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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回日中韓アセアン経済大臣会合(AEM+3)共同声明

[場所] シェムリアップ
[年月日] 2001年5月4日
[出典] 経済産業省
[備考] 経済産業省仮訳
[全文]

1.第3回日中韓アセアン経済大臣会合が、5月4日、カンボジア・シェムリアップにて開催された。

2.閣僚は、2000年11月25日にシンガポールで開催された日中韓アセアン首脳会議における首脳のイニシアティブについて議論し、APECやWTOなどの国際経済問題について意見交換し、メンバー国がIT、環境、中小企業、メコン河流域開発、標準・適合性評価における6つのプロジェクトを実施することを了承した。

協力の進捗状況

3.閣僚は、アセアンと北東アジア3カ国の二国間貿易が1999年上半期から2000年上半期までに38.2%伸びたことに留意した。貿易量は、1999年1月〜6月の665億ドルから、2000年の同時期には919億ドルに増加した。閣僚は、当該域内諸国間の協力のレベルが上がったことを踏まえ、東アジア諸国間の貿易・投資量が更に拡大する潜在力が高いことにつき合意した。

4.閣僚は、首脳が認めるニュー・エコノミーの重要性、e‐アセアン・イニシアティブの実施に向けアセアンが努力していることを踏まえ、IT分野の協力促進の必要性につき合意した。アセアンの閣僚は、アセアン・北東アジア間の情報通信技術の協力のためのフォーカル・ポイントとしての機能を果たすe‐アセアン+3作業部会に、中国、日本、韓国の政府職員が参加することを歓迎した。アセアンの閣僚は、また、アセアンが、特にIT分野における人材育成を通じ、アセアンがニュー・エコノミーを促進していることに対する支援を行うための中国、日本、韓国による様々なイニシアティブを歓迎した。これに関連して、閣僚は、官民セクターが中古の情報通信機材を、特にアセアン新規加盟国における高校に寄付するというプロポーザルに関心をもって留意した。

5.閣僚は、2000年10月に開催された第2回会合において、経済高級事務レベルが優先協力分野におけるプロジェクト提案を決断したことを想起し、メンバー国が作成した多くのプロポーザルを歓迎した。閣僚は、経済高級事務レベルの推薦を受けた以下の6つのプロジェクトを了承した。

(a)アセアン中小企業競争力強化

 グローバル化の挑戦と機会に対処するため、本プロジェクトは、中小企業によるネットワークづくり、更なる生産性向上のため、技術・経営上の経験の習得を図る。

(b)環境保全のための実用技術研修プログラム

 本プロジェクトは、環境保全、特に水質汚染処理に関する実用研修を提供する。

(c)アジア・スキル標準化イニシアティブ

 IT技術者共通のスキル標準を採用することにより、各国はIT人材不足に対処しやすくなる。本プロジェクトにより、各国は、かかる標準設定、特に情報処理技術者試験の発展における情報のシェアが可能になる。

(d)工業標準分野における適合性評価開発プログラム

 本プロジェクトは、各国の製品やサービスが国際規格に適合することを確実にするために、各国の適合性評価システム、特に試験、検査、品質・環境管理分野における能力向上を図る。かかる能力は、国際相互認証制度への、アセアン及び北東アジア諸国の参加拡大を促す。

(e)メコン河流域におけるソフト開発

 人材育成は、メコン河流域諸国の発展の助となる外国直接投資や貿易を引き付ける上で重要である。本プロジェクトは、メコン河流域における人材の更なる強化のために、国際貿易・投資関連法・慣習に関する研修コースや英語語学研修を提供する。

(f)アセアン衛星画像アーカイブ及び環境調査

 本地域が直面している重要なチャレンジの一つは、山林伐採、水質、洪水、乾期の長期化や公衆衛生といった、急速な近代化と工業化が環境に与えるインパクトである。本プロジェクトにより、各国は、これらの環境問題を調査、管理、解決するための、リモート・センシングや衛星画像アーカイブにおける既存の資源をシェアできることになろう。

6.閣僚は、2001年11月にブルネイで開催される日中韓アセアン首脳会議に進捗状況を報告できるよう、これら6プロジェクトについて、提案国がイニシアティブをとって調整し、早期に実施することを促した。閣僚は、上記6プロジェクトに加え、追加プロジェクトが提案され、経済高級事務レベルで議論されることを希望した。

国際経済問題

7.閣僚は、共通の利益を有する幅広い国際的・地域的経済問題について考察した。閣僚は、世界経済活動の減速の結果、域内で経済成長に対するリスクを削減する必要性を踏まえ、APECやWTOにおいて議論を形成していく重要性につき合意した。

APEC

8.閣僚は、中国が2001年のAPEC議長国になっていることを歓迎し、全てのメンバーがグローバル化やニュー・エコノミーの利益をよりよく享受できるように、「新世紀における新たなチャレンジ:参加と協力を通じた共通の繁栄の達成」というテーマの実現に対する全面的支持を表明した。

9.閣僚は、2001年6月6‐7日に中国・上海で開催されるAPEC貿易担当大臣会合への全面的支援を表明した。閣僚は、APECメンバーがグローバル化、デジタル・デバイド、ニュー・エコノミーの発展、多角的貿易体制がもたらすチャレンジに立ち向かうために、共同で対処すべきことに合意した。特に、閣僚は、協力強化に果たすAPECの役割が、世界経済の沈滞への対処、及び、経済的困難再発の予防に重要であることを主張した。

10.閣僚は、2001年5月15‐16日に中国・北京で開催されるAPEC人材育成ハイレベル会合の準備について報告を受けた。この会合は、経済のグローバル化、情報通信技術(ICT)の急速な発展を踏まえ、人材育成に対する挑戦に対処するため、域内のビジネス界、学界、官界のメンバーを集めて開催される。閣僚は、このイニシアティブを全面的に支持し、民間の各セクターや学界の会合への参加を保証することになろう。

WTO

11.閣僚は、グローバル経済活動における減速の可能性を熟考しつつ、ルールに基づく多角的貿易体制の強化に対するコミットメントを再確認し、その優位性を支持する旨を表明した。

12.閣僚は、2001年1月にメンバー国によって、クアラルンプールで開催されたセッションを通じ、アンチ・ダンピングや投資といったWTOの新ラウンドにおいて取り上げられ得るアジェンダに関して相互理解が深化していることを歓迎した。閣僚は、メンバー国によってなされたこれらの努力が、アンチ・ダンピングを含む、バランスのとれた、十分に広範なアジェンダの形成、ドーハにおける新ラウンドの立ち上げにとって、重要な貢献になることを強く断言した。

13.閣僚は、途上国の懸念が新ラウンドの中で真剣に取り扱われなければならないことに合意した。閣僚は、WTO協定実施のためのキャパシティ・ビルディングの更なる強化の必要性を強調した。閣僚は、また、WTOが21世紀におけるグローバル経済のニーズや挑戦に対応するべきことに合意した。

14.閣僚は、中国の間もなくの加盟を歓迎し、カンボジア、ラオス、そしてベトナムの加盟手続の加速化を支持した。

次回会合の日程及び場所

15.閣僚は、2001年9月にベトナム・ハノイで開催される第33回アセアン経済大臣会合の機会に再び集まることで合意した。

出席閣僚

会議への出席閣僚は、以下のとおり。

アディサイ タイ 商務大臣(議長)

ラーマン ブルネイ 産業・一次資源大臣

チャン・プラシット カンボジア 商業大臣

石広生 中国 対外経済貿易合作部長

ナザルディン・ナスティオン インドネシア 在カンボジア大使

今野秀洋 日本 経済産業審議官

黄斗淵 韓国 通商交渉本部長

スリウォン ラオス 工業手工業大臣

シデック マレイシア 通商産業省次官補

エーベル ミャンマー 国家平和発展評議会議長府付大臣

トーマス・アキノ フィリピン 貿易産業省次官

ジョージ・ヨー シンガポール 通商産業大臣

ルオン ベトナム 商業省次官

セベリーノ アセアン事務局長