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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 財団法人日本国際問題研究所創立50周年感謝の会における前原外務大臣祝辞

[場所] 東京(於:ホテルオークラ本館1階「曙の間」)
[年月日] 2010年11月29日
[出典] 外務省
[備考] 17時00分〜18時15分
[全文]

(冒頭)

 麻生元総理のご挨拶の中で,外交,安全保障については与党も野党もない,とのお言葉がありました。大変ありがたく存じます。

 財団法人日本国際問題研究所を所管する外務大臣として,本日,創立50周年を記念して祝辞を述べる機会を得たことを嬉しく思います。1960年に創立されて以来,国問研が,研究調査,政策提言,海外との研究交流などを通じて我が国の外交政策の企画・立案に果たしてきた役割に敬意を表します。

 当時の各界代表が創立委員として名を連ねられた「設立趣意書」には,「新しい我が民主外交の進展に即応する実証的な研究体制を整備せんとするもの」であって,「政策決定に貢献し,進んで世界の平和と人類の厚生に奉仕しようと希望する」と書かれています。それから50年,世界も日本も大きく変わりました。この間の国問研の歩みは,戦後日本外交の歴史でもあったと思います。この度発刊された「『国際問題』記念撰集」を拝見して,その念を強くします。

(国民の理解と支持のもとに進める外交)

 世界が変わったからこそ,国問研のような外交政策シンクタンクが果たすべき役割は今後ますます大きくなると考えます。なぜなら,民主国家の外交の基盤は,国民の理解と支持にあり,それを実現する上で国問研をはじめとするシンクタンクが持つ機能が不可欠だからです。

 国問研は,日本の外交政策シンクタンクの草分けとして,地道な研究・発信に加え,国内外のシンクタンクとのネットワークを通じた研究交流を実践してきました。中でも,国問研の月刊誌である「国際問題」は,創刊以来50年間,国際情勢に関する調査研究や政策提言を,研究者のみならず関心をもつ国民に対して,広く提供してきたということができるでしょう。

 実力のあるシンクタンクを国内に有することは,国際世論形成への影響力を持つことであり,その国のソフトパワーであると言えるのです。外務省としても,国内の外交政策シンクタンクの力を,外交力の一部として積極的に活用していきたいと考えます。

 行政刷新会議による昨年の事業仕分けの結果を受け,平成21年度まで国が国問研に対して交付してきた補助金が廃止されました。これは,外交政策シンクタンクの重要性を否定するものではありません。その後導入された新制度の下では,補助金の交付先が企画競争を通じて決定されることになりました。シンクタンクに刺激を与え,活動が活性化することを目指してのことであり,国問研におかれても,切磋琢磨の中で,さらに質の高い活動をされることを期待しています。

(結語)

 最後になりますが,国問研の実績は,本日お集まりの皆様をはじめ多くの方々の努力があって可能となったものであります。心より敬意と感謝を表します。国問研が,創立以来50年間の蓄積を土台として,この先50年後の日本外交のさらなる発展のために,より一層大きな役割を果たしていかれることを切望しております。皆様のご健勝とご多幸をお祈りして,私の挨拶を終えさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。