データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] イラク復興信託基金(IRFFI)ドナー委員会第3回拡大会合(東京会合)冒頭の町村外務大臣スピーチ

[場所] 東京
[年月日] 2004年10月13日
[出典] 外務省
[備考] 09:05〜09:15
[全文]

ご列席の皆様、

(冒頭:東京会合の位置付け)

 イラク復興信託基金(IRFFI)ドナー委員会の第3回拡大会合を主催する日本を代表して、皆様に心よりの歓迎の意を表します。

 東京会合へようこそ!

 マドリード会議から1年が経過し、来年の選挙を控えてイラクの政治プロセスは重要な局面を迎えています。こうした中で開催される本会合では、これまでのドナー委員会会合とは異なり、初めて暫定イラク政府関係者をお迎えして、イラク側から復興のための自らのビジョンと戦略を提示して頂くことになります。このビジョンと戦略が今次会合での議論のベースとなると承知しています。バルハム・サーレハ副首相を団長とするイラク暫定政府からの代表団を心から歓迎致したいと思います。

 本会合では、イラク復興信託基金を通じたマルチ・チャネルでの支援とともにドナー国による直接支援を含むイラク復興支援の全体像が示され、今後の支援のあり方が討議されることと思います。経済復興は政治的安定なくしてはありえず、両者は相互に補完しながら進められる必要があります。こうした観点から、本会合では、イラクの政治プロセスについても議論が行われることを希望します。

 こうした重要な位置付けを有する本会合の成功を強く希望するとともに、そのための準備を行ってきた関係者一同に感謝致します。また、過去2回の会合を主催したアラブ首長国連邦とカタルにも謝意を表明致します。

(日本のイラク政策)

 イラクは、天然資源と人的資源に富んだ長い歴史を有する偉大な国家であります。そのイラクが平和的な民主国家として再建されることは、中東地域の安定にとって極めて重要です。その再建を成功させるには、政治プロセスが進展するとともに、人々が安全を享受して、復興の果実を感じ取ることが必要です。このような観点から、日本は、イラク復興に向け最大限の努力を継続し、国際協調の強化のための働きかけを行ってきました。

(日本のイラク復興支援の概要)

 日本は、1年前にマドリードで、「当面の支援」である15億ドルの無償資金を含む最大50億ドルの支援を表明しました。12日、クート、バグダッド、アマーラの3病院に対する支援及び通信分野の支援、総額約144百万ドルの無償資金協力を決定しました。当面の支援については、既に実際に現地で動いています。また、日本は、自衛隊の派遣による人道復興支援とODAを通じた支援を「車の両輪」として、イラク復興を支援しています。

(日本のイラク復興支援の今後)

 日本は、今後とも、こうした努力を継続していきます。

 イラクの政治プロセスにとっては、来年1月の選挙が死活的に重要であります。日本は、選挙が予定通り実施され、成功を収めることに貢献するため、信託基金への拠出金から4,000万ドルの支援を行います。同時にこの機会に、この選挙の円滑な実施のため多くの国々が支援を行うことを呼びかけたいと思います。

 また、経済・社会分野の復興のため、円借款による支援を始動すべく準備を進めているほか、研修事業を拡大していく方針です。日本は、今後とも、こうした取組の中で、イラク国内のマイノリティや社会的弱者に配慮していきます。

(イラク復興支援の前提となるイラク側のオーナーシップ・自助努力)

 日本はイラクの自立を支援したいと考えています。イラク再建はイラク人によってイラク人のために行われるものであり、特に主権移譲後のイラク暫定政府による、政治プロセス進展への強固な決意とその実施、治安改善に向けた最大限の努力、復興に向けた主体的取組がなされることを強く期待しています。国際社会が担っている役割は、イラク側によるこうした自助努力をそれぞれの方面で支援することであると考えています。

(イラク復興に向けた一層の国際協調)

 国際社会としてイラク復興を支援する上で、国連と世銀が管理するIRFFIへの拠出は、国際協調体制の強化を図る上で最も効果的な方途の一つと考えます。治安等の厳しい制約の中にあって、これまで努力をしてきた国連・世銀関係者に敬意と謝意を表明致します。こうした努力を更に進めるため、マドリード会議で支援の約束を行った国がその約束を可能な限り早く実施することと、新規ドナーによる拠出を期待致します。また、各国による直接支援が着実に実施されることを期待しております。

 重要なことは、イラク国民が困難な状況の中にあってなお、国際社会には自分たちを支援する友人がいるのだということを理解し感じ取ることであり、更にイラク国民が自らもまた国際社会の一員として協調し、協力して生きていこうと決意することです。

ご列席の皆様、

(日本の戦後復興の経験)

 第二次世界大戦後、日本は諸外国からの支援を有効に受容しつつ、国家再建に奮闘しました。日本の戦後復興は、1、2年で達成されたものではなく、自らの復興計画と日本国民の断固とした辛抱強い努力があってこそ、成し遂げられたのです。日本はこうした戦後復興を体験した国としてイラク国民による戦後復興を支援しています。

(結び:東京会合への期待)

ご列席の皆様、

 イラクは長く多様性に富み、柔軟で包容力のある市民社会を培ってこられました。このような素地を大切にしながら、国家再建に向けてイラク国民が一致団結し、国際社会の協調が強化されれば、イラクの平和的な民主国家としての再建が可能になると確信しています。その実現は、そのために尽力して志半ばで犠牲になった余りにも多くの方々の遺志を継ぐことでもあります。東京会合がそのための契機となり、イラク国民、中東諸国、国際社会、そして、日本国民に対して前向きなメッセージを送れることを期待しています。

ご静聴ありがとうございました。