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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連事務総長主催軍縮会議(CD)ハイレベル会合 前原外務大臣ステートメント

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2010年9月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

議長,

御列席の皆様,

 日本政府を代表して,軍縮会議の再活性化のためにハイレベル会合開催を提案された潘事務総長のイニシアティブを歓迎します。

(軍縮会議の意義と現状)

 「核兵器のない世界」の実現には,すべての核兵器保有国による多国間核軍縮は国際社会の一致した行動と同様に極めて重要です。この観点から,すべての核兵器国とNPT非締約国とが参加する,唯一の多国間軍縮交渉機関としての軍縮会議の役割は極めて大きいのです。

 昨年の作業計画合意にも拘わらず,一か国の行動により,軍縮会議が未だ実際の作業を開始できず,その機能が停滞している状況は極めて遺憾です。

(重要事項の前進)

 核軍縮に向けた機運が高まる中,軍縮会議をこのまま「眠れる会議」としてはなりません。我々は軍縮会議の作業を直ちに開始し,核軍縮,兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約),消極的安全保証,宇宙における軍備競争の防止という重要事項の前進を図らなければなりません。

 特に,カットオフ条約は核軍縮・不拡散の双方に貢献する現実的な措置の一つであり,条約の即時交渉開始と,条約発効までの間,兵器用核分裂性物質生産モラトリアムを宣言し維持することを強く求めます。

 また,「核兵器のない世界」を実現するための具体的な第一歩として,核兵器の役割の低減を重視します。消極的安全保証の実効性を高める方途についても実質的な議論を深めることが必要です。核兵器国に対し,強化された消極的安全保証の可及的速やかな供与を要請します。

(今後の取組)

 来年,我々がこの場で再会する時に,軍縮会議が同じ状況にあることは決して許されず,一定の期限を設けて議論を行うべきです。また,軍縮会議が自らの役割を果たせない場合には,代替策を検討しなければなりません。たった一か国が個別の利益に基づく行動を取ることで,核軍縮の前進という国際社会全体の利益が阻害されてしまう事態は受け入れられません。この危機感を各国が共有すべきです。仮に,軍縮会議でカットオフ条約交渉の目処が立たなければ,我が国は他の賛同国と共に,同条約交渉の場の提供等のイニシアティブをとる用意があります。

 一昨日,日豪両国は,8か国と共に,「核兵器のない世界」に向けた移行期戦略として,「核リスクの低い世界」を目指す新たなグループを立ち上げました。我が国はこのグループのメンバー国と共に,カットオフ条約やその他の核軍縮・不拡散措置の具体的な進展を図るために積極的に議論を主導していく決意です。

 御清聴ありがとうございました。