データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] WSSDサイド・イベント「ネリカ米」パネルディスカッションにおける川口外務大臣スピーチ

[場所] ヨハネスブルグ(日本パヴィリオン)
[年月日] 2002年8月31日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.冒頭

 本日は、「ネリカ米サイド・イベント」に日本政府を代表し出席する機会を得たことを光栄に感じます。

 また、本イベントの共催者であるディアブレUNDP副総裁、ヌワンゼWARDA所長、そしてCGIAR議長としてご協力を頂いているジョンソン世銀副総裁、また、ネリカ米の研究開発の基礎を築いたジョーンズ博士に感謝の意を表します。

2.日本政府の取組み

 日本政府は、アフリカ問題の解決なくして21世紀の世界の安定と繁栄はないと考えており、アフリカの問題の解決は、国際社会全体にとって重要な課題であると考えております。

 日本政府は、国際社会において、アフリカの自主性や自助努力(オーナーシップ)とこれを支える国際社会のパートナーシップの重要性を訴え、アフリカへの協力に積極的に取り組んで参りました。日本政府は、1993年に「アフリカ開発会議(TICAD)」を開催し、いち早くアフリカの開発に取り組みました。

 また、アフリカにおける食糧事情改善の重要性を認識し、南部アフリカにおける食糧危機に対して約3,000万ドルの食糧支援を行うこととしています。

 今回の訪問に先立ち、私は往路エティオピアにおいて、アフリカに対する日本政府の考えを語りかけて参りましたが、私のアフリカ訪問が日本政府との協力の更なる飛躍の一助になることを期待しております。

3.ネリカ米普及への支援

 日本政府は、アジアにおける開発経験をアフリカとの協力に活かすことを通じて、アフリカ諸国の成長を促し、飢餓や貧困の削減、世界の食料安全保障に貢献していくことこそ、日本政府独自の貢献を行う分野であると考えています。その例として、アジア稲とアフリカ稲の長所を有したネリカ米の普及に可能性を見出しています。ネリカ米の可能性については、これから専門家より説明があると思いますが、日本としても、この普及がアフリカ地域の食料事情の改善策の一つに寄与すると期待し、効果的な普及策の検討に積極的に参画して参りたいと考えています。また、ネリカ米の研究・開発に貢献しているWARDAに対し、資金面・人的両面からこれまで以上の支援を強化していきたいと考えています。

4.結び

 日本政府ODAを巡る情勢は厳しいものがありますが、アフリカが抱える課題の解決に貢献していく考えです。また、私は来年後半に開催予定のTICADIIIまでの一年余りを「対アフリカ協力飛躍の年」と位置づけ、対アフリカ協力の更なる強化に向けて努力していく考えであり、ネリカ米へを含め、引き続き支援を行っていきたいと考えています。本日、このイベント会場には、ネリカ米に係わる多くの関係者に参加頂いています。席上の関係者との連携を図り、アフリカ地域の食糧事情の改善が図られるよう努めていきたいと考えています。

 なお、8月に東京で開催された東アジア開発イニシアティブ(IDEA)閣僚会合は、アジアの開発経験を他の地域と共有するために取り組みましたが、明日午前11時より、ここ日本パヴィリオンにおいて、IDEA閣僚会合の成果発表をはじめ東アジア型開発アプローチに関するセミナーを開催しますので、本日と同様、多くの方のご参加を頂ければ幸いです。

 ご静聴有り難うございました。