データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米欧委員会東京総会出席者歓迎午餐会(ブッフェ)における鳩山外務大臣スピーチ

[場所] 東京
[年月日] 1977年1月11日
[出典] 外交青書21号,47−48頁.
[備考] 
[全文]

 本日この午餐会に,日米欧委員会東京総会御参加各位の御来駕を得ましたことは,私の大きな喜びであります。特に,欧州及び北米から遠路はるばる来日された各位には,心からの歓迎の意を表する次第であります。

 既に各位は,2日半にわたり,今日我々が直面している主要な問題について深く掘り下げた討議を持たれたことと存じます。

 日米欧3地域とその相互関係が国際社会において如何に重要な地位を占めているかは,今更申すまでもありません。3者の間に親密かつ確固たる協力関係が確立されてこそ,当面の最大共通課題である世界経済の回復も,主要な南北問題の解決も,また,安定的な東西関係の確保も可能となるのであります。3者の協調関係が一層促進されることは,単に3者共通の利益であるのみならず,国際社会全般の福祉と発展にとり不可欠であると信ずるものであります。かかる意味において,日米欧各国の責務は重大であります。

 アジア・太平洋地域に位置するわが国にとつて,この地域の平和と安定の確保が,基本的に最も重要な外交政策目標であることは申すまでもありません。

 この関連で特に次の諸点を太平洋彼岸の北米からのお客様は勿論の事,大西洋の彼岸のヨーロッパからのお客様に対しても御理解頂きたいと思います。第1は,わが国が,他国に脅威を与えるような軍事大国への道を排し,所謂平和外交を展開していることが,今やこの地域における国際情勢の恒常的要素となつており,かつ,わが国が,この地域の平和と安定に不可欠の要素となつているという点であります。勿論,このようなわが国の姿勢は日米安保体制を含む米国との緊密な協力関係を抜きにしては考えられません。わが国を含むアジア・太平洋地域の平和と安定の確保にとり,米国及び日米関係の有する重要性もここにあるのであります。

 また,この地域には,依然流動的様相が根強く残存しており,従つて事態の急激な変化は出来る限り回避する必要もあります。更に,この地域の開発途上諸国とわが国とは,わが国の経済が悪化すれば,これら諸国は,おそらくわが国以上に大きな打撃を蒙るであろうという相関関係が存在することについても十分留意さるべきでありましよう。また,わが国が,依然緊張をはらむ朝鮮半島に隣接し,かつ,2大社会主義国である中国及びソ連と近接しており,同じ先進民主主義諸国は,太平洋及び大西洋の彼岸にあることも,わが国の対外関係を欧州の場合以上に複雑にしている点であります。

 日米欧委員会は,発足以来3年有余の間,日米欧関係の強化に積極的に貢献し,関係各国政府に建設的かつ現実的な提言を行つてこられました。私は,この実績に対し,心からの敬意を払いますとともに,同委員会が,3者間の相互理解と相互協力の促進に今後とも重要な役割を担い続けられるであろうことを確信し,今回の東京総会及び将来の御活動の御成功を祈つて御挨拶にかえさせて頂きます。

 有難うございました。