データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 主なテロの未然防止対策の現状

[場所] 
[年月日] 2009年11月25日
[出典] 首相官邸
[備考] 内閣官房
[全文]

1.出入国管理等の強化{前11文字囲み線あり}

(1)出入国審査の強化

 テロリスト等の入国を阻止するため、APIS(事前旅客情報システム)の導入、高性能の偽変造文書鑑識機器の導入、セカンダリ(2次的)審査の導入、リエゾン・オフィサー(連絡渉外官)の派遣、査証発給情報の関係省庁間での共有等により、関係機関の情報交換・連携強化及び一層厳格な出入国審査を実施

(2)個人識別情報を活用した入国審査の導入

 平成19年11月20日から、上陸審査時に16歳以上の外国人(特別永住者等を除く)に対する指紋等の個人識別情報の提供の義務付けを開始。また、平成20年4月に発生した指紋偽装事案を踏まえ、指紋の状態をブースにいる入国審査官がディスプレイ上で確認できるようにするとともに、提供された指紋の品質値について厳格な基準を設け、それが一定程度以下の場合には、入国審査官が指の状態を目視の上、指紋に偽装がないかの確認を実施。さらに同様の事案の対処において法務省や警察等関係機関が連携を強化

(3)乗員・乗客情報の事前報告の義務化

 本邦に入る船舶等の長に乗員・乗客に関する事項の入管当局への事前報告を義務付け(平成19年2月1日から実施)

(4)テロリストに対する入国規制

 ○ 法務大臣がテロリストとして認定する者等を退去強制事由として規定(平成18年6月13日から実施)

 ○ 同認定を適正かつ確実に実施するため、「テロリストの認定に係る関係省庁連絡会議」を設置

(5)航空会社等に対する旅券等の確認義務化

 我が国に乗り入れる航空会社等運送業者に対し、当該航空機等に乗ろうとする外国人の旅券等の確認を義務付け(平成17年12月22日から実施)

(6)海上監視等の強化

 ○ 海上保安庁巡視船艇、航空機等により海上監視を強化・徹底

 ○ 航路・港湾の監視等により、船舶動静、問題船の把握を行うなど情報収集・分析及び監視体制を強化

 ○ 埠頭等主要港湾施設における巡回や注意喚起等の警戒を強化

(7)通関検査体制等の強化

 ○ 銃砲、爆発物等の密輸入阻止を目的として、入国旅客及び乗員の携帯品(託送品、別送品を含む)の開披検査並びに輸入商業貨物及び輸入郵便物の審査・検査を強化

 ○ 動植物検疫においても、不審事例が見受けられた場合の関係機関への連絡を徹底

(8)乗員・乗客の氏名等、積荷に関する事項の入港前報告の義務化

 ○ 我が国への輸入貨物や乗員等に関する情報を事前に入手し、税関が保有する各種情報との照合によるハイリスク貨物等の選定等に活用するため、外国から本邦に到着する外国貿易船等の積荷及び旅客等に関する事項の税関当局への入港前報告を義務付け(平成19年2月1日から実施)

 ○ 輸入混載貨物等については、その詳細な情報を早期に入手し、適正かつ迅速な通関を図るため、平成19年6月1日から、必要があると認めるときは輸入混載貨物等に係る情報について事前に報告を求めることができる制度を実施

(9)国際空港・港湾における危機管理体制の強化

 ○ 関係省庁担当課長等で構成される「空港・港湾水際危機管理チーム」を内閣官房に設置するとともに、空港保安委員会及び港湾保安委員会の開催により、関係機関の連携を強化

 ○ 枢要な国際空港(成田、関西)・港湾(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門)に空港・港湾危機管理官を設置し、合同訓練を実施するなど、関係機関の連携を強化

(10)バイオメトリクス(生体情報認証技術)を活用したIC旅券の導入

 ICAO(国際民間航空機関)標準に準拠した、バイオメトリクスとして所持人の顔画像をICチップに搭載した偽変造や成りすましによる不正使用が困難なIC旅券を平成18年3月から発行するとともに、諸外国の動向を見つつ指紋等の第二バイオメトリクスの導入の検討を含め、旅券の高度化に係る調査研究を実施

(11)紛失・盗難旅券情報のICPO(国際刑事警察機構)への提供及び活用

 ○ 紛失・盗難旅券情報の国際的共有を可能とし、入国審査の強化にも資するよう、我が国の紛失・盗難旅券情報のICPOデータベースへの提供を平成16年11月から開始

 ○ 平成21年8月からはICPO紛失・盗難旅券データベース検索システムの情報を入国審査に活用

(12)外国人宿泊客の本人確認の強化等日本国内に住所を有しない外国人が旅館等に宿泊する場合について、

国籍及び旅券番号の宿泊者名簿への記載を義務付けるよう、旅館業法施行規則を改正するとともに、その旅券の写しの保存及び捜査機関からのこれらの閲覧請求に対する協力も行うよう都道府県等を通じて営業者を指導

(13)乗員上陸の許可を受けた者の乗員手帳等の携帯・提示義務化

 入管法の一部改正を行い、乗員上陸の許可を受けた者について、乗員上陸許可書に加えて旅券又は乗員手帳の携帯・提示を義務付け(改正法は平成21年7月15日公布。乗員手帳等の携帯・提示義務化に関する改正規定は公布から6月以内の政令で定める日から施行)

2.テロ関連情報の収集・分析の強化{前17文字囲み線あり}

(1)テロ関連情報の収集体制の強化

 警察庁外事情報部、同部国際テロリズム対策課及び同課国際テロリズム情報官、外務省国際情報統括官組織、海上保安庁警備救難部警備情報課、公安調査庁調査第二部公安調査管理官、同部第一課国際調査企画官及び同部第二課国際破壊活動対策室等所要の機構整備や、警察庁国際テロ緊急展開チーム(TRT)の国際テロリズム緊急展開班(TRT‐2)への改組等により、情報収集体制及び外国機関との連携体制を強化

(2)テロ関連情報の集約及び総合的な分析・評価と、共有体制の確保

 各省庁が把握した重要情報及びその分析・評価について、内閣情報官に集約した上で、政府全体として総合的に分析・評価し、関係省庁間で共有する体制を確保(平成20年度より、内閣情報分析官を設置し、分析・評価体制を強化)

3.ハイジャック等の防止対策の強化{前17文字囲み線あり}

(1)空港の警戒警備の強化

 ○ 平成17年4月から、空港警戒態勢の最高水準であった「フェーズE」を「レベルI」として恒久化し、特定の対象への脅威が高まった場合の措置を「レベルII」及び「レベルIII」として設定

 ○ 旅客の保安検査等を強化・徹底するとともに、空港内の巡回を強化したほか、保安検査場への警察官の増強配備や、チェックインカウンター等における警戒を実施

 ○ 主要空港については、利用者の多い時間帯に警察機動隊を運用して警戒を強化したほか、道路沿いに加え、空地沿いにガードレール、杭等を設置するとともに、場周フェンスの強化、センサーの設置・拡充等により、車及び人に対する不法侵入対策を順次強化

(2)航空保安検査の強化

 ○ 旅客及び手荷物の保安検査において、平成16年5月から、旅客の靴に対する随時のX線検査を実施し、また、平成16年11月からは、液体物検査装置を使用した検査を導入

 ○ 平成18年1月から、クリーンエリア(出発旅客が保安検査終了から航空機搭乗までの間で通過する可能性のある場所)に入る空港関係者及び納入物品に対する保安検査を実施

 ○ 平成16年12月以降、受託手荷物に対するインライン検査システム(危険物を自動探知するX線検査機器及び高性能爆発物検知装置を多段階式に組み合わせたシステム)を羽田、成田、中部、関西の各空港に順次導入

 ○ 航空法施行規則を改正(平成14年5月)し、小型ナイフを含む刃物類、強打すること等により凶器となり得る物、先端が著しく尖っている物、その他凶器となり得る物品すべてに関し、航空機内への持込みを禁止

 ○ 平成19年3月から、日本を出発する国際線において、従来の液体物検査装置による検査に加えて、液体物の客室内持込の量的制限を実施

 ○ 従来出発ロビーの旅客カウンターのみで行っていた旅券の本人確認について、平成20年7月から、搭乗ゲートにおいても実施

(3)航空機内における保安強化

 ○ 平成15年11月から、航空機の客室側から操縦室への侵入を阻止し、ハイジャックを防止するため、拳銃の弾丸等の貫通を阻止可能な強化型操縦室扉の装備を義務化

 ○ ハイジャックの未然防止対策の強化を図るとともに、発生時における機内での制圧・検挙を可能とするため、平成16年12月から、スカイマーシャル制度(航空機への警察官の警乗)を導入

(4)航空貨物に対する保安強化

 ○ 平成17年10月から、荷主から航空機搭載までの間の航空貨物を一貫して保護する保安制度(Known Shipper/ Regulated Agent 制度:特定航空貨物利用運送事業者等の認定を通じた保安対策)を導入

 ○ 平成17年6月から、貨物ターミナルへの立しょう警備員の配置を義務付け

4.NBC(核・生物・化学)テロ等への対処の強化{前24文字囲み線あり}

(1)核物質、放射性物質、生物剤、化学剤等の管理体制等の強化

 ○ 「生物化学テロ対処政府基本方針」(平成13年11月8日関係閣僚会議決定)に基づき、BCテロに使用されるおそれのある物質を取り扱う事業者、研究機関等に対し、保管・管理の強化、盗難防止対策について指導・要請を実施するとともに、不自然な取引等に関する情報収集を実施

 ○ 空中撒布に使用されるおそれのある小型航空機の盗難防止対策等を徹底

 ○ 主な原子力事業者、放射性同位元素取扱事業者等に対し、核燃料物質、放射性同位元素等の安全管理の徹底、核物質防護の徹底、治安当局等との連携強化等を指導

 ○ 「核物質防護に関するガイドライン(INFCIRC225/Rev.4)」を踏まえて、平成17年5月に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)」を改正(同年12月施行)。これに基づき、所要の防護措置の強化や、核物質防護に関し、主務官庁及び治安当局による立入検査を実施

 ○ 病原微生物等の適正な管理体制を確立すべく、平成18年12月に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」を改正(平成19年6月施行)。これに基づき、病原体等の所持、運搬、輸入等に関する規制のほか、厚生労働省や警察庁等の職員による特定病原体等所持者の施設等に対する立入検査を行うなど、病原微生物等の適正な管理体制を確立

(2)不審郵便の警戒、水道施設の警備等の強化

 ○ 不審な郵便物への警戒を実施

 ○ 水道については、水源監視の強化、浄水場、配水池等の水道施設の警備の強化、毒性等の有無を生物を使って監視する“バイオアッセイ”(生物検定法)等による水質管理の徹底等を水道事業者等に指導

(3)爆弾テロ防止条約の締結に伴う関係国内法の整備

 爆弾テロ防止条約の締結に伴い、「テロリストによる爆弾使用の防止

に関する国際条約の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」により、関係法律(爆発物取締罰則、原子炉等規制法、放射線障害防止法、火炎びん処罰法、生物兵器禁止法、化学兵器禁止法、サリン法)を整備

(4)爆発物や病原体等を輸入してはならない貨物にすることによる輸入管理の強化

 テロ行為に利用されるおそれのある爆発物、火薬類、病原体等及び化学兵器の用に供されるおそれの高い物質について、税関における水際取締りの実効性を確保するため、関税法を改正し、これらの物品を原則として、輸入してはならない貨物に追加(テロ行為に利用されるおそれのある爆発物、火薬類及び化学兵器の用に供されるおそれの高い物質については平成17年4月施行、生物テロに使用されるおそれのある病原体等については平成18年6月施行)

(5)大線量放射線源に係る輸出入管理の導入

 ○ 危険度の高い放射線源の我が国からの輸出に関し、平成18年1月に「輸出貿易管理令」を改正。同政令上の輸出承認を得るために必要な輸出確認証を、輸出相手国政府の同意を得た上で輸出者に対して交付する制度を導入

 ○ 一方で我が国への輸入に関しては、輸入者が当該放射線源を使用等するために必要な許可を得ているもしくは届出を行っていることを確認した上で、輸入相手国政府に同意書を発出

(6)放射線源の登録管理制度の導入

 国際原子力機関(IAEA)の行動規範に基づき、危険度の高い個々

の放射線源を特定し、所持、在庫確認等の情報を国に登録させることにより、不法な所持、譲渡、譲受の早期探知を目的とするもので、平成20年度に放射線源の登録管理を行うITシステムの整備を終了し、平成21年8月から試行的に制度運用を開始

(7)核テロ防止条約の締結に伴う関係国内法の整備

 核テロ防止条約の締結に基づき、「放射線を発散させて人の生命等に

危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」により、核燃料物質の原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、又は放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせる行為等を処罰する規定を整備済み(平成19年5月公布、核テロ防止条約が日本国について効力を生じた同年9月2日から施行)

(8)爆発物の原料の管理強化

 ○ 化学物質を使用した爆発物製造・使用事件の発生を受け、平成17年3月、過酸化水素製剤等爆発物の原材料となる化学物質につき、保管、流通等における盗難防止対策の徹底、購入目的に不審な点がある者等への販売自粛及び当該者の不審な動向に関する警察への通報など、適切な管理と販売が行われるよう関係業界へ通知するとともに、医薬品、劇毒物、肥料等の販売業者等への指導を行うよう都道府県等に通知及び関係業界団体に依頼

 ○ さらに、薬局、肥料店(インターネット経由)等で購入した化学物質が使用された爆発物製造等の事件を受け、平成19年9月及び平成20年10月、都道府県等及び関係業界団体に対して、平成17年3月発出の通知等の内容につき再周知するとともに、特に平成20年10月には、インターネットを介した過酸化水素製剤等の物質の販売における用途及び本人確認の徹底並びに警察当局への協力等についても依頼

(9)大量破壊兵器等の拡散防止に向けた取組

 ○ テロリストへの移転を含む大量破壊兵器等の拡散を未然に防止するため、大量破壊兵器関連物資等を含む機微貨物・技術の輸出管理を徹底するとともに、不正輸出事案の摘発を推進

 ○ 外国為替及び外国貿易法(外為法)の一部改正を行い、大量破壊兵器関連物資等に係わる技術流出の防止を徹底するとともに、無許可の輸出・技術取引の罰則を強化(平成21年4月30日公布。平成21年11月1日(一部は平成22年4月1日)施行)

 ○ 「メガポート・イニシアティブ」の推進世界の主要港に放射性物質検知施設を設置することにより、核物質

その他の放射性物質の拡散防止を目指す「メガポート・イニシアティブ」(MI)に関し、パイロット・プロジェクトを平成20年度に開始

 ○ 平成19年10月、伊豆東方沖、横須賀港及び横浜港において、「拡散に対する安全保障構想(PSI)」海上阻止訓練「Pacific Shield 07」を主催。また、平成20年9月に実施されたニュージーランド主催のPSI海上阻止訓練「Maru」に、さらに、平成21年10月に実施されたシンガポール共和国主催のPSI訓練「Deep Sabre II」にそれぞれ関係省庁が参加

5.国内重要施設の警戒警備の強化等{前17文字囲み線あり}

(1)我が国重要施設等の警戒警備等の強化

 ○ 所持品の開披なしに爆発物の検知が可能な高精度の爆発物探知機を新たに配備するなどし、我が国の重要施設及び米国等関連施設等に対する警戒警備を強化

 ○ 原子力発電所等について、警察や海上保安庁による陸上及び海上からの24時間体制の警戒警備や、原子力事業者等においても、監視等の防護措置を実施

(2)鉄道の警戒警備の強化

 ○監視カメラの増設、巡回警備の強化等鉄軌道事業者による自主警備の強化を指導

 ○ 「鉄道テロ対策連絡会議」を設置(平成17年8月)し、「危機管理レベルの設定」、「見せる警備・利用者の参加」を軸とした新たな鉄道テロ対策(同年12月)、「鉄道テロへの対応ガイドライン」の策定(平成19年3月)など、テロの未然防止対策を推進

 ○ 新幹線を始めとする鉄道に関し、鉄道警察隊員や機動隊員による列車警乗、警備犬も活用した駅構内の巡回強化、職務質問の徹底、警察車両による沿線警戒の強化を実施○管理者による自主警備、不審な手荷物の所有者確認や旅客等への不審物発見時の協力要請等を実施

(3)旅客船等の警戒警備の強化

 ○ 国内の主要航路を航行する旅客船・カーフェリーへの海上保安官による警乗を実施

 ○ 旅客ターミナルの警戒を強化○旅客船事業者による自主警備、旅客等への不審物発見時の協力要請を実施

(4)多数集合施設等の警戒警備の強化

 大規模イベント会場等多数の人が集合する施設、ライフライン施設の管理者等に対し、自主警備の強化に係る指導・助言を行うほか、情勢に応じて警察官による警戒を実施するなど、警戒警備を強化

(5)「SOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)」を踏まえた港湾及び船舶の保安対策の推進

 ○ 港湾施設及び船舶における保安の確保のため、以下の諸措置を実施

 <1>国際港湾施設:港湾施設に対する危害行為を未然に防止するため、フェンス、照明等の保安設備の整備推進

 <2>国内旅客船及びフェリーターミナル:監視カメラ等の保安設備の整備による保安対策の充実

 <3>国際航海船舶:制限区域の設定、乗船者の本人確認、船内の巡視又は監視等の措置

 ○ 国際航海船舶の入港に係る規制として、事前通報の義務付けや、立入検査等の措置を実施

 ○ 平成19年2月から乗員・乗客名簿の事前提出を義務化

6.テロ資金対策の強化{前11文字囲み線あり}

(1)テロ資金供与防止条約及び国連安保理決議1373の履行等のための関係国内法の整備

 ○ 「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」の制定及び「外国為替及び外国貿易法(外為法)」の一部改正を行い、預貯金口座開設時における顧客の本人確認等を義務付け、各金融団体に対し、本人確認の徹底を要請

 ○ 「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(犯罪資金供与処罰法)」の制定などにより、テロ資金の提供、収集を刑事処罰の対象とした上、国外犯その他所要の規定を整備

 ○ 平成16年臨時国会で、預貯金通帳等を譲り受ける行為等に罰則を定め、預金口座等の不正利用の防止を図ることを内容とする「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」の改正が成立(「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(本人確認法)」に題名を変更)

 ○ 平成19年通常国会において成立した「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」により、FIU(資金情報機関)を金融庁から国家公安委員会に移管(平成19年4月1日から実施)するとともに、顧客等の本人確認、取引記録等の保存及び疑わしい取引の届出の義務対象事業者(特定事業者)の範囲の拡大等を規定(平成20年3月1日から実施。なお、関連規定の施行に伴い、本人確認法は廃止)

(2)テロ資金供与に関するFATF(※)特別勧告等の履行

 ○ 外為法に基づき、テロリスト等の資産凍結等の措置を累次にわたり実施し、その実効性確保のために外国為替検査を強化するとともに、外国為替取引を行う金融機関等に対し、顧客の本人確認等を義務付け

 ○ 組織的犯罪処罰法等により、テロ資金の没収等や資金洗浄行為の処罰を可能にするとともに、疑わしい取引の届出制度の範囲の拡充その他所要の規定を整備

 ○ 特別勧告7に対応し、本人確認法施行令及び外国為替令の一部改正を行い、10万円を超える現金送金等を行う際に、金融機関に送金人の本人確認等を義務付け(平成19年1月4日から実施)るとともに、犯罪収益移転防止法において、外国送金を行う金融機関による送金人情報の通知について措置(平成20年3月1日から実施。なお、関連規定の施行に伴い、本人確認法は廃止)

 ○ 旅客又は乗組員の携帯品のうち一定額を超える支払手段等の携帯輸出入について、関税法に基づく輸出入申告書の税関への提出を義務付け(平成20年6月1日から実施)

  ※FATF:Financial Action Task Force (金融活動作業部会)マネー・ローンダリング対策における国際協調を推進するために、平成元年(1989年)のアルシュ・サミット(フランス)の宣言を受けて設立された政府間会合

(3)疑わしい取引の捜査及び地下銀行事案の摘発

 犯罪収益等の疑いのある取引に関する金融機関からの届出に基づく捜査及び地下銀行事案の摘発を実施

7.テロ対策に資する科学技術の振興{前16文字囲み線あり}

(1)テロ対策に資する科学技術の振興研究開発として目指す科学技術面の成果を明確化した分野別推進戦略(平成18年3月総合科学技術会議)において、社会基盤分野の重要な研究開発課題として、「テロ対策・治安対策」を掲げるとともに、科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)の期間中に資源をシフトする対象である戦略重点科学技術に、爆発剤や生物剤、化学剤の有無を交通機関の手荷物検査・旅客検査等の現場で速やかに探知する技術(有害危険物現場検知技術)等を選定

(2)探知技術の調査・研究

 手製爆発物や生物剤の探知装置の開発を実施。また、不審物や潜入工作員等に対する探知技術として活用可能なテラヘルツ波、音響レーダー、ミリ波等の先端技術についても調査・研究し、探知装置を開発して一部実用化。さらに、探知技術の研究開発等の動向や、開発機器の性能等に関する情報を収集

8.テロ対策に関する国際社会との連携{前18文字囲み線あり}

(1)国際協力の推進

 途上国のテロ対処能力に関し、支援対象国・地域全体の能力向上(キャパシティ・ビルディング)を図る観点から、我が国は、<1>出入国管理、<2>航空保安、<3>港湾・海上保安、<4>税関協力、<5>輸出管理、<6>法執行協力、<7>テロ資金対策、<8>CBRN(化学・生物・放射性物質・核)テロ対策、<9>テロ防止関連条約、等を重点課題として、研修生の受入れ、専門家の派遣、機材供与等につき、ODAを活用しつつ実施(例えば、開発途上国のテロ対策担当者を招致し、国際テロ事件捜査セミナーを実施)

(2)国際会議への参画テロ対策における国際的な連携・協力を確保する観点から、G8首脳会議、司法・内務大臣会議、ローマ・リヨン・グループ(G8のテロ・国際組織犯罪対策専門家会合)、世界健康安全保障イニシアティブ保健大臣会合等に積極的に参画

{文中の<1><2><3><4><5><6><7><8>は、マル1、マル2、マル3、マル4、マル5、マル6、マル7、マル8}