データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 麻生内閣総理大臣記者会見(内閣総辞職にあたって)

[場所] 首相官邸
[年月日] 2009年9月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【麻生総理冒頭発言】

 先ほどの閣議で、この内閣は総辞職をいたしました。昨年の9月24日の発足以来、約1年、国民の皆様からいただいた御支援に改めて心から感謝を申し上げます。

 私は、就任時の所信表明で強い日本をつくること、明るい日本をというようなことを国民の皆さんにお約束をさせていただきました。1年という短い期間ではありましたが、日本のために全力を尽くしたと思っております。

 戦後最大とも言われた世界同時不況への対応、テロ対策や海賊対処などの国際貢献、また、北朝鮮や新型インフルエンザへの対策、危機というものから国民を守ること、そして安心な社会を目指すこと、残念ながら道半ばで退任することになりました。

 今、日本は多くの難しい課題に直面いたしております。しかし、振り返ってみてください。日本は64年前敗戦の焼け野原から立ち上がって半世紀以上にわたって平和と繁栄を続けました。これは諸外国から見て尊敬される成功モデルでもあろうと存じます。

 そして、今、日本には将来の発展の種が多くあります。特に今後の経済発展の死命を制するとも言われております。省エネの技術や環境技術において、日本は世界の先頭を走っております。豊かで安心な社会と、そして勤勉な国民性も健在であります。国民の努力、そして政府の適切なかじ取りがあれば、日本が発展しないはずがないと存じます。自信と誇りを持ってよいと思っております。その発展の上に立って、安心社会を築いていくべきであります。

 併せて日本は国際社会の一員として世界に目を向けていかなければなりません。内向きになっていてはだめです。アジアの日本、世界の日本として国際社会の安定と発展に一層貢献していかなければならないと存じます。

 私は、日本と日本人の底力に一点の疑問も抱いたことはありません。これまで幾多の困難を乗り越え発展してきた日本人の底力というものを信じております。

 日本の未来は明るい。未来への希望を申し上げて国民の皆さんへのメッセージとさせていただきたいと存じます。ありがとうございました。

 最後になりましたが、1年間お付き合いいただきました記者の皆様方に対して御礼を申し上げ、私からのごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございます。

【質疑応答】

(問)

 総理がこの1年間、麻生政権で最も実績を上げたと思われるものは何でしょうか。

 それから、やり残した課題というもの、あるいはこうすればよかったと、今、思っているものがあったら挙げてください。

(麻生総理)

 歴史の評価が出てくるというには、もう少し時間がかかると存じますが、百年に一度と言われた経済不況、アメリカ発同時不況、リーマンのときから9月14日ですから丸1年ということだと思いますけれども、この世界初の同時不況に対して迅速に対応できた景気対策・経済対策、4度にわたる予算編成を半年余りで、そういう大胆な経済政策を打ったことが実績として誇れるのではないかという感じがいたしております。

 やり残したことといえば、この経済対策はまだ道半ばということだと存じます。

(問)

 鳩山新政権に望むことは何でしょうか。また、現政権として新政権に引き継いでもらいたい政策があればお聞かせください。

(麻生総理)

 基本的には、日本という国の国家・国民の利益を守る、すなわち生活を守る。同時に、これだけ国際社会の中、193の国連加盟国の中にあって、やはり国際社会の一員として日本に期待されているものは大きいので、それへの貢献ということで、手法が変わることは十分にあり得ると思いますけれども、政府として行うべきことにそんなに変わりはないのではないかと思っております。

 新政権には、景気回復というものは私はまだ道半ばだと思っておりますので、中国でもどこでも、これはマクロ経済とか国際金融というものに理解があれば、今、どういう状況にあるかということはおわかりをいただけるんだと思いますので、そういった意味では景気回復というものを確固たるものにしていただけるように努力をしていただきたいということ。

 それと、日本を取り巻く国際情勢というものは、やはり冷戦崩壊後、かれこれ20年、随分変わってきたと思っておりますので、そういった国際情勢、テロ、海賊、いろいろありますけれども、こういったものへの対処を的確に対応していただくということは願ってやまないところであります。大いに期待もいたしております。

(問)

 自民党総裁選挙のことについて伺います。

 自民党は今回の敗戦を受けて、政権奪回をまた図らなければいけないんですが、新しい総裁としてどんな方がふさわしいとお考えでしょうか。また、何人かの方が立候補の表明、あるいは意欲を示しておられますけれども、意中の方がいらっしゃれば教えていただきたいと思います。

(麻生総理)

 ここは、自民党がいろいろなベテラン・若手を含めて一致団結、これは選挙をやった上で、地方の意見というものもいろいろありますので、そういったものをとりまとめた上で一致団結を図っていかねばならぬところだと思っておりますので、総裁選挙が終わった後、きちっと対応ができる。そういった、自由民主党として何が問題だったかという点を踏まえて、いろいろ分析は今からなされているところだと思いますので。

 それを踏まえて、これらの対応をきちんとやっていただける方だと思いますので、やはり日本という国の、どなたかが使われた言葉でしたね。国柄とかいろんな表現がありましたけれども、日本という国が歴史と伝統を踏まえてきちんと立ち上がっていく。そういった基盤というものを腹に据えて対応していただける人物が望ましい。

 具体的な名前を私の立場から言うことはありません。