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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 東京アフリカン・クラブにおける前原外務大臣発言

[場所] 東京アフリカン・クラブ
[年月日] 2011年1月12日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

在京アフリカ外交団長 ムルンバ大使閣下,

在京アフリカ外交団の皆様,

ご列席の皆様,

 年末,天皇誕生日レセプションで,ムルンバ在京アフリカ外交団長にお会いした際,アフリカ各国大使の皆様と近く意見交換の場を持ちたいと申し上げました。本日,こうして新年早々に実現することができ大変嬉しく思います。日頃より,我々の関係強化のために御尽力いただいていることに,心より感謝申し上げます。

 アフリカは,貧困や紛争等の問題を抱えつつも,豊富な天然資源と近年の高い経済成長によって,「希望と機会の大陸」としての歩みを着実に進めており,我が国としてもアフリカ外交を強化していく考えです。私自身も先月,日アラブ経済フォーラムに出席するため,チュニジアとアルジェリアを訪れました。

 アフリカ外交は,年初から重要案件が目白押しです。まず,菊田政務官が現在,西アフリカのモーリタニア,セネガル,マリを訪問しています

 スーダンでは9日から,南部スーダンの分離独立を問う歴史的な住民投票が行われており,我が国も15名の監視団を派遣しています。我が国としては,投票が円滑に完了すること,そしてその結果については,南北スーダン関係者がこれを受け入れ,将来のスーダンにおける平和と安定のため,南北両当事者が協調していくことを期待しています。

 コートジボワールの情勢は依然として予断を許しません。我が国はECOWASとAUによる仲介のイニシアティブを評価し,選挙で示されたコートジボワール国民の意思が尊重される形で,事態が早期かつ平和裡に解決されることを希望します。

 これらの課題やソマリア情勢は,今月下旬にエチオピアで開かれるAU総会でも大きなテーマとなりましょう。同総会には我が国からも政務レベルが出席する方向で調整中です。

 アフリカに於ける平和・民主主義の定着に加え,アフリカの自立と発展を引き続き支援するため,我が国はTICADプロセスを今年も推し進めます。まず私は,関係機関とともに,本年年央までにアフリカにおいて,第三回TICAD閣僚級フォローアップ会合を主催したいと考えています。我が国は厳しい財政状況にありますが,TICADの公約,すなわちODA倍増と民間投資倍増支援を確実に実施していきます。また,保健と教育に関する「菅コミットメント」や生物多様性に関する「いのちの共生イニシアティブ」,日・AU協力強化に関する共同コミュニケにおいて確認した人間の安全保障の実現に向けた協力強化等,我が国が昨年後半に行った約束の多くはアフリカ諸国に裨益するものです。ミレニアム開発目標(MDGs)に関しては,昨年9月の国連首脳会合のフォローアップ会合を本年東京で開催します。

 TICADのもう一つのエンジンは,我が国とアフリカとの経済関係の強化です。アフリカは世界経済危機から回復しつつあり,我が国企業の関心も高まっています。私は,アフリカにおいても,鉱物・エネルギー資源の開発や,広域インフラの整備への協力,及び貿易・投資の自由化と拡大を図り,「日本とアフリカとのパートナーシップ」を強化していく考えです。

 地球規模の課題に関しては,本年南アフリカでCOP17が開催されます。国連改革も引き続き進行中であり,こうした課題に取り組むにあたって,日本はアフリカ諸国と引き続き緊密に協力していきたいと考えます。

 在京アフリカ外交団の皆様は,大変まとまりがあり,これまでもTICADフォローアップ等において多大なる御貢献を頂いていると承知しています。また,テーマ毎,地域毎に会合を開いて意見をとりまとめ,当省をはじめとする関係方面に申し入れを行っておられると承知しております。今後も,皆様とともにアフリカ外交を強化していく所存ですので,引き続き御理解・御協力を賜れば幸いです。