データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連持続可能な開発会議(リオ+20)玄葉外務大臣演説

[場所] 
[年月日] 2012年6月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

冒頭

昨年3月11日の東日本大震災から15カ月余りの歳月が経ちました。日本は着実に,復興の歩みを進めています。本年開催される最も大規模な国際会議に出席するにあたり,まずは世界各地から惜しみなく寄せられた温かい支援と励ましに対し,日本国民を代表して感謝を申し上げます。

持続可能な開発,20年の経過

未曾有の大震災を経験した我が国にとって,今回のリオ+20のテーマは,特別な意味を持っています。自然の力によって大きな被害を受けた日本国民として,「持続可能な社会とは何か」という根源的な問いかけに真摯に向き合い,世界とともに自然と調和した社会,文明のあり方につき,答えを見いだしていきたいと願っています。これが,日本人に課せられた使命であると思います。

前回の地球サミットがこの都市で開催されてから20年がたちました。この間,数々の開発途上国が経済的発展を遂げ,新興国が台頭し,民間部門が果たす役割も遥かに大きなものになりました。このように国際社会の主体が多様化した現在,我々は「先進国」と「途上国」という従来の二分法にとらわれず,全てのステークホルダーが,世界の持続可能な開発という,共有された利益のために力を合わせる必要があります。

人間の安全保障,「緑の未来」イニシアティブ

世界中で持続可能な開発を実現するためには,人間の一人ひとりがその能力を最大限に発揮し,より良い社会を築くために参画することが重要です。こうした「人間の安全保障」の考え方に立ち,「緑の未来」をつくるため,我が国は具体的な3つの取組を実行したいと思います。

第一に,環境未来都市についてです。優れた環境技術,基幹インフラ,強靭性を兼ね備えた持続可能な都市を世界各地につくります。我が国には省エネ,リサイクルに長年取り組んできた経験があります。それを基に世界最先端の地球に優しく,災害に強く,人に優しい「環境未来都市」のモデル都市づくりを進めています。その取組は世界各国の国づくりのお役に立てると確信します。明年,我が国において都市づくりについての国際会議を開催します。また,今後,途上国から年間100名程度の都市開発関係者を招へいし,我が国における「環境未来都市」の成功事例を発信してまいります。

第二に,緑の協力隊の編成と再生可能エネルギーに関する協力です。エネルギー・資源効率に優れたグリーン経済への移行は,全ての国が手を携えて取り組む課題です。そのためには,環境政策立案,環境技術の分野における人づくりが何より重要です。我が国は,途上国に対し,3年間で1万人規模の「緑の協力隊」を新たに編成し,人づくりに協力していきます。また,我が国の優れた再生可能エネルギー技術を活用し,各国のグリーン経済への移行を支援していきます。そのため,今後3年間で30億ドルの支援を行います。

第三に,防災に関する協力です。世界中で防災に対する関心を高め,強靭な社会をつくる支援をします。我が国は,過去に数多くの震災を経験し,そのたびに復興を遂げてきました。このような経験を是非皆様と共有したいと思います。そのため,来月,東北地方で「世界防災閣僚会議in東北」を開催します。具体的には,防災の分野で途上国に今後3年間で30億ドルの支援を行う考えです。この会議場から程近い「日本パビリオン」においては,「日本のグリーン・イノベーション」「復興への力,世界との絆」をテーマに震災からの復興の状況を発信しており,我が国の有する省エネ・省資源技術を皆さんに体験して頂きたいと思います。

これらの取組は,ミレニアム開発目標の達成期限である2015年以降も見据え,持続可能性に配慮した開発を進める上で,非常に有益であると考えます。

結び

多くの日本人は古来より,草や木にも魂があると信じ,大自然の恵みには感謝を,脅威には畏敬の念を抱いてきました。このような「自然との共生」の大切さを世界の皆さんと共有したいと思います。大震災後のピンチをチャンスに変え,その経験で培った高い防災技術や災害に強い街づくりを,各国と共有していきたいと考えています。世界の「持続可能な開発」に向け,我が国は特別な役割を果たせると信じます。リオ+20に集った世界の首脳とともに,子供たち及び将来世代にとって明るい未来を切り開いていきたいと思います。

ありがとうございました。