データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 米華相互防衛条約(アメリカ合衆国と中華民国との間の相互防衛条約)

[場所] ワシントンDC
[年月日] 1954年12月2日作成,1955年3月3日発効
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),680‐683頁.主要条約集,1659‐1666頁.
[備考] 
[全文]

 この条約の締結国は、

 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、かつ、西太平洋地域における平和機構を強化することを希望し、

 両国の国民が前戦争中に同情及び相互の理想の共通のきずなによつてともに帝国主義者の侵略に対抗して戦うため結束するに至つた関係を相互に誇りを持つて想起し、

 いかなる潜在的侵略者もいずれか一方の締約国が西太平洋地域において孤立しているという錯覚を起すことがないようにするため、両国の団結の意識及び外部からの武力攻撃に対して自らを防衛しようとする共同の決意を公然とかつ正式に宣言することを希望し、また、

 さらに、西太平洋地域における地域的安全保障の一層包括的な制度が発達するまでの間、平和及び安全を維持するための集団的防衛についての両国の現在の努力を強化することを希望して、

 次のとおり協定した。

第一条

 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和、安全及び正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において武力による威嚇又は武力の行使を、国際連合の目的と両立しないいかなる方法によるものも慎むことを約束する。

第二条

 締約国は、この条約の目的を一層効果的に達成するため、単独に及び共同して、自助及び相互援助により、武力攻撃並びに締約国の領土保全及び政治的安定に対して外部から指導される共産主義者の破壊活動に抵抗する個別的及び集団的能力を、維持し発展させる。

第三条

 締約国は、その自由な諸制度を強化すること並びに経済的進歩及び社会福祉を促進させるために相互に協力すること並びにこれらの目的のために個別的及び共同の努力を重ねることを約束する。

第四条

 締約国は、この条約の実施に関し、自国の外務大臣又はその代理を通じて随時協議する。

第五条

 各締約国は、西太平洋地域においていずれか一方の領域に対して行なわれる武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

第六条

 第二条及び第五条の規定の適用上、「領土」及び「領域」とは、中華民国については、台湾及び澎湖諸島をいい、アメリカ合衆国については、その管轄権の下にある西太平洋の諸島をいう。第二条及び第五条の規定は、相互の合意によつて決定されるその他の領域についても適用される。

第七条

 台湾及び澎湖諸島の防衛のために必要なアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を、相互の合意により定めるところに従つて、それら及びその附近に配備する権利を中華民国政府は許与し、アメリカ合衆国政府は、これを受諾する。

第八条

 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解してはならない。

第九条

 この条約は、アメリカ合衆国及び中華民国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が台北で批准書を交換した時に効力を生ずる。

第十条

 この条約は、無期限に効力を有する。いずれの一方の締約国も、他方の締約国に通告を行なつてから一年後にこの条約を終了させることができる。

 以上の証拠として下名の全権委員は、この条約に署名した。

 千九百五十四年十二月二日(中華民国四十三年十二月二日)にワシントンで、英語及び中国語により本書二通を作成した。

アメリカ合衆国のために

ジョン・フォスター・ダレス(署名)

中華民国のために

ジョージ・K・C・ヨー(署名)