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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第2上海コミュニケ(中華人民共和国とアメリカ合衆国の共同コミュニケ〔米国の対台湾武器売却問題について〕)

[場所] 北京,ワシントンDC
[年月日] 1982年8月17日
[出典] わが外交の近況(外交青書)27号,480‐482頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.1979年1月1日にアメリカ合衆国政府と中華人民共和国政府により発出された外交関係樹立に関する共同コミュニケにおいて、アメリカ合衆国は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府であることを承認し、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場をアクノレッジした。そうした関係の範囲内で、双方は、アメリカ合衆国が台湾の人々と文化、交易、その他の非公式な関係を維持していくことに合意した。この基礎の上に、米国と中国の関係は正常化された。

2.米国の台湾に対する武器売却問題は、両国の外交関係樹立に関する交渉の過程では解決されなかった。双方は、相異なった立場をとり、中国側は、正常化後再び同問題を取り上げる旨述べた。この問題は米中関係の発展を著しく害することになるものであることを認識し、双方は、10月のロナルド・レーガン大統領と趙紫陽総理との会談及びアレクサンダー・M・ヘイグ国務長官と黄華副総理兼外交部長との会談の際及びそれ以後、この問題についての討議を行った。

3.相互の主権並びに領土保全の尊重及び相互の内政不干渉は米中関係を律する基本的な原則をなす。これらの原則は、1972年2月28日の上海コミュニケにおいて確認され、1979年1月1日に発効した外交関係樹立に関する共同コミュニケにおいて再確認された。双方は、これらの原則は引き続き双方間の関係のすべての分野を律するものであることを明確に声明する。

4.中国政府は、台湾問題は中国の内政問題である旨を重ねて言明する。中国が1979年1月1日に発した「台湾同胞に告げる書」は平和的祖国復帰へ向けて努力するとの基本的政策を規定した。中国が1981年9月30日に提示した9項目提案は、台湾問題の平和的解決に向けて努力するとのこの基本的政策の最も顕著な努力の表われであった。

5.米国政府は、中国との関係を非常に重視しており、中国の主権と領土保全を侵害する意図も、中国の内政に干渉する意図も、「二つの中国」あるいは「一つの中国、一つの台湾」政策を推し進める意図もないことを重ねて言明する。米国政府は、1979年1月1日に発出された「台湾同胞に告げる書」及び1981年8月30日に中国から出された8項目提案に示されている台湾問題の平和的解決のため努力するとの中国側の方針を理解し、評価する。台湾問題に関し生じた新しい状況もまた米国の対台湾武器売却問題を巡る米中間の相違の解決のため有利な条件を作り出すものである。

6.双方の上記の声明を念頭に置きつつ、米国政府は台湾への武器売却を長期的政策として実施するつもりはないこと、台湾に対する武器売却は質的にも量的にも米中外交関係樹立以降の数年に供与されたもののレベルを越えないこと、及び台湾に対する武器売却を次第に減らしていき一定期間のうちに最終的解決に導くつもりであることを表明する。右を表明するに際し、米国は本問題の完全な解決に関する中国側の一貫した立場をアクノレッジする。

7.米国の台湾への武器売却は歴史に根ざす問題であるが、一定期間のうちにその最終的解決をもたらすために、両国政府は、本問題を完全解決に導くための措置をとり条件を作り出すようあらゆる努力をする。

8.米中関係の発展は両国人民の利益のためのみならず、世界の平和と安定に資するものである。双方は、平等と互恵の原則の下に、経済面、文化面、教育面、科学面、技術面及びその他の分野における双方の結びつきを強化し、米国と中国の政府及び人民の関係を引き続き発展させるため力強く、協同して努力する決意である。

9.米中関係の健全な発展をもたらし、世界平和を維持し侵略と膨張に反対するために、両国政府は、上海コミュニケ及び外交関係樹立に関する共同コミュニケにおいて双方により合意された原則を再度確認する。双方は、共通の関心を有する二国間問題及び国際問題に関し接触を維持し、適宜協議を行う。