データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 水銀に関する水俣条約外交会議 岸田外務大臣によるステートメント

[場所] 熊本市
[年月日] 2013年10月10日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

議長,

御列席の皆様,

(冒頭)

 水銀の適切な管理に向けた,10年以上にわたる国際社会

の取組を経て,本日,ここ熊本で水銀に関する水俣条約が採 択され,署名が開始されたことを,お祝いいたします。水俣 病の教訓を世界に共有すべく努力している日本にとって, 「水俣」という地名を冠するこの条約の国際会議をホストで きることは,大きな意義を感じます。改めて,御列席の各国 首脳,閣僚を始め,皆様の訪日を心から歓迎致します。

 この条約策定に一貫して関わってきた,シュタイナー事務 局長を始めとする国連環境計画(UNEP)の貢献を讃えた いと思います。また,この条約が合意に至ったのは,非常に 困難であった政府間交渉をまとめあげたフェルナンド・ルグ リス政府間交渉委員会(INC)議長,そして各国・地域関 係者の力強い信念と粘り強い努力があったからこそです。こ の場をお借りして,この条約を世に送り出された全ての皆様 に深い敬意を表します。

(水銀に関する水俣条約の意義)

 水銀に関する水俣条約は,自然界に存在する一つの物質に

対して,包括的な規制を策定する初めての条約です。私達は, 本日,ここ熊本でこの条約を採択いたしました。これは,水 銀汚染の甚大な影響について全世界に警鐘を鳴らすと同時 に,水銀被害を繰り返さないという各国政府の強い意思の表 れです。

(我が国による支援)

 昨日安倍総理から表明したとおり,途上国の環境汚染対策

のため,我が国として今後3年間で総額20億ドルの支援を 行います。

 具体的には,大気汚染,水質汚濁,廃棄物処理という3つ の分野でODAによる支援を実施します。大気汚染について は,水銀を含む汚染物質の排出を抑えた高効率の火力発電所 の建設,水質汚濁については,下水道施設の整備・改築,廃 棄物処理については,環境負荷を低減し循環型社会の構築を 促すリサイクル・廃棄物処理システムの整備を行っていきま す。

 この20億ドルの支援に加え,途上国による水俣条約の締 結を支援するため,水銀汚染防止に特化した人材育成支援を 新たに実施します。

 日本が公害を乗り越える過程で培ってきた,世界に誇る環 境技術を活かしつつ,各国の実情に応じた日本ならではの支 援を行っていく考えです。

(結び)

 この条約の採択は,重要ではありますが,まだ最初の一歩

です。水銀による被害をなくすため,一日も早くこの条約が 発効すること,そして各国政府・国際機関等が力をあわせて 条約を履行し水銀汚染のない世界を実現していくことを心 から祈念致します。

 御清聴,ありがとうございました。