データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8ドーヴィル・パートナーシップ外相会合における玄葉外務大臣スピーチ

[場所] 
[年月日] 2012年9月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

(冒頭)

・本年のG8議長国として本会合開催のイニシアティブを取った米国に感謝申し上げます。

(現状評価とG8DPの役割)

・中東・北アフリカ地域(MENA)の安定は国際社会の安定に不可欠です。その観点から,移行期にある各国において選挙・憲法制定等の民主化プロセスが着実に進展していることを歓迎します。私自身,本年5月にヨルダン,エジプト,モロッコを訪問した際,歴史的な変革のうねりを目の当たりにし,そしてその中で改革に臨む各国政府の真摯な姿勢に感銘を受けました。

・今月,同地域で広がった大規模デモについて,宗教への冒涜は容認できません。他方,いくつかの国で暴力行為により死者が発生したことは極めて遺憾であり,かかる行為を断固非難するとともに,各国政府に対し,治安維持に最大限努力を払うよう求めます。

・同時に,国際社会は,個人の自由と人権を尊重し,法の支配に基づく政治の実現及び若者の雇用拡大を始めとする社会的・経済的課題への取組を支えるべく,移行国による自助努力に対する支援を絶やしてはなりません。G8諸国及びパートナー国は,この「ドーヴィル・パートナーシップ」(DP)の枠組みを通じて,かかる支援を牽引していくべきです。

(我が国の取組)

・我が国はDPの枠組みの中で,(1)公正な政治・行政の運営,(2)人づくり,(3)雇用促進・産業育成,の3分野で,民主化プロセスというマラソンを共に走るいわば「ランニング・メイト(伴走者)」として,それぞれの国の事情に即した息の長い支援に取り組んでいます。

・昨年野田総理より10億ドルの支援を約束しましたが,以降,モロッコ,チュニジア,エジプト及びヨルダンの4カ国に対して,総額約14億ドル相当(1,112.11億円)の新規円借款の実施を決定乃至表明し,約束を果たしてきました。加えて,本年,国際機関を通じた約8000万ドルの追加的支援(注:平成23年度補正予算)により,主に若年層の雇用創出や選挙実施を支援してきました。

・DPの具体的な成果の一つである「欧州復興開発銀行(EBRD)」の設立協定改正については,我が国でも9月6日,国会の承認を得たところです。また,MENA移行基金についても,我が国として参加する方向で検討中です。

・加えて,経済関係強化のため,リビア,モロッコへのビジネス・ミッションの派遣や投資協定締結に向けた予備的協議等を行ってきており,本年12月には,アラブ諸国との経済関係強化を進めるための日アラブ経済フォーラムの第3回会合を東京で開催します。

・今後とも我が国は自らの技術力やアジアの知見・経験を活用しながら,DPの枠組み等を通じて,移行期にある各国の安定と成長,域内統合の深化に向けて共に歩んでいく考えです。