト2015年開発アジェンダにおける他の保健優先課題の達成を加速させる上でも極めて効果的なアプローチです。このイベントが,2015年より先のUHC達成に向けた我々の連携した行動を促す良い機会となることを願います。

最後に,このイベントの実現に注力されたロックフェラー財団に感謝を申し上げると共に,WHO,世界銀行,フランス,チリの協力に感謝いたします。

御清聴ありがとうございました。