データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第8回東京-北京フォーラムにおける玄葉外務大臣挨拶

[場所] 
[年月日] 2012年7月2日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.冒頭

曾培炎(そ・ばいえん)・元中国国務院副総理,そして王晨(おう・しん)・中国国務院新聞弁公室主任をはじめ,中国側のご列席の皆様,そして福田元総理をはじめ,日本側からのご列席の皆様,第8回東京-北京のフォーラムが実りあるものとなることを心からお祈り申し上げますとともに,このフォーラムの開催にあたって御尽力をされた方々に対しまして,敬意を表したいと思います。

このフォーラムの開催に先だって行われた共同の世論調査を私も拝見しましたが,とても考えさせられる内容であると思います。例えば,日中双方とも,7〜8割の方々が,お互いの国について「良くない」という印象を持っているということであり,これはこれで直視をしなければならないと思います。そして中国では4割,日本では5割以上の人が両国関係を「悪い」という認識をしているということでもあるようです。

他方,日中両国において,8割前後の人が,両国関係は重要であるという認識をしているというのも事実です。まさに,日中関係の重要性については,両国民ともコンセンサスは得られている,これは間違いないということであります。

併せて,日中両国政府とも,お互い,日本と中国は最も重要な二国間関係の一つである,そして協力のパートナーである,このことを認識している,これもまた事実です。

2.日中関係

40年前の国交正常化の際には,台湾の問題,歴史の問題やお互いの政治制度の違いといった課題を乗り越えて,国交正常化を目指しました。これは,当たり前にできたわけではないと思います。もちろん,当時の環境もありますけれども,まさに日中双方の相当の努力というものがあったと我々は思い起こすべきであると思います。

日中間の貿易総額について,40年前は11億ドルであったと承知しておりますが,今は3500億ドルに達しているということです。また人的交流は,1万人が500万人になったということです。中国の発展というのは日本の発展にとってチャンスですが,実は日本だけではなくて,地域,そして国際社会全体にとってのチャンスでもあるのです。

今問われているのは,やはりアジア太平洋地域,そして国際社会全体にとって,特にその平和,安定のために,日中双方がお互いに責任ある振る舞いをどれだけ着実にかつ確実に行い得るかということではないかと思います。国際経済・金融,核軍縮・不拡散や,テロ対策,あるいは平和維持・平和構築のために行動すべきだと思いますし,そのために,日中双方の有識者によるこのような対話も,やはりたいへん重要だと思います。

また私は,特にこのアジア太平洋の中で,安定のネットワーク,繁栄のネットワーク,価値のネットワークなどを張り巡らせるべきであると常々申し上げておりますが,今こそ,日米中の戦略的な対話を行うべき時期がいよいよ来たのではないか,ということも併せて外務大臣として提唱し,また中国側にも問いかけています。

3.問題提起

さて,冒頭申し上げたとおり,7〜8割の方がお互いに対する印象がよくないと考えているということですが,せっかくの機会ですので,これだけの錚々たる方々が集まられたこのフォーラムで,ぜひ皆様に議論をしていただければと私が思う点をいくつか挙げます。

今回は海洋の問題も含め率直な意見交換が行われると聞いていますが,まず報道の問題,そしてネットの問題があります。このネット世論というものは,いったい何を意味しているのか,中国側の政策決定にこのネット世論がいかなる影響を与えているのか,これは近年のたいへん大きな特徴であると思います。おそらくユーザーの8〜9割の方は,30代以下ではないかと思うのですが,このネット世論というものをどう見ていくのかということを,私はぜひこのフォーラムで扱っていただきたいと思います。

次に「教育」であります。このアンケート調査を見ると,2人に1人の中国人が,今でも日本を軍国主義と見なしていると言われております。21世紀のこの時代における歴史教育,そして国際教育というのは,一体どうあるべきなのかということも含めて,対話,議論をしていただければと思っています。

そして,「文化」についてです。日本の文化がどれだけ中国に自由に入っているのか,中国から日本にどのくらい自由に入っているかということも含めて,お考えいただければと思います。例えば韓国に関しては,韓国のテレビ番組等の「ポップカルチャー」は日本に自由に入ってきています。一方,日本の「ポップカルチャー」も韓国に今入っていっていますけれども,残念ながら,例えば地上波では,一部の日本のコンテンツが流れないといったことのように,さまざまなギャップというものがまだあると思います。ぜひ,そのように現実に存在する問題も,こういったフォーラムで御議論いただけるとありがたいと思います。もちろん,かねてから重要性を指摘されている青少年交流等についても,ぜひ対話の中で取り上げていただければと思います。

4.まとめ

交流のすそ野を広げる,そして更なる日中関係の発展を目指すというのが,この40周年の意義です。そのために,様々な仕掛けをどのように行っていけばいいのかについて,建設的な対話を期待したいと思います。

難しい問題が生じることもあります。個別の問題が,全体の関係に影響を与えないように,強靱な関係を築いていかなければなりません。日中両国はGDPが世界で2位と3位の国であります。日中双方とも,このアジア太平洋,そして世界全体の中で,責任ある振る舞いを行えるように,「戦略的互恵」という言葉が単なるスローガンにとどまってしまうことがないように,そして真にウイン-ウインの,名実共に「戦略的互恵」の関係が深化をしていくように,ぜひ皆様のご協力をお願い申し上げたいと思います。

この対話がそのためのよい契機となることを心からご期待申し上げて,私のお祝いの言葉に変えさせていただきたいと思います。