データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第6回ASEAN閣僚会議プレス・ステートメント

[場所] 
[年月日] 1973年4月17日
[出典] 外交青書17号,594−596頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 1. マレイシア副首相,インドネシア,フィリピン,シンガポール各外務大臣,タイ外務副大臣は,共通に関心ある事項に関し定期的に非公式な協議を行なうとのASEAN諸国外相の確立した慣行に従い,第6回ASEAN閣僚会議のためタイのパタヤに滞在中の1973年4月17日にかかる協議を行なった。閣僚は,広範な問題及び地域に影響ある重要な国際情勢の発展を討議,検討した。

インドシナ

 2. 閣僚は,本年2月のクアラルンプールにおける最近の外相会議がヴィエトナム停戦協定を評価し,東南アジアに対するその意義を検討するために開催されたものであったことを想起し,より最近における情勢の発展について全面的検討を行なった。

 3. 閣僚は,この関連から,東南アジアにおける平和と安定が諸国の発展及び進歩という目的達成のために死活の必要性を有することを十分認識し,インドシナ復興再建事業に進んで寄与を行なう用意がある旨を再確認した。閣僚は,クメール共和国及びラオス王国における深刻な情勢に特別な関心を表明し,インドシナにおける真の持続的平和の見通しを高めるため,ASEAN加盟国はもとより一層の努力をなすべきであるとの見解を示した。

全東南アジア諸国会議

 4. 閣僚は,東南アジアの安全保障と安定は域内諸国の集団的責任であり,それ故に域内諸国は平和的手段により諸国間の相異を解決すべきことを認識し,全域内諸国が相互の関心事項を討議するにあたつては,善隣の精神と何人に対しても悪意を抱くことのない態度をもつて相つどう必要のあることが感ぜられた。

 閣僚は,域内の安全保障に関連して,「安全保障」はそのもつとも広範な意味において,すなわち,域内における政治的,経済的安定,真の平和及び社会的平穏の確立という意味において解釈されるべきであることに合意した。

 5. 閣僚は,右との関連において,全東南アジア諸国会議が適当な時期に以下のような広範な目的を持つて招集されることが望ましいことを再確認した。

  A)提案された会議は,地域にとつて枢要な利害関係を有する諸問題を討議するためのアジアのフォーラムとなるであろう。

  B)会議は誤解や疑念が存在する場合にはいかなる時またいかなる場所においてもこれらを除去,解消し,地域全体としての利益を保障するために東南アジア諸国の間に生産的かつ平和的協力関係をもたらすことを目的とすべきである。

  C)また,東南アジア諸国は,域内の安全保障はASEAN諸国の第一義的責任であるとの原則に従い,上記パラグラフ4で規定されたようなもつとも広範な意味での東南アジアの安全保障という共通の目的達成のために共同して活動すべきである。

平和,自由,中立の地帯

 6. 閣僚は,クアラルンプール宣言実現に向つての進歩状況を検討し,東南アジアの平和,自由,中立地帯の実現を漸進的に実現するための良好な雰囲気が生まれつつあるとの確信を表明した。

 閣僚は,この点に関して,平和,自由,中立地帯の内外の諸国家間の関係のための一連のガイド・ライン及び同地帯創設促進のための若干の行動の指針を含む第2回上級官吏委員会のジャカルタ会合の報告書に同意を与えた。閣僚は,次回上級官吏委員会会合をマニラにおいて主催する用意があるとのフィリピン政府の申し出を歓迎した。

国際的フォーラムにおけるASEANの共同の立場

 7. 閣僚は,ASEAN加盟国はその定期的な相互の討議を通じて,志を同じくする諸国の精力的なグループとして国際的会合及びフォーラムに登場してきたことに留意した。閣僚は,アジア・太平洋地域諸国間における公的関係が変化していることを含め,国際情勢の急速に展開する動きが生じている現下の状況においては,特に経済的技術的な協力を討議する国際機関及び会議の場において先進的な諸国と交渉する場合には,ASEANの共同の立場を提示する慣行を一層促進すべきであるとの見解を示した。

南部フィリピン情勢に関する報告

 8. 閣僚は,南部フィリピンの少数回教徒に関するフィリピン外務大臣の実情説明及び特に同地域における情勢改善のためにフィリピン政府が払つている努力にそれぞれ留意した。閣僚は,また,フィリピン政府がマレイシア及びインドネシア政府に対し,最近のベンガジ会議において両国が与えた支持につき感謝の念を表明したことに留意した。

群島国家の諸原則

 9. 閣僚は,インドネシア及びフィリピンによつて作成された群島国家に関する原則草案についての最近の発展に関する報告を受け,来たるべき国連海洋法会議に関連する他の事項とともに,この問題に関しASEAN加盟国間で研究,討議を継続することに同意した。

 10. 閣僚は,パタヤにおいて行なわれた友好的かつ実りある非公式討議に満足の意を表明した。インドネシア,マレイシア,フィリピン,シンガポールの各閣僚は,タイ外務副大臣に対してはその秀れた議事進行について,またタイ政府に対しては会議が模範とすべき方法で行なわれ,かつ会議期間中提供された心あたたまる接遇と便宜について,完全な満足の意と深い感謝の念を表明した。