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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ラオス首脳会談に関する共同プレス発表

[場所] 
[年月日] 2012年3月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 仮訳
[全文]

1.野田佳彦日本国内閣総理大臣の公式の招待により、トンシン・タンマヴォン・ラオス人民民主共和国首相は、2012年3月14日から18日まで、日本を訪問した。トンシン・タンマヴォン首相は、2012年3月16日に東京において、野田佳彦内閣総理大臣と首脳会談を行った。

2.野田佳彦内閣総理大臣は、東日本大震災に際し、ラオス政府及び同国民から示された力強い支援及び連帯に心からの謝意を表明した。両首脳は、かかる多大な善意及び温かい感情は、日本政府及び日本国民とラオスとの間の長年にわたる緊密な友好関係の証であると認識した。トンシン・タンマヴォン首相は、ラオスで発生した洪水被害に際する日本からの迅速な支援に心からの謝意を表明した。

3.両首脳は、日本とラオスが50年以上にわたる外交関係及び協力の中で培ってきた強固な関係及び相互信頼は両国共通のかげがえのない資産であることを改めて表明した。両首脳は、「恒久的な友好関係及び地域の繁栄に向けた包括的なパートナーシップ」の下での協力を一層推進していく継続的なコミットメントを表明した。

二国間の交流

4.相互理解が緊密な二国間関係の基礎であるとの認識に基づき、両首脳は、ハイレベルの往来をより頻繁に実施し、また、高級実務者間の政策対話を強化する意思を確認した。

5.また、両首脳は、青少年交流を含む人的交流の重要性を強調するとともに、野田佳彦内閣総理大臣は、今後数年のうちに、東日本大震災後の日本の復旧の努力への世界の理解を増進することを目的とした、新たな青少年交流計画である「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」や21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)プログラムを含む様々な招へい計画を通じて、ラオスの青少年を日本に招へいする意思を表明した。両首脳は、日本に留学、または、日本語を学習したことのあるラオスの学生がそれぞれの分野で、日・ラオス間の協力の推進に寄与することを期待する旨表明した。

6.両首脳は、日本からラオスへの観光客の増加は、相互理解の向上及びラオスの発展に寄与するとの認識を共有した。この文脈で、両首脳は、4月の日本とラオス間の臨時直行便の運行開始を両国の観光交流を促進するものとして高く評価した。また、両首脳は、文化遺産保護及び観光促進のための専門家派遣の分野において協力を促進する意思を表明した。両首脳は、日本とラオスとの外交関係樹立60周年記念となる2015年に向けて文化交流を推進することについて協議した。

二国間関係強化のための協力

7.両首脳は、日本の政府開発援助(ODA)及び日本企業による貿易・投資の双方がラオスの持続的な経済成長のために重要であるとの認識を共有した。

8.ODAに関しては、野田佳彦内閣総理大臣は、ラオスにおける開発需要の高まりを認識して、ラオスへ円借款を供与するとの日本の決定を表明した。これに関連して、両首脳は、南部地域電力系統整備計画に係る交換公文の署名を歓迎し、同プロジェクトがラオスの送電線網強化を通じて、同国の経済成長及び社会福祉の向上に資するものであることを再確認した。野田佳彦内閣総理大臣は、ラオスの開発を効果的に支援するために円借款を供与する意思を述べた。これに対し、トンシン・タンマヴォン首相は、日本がラオスに円借款を供与することを決定したことを高く称賛し、ラオスのオーナーシップの重要性を強調しつつ、日本からの円借款をラオスの開発のために効果的に活用するとともに、ラオス経済の繁栄のために経済改革を一層推進する決意を改めて述べた。

9.両首脳は、ラオスが基礎的な社会・経済インフラを向上させるとともに、貧困削減及び能力向上に係る取組を強化する必要があることを確認した。日本はインフラ開発、農業、教育、保健等の分野においてラオスを支援する意思を強調した。

10.上記の円借款に加え、野田佳彦内閣総理大臣は、2011年にラオスで発生した洪水の被害を受けた地区及び人々のためのラオス政府の復旧・災害予防に係る取組に資することを目的に、ノン・プロジェクト無償資金協力を実施する意思を表明した。トンシン・タンマヴォン首相は、日本政府のこの決定を高く評価し、日本の無償資金協力によって提供された機材を活用し、ラオス政府及び国民は、その貧困の改善に取り組む旨述べた。

11.両首脳は、より統合された地域経済がラオスの持続的な発展に資するとの認識を共有した。この関係で、トンシン・タンマヴォン首相は、東西経済回廊への支援を含む、日メコン協力の下でのメコン地域開発のための日本の支援を高く評価した。

12.また、トンシン・タンマヴォン首相は、ラオスが承認した「ビエンチャン都市開発マスタープラン」に留意しつつ、税関手続の調和、越境交通車両の相互認証等の改革を推進し、日本の支援によって建設されたインフラを最も効果的に使用するというラオス政府のコミットメントを表明した。

13.民間部門による投資については、トンシン・タンマヴォン首相は、開発を推進する上で投資が果たす重要な役割を認識し、規則の公正な適用及び潜在的な投資家への情報提供を含め、良好な投資環境をラオスで整備することにつき、強いコミットメントを表明した。両首脳は、ラオスにおいて高い潜在力を有する電力、農業、鉱業等の分野への中小企業を含む日本企業による投資を歓迎した。この文脈で、両首脳は,「日ラオス官民合同対話」等の枠組みを活用し、今後数年間で二国間の貿易量・投資量を増大させる期待を表明した。

地域・国際的課題への取組のための協力

14.トンシン・タンマヴォン首相は、ASEAN加盟国間の開発格差の是正を通じたASEAN統合に向けた日本の継続的な支援に謝意を表明した。両首脳は、日・ASEAN、ASEAN+3、東アジア首脳会議(EAS)、ASEAN地域フォーラム(ARF)等の地域協力を推進し、地域の繁栄・安定のための共通のビジョン及び理念を強化することの重要性を再確認した。この観点から、両首脳は、昨年11月にインドネシアのバリで開催された第14回日・ASEAN首脳会議で採択された「共に繁栄する日本とASEANの戦略的パートナーシップの強化のための共同宣言(バリ宣言)」及び「日・ASEAN行動計画」を実施することの重要性について再確認した。

15.また、両首脳は、東アジア自由貿易圏構想(EAFTA)及び東アジア包括的経済連携構想(CEPEA)に関する研究に留意しつつ、交渉開始に向けて地域の包括的な経済連携に関する議論を加速させる意思、及び、 ASEANプラス作業部会を遅滞なく設置する必要性を再確認した。

16.両首脳は、2015年のASEAN共同体の構築に向けてASEAN連結性を強化するための取組の重要性を再確認した。野田佳彦内閣総理大臣は、ASEAN防災ネットワークに関する支援等ASEAN連結性強化を含む具体的な協力を一層推進する意思を表明した。

17.さらに、両首脳は、2011年11月の第3回日本・メコン地域諸国首脳会議以降の協力の進展を歓迎するとともに、「日メコン行動計画63」の進捗が、地域の発展に一層資するものであった旨述べた。両首脳は、来たる第4回日本・メコン地域諸国首脳会議を成功させるため、緊密に協力するとのコミットメントを表明した。

18.野田佳彦内閣総理大臣は、2012年にラオスが主催するアジア欧州会合第9回首脳会合(ASEM9)への日本の支援を表明した。トンシン・タンマヴォン首相は、野田佳彦内閣総理大臣をASEM9に招待した。これに対し、野田佳彦内閣総理大臣は招待に謝意を表明し、招請をしっかり検討したい旨述べた。トンシン・タンマヴォン首相は、ビエンチャン国際空港拡張計画及び空港VVIP棟への日本の協力等に謝意を表明した。

19.両首脳は,朝鮮半島の平和と安定という共通の目標に向けて、両国が引き続き緊密に意思疎通を行っていくことで一致した。両首脳は、最近行われた米朝間の対話の結果を重要な一歩として歓迎し、2005年の六者会合共同声明における非核化及びその他のコミットメントを真剣に履行する意思を、最近合意されたそれも含め具体的な行動によって示すことを引き続き強く要請していくことで一致した。両首脳は、関連安全保障理事会決議を全面的に実施することに対するコミットメントを改めて表明した。野田総理は、拉致問題解決の重要性について説明し、タンマヴォン首相は、深刻な人道的懸念である拉致問題に対する理解と同情を示した。

20.両首脳は、国連安全保障理事会の早期改革に向けて協力を推進する決意を再確認した。トンシン・タンマヴォン首相は、日本の安全保障理事会常任理事国入り及び2015年の非常任理事国選挙への立候補につき、一貫した支持を改めて確認した。野田佳彦内閣総理大臣は、ラオスの継続的な支持を高く評価した。

21.両首脳は、トンシン・タンマヴォン首相の訪問の成果につき、満足の意を示し、高く評価した。トンシン・タンマヴォン首相は、野田佳彦内閣総理大臣、日本政府及び日本国民に対し、温かく、名誉ある、心からのもてなしに感謝の意を表明した。トンシン・タンマヴォン首相は、野田佳彦内閣総理大臣に対し、ラオスへの訪問を招待した。野田佳彦内閣総理大臣は、招待に感謝し、都合の良い機会の訪問を検討する旨述べた。