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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第10回ASEAN閣僚会議コミュニケ

[場所] シンガポール
[年月日] 1977年7月8日
[出典] 外交青書22号,408−410頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.第10回ASEAN閣僚会議は,1977年7月5日より8日までシンガポールにおいて開催された。会議は,シンガポール首相リー・クァン・ユー閣下によつて正式に開会された。

2.会議には,インドネシア外務大臣ハジ・マリク博士閣下,マレイシア外務大臣トゥンク・アーマド・リタウデイン閣下,フィリピン外務長官カルロス・P・ロムロ博士閣下,シンガポール外務大臣ラジャラトナム閣下及びタイ外務大臣ウパディット・パチャリャンクン博士閣下及び5カ国の各代表団が出席した。

3.ASEAN事務総局長ハルトノ・ルクソ・ダルソノ閣下も出席した。

4.リー・クァン・ユー首相閣下は,開会の挨拶において,シンガポールの第4回ASEAN経済閣僚会議では,多くの問題についてある程度の理解が得られたとのべた。同首相は,同会議での決定は,きたるべきクアラ・ルンプールのASEAN首脳会議の議題に当然加えられるべきものであるとのべた。同首相は,世界は変動の状態にある故,ASEANの将来は,他国がASEAN諸国のために何をなそうとするかあるいはなすことができるかということよりもASEANが何をなすことができるかということにより多く依存するであろうとのべた。ASEANは,特に経済・政治分野において,加盟諸国間の協力によりイニシアチブをとらねばならないだろう。より緊密な経済的結びつきは,南東アジアの安定と繁栄の機会を増すであろうから,グループとしてのASEANは,日本,豪州及びニュー・ジーランドとより緊密な建設的,補完的関係を樹立せねばならない。

5.リー・クァン・ユー首相は,南東アジアの政治情勢の変化により,ASEAN諸国は相互内政不干渉の保証のもとにヴィエトナム,ラオス及びカンボジアとの間に,建設的かつ生産的基礎に立つ関係の樹立が必要になつたとの考えをのべた。

6.リー・クァン・ユー首相は,強力で活気に満ちた繁栄するASEANは,望ましい経済・貿易のパートナーとなるであろう旨強調した。ASEAN諸国が,迷惑な敬遠されるべき負債としてではなくより緊密に連合された望ましい資産としてみなされることは重要である。同首相は,1977年6月29日の米国務長官の演説が米国と東アジア及び太平洋間の経済面での関係を強調していることに言及した。この演説を行うことによつて,米国務長官は,米国,ASEAN間の協議が南東アジアの地域努力に対しより強い米国の支持の基礎を与えるであろうとの希望を表明したのである。

7.同首相は,さらに続けて先進工業諸国の困難な経済状況は,時期をかえて結局は南東アジア及び太平洋の諸国を圧迫するであろうと述べた。先進工業諸国は,自由貿易の重要性についてのべる一方,ひそかに保護主義的措置を導入した。

8.リー・クァン・ユー首相は,先進工業諸国をしてASEAN諸国に投資し,その工業化を促進することに意義を見い出さしめるような新戦略がASEANの協力によつて採用され得るかどうか質問した。同首相は,若しもASEAN諸国と先進工業諸国の双方にとつて有益な措置がASEANによつてとられるならば,先進工業諸国はASEAN諸国との経済関係の拡大を欲するであろう旨述べた。

9.外務大臣は,きたるASEAN首脳会議及びASEANと豪州,日本,ニュー・ジーランドとの首脳会談の準備と提案議題につき討議した。外務大臣は,きたるべきこれらの首脳会談はより大きな地域協力及びASEANと上記3国間の関係の強化・拡大へのはずみを与えるであろうとの確信を表明した。

10.会議は,常任委員会の年報を承認し,実施済プロジェクト数の心強い程の増加に対して満足の意を表明し,これがその他の具体的な地域的努力にまで及ぶであろうことに注目した。

11.東南アジアにおける発展及び1976年8月8日設立以後のASEANの活動を再検討して,会議は,ASEAN諸国の集団的努力及び責任の増大が,ASEANをして結合力のあるダイナミックな地域機構に発展するのを可能ならしめたことに満足を表明した。

12.会議は,バンコク宣言及びASEAN協和宣言の原則及び目的に対するASEAN諸国のコミットメントを再確認した。これらの歴史的文書は,ASEAN協力と国際関係におけるASEANの拡大している役割を更に強化するための基礎及び行動の枠組を引続き提供するであろう。

13.会議は,ASEANの原則と目的を具体化している基礎的取極としてのバンコク宣言の地位を維持するとの決定を守りつつ,拡大しつつあるASEANの活動を更に効果的,能率的に処理できるようその機構を強化するため組織を改革することに合意した。

14.会議は,貿易,産業,食糧・農業・林業,財政・銀行業,運輸及び通信,特にASEAN特恵貿易協定に基づく71品目の貿易上の譲許の交換における協力の拡大のためにASEAN経済閣僚の努力が著しく進展したことを賞賛し,これらの分野における地域協力の規模を拡大し速度を早めることの重要性を強調した。

15.会議は,豪州,カナダ,EEC,日本,ニュー・ジーランド及び米国との正式な協力関係を強化・拡大する措置について合意した。

16.会議は又,ASEANがEEC及びその他の先進諸国との間で,相互の関心事項を協議するために,合同の協議グループを設置すべきであるということに合意した。

17.会議は,先進諸国が,ASEAN諸国への投資量を増大しASEANの輸出所得とASEAN産品の価格を引き合うレベルで安定させ,先進諸国へのASEANの輸出のアクセスを改善するような政策を採用するよう要請した。

18.会議は又,南東アジアにおける平和・自由・中立地帯の設定に関するクアラ・ルンプール宣言へのASEANのコミットメントを再確認した。会議は,平和・自由・中立地帯に関する高級官吏委員会の報告を採択した。ASEAN諸国は既に提案されている種々の最初にとるべき手段に関する審議を継続し,域外大国からのいかなる形式・方式による干渉にも拘束されない平和・自由・中立地帯の設定を促す条件をつくり出すイニシアチブをさらに検討することが合意された。

19.外務大臣は南東アジア情勢を再検討し,相手国の主権と領土保全の相互尊重及び相手国の内政に対する不干渉の基礎に立つて,カンボディア,ラオス及びヴィエトナムを含むすべての国との間に平和的かつ相互に利益となる関係を促進したいとのASEAN諸国の願望をくりかえしのべた。

20.外務大臣は,1977年6月29日の米国務長官の演説,特にASEANと米国との関係への言及に関心をよせた。

21.会議は,中東情勢を検討し,国連の関連決議に従い,パレスチナ人民の奪うことのできない権利ならびに不法に占領されたアラブ領土からの撤退を含むすべての関係諸国の合法的権利と利害を考慮に入れた正当かつ平和的解決に対する支持を表明した。これに関連して,会議は,紛争の早期解決に関する新たなイニシアチブを歓迎した。

22.外務大臣は,国際平和と安全に対する脅威をなしている南部アフリカにおける人種差別主義者少数政権の依然たる非妥協的態度に憂慮の意を表明した。外務大臣は,国連憲章の原則と目的及び国連の関連決議に従い,自決の原則と南部アフリカにおける多数支配のための闘争に対する全面的支持をくりかえし表明した。

23.第11回ASEAN閣僚会議は,1978年にタイで開催される。

24.インドネシア,マレイシア,フィリピン及びタイの代表団は,彼らに供与された温い惜しみなき款待と会議の卓越した準備に関し,シンガポールの国民及び政府に対し謝意を表明した。

25.会議は,ASEANの友好と連帯の伝統的精神において開催された。