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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 野田内閣総理大臣記者会見(2012年6月4日)

[場所] 
[年月日] 2012年6月4日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【野田総理冒頭発言】

 野田内閣は昨年の9月に発足をし、それ以来、震災からの復興、原発事故との闘い、日本経済の再生を最優先、そして最重要な課題として取り組んでまいりました。そして、今年初め、通常国会が始まる前に、第一次改造内閣をつくりました。以来、国会に入りましてみんなで力を合わせて平成24年度の予算を成立させ、復興庁を立ち上げ、あるいは懸案でありました郵政民営化関連法を成立させ、さらには国家公務員の給与引下げ等々、やるべきことを懸命に力を合わせてやってまいりました。

 そうした取組を進めている中で、いよいよ国会の会期も約20日を切るという大変重要な局面を迎えております。こうした中で今、国会で御審議をいただいている社会保障と税の一体改革含め、さまざまな諸懸案を前進させるための環境整備をするべく、今回、内閣の機能強化という視点の下で改造を行わせていただくこととなりました。

 勿論、これまでと同様にデフレ脱却、行政改革の取組等々、みんなで力を合わせてやるべきことをやり遂げていきたいと考えております。

 それでは、私から第二次改造内閣の閣僚を発表させていただきたいと思います。

 法務大臣、滝実さん。国民にとって身近な司法を実現するとともに、検察の信頼回復を図る大事な役割を担う、その大臣として、法務副大臣を繰り返し務められ、法務行政に精通をされておられます、滝さんにお願いをすることといたしました。

 農林水産大臣、郡司彰さん。食と農林漁業の再生は被災地だけではなく、日本全国で待ったなしの課題であります。農林水産副大臣を務め、現在は参議院の農林水産委員会の筆頭理事を務めておられる郡司さんにお願いをすることといたしました。

 国土交通大臣・海洋政策担当、羽田雄一郎さん。大震災の教訓も踏まえ、持続可能で強靭な国土づくりを進めなければなりません。参議院の国土交通委員長も務められ、直近も国対委員長として与野党の調整に奮闘されてきた政治経験を持つ羽田さんにお願いをすることといたしました。

 防衛大臣、森本敏さん。改めて申し上げるまでもなく、安全保障に関する我が国の第一人者のお一人でございます。北朝鮮問題を含め、我が国を取り巻く安全保障環境が不透明となる中、我が国の平和と安全を守るために大いに力を発揮してもらえるものと確信しております。国民の皆様への情報発信にも万全を期してもらえると期待しています。

 郵政民営化担当・内閣府金融担当特命大臣、松下忠洋さん。郵政民営化法に基づき、郵政改革はこれからが実行段階であります。金融行政も欧州危機の波及を防ぎ、被災地の二重ローン問題や国際会計基準への対応など、重要な課題が山積をしています。政権交代後、経済産業副大臣を長く務められ、震災後は福島再生や被災地復興に力を尽くされてきた長い政治経験のある松下さんにお願いをすることといたしました。

 以上、申し上げた方々以外の閣僚はすべて再任となります。

 以上が第二次改造内閣のメンバーです。本日、午後5時からの認証式を経て、正式に任命される運びとなります。初閣議は、午後8時45分からを予定しています。

 会期末に向けたこれからの約20日間は、日本の将来を左右する大きな決断のときとなると思います。これまで私は、政局よりも大局をと呼びかけてまいりましたけれども、与野党の垣根を越えて、是非すべての政治家の皆様にこの思いが届けば、もう届いていると思いますが、そうしたことを踏まえまして、今、国会の中では、特別委員会で一体改革への議論が行われております。長い時間をかけて法案をまとめた民主党の同志の皆様の汗をしっかり踏まえなければなりませんが、自民党を始めとする野党の皆さんも、このことを正面から受け止めて、今、特別委員会で真摯に御議論をいただいています。建設的な議論が積み重ねられてきていると認識をしています。

 国会は言論の府であります。当初の立場を乗り越えて、合意を導くという熟議の民主主義の実践の場であるということを国民の皆様にお示しをするためにも、国会審議のみならず、自民党を中心とする野党の皆さんとの政党間の協議を改めてお願いさせていただきたいと思います。

 私たち政治家の決断は、国民の皆様お一人お一人の考え方に大きく左右されます。厳しい財政状況の下で社会保障を持続可能なものとするために、その改革を成し遂げていかなければなりません。まだ大丈夫だと言いながら、問題の先送りを続けていいのか。いつまでも子や孫の世代につけ回しをしていいのか。こうした現状を踏まえて、まさにしっかりとこの国会中に結論を得なければいけないと思います。

 熟議を尽くした後に、決断し、実行することの政治、これを目指しておりますが、与野党を超えて、みんなでそうした思いの中で結論を出していきたいと思いますし、私もこの時期にこの厳しい状況の中で内閣総理大臣を拝命したのも、ある種の天命だと思っています。国のためにやるべきことをやる。この覚悟以外、私の心、私心はございません。そうした思いで政治生命をかけると申し上げてまいりましたが、まさにこれから日々、全身全霊を傾けて、一日一日大事な決断をしていきたいと考えております。

 是非、良識ある国民の皆様の御理解を改めてお願い申し上げて、冒頭の私の御報告とあいさつにしたいと思います。


【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、質疑に移ります。

 指名された方は、まず所属と名前をおっしゃってから、質問をお願いいたします。

 それでは、どうぞ。

(記者)

 読売新聞の望月です。

 前回、1月13日の内閣改造からわずか5か月足らずで、再度の内閣改造ということになったわけですけれども、これは最善かつ最強の布陣とおっしゃっておられたのですが、総理の人選に問題があったのではないかという見方は避けられないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

今回の改造人事でも、初めて民間人の方を防衛大臣に充てられることなどについて、いろいろな見方が出ているわけですけれども、そういった点についていかがでしょうか。

 また、今回、問責決議が可決された2閣僚を交代させたわけで、消費税率引上げ関連法案の修正協議を自民党に求めていくのだと思われますが、自民党の谷垣総裁は、そのけじめとして、選挙で国民に信を問うことが必要ではないかということを言っておられるわけですが、これから直接党首会談などを呼びかけられて、そうしたことを含めて直接協力を求められるお考えはおありなのでしょうか。

(野田総理)

 大きく分けて、二つの御指摘でしょうか。

 最初はなぜこの時期にこういう内閣改造なのかということだと思います。これは冒頭、申し上げたとおり、一体改革も含めてでありますが、さまざまな諸懸案を前進させるために内閣機能強化をするということが基本的な意義であります。

 そして、時期あるいは人事の中身でありますけれども、これについては、私は適切な時期、適時、そして、適切な人、適材を選ばせていただいたと思います。民間からの防衛大臣ということも含めてでありますが、適材適所という観点で選任をさせていただきました。

 後段の方の御質問は、谷垣総裁と会談をするのかというお尋ねだと思いました。今、修正といいますか、政党間の協議をきちんと自民党とやらせていただく中で、その進展を見ながら、必要なときには、私は党首間の会談はどこかの段階で必ずやらなければいけないと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 佐藤さん、どうぞ。

(記者)

 日本テレビの佐藤です。お疲れ様です。

 今月21日に会期末が迫っておりますので、終盤国会の消費税増税を含む一体改革法案、この対応を具体的にお伺いしたいのですけれども、先ほど政府民主の会議でこの法案を今の国会で採決するように指示されたということでよろしいでしょうかということと、今月は中盤にG20がありまして、総理の日程を考えますと、実質的には15日までが採決のタイミングではないかと思います。その15日までということでよろしいかどうか。また、その採決を指示されたとするならば、その理由ですね。今の会期中に採決するという理由を併せてお聞かせください。

(野田総理)

 今国会中に一体改革法案は成立をさせる。これが基本です。これはやらなければいけないと思います。全力を尽くしたいと思います。相手もあることですから、かみ合った議論をし、お互いが信頼感を持って協議をするためには、当然のことながら、今、決まっている6月21日というおしりを見据えて、それまでに衆議院で採決をする。そのために最大限の努力をするのが政府与党の務めだと思います。そのことを改めて今日の政府民主三役会議でお伝えをさせていただきました。

 そのための協議を修正協議を改めてしっかりと求めて、実質的に日々進展をするようにお願いをいたしました。それぞれの司、司にはお任せをしますが、大事な局面なので、毎日的確な情報を上げるように、そして、必要な判断は私がするということもお伝えをさせていただいております。

(記者)

 15日までに採決しろという指示と受け止めていいですか。

(野田総理)

 21日がおしりですから、それを見て、衆議院で採決できる環境整備をする。15日というお話がありますが、協議が整わないで採決、否決というのは困るんです。あくまで協議の進展を見ながら何日ということになると思いますが、しかし、21日が基本的におしりで、それまでに採決できる環境整備に全力を尽くすということでございます。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは、広川さん、どうぞ。

(記者)

 ブルームバーグの広川ですけれども、円高が続いている中で、今日もTOPIXがバブル後最安値を更新する深刻な事態になっています。日本政府はこれまで急激な為替の変動に対して、単独の円売りドル買い介入も辞さない姿勢を示してきました。それを実際にやってきました。この姿勢に変更がないという認識でよろしいのか。また、マーケットでは先週末から日本が円売りドル買い覆面介入に踏み切ったという観測も出ているのですが、事実関係を確認させてください。

(野田総理)

 一定の為替の相場観を私が口にすることは妥当ではないと思います。水準についてコメントをすることは。ただし、最近の円高の動きというのは、日本経済の実態を表したものではない、一方的な動きであると認識をしております。

 それを踏まえて、今、介入に関するお話がございましたが、これは財務大臣の専権事項ですので、これも私がその上から物を言うことは妥当ではありませんが、基本的には今のマーケットをしっかり緊張感を持って注視を財務大臣がされていると思いますし、従来の方針、過度な変動、無秩序な動きに対する対応、それは当然基本に置きながら、今のマーケットを見ていると思っております。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは、高塚さん、どうぞ。

(記者)

 毎日新聞の高塚と申します。

 総理、先ほど採決できる環境づくりに全力を尽くすということでしたが、その消費税増税法案の成立に向けて、総理が協力を求めている自民党内は、早期の解散総選挙というものを求める声が根強くあると思います。一方で、民主党の09年マニフェストには、消費増税というのは入っていませんでした。健全な民主主義政治を推進するという観点からも、消費増税を決定したのであれば、早期に解散総選挙をやるべきだという指摘が出ております。解散総選挙については、どうお考えでしょうか。

(野田総理)

 これはもう従来から言っているとおりです。一体改革は勿論入ります。大きな要素ですけれども、やり遂げなければならないことをしっかりやり抜いた後で民意を問う、そういう姿勢です。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。

 それでは、神保さんどうぞ。

(記者)

 ありがとうございます。ビデオニュースの神保です。

 総理、再稼働問題についてお伺いします。総理は5月30日の4大臣会合で、最終的には総理大臣である私の責任で再稼働を判断するというふうに発言されました。当然、その責任の中には原発事故が起きた場合の責任も入ると思いますが、総理はそこで責任とおっしゃるときに、総理大臣の原発に対する責任、特に事故が起きた場合の責任というのは、どのようなことをお考えになって、その責任という言葉をお使いになったのか、お願いいたします。

(野田総理)

 この再起動に関しては、改めて3つのことを申し上げたいと思うのです。

 一つは、我々は事故から多くのことを学びました。二度と同じような事故は起こしてはいけない、そういう決意のもとで政府も、そして事業者も安全対策、そして緊急対応の整備に万全を期すということであります。

 二つ目は、今回の事故を踏まえて、IAEAのいろんな御提起であるとか、あるいは原子力安全委員会等々、さまざまな専門家の御意見を聞いてきて、これは何回も申し上げていますが、オープンな場で40回以上、専門家の知見を集めながら、議論もしながら、今回のいわゆる安全対策、基準をつくりました。これによって、先般起こった、去年起こったような地震・津波が発生したとしても、いわゆる炉心損傷にならないということの対策は既に整えられているということであって、安全性はしっかり担保するということであります。

 もう一つは、これは必要性の議論でありますが、これは夏場の電力確保だけではなくて、エネルギー安全保障であるとか、あるいは電気料金値上げによって国民の負担が増えてしまうようなことがないように抑制をするとか、日本経済社会全体の発展のために再稼働というのは必要である、重要である、こういう認識でございます。

 その上で先般、今、私の話がありましたが、今日も細野大臣と斎藤官房副長官が福井にお訪ねしてさらなる御説明をいたしますが、立地自治体の御理解を得ることができるならば最終的には4大臣でそのことによっての判断をしますが、その判断の最終責任者は私である。その判断のもとで、先ほどの安全性の問題はしっかり確保して、今、御指摘のような心配が起こらないようなことに万全を期することによって責任を果たしていきたいと思います。

(内閣広報官)

 それでは、最後の質問とさせていただきます。

 それでは、加納さんどうぞ。

(記者)

 産経新聞の加納です。

 今後の与野党協議と野党の協力についてお伺いしたいのですけれども、与野党協議に当たっては、自民党だけとやるのか、それとも、全野党対象に呼びかけて合意を目指すのか。それがまず一つです。

 もう一つは、これから先の与野党協力なのですけれども、震災復興の案件などではかなり民主党、自民党、公明党、協力してやってきたと思うのですけれども、将来、大連立とか、そこの協力関係をそこまで進めるおつもりはありますでしょうか。

(野田総理)

 まず前段の部分で、与野党協議の枠組みという指摘ですけれども、当然、法案の成立を期するということならば野党第1党、一番大きな野党である自民党の皆さんとしっかり協議をして、そこで成案を得るということが一番重要です。一方で、これは私自身はなるべく多くの方の御賛同を得ながら、この大事なテーマの結論を出したいと思いますので、むしろ、この協議に理解のあるところについては、これは声をかけていくというのは自然なことではないでしょうか。そういうことを輿石幹事長は念頭に置いておられます。

 その中で、全野党という言葉がありましたけれども、協議の実質は、今、申し上げたことに尽きると思います。ほかの党で御賛同いただける可能性、協議に大変関心を持っていらっしゃる政党があるならば、それは排除することは失礼だと思いますので、そこを門戸を広げて与野党の協議と言っているのであって、実質と形の部分で若干混乱があるようでありますが、全部の野党が集まって、そこでみんなで協議したらまとまりません。そういう手法をとることは毛頭考えているわけはないと思いますので、そこはきっちり整理をさせていただきたいと思います。

 その上で、後段は連立のお話ですか。私はこういう大事な国益に関わるテーマ、将来世代に関わるテーマ、大きなテーマで、まさに政策のスクラムを組んで一つ一つに合意できるかどうか、それが今、ねじれた国会ですから、問われていると思います。一つ一つ、そういう議論を重ねながら結論を出していくということで、いわゆる政局的な何かを考えているわけではございません。

(内閣広報官)

 それでは、これをもちまして総理会見を終わります。

 どうもありがとうございました。

(野田総理)

 ありがとうございました。