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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICADⅤ閣僚級準備会合開会式 岸田外務大臣挨拶

[場所] 
[年月日] 2013年3月16日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

議長ありがとうございます。

ハイレマリアム・デサレン・エチオピア連邦民主共和国首相 閣下,

テドロス・アダノム・エチオピア連邦民主共和国外務大臣閣 下,

エラストゥス・ムウェンチャ・アフリカ連合委員会副委員長 閣下,

各国閣僚の皆様,

各国大使の皆様,

各国及び機関の首席代表の皆様,代表団の皆様,

並びに御列席の皆様

 日本国外務大臣の岸田文雄です。

 はじめに,日本政府を代表し,TICAD共催者である国連,アフリカ連合委員会,国連開発計画,世界銀行と共に,皆様の御参加を心から歓迎いたします。

 また,ハイレマリアム首相を始め,エチオピア政府の皆様には,開催国,そしてアフリカ連合議長国として多大なる御協力を頂き,厚く御礼申し上げます。貴国及びアフリカの繁栄のために生涯を捧げた故メレス・ゼナウィ首相の遺志を引き継ぎ,偉大なる前進を主導する貴首相のリーダーシップに敬意を表します。

 併せて,エチオピア政府と共に,閣僚級準備会合をホストしていただいたアフリカ連合に感謝いたします。ドラミニ=ズマ委員長の指導の下,新たな前進を開始したアフリカ連合に世界が注目しています。TICAD共催者となったアフリカ連合委員会を迎え,アフリカのオーナーシップに基づく議論ができることは,TICADプロセスの深化に資するものであり,歓迎します。

 皆様,TICADは20歳を迎えました。そして来たる6月のTICAD Ⅴには,アフリカ統一機構(OAU)創設50周年に開催される歴史的意義があります。

 TICADは,1993年に日本がアフリカ諸国と共に始めて以来,着実に発展してきました。その歩みを通じ,TICADは世界に誇るべき独自の理念を貫いてきました。

 第一に,アフリカのオーナーシップを尊重してきたことです。アフリカ自身が求める開発の方向性を,アフリカ自身の努力で追求するというオーナーシップの考え方に立ち,アフリカ自身の手による初の開発計画であるNEPAD{ネパッドとルビ}が生まれました。また,アフリカ連合(AU{エーユーとルビ})が発足し,AUのオーナーシップの下で紛争解決や大陸アジェンダが結実してきました。

 第二に,アフリカとの約束の遵守です。TICADはこれまで,アフリカ開発に向けて掲げた目標を着実に履行し,フォローしてきました。TICAD Ⅳにおいて日本が掲げた,対アフリカODAの倍増,対アフリカ投資の倍増の公約は,5年後の現在,既に達成されています。このことを,誇りをもって御報告いたします。

 第三に,何よりも重要なことは,アフリカの可能性に対する揺るぎない信念です。TICADは,当初からアフリカが秘める可能性を世界に訴え,その潜在能力の開花に向けた国際社会のパートナーシップの強化を呼びかけてきました。かつての混迷した時期から現在に至るまで,援助のみならず,アフリカへの民間投資の重要性を喚起してきたのがTICADでした。

 こうした素晴らしい伝統を有するTICADに,私自身,2008年のTICAD Ⅳの際には科学技術政策担当大臣として,また,この度は外務大臣として取り組める光栄を噛みしめています。今般,お集まりいただいた皆様の御協力も得ながら,5年に一度のこの大会議を成功させたいと考えます。

 御列席の皆様,

 今,アフリカは,次の経済フロンティアとして国際社会の注目を集めています。かつて貧困と紛争に苦しんだアフリカは,今や明るい光に満ちた,新たな希望の源となっています。まさに「躍動する大陸」です。

 TICAD Ⅴは,アフリカの希望の光を更に輝かせ,アフリカ大陸に暮らす全ての人を照らし出す契機とすべきです。アフリカが歩み始めた繁栄の道,すなわち経済成長をより確固たるものにしていく方策を,そこに障害があるならばそれを取り除くやり方を,共に考えていきたいと考えます。

 御列席の皆様,

 日本は,TICAD Ⅴに向けた最初の取り組みとして,成長と繁栄の重要な土台である平和と安定を確立するため,約5.5億ドルの支援を決定しました。この中には,サヘル地域の安定に向けたアフリカ自身の決意と努力の現れであるAFISMA{アフィスマとルビ}への600万ドルの支援も含まれます。

 私は,アフリカと共に歩むことは,日本はもとより,国際社会全体の更なる発展と繁栄をもたらすことになると固く信じます。

 この確信に基づき,私はTICAD Ⅴのテーマとして,「躍動のアフリカと手を携えて」(“Hand in hand with a moredynamic Africa”)を掲げたいと思います。

 御列席の皆様,

 日本にとって,TICADは外交政策の最も重要な柱の一つです。私自身,TICADが20年間積み重ねてきた伝統を受け継ぎ,更に発展させ,総力を挙げて,TICAD Ⅴを必ず成功に導く決意です。そのために,御列席の皆様の御協力を得て,日本にアフリカの首脳の皆様をお迎えしたいと思います。

 今回の会合で,TICAD Ⅴが目指すべき成果や主要な論点を存分に議論し,TICAD Ⅴの成功に向けた基礎が形づくられることを祈念して,私の御挨拶とさせていただきます。

 ありがとうございました。