データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 鳥インフルエンザの予防、抑制、対策に関する東アジア首脳会議宣言

[場所] クアラルンプール
[年月日] 2005年12月14日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 われわれ、2005年12月14日にマレーシア・クアラルンプールで開催された第1回東アジア首脳会議に参加した東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、オーストラリア連邦、中華人民共和国、インド共和国、日本国、大韓民国及びニュージーランドの各国首脳は、

 鳥インフルエンザの流行が、域内の多くの国で拡大しており、その深刻な影響が、域内において家禽産業だけでなく、地域の公衆衛生、畜産、貿易、観光、経済・社会開発にまで及ぶことを認識し、

 現在の鳥インフルエンザH5N1型ウイルスが新型インフルエンザの大流行を引き起こす能力を有する型に変異する可能性や、大流行がいつどこで発生するのか予測することが不可能であることを認識し、

 特に関係機関の連携強化、全ての関係者間のパートナーシップの推進、情報の共有、及び地域的イニシアティブの調整を通じた、鳥インフルエンザが与える脅威への対策のためのASEANによる活発な協力と様々な地域的取組を認識し、

 鳥インフルエンザの予防と抑制、及び新型インフルエンザの大流行への準備と対策に関する、地域的及び世界的なパートナーシップを築くための、他の様々な取組を歓迎し、

 また、鳥インフルエンザの予防と抑制が、適切な地域的・国際的な機関やメカニズムの参加を得て、政府、共同体及び民間企業の間で密接な協力と協調された努力を必要とする、世界全体が負う責任であることを認識し、

 ここに以下のとおり宣言する。

 第1回東アジア首脳会議参加国は、既存の二国間、地域間、多国間の経路を用い、現在の鳥インフルエンザの問題に対処するため、とりわけ新型インフルエンザの大流行に変質することを阻止するために、以下を通じて国家、地域、国際的な能力強化のためにあらゆる可能な努力を行う。

1.新興感染症一般の予防、抑制のための国家政策を改善する。

2.鳥インフルエンザは元来動物の病気であることから、ヒトに感染する新型インフルエンザ大流行のリスクを減少するため、国内の家禽類における鳥インフルエンザを抑制し根絶する。

3.国家レベルでの全ての鳥インフルエンザ流行を効果的に封じ込め、可能な限りの支援を行い、東アジア首脳会議参加国間の迅速、透明、正確なリスク・コミュニケーションを確実にすることを約束する。

4.地域・世界レベルの新型インフルエンザ大流行への準備・対応計画への支援において、特に動物衛生分野と保健分野の間で、協調された分野横断的/学際的アプローチを国・地域レベルで実施する。

5.あらゆる新型インフルエンザ流行の影響を最小限にするための、全ての第一回東アジア首脳会議参加国の強い政治的意志と約束及び必要な国内法整備と専門技術によって支えられた、明確に定められた作業計画とリソースの要請を伴った国・地域レベルの鳥及び新型インフルエンザ大流行への準備戦略を確立する。

6.効果的に大流行を回避するため、世界保健機関(WHO)や他の関係国際機関による技術的な支援を得て、抗ウィルス薬備蓄ネットワークを確立することをはじめとする、国・地域レベルの鳥インフルエンザ予防・抑制プログラム及び新型インフルエンザ大流行への準備・対策計画の効果的かつ効率的な実施を確保するために、国・地域レベルにおける制度面の能力を強化する。

7.新型インフルエンザ発生前若しくは発生中に、効果的で時宜を得た有意義な情報伝達を確保するため、各国及び国際機関の間で情報共有手続を策定することを含む新型インフルエンザに対処するためのキャパシティ・ビルディングを強化する。

8.ASEAN加盟国間、及び他の東アジア首脳会議参加国、世界保健機関(WHO)、国際獣疫事務局(OIE)、国連食糧農業機関(FAO)、世界銀行(WB)、アジア開発銀行(ADB)を含めた国際機関の間で、サーベイランスとキャパシティ・ビルディング、研究と開発、リスクコミュニケーションとリスク評価、ワクチンと抗ウィルス薬の供給、アクセス、製造といった分野において、協力を強化する。

 必要なフォローアップは、WHO、OIE、FAO、世界銀行、ADB、ASEAN対話国と緊密に協議しつつ、また、ASEAN事務局による効果的な鳥インフルエンザの撲滅を確保するためのこれらの共通の努力の調整作業を行っているASEAN事務局と共に、既存のASEANのメカニズムを通じて実施される。

 2005年12月14日、マレーシア・クアラルンプールにおいて、第1回東アジア首脳会議参加国首脳によって採択された。