データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] フィリピン共和国及びマレーシア訪問等についての会見(岸田内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 2023年11月5日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

(東シナ海・南シナ海の情勢についてフィリピン共和国及びマレーシアに期待する取組及びASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会議に向けて、今回の歴訪の成果をどのようにつなげていくかについて)

 はい、東シナ海、また南シナ海など国際情勢が一段と厳しく複雑になっているその中にあって、今回、マルコス大統領、アンワル首相と、二国間関係のみならず、地域や国際情勢等についても意見交換を行いました。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、そして人間の尊厳が守られる世界を目指していく、こういった点については、両首脳と認識を一致し、緊密に連携していくことを確認したことは、意義ある会談であったと思っています。その中で、特にフィリピンとの間では初となるOSA(政府安全保障能力強化支援)ですとか、円滑化協定(RAA)の交渉開始、そして海上安全保障能力向上など、具体的な進展が見られました。これについては着実に進めていきたいと思っています。

 そして12月に東京で、日ASEAN50周年の年に当たって、特別首脳会議を予定しているわけですが、その会議に向けての日ASEANの協力強化、これについても確認いたしました。12月の会議においては、新しい時代に向けた日ASEANのビジョンを発表したいと考えています。こうしたビジョン発出に向けて、引き続き、フィリピン、マレーシアを始め、ASEAN各国首脳とも緊密に連携し、協力を続けていきたいと、このように思っております。以上です。

(イスラエル・パレスチナ情勢について最新の情勢をどう捉えているか、また事態の鎮静化に向けてどう取り組むかについて)

 まず現地の情勢は、一般市民の人道状況を含め、大変厳しい、そして予断の許されない状況にあると感じています。深い懸念の思いを持って注視をしております。この週末、御指摘のように、上川大臣が、イスラエル、パレスチナ、そしてヨルダンを訪問し、各国要人との会談において、日本の立場を伝えると同時に、人道状況の改善、そして早期の事態鎮静化、こうしたことを直接、働きかけを行いました。また、G7外相会合も今週予定されています。そこで突っ込んだ意見交換が行われること、これを期待したいと思っています。

 私も、今回のフィリピン、そしてマレーシア訪問において、両国首脳との会談において、イスラエル、そしてパレスチナ情勢について取り上げ、意見交換を行いました。日本としては、現地の情勢、刻々と変化をしています。この情勢の変化、これをしっかりと把握しながら、一刻も早い人道状況の改善を目指して、一時人道的休止ですとか、事態の早期鎮静化に向けて、各国と協力していかなければならないと思います。これから予定されている様々な国際的な政治日程、これの中で、日本として各国と意思疎通を図りながら、事態の鎮静化、一時休止に向けて、貢献をするべく努力をしていきたい、このように思っております。

(ロシアでCTBT(包括的核実験禁止条約)の批准を撤回する法律が発効したことについての所見及び「核兵器のない世界」の実現に向けた、今後のアプローチについて)

 御指摘のロシアの動きについては、既にSNSで私の考え方を示させていただいておりますが、ロシアの今回のCTBT批准撤回、これはCTBTの発効促進に向けて、これまで国際社会が長年にわたって努力をしてきました。こうした努力の積み重ねに逆行するものであり、極めて遺憾であると考えています。核軍縮をめぐる情勢、極めて厳しい状況にあると認識していますが、だからこそ、被爆地出身の総理大臣として、CTBTの批准を始めとする現実的かつ具体的な取組、実践的な取組を進めていかなければならないという思いを新たにしています。「核兵器のない世界」に向けて、引き続き、様々な国際場裏の場、あるいは会議の場、あるいは二国間関係を通じて、日本としての立場を働きかけていきたい、このように思っています。以上です。