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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 岡田外務大臣と語る 札幌 「新たな国際協調の時代における日本外交」

[場所] 北海道立道民活動センター
[年月日] 2010年3月6日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

I. 大臣基調講演

 みなさん、こんにちは。外務大臣の岡田克也です。少し打ち解けた感じでお話をしたいと思います。私も選挙などでは、よく演説をしたり、意見交換会をしたりしますが、そういう調子で、後ほどみなさんからも質問を受ける時間をとって、双方向で進めたいと思います。よろしくお願いします。

 1.衆議院予算委員会での論戦

 今日は「新たな国際協調の時代における日本外交」ということで、お話をさせていただくわけですが、外交に入る前に、最近の国会の情勢などお話しておいたほうがいいかなと思っています。国会で今、予算委員会を開いています。参議院の予算委員会をやっているわけですが、ちょうど衆議院の予算委員会が終了して、そして、予算が通過しました。もちろん、これから参議院でいろんな厳しい審議が行われるわけですが、憲法上の規定によって、衆議院で成立すると、1か月後には、仮に参議院の議決がなくても自然成立するというルールになっていますので、よほどのことがない限り、予算は成立のめどがついたと言えます。そして、参議院で十分な審議がなされた上で成立します。政権が変わったということを本当に感じてもらえるのは、この予算が執行されてからになると思います。例えば、子ども手当や高等学校教育の無償化など、実際に感じていただくのは予算が執行された後であります。

 さて、予算委員会の議論ですが、非常にいい議論がなされたと思いますが、一方で、政治とカネをめぐる議論がかなりのウェイトを占めました。その中には、北海道に関係のある事件もあったわけです。もちろん、そういう議論は必要ですし、質問する方がどういう質問をするかをお決めになるので、閣僚の立場でコメントすることはありませんが、閣僚の立場を離れて、今まで、とにかく政権交代を実現することが日本の政治をよくすることにつながるとの思いで、20年近く野党議員の1人としてやってきて、現状は非常に残念なことだと言わざるを得ません。ただ、やはり理想は一挙には実現できないものであり、一歩一歩、理想に向かって進んでいくことが非常に重要だと思っています。国会審議などをご覧になり、少しご心配をいただいたり、あるいはご批判をいただいたりすることもあると思いますが、少し長い目で見ていただくと大変有り難いと思います。我々は日本の政治をよくしたいとの思いで政権交代を実現しましたし、政権交代を実現したらそれで終わりではなくて、これがいろんなことのスタートです。さまざまな変化が今、政府の中で起こりつつあるということをご理解いただければと思います。

 2.新たな国際協調の時代へ

 さて、本来の外交の話をしたいと思います。私は国会開会にあたっての外交演説でも「新たな国際協調の時代に入った」と申し上げました。何を言っているかというと、ひとつの直接的なきっかけは、やはりアメリカにおけるオバマ大統領の登場です。少し前を思い出していただくとよくわかりますが、例えば、イラク戦争を巡って、世界は賛成する国々と反対する国々で、国連の議論でも大きく2つに分かれました。あるいは、アメリカの政府高官が、欧州に対して、古い欧州と新しい欧州という言い方をされたこともありました。そういうふうに、世界が分断されたかのような印象を受けた方も多いと思います。それが、国際協調を重視するオバマ大統領の登場によって、流れが変わってきました。考えて見れば、世界が直面している様々な問題は、一国だけで対応できる問題というのはほとんどありません。日本だけで解決できる問題も非常に限られていると思います。例えば、地球温暖化の問題、核軍縮・不拡散の問題、貧困の問題などグローバルな問題は、国際協調のなかで解決していかなければなりません。

 去年暮れに行われたデンマーク・コペンハーゲンのCOP15では、前進もあったと思いますが、必ずしも満足すべきでない結果に終わったと思います。これなども、やはり議論の中で、南北対立が前面に出て、本来、次の世代、本当に困っているアフリカや島しょ国のために、温暖化問題を乗り越えなければいけないという気持ちが後ろに引っ込んでしまったということだと思います。様々な世界が直面している問題は、国際協調のなかで初めて解決できるものだという当たり前のことを、改めて思い返す機会を与えてくれたのがCOP15でした。

 これから国際協調の中でしっかりとやっていかなければならない中で、日本はどうすべきか。もちろん、その中で日本は重要なプレイヤーです。日本には日本の考え方や国益があります。しかし、そういうものをしっかりと示した上で、最終的にはやはり世界の中で調和させ、調整をし、そして、1つの結論にいかなければなりません。私は、日本の外交は、当然、国民の皆さんあっての外交ですから、国民の皆さんの考え方、利益をしっかり踏まえた上でやっていかなければならないと思います。それがなければ、単に世界の流れに合わせているだけになります。日本には日本の主張があるので、しっかりと主張しなければならないと思います。しかし、最終的にはやはり、どこかでお互い折り合いをつけていかなければならないことにもぜひご理解をいただきたいと思います。

 3.日米同盟の深化

 そういう総論の中で、日米関係、アジア外交、日露外交について、少し具体的にお話ししたいと思います。まず、日米の問題です。私は外務大臣になり、かなりの時間とエネルギーを日米の問題に注ぎ込んできました。新聞を見ても、日米の関係、特に普天間基地の問題などが連日のように報道されています。この日米同盟の問題というのは、1月13日にハワイで米国クリントン長官とお会いして、80分間くらい議論をしました。それは1つの象徴的な出来事なのですが、日本とアメリカの二国間の問題は80分のうちの最初の30分でした。その中で、普天間基地の問題は30分の中の何分の1という時間です。残りの50分はまさしくグローバルな問題、例えば、イランの核の問題、北朝鮮の核やミサイル、拉致の問題、地球温暖化、アジアにおいてはミャンマーの民主化の問題、核軍縮・不拡散の問題について、日米がどういった協力ができるかを議論しました。つまり、日米同盟は幅広い概念です。日米二国間の安全保障は中心、中枢であることは間違いありませんが、それにとどまるものではありません。今や世界のなかで重要なプレイヤーであるアメリカと日本が、お互いに協力をしながら、地球規模の問題を解決するためにどう立ち向かっていくかが、非常に重要な日米同盟の意義です。メディアの報道などでは、クリントン長官との会談でも、普天間がどうした、日米安全保障の問題がどうなったとの報道がなされます。もちろんそれも大事なことですが、そういうグローバルな問題についても、お互い協調・協力しながらものごとを進めているということも、かなりのウェイトを占めているということを、ぜひご理解いただきたいと思います。

 さて、日米安保の話ですが、日米同盟の中でも中心をなすのが日米安保だと先ほど申し上げました。今年は、今の日米安保条約、これは岸総理の時に改訂されたわけですが、その時は大変な騒ぎで、私はまだ6歳でしたからまったく記憶にありませんが、50年前に今の改定された日米安保が発効しました。それからちょうど50年節目の年に今年はあたります。したがって、50年の節目の年に、日米安保、日米同盟を深めるための議論を、日米両国でやろうと確認しました。もうすでに、事務レベル、局長レベルで、そのための話し合いはスタートしています。例えば、最近、アジアを取り巻く環境は非常に変化が速くなっています。そういうことについて、例えば、朝鮮半島における北朝鮮が核実験をし、核を保有し、それをあきらめていないという状況があります。これは、数年前には考えられない事態でしたし、日本の安全保障にとっても、アジア全体にとっても非常に大きな問題になっています。それから、中国の台頭があります。経済的にも規模が増し、軍事的にも予算が増しています。それはプラス、マイナス両方あります。マイナスだけではありません。しかし、そういう中国の変化をどうとらえて、どう対応していくのかということについて、日米間で共通の認識に立つべきであり、そのための作業を行う必要があります。

 さらに、もう少し幅広く言いますと、アジア地域において全体に経済成長が持続しているので、私は、21世紀はアジアの時代だと言っているのですが、中国、インドネシア、ベトナム、タイ、いろんな国が成長するのに伴って、中間層が厚みを増していき、政治的にも民主主義が深まっていきます。1つの典型はインドネシアだと思います。インドネシアは、軍が政治をやっているという印象をお持ちの方もおられるかもしれませんが、今や立派に大統領選挙を行い、平穏に選挙で大統領が選ばれており、民主主義が成熟化しつつあります。そういうアジア全体の経済発展、民主主義の成熟化が安全保障環境にどういう影響を及ぼすのかということも、重要な議論すべき課題です。一言でいうと、アジア太平洋地域におけるさまざまな環境変化について、どう考え、将来をどう見通すのかを、日米で共通の認識に立って、その上で同盟やアメリカや日本がどういう役割を果たしていくのかを、しっかり議論する必要があります。これが50周年にあたっての日米同盟の深化です。その作業を今、行っているところです。

 そういう中で、普天間基地の問題があります。最近は何か、北沢防衛大臣と平野官房長官がひそかにルース駐日大使に会った、外務大臣は外されたのではないかと、いろいろ想像たくましくメディアは書くわけですが、この普天間の問題は、御存じのように旧政権時代に日米で行った合意があります。現在の辺野古沿岸部にV字型滑走路を作るということで、合意があって作業が進んできました。しかし、海を埋め立ててそれだけの基地を作ることに対して、沖縄の中でも考え直してもらいたいとの声が強くあり、政権交代もあったので、鳩山政権の下でより良い選択肢はないかということを今、議論しているところです。議論の中心は平野官房長官です。

 なかなか難しいのは、連立政権なので、民主党だけでは議論しきれません。社民党、国民新党の意見も聞かなければなりません。そして、負担を減らしてもらいたいという沖縄県民の気持ちもあります。一方で、アメリカにとって、あるいは日本自身にとっても、やはり米軍の存在が日本の平和を守るために重要な役割を果たしているということがあります。したがって、その役割をきちんと確保しなければなりません。その中で、三次元方程式を解く作業を今、行っているわけです。私と平野官房長官と北沢防衛大臣は、昔から非常に仲がいい3人、トリオですので、お互いよく連絡をとりながらいろんな作業を行っています。我々3人は、鳩山総理をしっかり支えることで完全に一致していますので、一義的には3人が責任を持って作業をし、最終的には総理の判断を仰いで、5月末までに結論を得るということですので、しっかり作業をしていきたいと思っています。時々、3人の大臣の言っていることが違うじゃないかと言われることがありますが、これは私も自戒していますが、しっかり自分がやらないといけないと思いすぎると、半歩くらい先を行ってしまうことがありますので、少し気をつけながら、進んで行かなければならないと思います。

 さて、日米安保の問題のほかにも、日米間で様々な問題があります。今、二国間で問題になっている話で、ハーグ条約、子どもの連れ去りに関する国際条約というのがあります。これは実はかなり深刻な話です。先日、欧米の8か国の大使がお見えになり、なんとか前進をしてもらいたいと言っていかれました。これは何かというと、例えば、日本人女性とアメリカ人男性が国際結婚をして、子どもができ、うまくいっているうちはいいが、それが破たんすると、アメリカでは共同親権を持つ、つまり、父親も母親も親権を持つということになりますが、日本人の母親が日本に子どもを連れ帰ってしまう。母親が子どもを連れ帰ることは、いいか悪いかは別として日本では違和感なく受け取られることだと思いますが、そうすると父親が会えなくなるということで、日本にまで父親が来て会いたいと言っても母親は会わせたくないということがかなりあり、問題になっています。これは、アメリカの国内法で厳しく言うと、たとえ母親であっても誘拐罪になってしまいます。それはアメリカだけではなくて、ハーグ条約に入っている国ではそういう現象が起きています。逆のケースもあり、私のところに手紙をいただいたケースでは、日本人の母親ですが、夫がハーグ条約に入っていない国の人で、日本で結婚をして生活をしていましたが、結婚生活が破たんしたら夫は子どもを連れて自分の国に帰ってしまったそうです。母親は子どもに会いたいとその国に行っても会わせてもらえない。こういう話です。こういうことについて、きちんとハーグ条約に加盟してください、子どもに会わせてください、という問題も日米間であるわけです。日米は非常に近い国ですが、それだけにさまざまな問題があります。最近のトヨタ自動車の安全、リコールを巡る問題もその1つです。

 同時に日米同盟の中で、例えば、北朝鮮の問題やイラクの核の問題について、どう協力して対応するかも重要な課題です。昨日、アメリカのスタインバーグ国務副長官が来られて、外務次官と、私と会って話をしました。国連の安全保障理事会で、日本は4月には議長国になるので、その時にイランの問題にちょうど重なります。主要国がしっかりと協力して対応しようと具体的な話をしました。いろんな局面で日米両国政府が協力するということがたくさんあります。ミャンマーの民主化もその1つです。今年はミャンマーで選挙が行われますが、開かれた公正な選挙がいかに重要かということを、日米で連携して伝えてきています。ミャンマー政府について、欧米は制裁一辺倒が多かったが、アメリカが最近変わってきて、日本の路線に近くなってきました。最低限の関与をしながら、とにかくいい方向にもっていこうとしています。そういったさまざまな問題を日米間で協議をしています。

 4.アジア太平洋における積極的外交の推進

 日米同盟と並んで重要なのが、アジア外交です。どっちが重要ではなく、どっちも重要です。ただ、質的にはかなり違います。米国両国は安全保障上の同盟国ですから、やはり中国やほかのアジアの国々との関係とは質的に違うと言えます。しかし、例えば、中国と日本は、経済的に相互依存が進んでおり、日中両国関係、あるいは日韓両国関係、日本とASEANの関係を、しっかりと前向きに建設的に築いていかなければなりません。北海道も、中国からのお客様が最近はだいぶ増えてきたと聞きますが、人の交流も含めて、国際的に相互依存の状況がこれからも進んでいきます。外交はそれをさらに後押しするものでなければなりません。もちろん個別に問題はありますから、乗り越えていかなければならないことは言うまでもありません。

 我々は東アジア共同体構想を掲げています。これは中長期的なビジョンです。東アジア共同体に加入する国はどことどこなのかとか、いろんな質問が飛んでいますが、あまり細かいことを決める必要はないと考えています。例えば、EUはもともと、戦後、石炭・鉄鋼共同体からスタートしました。その時はドイツとフランスの関係でした。当時、EUの通貨統合までの姿を想定した人は、ゼロではありませんが、ほとんどいなかったと思います。ですから、あまり先々のことをカチッと決めるのではなくて、できることをしっかりと積み上げていくということが非常に重要だと思います。すでに経済の面では、日中間、日韓間、日ASEAN間で相互依存が非常に進んでいます。その延長線上で、人の交流とか、日本と中国と韓国の大学で、相互に単位がとれるような仕組みを作ろうとか、そういうことも議論しています。それから、経済そのものではなくても、例えば、感染症、病気の協力体制をどうするかなど、さまざまなことが考えられるわけです。そういったことを、アジアでしっかりと深めていかなければならないと思います。21世紀はアジアの時代です。人口もウェイトが高まりますが、経済成長をしている国も多いので、世界の重心は今、アジアに向かっているというのは間違いないと思います。日本はそのうちの重要な国の1つです。アジア全体を平和で豊かにすることで、日本自身の平和と豊かさを確保していくということが、基本的なアジア外交の考え方です。

 もう1つ、アジア太平洋という意味では、豪州との関係も重要です。先般、豪州に行ってきました。国会開会中ですから、週末しか行けません。なかなかつらい旅ですが、3泊しましたが2泊は飛行機でした。金曜と日曜の夜は飛行機で、月曜の朝、成田に戻るという旅でした。豪州と日本は非常にいい関係にあります。核の不拡散・軍縮について、共同声明を出すなどいろんな成果がありました。しかし、他方、鯨の問題でだいぶ話題をさらってしまい、そちらばかり報道されるのは残念だったのですが、この問題は外交がいかに難しいかを示しています。鯨は、我々からすると、昔から食べてきたものです。私は三重県の出身ですが、伊勢湾では昔から鯨を捕って食べていました。だから、祭にも鯨を捕る「くじらぶね」というのがみこしの中に出てきます。

 ところが、オーストラリアの人から見ると、鯨は特別な存在だといいます。知能も人間に近く、これを捕って、解体して食べるのはとんでもないということになるわけです。とはいえ、オーストラリアも30年くらい前は油をとるためにずいぶん鯨を捕っていたと思いますが、今は違う。南平洋にも近いので、鯨が近しい存在になっています。捕鯨船がモリをドーンと撃って、鯨が血を流している、そういう場面ばかりを見たら、確かにかわいそうに、嫌になってきますよね。そういう中で、捕鯨について、日本の調査捕鯨はやめるべきだと、国際司法裁判所に訴えると、オーストラリアは主張しているわけです。我々はできるだけ話し合いでこの問題を解決したいと思っていますが、しかし、国際裁判でやるというなら、堂々を受けて立って、日本の主張をきちんとしていこうと思います。お互い文化が違えばいろんな違いが出てきますが、大事なことは、お互いの違いを認め合わないと、物事は回っていかないと思います。

 5.日露外交と北方領土問題

 さて、12月に、外務大臣として初めてロシアに行き、何人かの大臣にお目にかかりました。実は、北方領土の問題に関しては、日露の首脳間、つまり、鳩山総理とメドヴェージェフ大統領の首脳会談を今までにニューヨークとシンガポールで2回行っていますが、いずれも非常にいい雰囲気でした。私はニューヨークのほうしか出ていませんが、非常に前向きで、自分たちの代で北方領土の問題を解決していこうという意欲をお互い述べあっています。そういった首脳同士の方向性を受けて、ラブロフ外相と私の間で、北方領土の問題を話し合いました。

 現実は、なかなか厳しい議論、応酬になりました。原理原則になると、なかなかお互いゆずることはできないということになります。両国首脳がお互いに自分たちの代で解決したいと言っている訳ですし、私が申し上げたのは、鳩山首相とメドヴェージェフ大統領、あるいはプーチン首相という役者がそろっている時に、きちんと前進しなければ駄目だ、これを逃すとまたしばらく北方領土の問題はきっかけを失うと申し上げました。外務大臣同士もしっかりと、前進させる努力をしようと言いました。12月の会談はかなり厳しいものになりましたが、お互いどういう人間か認識しあったと思うので、次回の会談では前向きの議論ができることを期待したいと思っています。鳩山総理も言われていますが、政治と経済を「車の両輪」として前に動かしていこうと思っています。政治は北方領土の問題が中心になります。経済は、これから、ロシアは東に向けて開発をしていきたいという気持ちがあります。ロシアはヨーロッパの国であるとともに、アジアの国でもあるので、今までの西側、EUとの交流だけではなくて、太平洋国家としてロシアを位置づけたいというのがあります。ですから、鳩山総理の国会における所信表明でも、「ロシアを太平洋国家として位置づける」ということを書かせていただいた訳です。

 ロシアのいろんな資源も、シベリアでも東部、あるいはサハリンに、石炭やガス、石油がまだあり、開発を待っているということです。それから、東の沿岸部に、もっと働く場を作って、そこに人口を集積させたいという思いもあります。ロシアは、ウラジオストクの近くに自動車工場を作りました。新聞記事を見ていると、日産のゴーン氏に対しても、工場を作ってくれないかというふうに言われたようです。資源だけではなくて、沿岸部の開発、製造業やその他も含めて、日本の資金、日本の技術に期待しているということです。我々はそれに協力する用意があります。車は片方の輪だけでは動かないので、領土問題を中心とした政治と経済とを、両輪で進めていこうと提案させていただいています。先ほど言いましたように、鳩山総理、メドヴェージェフ大統領、プーチン首相と役者がそろっている間に、前に大きく一歩進めて行きたいと考えています。

 6.国民の理解と信頼に支えられた外交を

 来週のしかるべきタイミングで、私が就任した日に命令を出して、調査をしてきた、いわゆる4つの密約に対する報告書を公表することができると思います。これは、私が大臣に就任した日に次官に命令を発して、約2か月かけて外務省内で調査を行いました。対象は4つの密約です。そのうち2つは、50年前、今の改定された安保条約を締結した時の密約が2つ。そして、沖縄返還時の密約が2つ。この4つについて、密約があるのかないのか、事実関係がどうなっているのか調査するよう命令を発しました。

 2か月かけて外務省の中で徹底的に調査しました。外務省本省とアメリカにある大使館のファイルが全体で4,400。これを、日米外交を扱ってきた現職外交官など専門家に期限を付して集めて、4,400冊を徹底的に検証しました。その中で、密約関連が330点と特定できました。11月に密約があったかどうかについて、調査結果が出ました。その上で、今度は、専門家に検証委員会を作っていただき、外務省だけの見方で偏りがあるといけないので、専門家の目から見てどうなのか、つまり、1つの行為があってそれをどう見るか、どう判断するかは人によって変わり得るので、学者の先生方に検証作業をしてもらいました。

 最初は12月いっぱいくらいで結論が出るかと思いましたが、だんだん深みにはまり、先生方も非常に熱心にやっていただきました。資料は外務省の外に持ち出しできません。先生方には臨時の公務員として守秘義務をかけ、資料の閲覧は外務省の一室で見ていただくようにしました。関係者のヒアリングも20人近くから行って、それがほぼまとまってきたということで、来週にはしかるべきタイミングで表に出せると思っています。

 なぜこんなことをしたかというと、外交には一定の表に出せない約束ごとはつきものですが、それにしても50年も前の話を、歴代の総理や外務大臣は国会で聞かれると「そんなものはありません」と言い切ってきました。国民もそれは本当ではないのではないかと思っているでしょうし、アメリカではすでに公表されている資料もあるわけですから、そういう状況は好ましくないと思います。私は一定の時間が来れば、よほどのことがない限りオープンにすべきだと考えて、今回、徹底調査をしました。

 調査結果は、外務省のものと検証委員会のものと2つあります。それから、330ほどある関係資料を全部オープンにします。そうすることで、歴史の評価を経なければならないと私は思います。同時に、今まで外交文書の公開がかなり限定されていたので、これから外務省の中に専門の検討委員会を作って、30年経ったものは原則出すと、どうしても出せないものは、大臣、副大臣が判断をして本当に出せないかを決める、役所の官僚組織の中だけでこれは出せないと、ならないようにしたいと思っています。そういうことも含めて、1つの姿を来週にはお示しできると思います。私がそういうことに長々と時間を注いできたのも、やはり国民がしっかり理解し、信頼される外交でなければ強い外交にはならないと思うからです。どこか遠くでやっている外交とか、国民不在の外交ではなく、国民の皆さんにしっかり理解され、信頼される外交を進めていきたいと思っています。それが政権交代の結果であり、新しさであると思うからです。


II.質疑応答

(質問)沖縄・普天間基地移転問題

●基地問題について、岡田大臣は普天間の統合も1つの選択肢だとされていました。普天間基地の問題の基本的な所信を教えてください。

●昨日、アメリカのスタインバーグ国務副長官と会った時、普天間の問題では、5月末の期限で厳しいことを言われたのではないでしょうか。どのようなことを言われたのか聞かせてください。

●学生の立場から質問します。岡田大臣は「アメリカの軍隊は日本の平和に重要な役割を果たしている」と言われましたが、戦後かなりの時間がたつなかで、なぜ米軍が重要な役割を果たしているのか、よく理解できないので簡潔に教えてください。

●かつて民主党は「常時駐留なき安保」を主張していたと思います。今後2、3年ということは難しいでしょうが、10年、20年後にそういったビジョンはあり得るのでしょうか。

(大臣)

 基地統合の問題について、私は一時期、嘉手納の空軍基地と統合できないかも検討すべきと言っていました。今、沖縄には大きな基地が普天間基地と嘉手納基地と2つありますが、嘉手納と1つにできないかと言ったことがあります。今、国民新党はその主張だと理解しています。ただ、いろんな質問が外務省の記者会見でも出るが、具体的なことは言わないことにしています。というのは、官房長官を中心にまとめている時に、あまりそれぞれの閣僚が自分の意見を言ってしまうとまとまらなくなってしまうので、あらゆる可能性について検討しているということでお答えに替えさせていただきます。

 スタインバーグ国務副長官とは普天間問題について議論しましたが、中身はお話しできません。基本的にアメリカが言っていることは、5月末に日本は日米合意も含めて結論をきちんと出すと言っているので、それを待とうという基本的なスタンスです。そして、もう1つは、旧政権時代にできた日米合意案、つまり辺野古沿岸部にV字型滑走路を作るという案が最善だというスタンスはまったく変わっていないということです。しかし、それが最善だからといって、まったく聞く耳持たずということではなく、5月末までに出てくる日本政府の案がまとまるのを待とうということです。もちろん、5月末までに日米合意できなければ、かなり深刻な事態になるので、必ずまとめなければならないと、鳩山総理も私も同じ思いです。

 米軍の役割については、とてもいい質問だと思います。普段、平常時だとそんなに有り難みは分からないですよね。しかし、有事を想定した時に、日本の自衛隊だけで日本を守れるかというとかなり厳しいと思います。もちろん、どういう有事かにもよります。具体的な話はなかなかできませんが、今の自衛隊の能力には限界があります。アメリカが果たしている役割を、日本が単独で果たすとすれば、日本の防衛予算をかなり増やさなければならなくなります。戦争は絶対に起きないという考え方に立つなら別ですが、私はそういう風には思えません。最悪の事態に備えるというのは、政治家が果たさなければならない責任だと思うので、そういうことを考えると、アメリカなくして日本の平和は守れないという当然の事実を忘れてはならないと思います。それがないまま議論していると、方向性を失った議論になってしまうと思います。それから、日本のためだけでなく、アジア太平洋でも日米同盟があって、米軍が日本を中心に存在しているということに対して、地域の安定のために役に立っているという声がアジアの中に広くあります。そういう意味でも、在日米軍というのが、私は非常に重要であると思います。もちろん、どの程度必要かという議論などは、将来の状況で変わってくるだろうと思うので、あまり固定的に考える必要はありません。しかし、現時点で考えれば、海兵隊を含めて重要な役割を果たしていると思っています。そういう話を、もっと政治家が、外務大臣や防衛大臣が、直接国民の皆さんに話していかないといけないと思います。その前提がよく忘れられがちです。

 「常時駐留なき安保」ついてですが、民主党には3段階あります。最初の民主党、これは鳩山さんと菅さんが作った民主党です。その時、私は新進党という野党第1党にいました。民主党は与党から分かれて、第3党として存在していました。やがて、新進党が分裂して、今の民主党になったのが10年前です。さらに自由党と一緒になったという3段階の民主党があります。常時駐留なき安保は、その第一段階で議論されたものです。ただし、おそらく民主党の正式なものではなかったのではないかと思います。当時の鳩山さんはかなりそういう意見を述べられていた時期がありますが、我々が合流して2段階目の民主党になった時に、常時駐留なき安保という考え方は成り立たないだろうということになりました。私は政調会長代理や政調会長をやってきましたが、まず本当に必要な時だけ来てくれというのはあまりに身勝手で、片務的な安全保障は成り立たないだろうということになりました。ですから、今は、日本と日本周辺をアメリカが平和を守る責任があり、一方で、日本は基地を提供する責任がある、そこで相互性を確保しているので、いざという時だけ来て下さいという条約は成り立たないし、成り立ったとしても実効性にはかなり限界がある気がします。

(質問)北朝鮮関連

●北朝鮮の拉致問題は、日本人として看過できません。北朝鮮に対して、この問題を今後どのように対応されるのでしょうか。何年か前に小泉元総理が何人かの家族の方を日本に帰国させましたが、それからあまり進展がありません。

●小泉総理が北朝鮮に行って何人かが戻ってきました。そういう状況を今、作れないのでしょうか。北朝鮮はあれで解決したと思っていて、話が前に進んでいないのでしょうか。もし、影で話が進んでいたとしたら、山に例えるなら、10合目のうち何合目の話になっているのですか。アウトラインで構わないので、聞かせてください。

●前政権の話で申し訳ありませんが、日本にキム・ジョンイルさんの息子キム・ジョンナムさんが来た時、何もせず返したことがありました。これは重要な外交カードになったと思いますが、なぜそのまま返してしまったのですか。また、その時に何かしらの密約があったのでしょうか。もしわかることがあれば、話してください。

(大臣)

 小泉元総理の時代に電撃的な訪朝を果たし、一部の拉致された皆さんがお帰りになったということは、外交上の非常に大きな成果でした。ただ、その後、進展はありません。いろんな評価、議論ができると思いますが、その後進展がない、なんとかしなければいけないと思っています。そういう中で、今何をやっているかと言えば、今から1年半ほど前、一昨年夏、福田総理の末期の時に、一応、日朝間で拉致されたとされる人たちの再調査をやりましょうという合意ができました。北朝鮮は亡くなったとか、そもそも北朝鮮には最初からいないとか言ってきましたが、もう一回最初から調査をやり直すことになりました。しかし、その後、麻生政権に変わり、この話はそのまま動かなくなりました。鳩山政権になって、何とかそこを動かしたい。再調査をきちんとやって、事実関係をはっきりさせるべきだと思っていますが、具体的に動き出すには至っていません。我々は北朝鮮に対して、約束した再調査をきちんとやるようにと、それが物事のスタートであると言っているわけです。他方で、国連安保理の決議に基づいて制裁はしっかりと行っています。それから拉致の問題だけではなくて、核の問題、ミサイルの問題も含めて、早く六者協議に無条件で戻ってくるべきであると主張しています。私は制裁の効果はそれなりに出ていると思いますし、今、アメリカ、日本、韓国は、北朝鮮にどういった政策をとるべきか、六者協議に戻るまで個別に交渉しないという方向性で完全に一致できているのは非常に大きなことです。これまで3か国の言っていることが違うという時代がありましたが、今は完全に一致しています。常に緊密に連携を取りながら進めています。3つの国が1つになっていますから、中国に対してもしっかりとプレッシャーをかけてくれとも言えるわけです。北朝鮮に早く六者協議の場に戻るよう説得し、拉致の問題、ミサイルの問題を含めてきちんと解決する、それがなければ国交正常化などということはあり得ないと、明確に申し上げているところです。

 長男のキム・ジョンナムさんの件は、我々の政権ではなかったわけです。田中真紀子外相の時だったと思いますが、この時の判断について、私はわかりません。ただ、外務大臣だけで判断したことではなく、当然総理にもはかって判断したのだろうと常識的には考えます。どういう判断で、ある意味では日本の法を犯して入国した者を返したのかについては、私は現在それを知らないし、残念ながらわからないと申し上げておきます。

(質問)EU関連

 EUに対する日本のスタンスが今ひとつわからないので、大臣の意見を聞かせてください。ドイツ、フランスはいいとしても、いわゆるソブリンリスクでもめているギリシャを含めて、日本のスタンスについて教えてください。

(大臣)

 EUも非常に大事な地域です。価値観という意味では、EUと日本はかなり近いものがあると考えています。国際協調ということも含めて、EUと日本はかなり共通の価値観に立っています。例えば、地球温暖化の問題では歩調を合わせて、なんとか世界的な合意をつくるために協調しました。そういう中で、ギリシャの話について、日本がどうこうということはあまりなく、EUの中で解決すべき問題だと思います。この前、ドイツの外相が日本にお見えになり、意気投合しました。核の問題や地球温暖化は共通の課題がありますし、日本にとっては将来的にEU的な行き方というのは非常に参考になるのではないかと思いますので、大事にしたいと思います。その割には、EUに行ってないじゃないかと言われればその通りですけれども、EUは「週末外交」ではなかなか難しいですが、国会が終わればぜひEUにも行きたいと思います。

(質問)政治資金問題

●直接外交とは関係ありませんが、国民の民主党に対する最大の関心は、鳩山総理と小沢幹事長の政治資金問題です。新聞報道でも、この問題に関わって、民主党が徐々に支持率を下げていると報じられています。両者がこの問題について、国民に十分説明責任を果たしていると考えていますか。国民に対する信頼回復のためにどう説明責任を果たそうとしているのでしょうか。

●マスコミでは、連日のように民主党への攻撃がなされています。実際、小沢幹事長、民主党が進めているいる政権交代後の日本を本物の民主主義にしようという方向で進んでいるにもかかわらず、マスコミが変に報道しています。これをこのまま放置して、せっかく芽生えた民主政権、国民のための政治を殺すようなことがあったら大変なことになります。これをぜひとも改善できるような方策はないものでしょうか。

●北海道5区、小林議員のことについて、岡田大臣のわかる範囲で教えてください。

(大臣)

 最初にも申し上げましたが、今の状況は大変残念だと思います。我々は新しい政治を目指してやっていますが、予算委員会を開いても、政治とカネの問題がかなりの部分を占めてしまい、残念なことだと思います。ただ、先ほども言いましたが、理想は一挙には実現しないので、徐々に積み上げていかないといけません。鳩山総理は国会の場で、かなり詳しく説明しています。私は鳩山政権の閣僚として、総理をしっかり支える立場ですので、鳩山さんの件について、私が評論家のようなことは言わないほうがいいと思います。考えてみれば、先の選挙は鳩山代表、小沢幹事長で戦った選挙です。そして、そういう中で、鳩山総理の下で外務大臣をやっているので、あまり私自身の意見は言わないほうがいいと自制をしているところです。自制をしているというと、ほかに何か言いたいことがあるのではないかと言われそうですが、そういうことではなくて、今は外務大臣の仕事にめいっぱいエネルギーを注いでいるということです。小沢さんの問題については、鳩山さんが幹事長の任命権者です。小沢さんに幹事長としてしっかりやってくれと言われています。私は当然、それが尊重されるべきだと思っています。

 小林さんの問題は残念です。小林さんのところには、私も過去に何回も選挙応援にも入り、非常に頑張って当選を果たされたので、これから頑張っていただきたいと思っていました。今、これだけの事件が起きましたので、そのことについて、事実は事実として受け止めなければならないと思います。小林さんがどうするかは、彼女自身が考えることなので、評論家のようなことを言うのは避けたいと思います。こういったことが次々に起きるのは民主党に期待してくださった方々に申し訳ないし、責任を共有しながら、これを仕事で返していくという思いで頑張っていることをご理解いただきたいと思います。

(質問)日韓関係

●先日、バンクーバーオリンピックがあり、浅田選手、キム・ヨナ選手が対決しました。韓国の大統領も、今年は日韓併合100年と言われましたが、せっかく鳩山総理は就任後、最初に韓国訪問してから、日韓関係に何もしていないように感じます。この点についてどうですか。

●戦後補償について質問します。戦争で、韓国、北朝鮮から日本に強制連行された人で遺骨がそのままになっている人も結構いると思います。戦後補償で、いまだに裁判で補償を求められたりすることもあります。このことについて、大臣はどのような考えをお持ちですか。

●竹島の問題について。1905年、国際法上、竹島は日本の領土となっていますが、今現在、韓国人が上陸し、独島という名前になっています。国際司法裁判所に調停という形もあると思いますが、過去の政治家、マスコミはほとんど取り上げていないように思います。この問題についてはどうですか。

●竹島について、今年2月12日に閣議決定で日米安保条約の防衛義務が生じないという答弁書を決定されたと記憶しています。これだと、竹島は日本の政治の影響下にないということになります。もし、武力で制圧された場合、アメリカには守ってもらえないことになります。ほかにも、対馬やほかの領土関係の問題も出てくるかと思います。今後、このような問題があった時にできる次善の策はないのでしょうか。

(大臣)

 今年は日韓併合100年で、非常にセンシティブな年です。先般、私が韓国に行き、外相会談を行いました。大統領とも長時間議論する時間をいただきましたが、この一年間、しっかりと日韓関係を深めていかなければならないと思っています。鳩山総理は去年韓国に行かれましたが、今年も首脳間の往来は予定されています。シャトル外交で年に1回行き来することも確認されています。ただ、首脳外交だけでなく、外相レベル、実務レベルでもやっています。日韓関係は動いています。何もしていないわけではありません。機会を見て、両首脳間で、前向きな話し合いが行われると期待しています。

 戦後のさまざまないわゆる「強制連行」の問題や、「補償」の問題があるのは事実です。ただ、国ベースで言うと、日韓の国交を正常化したときに、(財産や請求権に関する)問題は解決したということになっています。韓国人の方々が、「強制連行」など日本の会社を相手取って裁判を起こしたりということは現にありますが、政府間では決着はついています。

 竹島の問題は、竹島が日本の領土であることは、日本の変わらない主張です。しかし、残念ながら韓国が事実上支配しています。そういう状況で、日米安保条約に基づいて、アメリカに何か期待できるかというと、そういったケースについては、簡単にアメリカに何かしてもらうということにはなりません。したがって、質問主意書に政府としてそういうお答えをしました。そして、あくまでも話合いで竹島の問題も北方領土の問題も、解決を目指していかなければならないと思います。国際司法裁判所で訴えるのも1つのやり方ですし、かつて日本がそういう主張をしたこともあるはずですが、相手がそれに応じないと成り立たないということもあり、そういうやり方では前に進んでいかないのも事実です。粘り強くやるしかないと思います。

(質問)日中外交

●日中外交について質問します。たしかに日米外交の歴史は長く、密度も深いと思います。いろいろと前進もあり、矛盾もあります。しかし、日中との外交は、100年前から日本は大きな失敗をしています。島国・日本対、大国との外交は大変だろうと考えますが、中国は今、沿岸部を中心にものすごいスピードで経済発展しています。一方で、内陸部の格差問題、そのほか政治体制と経済成長との矛盾など難しい矛盾を考えながら、日米、日中と言っています。大臣の日中外交に対する考え方をお聞かせください。

●東シナ海のガス田の問題、毒ギョウザの問題がその後全然進んでいないように思いますが、現状はどうなっているのですか。

(大臣)

 日中外交が非常に重要であることは論を待ちません。少なくとも経済的には、日本にとっても、中国にとっても、お互いに重要な輸出先・輸入先であり、中国市場は日本にも重要な市場です。したがって、お互いにお互いが必要としているという認識にたって、日中外交は進めていくべきだと思います。経済だけでなく、多層的な交流が進んで行くことが重要です。日韓関係を考えると、いろいろな問題はあるものの、多少のことではゆるがない関係になっていると思います。それは、経済だけでなく、国民各層の交流が進んで強く安定したものになってきました。日中もその方向を目指して、より交流を深めていかなければならないと思います。大きな国で、日本のすぐ近くにあるわけですから、中国といかにうまくやっていくかということは、日本にとっても非常に重要なことです。

 東シナ海とギョウザの話がありました。私はこの半年の間に、中国の外相と4回外相会談を行いました。1回目の主たる話題がギョウザ、この前は東シナ海のガス田についてで、かなり率直に話しをしました。ギョウザについては、私が言っているのは、日本の問題だけでなく、中国にとっても大事な問題であるということです。中国に対する日本人の好感度は、男女別にみると女性が厳しくなっていますが、これはギョウザが効いているのではないかと思います。やはり、日々口にするものだから、食の安全を確保することは、中国側にも大事な問題で、しっかり解決する必要があると思います。中国は調べているが証拠が見出せない、犯人特定には至っていないと言っています。日本としては、自らの問題として捜査は続けてもらいたいと話しています。併せて、日中間で食の安全の信頼感を高める話し合いを行っています。両国政府でそう遠くない将来、一定の合意ができると思っています。東シナ海のガス田は、前回の外相会談ではかなり意見が食い違いました。ただ、日中間で合意があります。日本で言う白樺、中国側で言う春暁は、中国が開発行為をやってきた、そこに日本が出資をすると言う形で合意があります。北部の新たなところでは、共同で開発をしていこうという合意があります。にもかかわらず、前に動いていないので、これを前に進めてもらいたいとかなり率直に申し上げています。

(質問)北方領域における銃撃事件

●先月、北方四島周辺海域で、銃撃事件がありました。地元では、安全操業を継続する声もあります。その辺を含めて、大臣の所見を伺いたいと思います。

●漁業協定はお互いの信頼で成り立っている。これに違反しても罰則はないと聞いています。だが、過去に北海道として、向こうのヤケドした人を人道的に完全に治してから帰したというような、人道的な部分が非常に大事だと思います。今回、北海道にも非はありましたが、あえて銃撃するようなことは避けなければなりません。過去に死亡した人もいます。漂流して向こうに入る場合もあるので、銃撃によって死亡者を出さないよう、外交交渉を確立してほしいと思います。

(大臣)

銃撃になったのは許し難いことだと思います。人の命がかかったことなので、我々外務省もただちに抗議をしました。ただ、お互い作ったルールは守るということも大事です。一定の水域で操業することが決まっていたにもかかわらず、実際そうではなかったということもありました。罰金刑も課せられた訳です。やはりルールはお互い守りあうことが大事です。ルールを作っても守らなければ作った意味がないので、きちんとルールを守るということをぜひやっていただきたい。外務省もすぐに抗議し、ルールを守っていたのにと主張しましたが、ルールを守っていなかったので、撤回せざるをえなくなりました。ルールを決めた以上はその範囲でやっていくのは物事の前提ではないかと思います。

 時間が来ました。今日は本当にありがとうございました。さまざまないいご意見をいただきまして、ありがとうございました。これからもぜひ外交に関心を持ち続け、率直な意見を我々にいただければと思います。国民の理解と信頼がなければ強い外交はできません。今後ともよろしくお願いします。本日はありがとうございました。