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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第1回EASエネルギー大臣会合閣僚共同声明

[場所] シンガポール
[年月日] 2007年8月23日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.第1回EASエネルギー大臣会合(EMM1)は、2007年8月23日にシンガポールで開催された。会合では、シンガポールのイスワラン貿易産業担当国務大臣及び日本の甘利経済産業大臣が議長及び共同議長を務め、ASEAN加盟国、豪州、中国、インド、韓国及びニュージーランドのエネルギー担当閣僚が出席した。

2.閣僚は、EASが生起しつつある地域における枠組みの重要な一部であるとの首脳の考えを認識し、EASは、共同体形成に向けて、ASEAN対話国、ASEAN+3及びアジア太平洋経済協力(APEC)のプロセスといった、他の既存の地域枠組みを補完するものであることを確認した。

3.2007年1月15日にフィリピンのセブで開催された第2回EASで採択された「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」で明示された、東アジア地域の発展のために入手しやすいエネルギー源を確保するとの共通の目標に対する首脳の強い関心及び気候変動問題への早急な対処の必要性を踏まえ、閣僚は、エネルギーに関する主要な懸念事項、及び首脳により設定された目標の早期達成に向けた戦略について議論した。

4.閣僚は、「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」にも従い、地域のエネルギー安全保障を強化すべく緊密に連携していくことを確認した。これは、持続可能な経済成長のために、信頼でき、適切で入手しやすいエネルギーの供給を確保するとともに、競争力を向上させることを目的としている。これに従い、閣僚は、「セブ宣言」を推進し、一層の協力と、諸措置や活動の調整を通じて具体的な成果をあげていくことで一致した。閣僚は、日本の「クリーン・エネルギーと持続可能な成長のための協力イニシアティブ」、及び、エネルギー効率向上、バイオマス、クリーン・コールの活用の促進に焦点を当てた日本のエネルギー協力パッケージを歓迎した。

5.閣僚は、第2回EASの成果をフォローアップするために、2007年3月1日にEASエネルギー協力タスクフォース(ECTF)が設立されたことを確認した。EAS・ECTFでの取り組みは、可能な限り、現行のASEANのエネルギーセクター別メカニズムに基づいて行われる。閣僚は、EAS参加国が交代でEAS・ECTFを主催することとし、EAS・ECTFが、その設立以来、5回の会合を開催し、緊密なエネルギー協力の推進及びEAS参加国間の重要な連携の構築に向けて作業してきたことに、歓迎の意をもって留意した。

6.閣僚は、エネルギー効率向上・省エネルギー、エネルギー市場統合、輸送等のためのバイオ燃料の3つのエネルギー協力分野を特定したことを手始めに、あらゆる経済水準にある者にとって入手しやすく確実かつ持続可能なエネルギーという目標に向け、EAS・ECTFが作業を実施していることを賞賛した。

7.閣僚は、首脳によって設定された目標を達成するため、エネルギー効率向上・省エネルギー、開かれた競争的なエネルギー市場の整備及び再生可能・代替エネルギー源に関する措置を推進するためのEAS参加国間での協力の重要性を確認した。

8.エネルギー効率改善・省エネルギーの推進は、エネルギー安全保障を強化し、気候変動問題に対処する上で最も費用対効果の高い手段の一つであるとの認識の下、閣僚は、エネルギー効率改善・省エネルギーの推進に関するECTFの提言を支持し、それを実施するために具体的な行動を取ることで一致した。これには、各国が自主的に、個別かつ数量的な、また可能であればセクター別のエネルギー効率改善目標及び行動計画を策定し、2009年に開催される第3回EMMに最初の目標及び行動計画を発表することを念頭に、2008年に開催される第2回EMMで中間報告を行うことが含まれる。また、閣僚は、各国のエネルギー効率の目標設定に向けた進捗状況をモニターすることで一致した。さらに、閣僚は、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)が現在実施している「EASエネルギー展望」の作成作業に留意した。また、閣僚は、アジア省エネ協力センターの設立を歓迎した。

9.EAS地域は主要なエネルギー消費地域かつ生産地域であり、また、EAS参加国は地理的に画定された地域の中に位置していることに鑑み、閣僚は、EAS域内おけるエネルギー貿易及び投資が今後拡大し得る余地があることを認識した。閣僚は、地域への入手しやすく確実でクリーンなエネルギーの供給を促進するため、効率的で、透明で、信頼できる柔軟なエネルギー市場の確立を奨励した。閣僚は、エネルギー市場が効率的に機能する上での障壁に対処することの重要性を認識した。閣僚は、市場統合・市場自由化についての理解を深め、EAS域内のエネルギー市場の現状に関する調査や貿易及び非貿易並びに投資への障壁を特定し、EASエネルギー市場の統合に向けた政策及び手段を提言するための研究に着手するとのECTFの作業計画を支持した。また、閣僚は、EAS域内におけるエネルギー市場統合において、通過の問題が重要であることを認識した。

10.輸入原油への国際的な需要の高まりや温室効果ガス排出への対処の必要性に鑑み、閣僚は、バイオ燃料がEAS域内におけるエネルギー安全保障上の諸懸念に対処する上で大きな可能性を持つことを認識した。しかしながら、バイオ燃料の生産は、持続可能な方法によらなければ、環境に負の影響を与える可能性がある。この点に関し、閣僚は、生産、利用、品質試験及び貿易を含むバイオ燃料のライフサイクルの持続可能な発展のため、総合的な検討を行うことの重要性を認識した。また、閣僚は、貴重な生態系の保護の必要性を確認した。

11.閣僚は、域内において環境的にも社会的にも持続可能なバイオ燃料の生産及び利用促進のための原則を策定することで一致した。また、閣僚は、各国が規格策定の際、参照し得るエンジンその他の機器で使用されるバイオ燃料指標の策定に向け協力することを支持した。また、閣僚は、この分野でERIAが担う役割に留意した。閣僚は、EAS・ECTFに対し、この提案に関する更なる作業の実施を指示した。閣僚は、バイオ燃料分野での新技術に関する協力の可能性を探ることで一致した。閣僚は、日本における「アジア・バイオマス研究コア」と「アジア・バイオマス・エネルギー協力促進オフィス」の設立を歓迎した。

12.閣僚は、東アジア地域におけるエネルギー貧困の解消が重要であることを認識した。これに関連し、閣僚は、入手しやすいエネルギーへのアクセス向上に向けた地域協力を要請した。

13.重点3分野での協力はEASエネルギー協力の出発点であることを認識し、閣僚は、EAS・ECTFに対し、「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」に盛り込まれた広範な目標及び措置に如何に取り組んでいくかを検討し、2008年に閣僚に対して報告を行うよう奨励した。

14.閣僚は、温室効果ガスの排出を削減し、地球規模の気候変動の緩和に貢献することも、首脳が設定した重要な目標であることを再確認した。閣僚は、場合によっては、3つのエネルギー協力分野の下で実施が検討されている措置に関連して、この分野における域内協力の一層の進展を要請した。

15.閣僚は、EAS・ECTFの設立以来、EAS参加国間でより緊密なエネルギー協力が進展してきていることを歓迎し、域内での一層のエネルギー協力の発展に向け、EAS・EMM及びEAS・ECTFを通じた域内エネルギー安全保障対話を確立する必要性を再確認した。閣僚は、2008年にタイで開催される第2回EMMにおいて、EAS・ECTFの達成した進展状況をレビューすることに対し期待を表明した。