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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第96代 第2次安倍晋三内閣(平成24.12.26〜平成26.12.24)
[国会回次] 第186回(常会)
[演説者] 甘利明内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)
[演説種別] 経済演説
[衆議院演説年月日] 2014/01/24
[参議院演説年月日] 2014/01/24
[全文]

 経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、その所信を申し述べます。

 長引くデフレからの早期脱却と経済再生を図るため、安倍内閣では、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢を一体として強力に推進してきました。

 その効果もあって、実質GDPが四四半期連続でプラス成長となり、有効求人倍率が約六年ぶりに一倍を回復するなど、日本経済は力強さを取り戻しつつあります。政権発足時と比べると、中小企業を含めて業況は幅広く改善をし、全ての地域で景況が改善をしています。

 物価動向は、もはやデフレ状況ではありません。デフレ脱却に向けて着実に前進をしております。

 このように、アベノミクスの開始から一年たち、日本経済は閉塞を脱し、明るさが広がっています。これをさらに広げ、経済の好循環を実現するのが、二年目の課題であります。

 本日閣議決定をした政府経済見通しでは、平成二十六年度の日本経済について、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減には留意が必要でありますが、各施策の推進等により、年度を通して見れば、前年度に引き続き、堅調な内需に支えられた景気回復が見込まれ、経済の好循環が徐々に実現していくと考えられます。経済成長率は、実質で一・四%程度、名目で三・三%程度と見込んでおります。

 本年四月に実施をする消費税率引き上げに際しては、駆け込み需要とその反動減を緩和し、景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の成長力底上げと好循環実現を図りつつ、持続的な経済成長につなげていくため、昨年十二月に閣議決定をした好循環実現のための経済対策を含め、経済政策パッケージを着実に実行していく必要があります。

 本経済対策は、競争力強化策や、女性・若者・高齢者・障害者向け施策、復興、防災・安全対策の加速等を内容とし、その規模は、国費五・五兆円程度、事業規模十八・六兆円程度となっております。

 本経済対策の効果が的確に発現をし、消費税率引き上げに伴う反動減に適切に対応できるよう、迅速に対策の具体化を図るとともに、各施策の進捗状況などを調査し、適切に公表をしてまいります。

 企業収益の拡大が速やかに賃金上昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益の拡大に結びつくという経済の好循環を実現するため、所得拡大促進税制の拡充や、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止といった思い切った税制措置を決定するとともに、賃上げする中小企業、小規模事業者への補助金の優先配分等の施策を講じてまいります。

 政労使会議において、好循環実現に向けて経済界、労働界、そして政府が行うべき取り組みを共通認識として取りまとめたところであり、その環境整備に引き続き全力で取り組み、成果をしっかりと確認してまいります。

 日本銀行は、昨年四月、二%の物価安定目標を、二年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に実現するため、量的・質的金融緩和を導入し、現在、これを推進しております。政府としては、日本銀行がこの目標をできるだけ早期に実現することを期待いたします。

 こうしたアベノミクスの効果が地域の隅々まで及ぶようにするため、オリンピック開催決定を契機にした地域活性化、地域産業の集積促進といった課題等に関係省庁が連携して重点的に取り組む必要があります。あわせて、地域の課題解決や活性化の重要な担い手であるNPOやソーシャルビジネス等の育成などを通じて、活力あふれる共助社会づくりを進めてまいります。

 安倍政権の成長戦略は進化する成長戦略であり、策定がゴールではなく、スタートであります。日本経済にあらわれた回復の動きを持続的な経済成長につなげていくため、引き続き、成長戦略を強力に推進してまいります。

 まずは、昨年策定をした日本再興戦略の各施策の実行に全力を挙げます。

 さきの臨時国会では、成長戦略実行国会として、産業競争力強化法、国家戦略特区法等の画期的な法律が成立をいたしました。三月に国家戦略特区の具体的な地域を決定するなど、これらの法律をしっかり実行に移してまいります。また、産業競争力の強化に関する実行計画を閣議決定し、日本再興戦略の各施策の確実な実行に取り組んでまいります。

 また、年央の成長戦略改訂を目指し、先般、成長戦略進化のための今後の検討方針を産業競争力会議において取りまとめたところであります。本方針を踏まえ、雇用・人材、農業、医療・介護といった分野のさらなる構造改革に取り組み、日本に眠る潜在力を最大限引き出します。

 特に、日本が、世界を変えるようなイノベーションを生み出す国となるよう、科学技術の司令塔機能を確立し、研究成果を産業につなげていくための取り組みを進めます。

 女性の活躍は、成長戦略の大きな柱であります。我が国最大の潜在力である女性の力を最大限引き出すため、施策を総動員してまいります。

 さらに、民間投資の喚起による成長力強化を実現するため、PPP・PFIの抜本改革に向けたアクションプランの着実な推進とともに、民間資金等活用事業推進機構の適切な運営の確保及び密接な連携を図ってまいります。

 TPPは、アジア太平洋地域において、普遍的価値を共有する国々と二十一世紀型の新たな経済統合ルールを構築する野心的な試みであり、この地域の成長の起爆剤になると同時に、人々の暮らしを豊かにするものであります。

 昨年十二月にシンガポールで開催をされた閣僚会合では、妥結には至りませんでしたが、残された主要課題の大部分について、交渉妥結へ向け実質的な進展がありました。

 我が国としては、各国とともに、交渉の早期妥結へ向けて努力をし、国益をしっかりと最終的な成果に反映すべく、引き続き全力を挙げて交渉に取り組んでまいります。

 これらの施策とあわせて、経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与するという好循環を目指し、経済再生と財政健全化の双方の実現に取り組んでまいります。

 来年度予算案につきましては、経済成長に伴う税収の自然増や歳出の効率化により、公債発行額を前年度より減額し、国の一般会計の基礎的財政収支の赤字については、中期財政計画において掲げた目標を上回る改善額を実現しております。

 こうした歳出歳入両面での取り組みの継続により、国、地方を合わせた基礎的財政収支について、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比を半減し、二〇二〇年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指すとの財政健全化目標の実現を目指します。

 今後の半世紀、世界経済や人口など、日本を取り巻く環境には大きな変化が予想されます。こうした中で、世界経済に占める日本経済の規模が縮小していくという見方もあります。しかしながら、こうした姿を政策努力や人々の意志によって大きく変える、すなわち、未来を選択することが求められています。

 アベノミクスによって生じた景気回復の動きを確実なものとし、我が国の中長期的発展につなげていくためには、人口減少など今後の構造変化を見据えつつ、二〇二〇年ころまでに重点的かつ分野横断的に取り組むべき課題を抽出し、その課題克服に向け包括的に取り組みを進めていくことが重要です。

 このため、「選択する未来」委員会を設置し、具体的な取り組みを二〇二〇年に向けて進めていくための議論を行ってまいります。

 今後、本委員会の議論を踏まえ、日本経済が抱える中長期的課題を明らかにしつつ、年央の骨太方針取りまとめに向け、経済財政諮問会議において、引き続き、デフレ脱却・経済再生と財政健全化の好循環実現のための道筋について検討を進めてまいります。

 少子高齢化が進展する中で、社会保障の充実、安定化と財政健全化を同時に達成する観点から、社会保障・税一体改革に取り組む必要があります。

 昨年、社会保障制度改革国民会議の議論等を踏まえ、社会保障制度改革の全体像と進め方を示した法律が成立をいたしました。この法律に基づき、今後、必要な法案を国会に提出するとともに、関係閣僚から成る改革推進本部や、有識者から成る改革推進会議を設置し、改革を着実に推進してまいります。

 第二次安倍内閣が発足をして一年がたちました。この間、日本経済は力強さを取り戻しつつありますが、先般のダボス会議において示されたアベノミクスへの大きな期待に応えるためには、より一層取り組みを強化する必要性を実感いたしました。

 昨年十二月、私は、早期の舌がんで入院をし、多くの皆様に御迷惑をおかけいたしました。幸い、短期間で公務に復帰をすることができました。

 盲腸の手術すらしたことのない私にとって極めてつらい経験でありましたが、同時に、多くの人に支えられていることを痛感いたしました。立ちどまって感謝をする機会が与えられたのだと思います。今後私がなすべきことは、さらなる努力、精進を通じて、今までに倍する貢献を国家国民のためになすことであると決意をいたしました。

 今後とも、安倍総理のリーダーシップのもと、好循環実現国会の審議を通じて迅速かつ着実に施策を実行し、女性や若者を初め、頑張る人たちの雇用を拡大し、経済成長の成果を国民一人一人が実感できるよう、全力を尽くしてまいります。

 国民の皆様と議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)