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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第1回東アジア首脳会議環境大臣会合開催閣僚声明

[場所] ハノイ
[年月日] 2008年10月9日
[出典] 環境省仮訳
[備考] 
[全文]

1. 東アジア首脳会議環境大臣会合の初会合が、2008年10月9日にベトナム、ハノイにて開催された。会合にはASEAN諸国の10カ国、すなわちブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、インドネシア共和国、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー連邦、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国、ベトナム社会主義共和国に加え、オーストラリア連邦、中華人民共和国、インド、日本、大韓民国、ニュージーランドの各国環境大臣またはその代理が出席した。またASEAN事務局から事務次長が出席した。

2. ホアン・トゥルン・ハイ ベトナム副総理が、グエン・タン・ズン ベトナム総理の代理として開会の挨拶を行った。同総理は、2007年11月にシンガポールにて開催された第3回東アジア首脳会議の際に、第1回東アジア首脳会議環境大臣会合の開催を提案し、各国首脳に支持されている。同副総理は、人類は気候変動と環境劣化の深刻な危機に直面していると強調した。また、同副総理は、東アジア首脳会議諸国の首脳らがそれらに効果的に取り組むための様々な地域の努力に対する支援を表明したこと、及び各国が、異なる自然・経済・社会状況の背景においても、持続可能な発展をするという共通の目標を持つことに留意した。彼は、出席者に、共通の優先事項に集中し、共に成功裏に共通の目標に到達すべく協力していくことを促した。

3. 大臣会合はファン・フォイ・グエン ベトナム自然資源環境大臣と日本の竹本和彦地球環境審議官の共同議長で行われた。

4. 各国閣僚は、多岐にわたる環境に関する様々な問題、特に2007年11月の第3回東アジア首脳会議にて採択された「気候変動、エネルギー及び環境に関するシンガポール宣言」に述べられた行動について、意見交換を行うタイムリーな機会として第1回東アジア首脳会議環境大臣会合を開催することの重要性を認識した。各国閣僚はまた、第1回東アジア首脳会議環境大臣会合は、i)ASEANが中心となり、他のEAS参加国と協働して、EAS各国首脳の環境協力に関するビジョンを具体化し、ii)これらの具体化のアイディアを域内協力の努力及び行動で実現していく方法を議論する、ための重要な第一歩であることを強調した。本会合のメインテーマは、「環境的に持続可能な都市の実現」であった。

5. 各国閣僚は、環境問題に関する様々な分野の課題(例えば、人材育成、環境教育、気候変動、生物多様性、自然災害・危機、沿岸・海洋生態系、飲料水と衛生管理、持続可能な森林管理・都市化問題等が挙げられる)に対して、それぞれの能力に応じて行動するうえで、EASの役割が重要であることを強調した。各国閣僚は、共同行動を遂行するに当たり、例えばUNFCCC、京都議定書や生物多様性条約といった既存の国際的枠組と調和して行われるべきであることで一致した。

6. 各国閣僚は、シンガポール宣言の履行の際に、優先順位をつけた段階的アプローチ(phased and prioritized approach)を支持し、環境保護のための継続的行動の必要性を承認した。ここにおいて、各国閣僚は下記を共通認識とした:

i) 急速な都市化に伴う課題に対応し、気候変動、エネルギー及び環境の問題に対処する「環境的に持続可能な都市(environmentally sustainable cities)」を、EAS環境協力の最初のステップとして、第1の優先分野とすべき

ii) 今後も対話を継続し、他の優先分野の選定を行い、これらの優先分野のフォローアップを行う。その際、他の国際機関や地域機関との重複を避けつつ、「東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)」等この地域における協力の枠組みの成果を共有する。

7. 各国閣僚は、「環境的な持続可能な都市」に関する協力として、下記に留意した。

i) 既存のASEANの枠組がEASの協力についても主導的役割を担う。ただし、ASEAN以外のEASメンバー国からの寄与を求めることも重要。

ii) 各国が持つ、例えば以下のような経験、専門的知識、技術が考慮されるべきである。

a) 環境的に持続可能な交通(EST)を含む都市計画

b) グリーンビルディング

c) 都市の水供給及び汚水処理

d) 都市緑化計画、都市の生物多様性保全、都市景観・都市の生活環境

e) 衛生及び廃棄物管理

f) 3R及び資源効率の改善

g) 大気、騒音、水質、土壌汚染の管理

h) 温暖化対策と環境汚染対策を同時に行うコベネフィット・アプローチ

i) 都市における気候変動の適応

j) 都市のインフラ

k) 自然災害リスクの削減

iii) 2008年6月にシンガポールにおいて開催された「住みよい都市に関するEASカンファレンス」の成果は、各国の経験を共有するうえでのアイディアとして活用できる

iv) EAS各国は「環境的な持続可能な都市」に関するEAS大の協力を実現させるための活動及びプロジェクトの提案を奨励する。

8. 各国閣僚は、各メンバー国が推進する以下のような現在進行中あるいは新たなイニシアティブを歓迎した。

 例えば、「低炭素社会」、「コンパクトシティ」、「エコシティ」、「環境的に持続可能な交通(EST)」、「クリーンアジア・イニシアティブ」、「アジア3R推進フォーラム」、「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」、アジア環境大学院ネットワークである「Pro-SPER.NET」を含む「アジア環境人材育成イニシアティブ」。

 各国閣僚はこれらのイニシアティブと「環境的な持続可能な都市」のテーマでのEAS大の協力との連携を奨励した。

9. 各国閣僚は、人為的要因によって引き起こされた、特に途上国における、気候変動の短期的及び長期的な負の影響に懸念を表明した。また、各国閣僚は、このような気候変動による負の影響に対処するためのグローバルな社会による緊急で断固たる行動を呼びかけた。各国閣僚は、シンガポール宣言に示されている、EAS以外の国々、地域や国際研究機関との連携したEAS各国のコミットメントを改めて表明した。また、各国閣僚は、気候変動への危険な人為的干渉を防ぐレベルに温室効果ガス濃度を安定化させるという共通の目標への責務を確認し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)や京都議定書等の気候変動に対処するための中核となる国際メカニズムへのコミットメントを新たにした。

10. 各国閣僚は、「東アジア環境教育センター」の設立に関するベトナムのコンセプトペーパーに留意した。各国閣僚は、このイニシアティブは有用であることに同意し、本提案につきさらに検討するよう、各国の高級事務レベルに指示した。

11. 各国閣僚は、上記の優先分野においてEAS各国との助力と協力を求めるべくEAS外からパートナーを招いた。

12. 環境に関するEASの協力の勢いを持続させるという見地から、各国閣僚は、必要な時に大臣会合を開催し、また、その準備のための高級事務レベル会合も開催すべく努力するという意志を共有した。

13. 各国閣僚は、EAS各国の事務方に対し、第2回EAS環境大臣会合については、ASEAN事務局の支援を受けて、可能であればシンガポールで開催する第11回ASEAN環境大臣会合と連続して準備するよう指示した。

14. 各国閣僚は、第1回東アジア首脳会議環境大臣会合をホストし、必要な準備を行ったベトナム政府に対し、謝意を表明した。