データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本ASEAN友好協力に関する共同ビジョン・ステートメント-信頼のパートナー

[場所] 東京
[年月日] 2023年12月17日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

我々、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国及び日本は、2023年12月17日、日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議に際し、ここ東京に参集した。

1973年以来過去半世紀にわたる我々の広範な協力及び緊密なパートナーシップの重要な進展及び顕著な実績並びに国際社会において拡大するASEANの役割を認識し、

ASEAN憲章及び東南アジア友好協力条約(TAC)にうたわれている共通の原則、価値及び規範を再確認し、

2013年の日・ASEAN友好協力に関するビジョン・ステートメント、2020年のインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての第23回日ASEAN首脳会議共同声明及び2023年の日ASEAN包括的戦略的パートナーシップ立ち上げに係る共同声明を想起し、

AOIP及び日本の自由で開かれたインド太平洋(FOIP)ビジョンの双方が、地域の平和、安定及び繁栄を促進する上で、関連する本質的な原則を共有していることを認識し、

全ての人は、生まれながらにして自由であり、尊厳と権利とについて平等であり、理性と良心とを授けられており、互いに人道の精神をもって行動すべきであることを確認し、

以下を宣言する。

我々のビジョンは、国連憲章等にうたわれ、かつ、AOIP等により支持される共通の原則及び価値が保障され、全ての国が、平和及び繁栄を追求することができ、民主主義、法の支配及び良い統治並びに人権及び基本的自由の尊重及び保護の原則を堅持する世界を目指すことでり、

我々は、国連憲章及び1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法を堅持するとのコミットメントを再確認し、

我々は、発展するASEAN中心の地域的枠組みにおいて、開放性、透明性及び包摂性といった重要な原則を強化するAOIPの主流化に関する協力を推進し;

相互の信頼に基づき、ASEAN及び日本は、以下の三つの柱の下、ASEANの一体性及び中心性を尊重し、有意義で実質的かつ互恵的な包括的戦略的パートナーシップを強化する。

世代を超えた心と心のパートナー

我々は、以下を通じて、日ASEANパートナーシップの基盤として、相互信頼、相互理解及び相互尊重の「心と心」の関係を更に育むことにコミットする。

i. 文化・芸術、スポーツ及び観光等、分野を超えた青少年及び人的交流を強化する。

ii. 奨学金プログラム、語学学習並びに学生及び教職員の交流を通じた教育協力を強化する。

iii. 科学・技術・イノベーション(STI)及びグローバルな課題等の分野における知的、学術及び研究交流並びに協力を強化する。

iv. キャリア開発交流、ビジネス分野間のネットワーキング及び技能労働者の国境を越えた移動を奨励する。

v. 多様な文化及び伝統に対する相互理解を促進する。

未来の経済・社会を共創するパートナー

我々は、以下を通じて、多様で、包摂的で、強靭で、自由かつ公正な、繁栄し持続可能な経済・社会を共創し、共通の経済・社会問題に共に対処し、人間の安全保障を確保する。

i. ASEAN共同体ビジョン2025の実現に向けたASEANの統合及び共同体構築の努力並びにASEAN共同体ビジョン2045に関するASEANの強い願望を支援するとともに、地域の開発格差を是正するための協力を継続する。

ii. 質の高いインフラ投資、制度・人材開発、交流等を通じ、日ASEAN間の空の連結性を含む、連結性を強化する。

iii. スマートシティ協力を強化する。

iv. 中小零細企業(MSMEs)及びスタートアップに対するものを含むイノベーションを支援する。

v. 公衆衛生、医療及び福祉に関するパートナーシップを強化する。

vi. サプライチェーンの強靭性及び信頼性を強化及び確保し、次世代自動車産業等の産業競争力を強化する。

vii. 旗艦プロジェクトや、地域的又は多数国間の枠組み及び機関との協力等を通じ、貿易・投資を円滑化する。

viii. 金融の安定性を強化し、国際的なルール・スタンダードを遵守した透明で公正な開発金融を促進する。

ix. エネルギー協力を推進するためのアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想等の日本の取組に留意しつつ、持続可能なエネルギー安全保障を促進し、多様かつ現実的な道筋を通じたエネルギー移行を加速する。

x. 気候変動へ対処し、環境を保護し、また生物多様性を保全する。

xi. 人道支援及び災害救助、災害リスク削減並びに災害管理に関する協力の強化を含め、災害に対処する。

xii. デジタル化、ICTソリューション及び人工知能(AI)に関する協力を推進する。

xiii. 持続可能な農業用水管理を通じたものを含め、食料安全保障を確保するための強靭かつ持続可能な農業及び食料システムを構築する。

xiv. 外国人労働者の適正かつ適切な労働環境を促進するための協力を強化する。

xv. 女性、障害者、地方住民及びその他の脆弱な人々の保護及びエンパワーメントに関する協力を強化する。

xvi. 政府開発援助(ODA)を含む効果的かつ戦略的な開発協力を活用する。

平和と安定のためのパートナー

我々は、主権及び領土一体性の尊重、相違や紛争の平和的手段による解決、並びに武力による威嚇や武力の行使の放棄を含む、国連憲章及びTACにうたわれる共通の基本原則に導かれつつ、ASEAN一体性及び中心性、包摂性、透明性といった主要な原則を守り、ASEAN共同体構築プロセスを補完する、自由で開かれたルールに基づくインド太平洋地域を促進するとの共通の考えを確認し、それにより、以下につき重点的に取組む。

i. 海洋安全保障協力を含む安全保障協力を強化する。

ii. 軍縮・不拡散に関する協力を強化し、核兵器のない世界に向けて取組む。

iii. 法制度整備支援等を通じた法の支配の推進に加え、人権、民主主義及びグッドガバナンスの推進に係る対話及び協力を強化する。

iv. 女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダを含むジェンダー平等を推進する。

v. 平和、紛争管理及び紛争解決のための協力を強化する。

vi. サイバーセキュリティ並びにテロ、国境を越える犯罪及び偽情報対策等の分野における協力を強化する。

2023年12月17日、実施計画と共に東京で採択された。