データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] MDGs国連首脳会合ラウンドテーブル5 前原大臣演説

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2010年9月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 「最脆弱層へ如何にして援助を届けるか」。これは2015年までのMDGs達成のために避けることのできない課題です。レークUNICEF事務局長の「下位20%層の解決なくして解決なし」との指摘は,問題の本質を見事に表しています。

 最脆弱層とはどのような人々か。スラム・離村居住者,少数民族,障害者など多様であり,ニーズも多様です。これに応えるためには,人間一人ひとりの保護と能力向上に着目する人間の安全保障の視点が鍵となります。独特のニーズをすくい取ることのできる行政システムの構築が必要なのです。

―途上国においては,中央政府が最脆弱層のニーズに応える政策に十分にコミットするとともに,それを確実に実施する能力を中央政府,地方政府が持つことが必要です。

―また,国際機関,ドナー,市民社会は協調して,自助能力の向上に焦点を当てた支援を行うことも必要です。

 例えば,教育分野において,これまでの基礎教育支援は,就学率の向上に大きな成果を上げました。しかし,規模の拡大を急ぐあまり,質の確保が追いつかないきらいもありました。親やコミュニティとの意思疎通不足,給食施設など子供の学習を助ける施設の不足,教師の質の不足などが各地で深刻化しています。

 まさに,多様なニーズに応えられよう,学校の機能を強化する必要が再認識されているのです。日本は自らの基礎教育普及の体験も踏まえ,学校,コミュニティ,行政の関係者すべてが集まり,学校の能力を高め,基礎教育の質を改善する支援モデルを構築します。我々はこれを「スクール・フォー・オール」と名付け,新しい教育支援政策の中核として推進していく考えです。

―最脆弱層については,コミュニティの中心としての学校が独特なニーズを吸い上げ,コミュニティの強化とともに,教育効果を向上させられるように支援します。

―また,女性教員の教育やジェンダーに配慮したカリキュラムの策定,女子トイレやスロープの設置など,女子や障害者を含めすべての人々の立場に立った学校施設の整備などを支援します。

 以上のような支援を,我が国は,途上国政府や他のパートナーと協力して推進していきます。

 私は,昨日MDGsアジア閣僚級非公式会合に出席しました。その場の議論で,経済成長を通じたMDGsの前進はアジアの成功経験である一方,格差是正が今後の課題であることが確認されました。MDGsをマクロで達成しても,最脆弱層が取り残されるような社会は公正感を欠き,安定し得ません。日本を含む国際社会が提供する支援を,途上国が社会的公正と安定のために活用することが真のMDGs達成に不可欠であることを,最後に強調したいと思います。

 ご静聴ありがとうございました。