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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 福田内閣総理大臣年頭記者会見

[場所] 首相官邸
[年月日] 2008年1月4日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【福田総理冒頭発言】

 皆さん、新年明けまして、おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 私、昨年9月にこの場所でもって総理就任のごあいさつを申し上げました。ちょうど100日が過ぎたところでございます。あのとき、私は、この現状を打破し、そしてその中から新しい未来を築くと申し上げたんです。この100日間の歩みを振り返りまして、正直申し上げまして、私は私の思ったとおりにすべて事が運ばなかったと。それは、国会のねじれ現象ということがあったことにもよりますけれども、そういうふうにも思っております。

 しかしながら、何を打破しなければならないのかということは、極めて明確になった100日間ではなかったかと思っております。それは、これまでの政治や行政の在り方そのものについてでございます。人口減少社会に突入しました。そして、本格的な高齢化社会が到来する中にありまして、安全で安心な社会、活力と希望に満ちた持続可能な社会をつくっていくためには、政治も行政も、これまでの発想ややり方を大きく転換し、生活者、そして消費者の立場に立ったものへと変わっていかなければなりません。私は、本年を生活者・消費者が主役へと転換するスタートの年にしたいと思っております。

 現在、政府を挙げてすべての法律や制度が国民の立場に立っているかどうか、総点検を行っているところでございます。この内閣では、食品偽装の問題から社会保障の問題まで、皆さんの生活に直接関わり、かつ切実な問題に正面から取り組んで、一つ一つ着実に解決してまいりたいと思っております。安心な社会にとって重要な役割を果たす年金問題、これは国民の皆様に大変な御迷惑をおかけいたしております。この年金問題は、まさに行政が国民の立場に立っていなかったことにより起こったものでございます。

 行政のみならず、それを監督する立場にあった政治の責任も極めて大きいものがございます。政治家として、率直におわびを申し上げる次第でございます。

 この年金記録の問題は、40年以上にわたるさまざまな問題が積み重なって生じたものでございまして、正直申し上げてこれをやれば解決するという特効薬はございません。現在「ねんきん特別便」を各家庭にお送りして、皆さんに記録の確認をお願いしております。持ち主がわからない記録の解明作業と合わせて、一つ一つの取組みを着実に進めてまいりたいと思います。

 こうした国民の皆さんの御協力に加えて、国民の皆さんから年金保険料を徴収し、納付に携わっていただいております自治体、経済界などにも御協力をいただきながら、その御協力を無にしないためにも、十分な人材を投入して、あらゆる手段を尽くしてまいりたいと思っております。40年にわたる失敗を、私の内閣で解決の道筋をつけるべく、真摯に最後まで取り組んでいく所存でございます。皆さんの御理解と御協力を、改めてお願いする次第でございます。

 同時に、このように問題の大きい年金制度を根本から見直し、受給者や加入者の立場に立って、これ以上ないというぐらい確実な制度にしたいと考えております。年金制度はもとより、医療・介護制度や少子化対策など、国民生活の基礎となる諸制度について、安心できるきめ細かな制度づくりを進めるために、今月から社会保障の在り方について検討する国民会議を開催することにいたしました。国民会議には、経営者、労働者、消費者、女性など、各界各層の代表にお集まりいただいて、広い視野から多くの国民が納得する制度を考えていただくことにいたしております。

 さて、本年7月、洞爺湖でG8サミットが開催されます。この会見のすぐ後で、このサミットのロゴマークを発表いたします。今年は、サミットだけでなくて、各国の首脳が集まる国際会議が幾つか開催されます。それらに共通する大きな議題の1つは地球環境問題でございます。いまや地球温暖化問題は待ったなしの課題であり、世界の主要排出国は例外なく参加して、協力して取り組む枠組みを構築することが急がれております。

 日本は世界最先端の環境・省エネ技術を有しており、この技術を各国に広めることで世界に貢献できるものと考えております。世界をリードしていくためには、一層の努力が必要であり、我々の暮らし方自体を変革し、世界の範となる低炭素社会を築き上げていかなければなりません。皆さんとともに、この問題に取り組んでまいりたいと思います。

 原油がついに100ドルを超えました。一時的とは思いますけれども、この影響は無視することはできません。政府は、昨年末、緊急対策閣僚会議で当面の対処方針を決定いたしましたが、今後とも万全の体制を取ってまいります。同時に、中長期的な資源・エネルギー問題にしっかりと取り組んでまいります。そのためにも、今後とも日本が発展していくためには、世界に開かれた国にならなければいけない。そして、国際社会と協力し、相互依存を深めていくことが重要であります。平和で安定した国際社会は、日本にとってかけがえのない財産であります。だからこそ、国際社会に対して、日本ができるだけのお手伝いをする必要がございます。

 今、この瞬間もインド洋では多くの国々が協力し合いながらテロとの戦いを続けております。アフガニスタンへのテロリストの侵入や拡散を防ぐためであります。アフガニスタンの陸上では民生の向上のための諸外国の活動が活発に行われております。我が国のJICA職員も数十名ファブール近辺で危険を顧みず活躍をいたしております。陸上の活動を少しでも安全にするためには、洋上からの支援が必要であります。我が国の補給艦が一刻も早く復帰し、他の国々とともに世界のために汗を流す日本の姿を示したいと考えております。

 最後に、薬害肝炎問題について申し上げます。感染被害者の皆様は、これまで長きにわたって心身ともに、言葉に尽くせないほどの御苦労があったことと思います。こうした大きな被害が生じ、そしてその拡大を防止できなかったことについて、国の責任を率直に認めたいと思います。この場をお借りして、改めて感染被害者の皆様に心からおわびを申し上げます。

 感染被害者の皆様の全員一律に救済するために、与党の皆さんの御尽力を得て、立法作業をただいま進め、1日でも早い救済を実現するということでもって、原告、そして弁護団の皆さんと合意をすることができました。臨時国会は、残りの会期が少なくなってまいりましたが、野党の協力も得て、この救済法案が一刻も早く成立するよう、全力を尽くしてまいります。

 更に、今回の事件の反省に立ち、薬害の悲劇を繰り返してはならないという決意をもって、再発防止に向けた医薬品行政の見直しを行うとともに、医療費助成などの総合的な肝炎対策を実施してまいります。

 私は、国民本位、生活者本位の社会をつくるために全力を尽くしてまいりたい。1年経ったら何かが変わったと、皆さんに実感してもらえるようにしたいと考えております。

 本年が、皆さんにとってよき年でありますように心からお祈りを申し上げます。

【質疑応答】

(質問)

 政界では、与野党を問わず、今年は衆議院の解散総選挙の年という声が強まっております。解散総選挙は、7月の洞爺湖サミット終了以降が望ましいと考えているのでしょうか。

 ただ、総理が先ほども御指摘になられましたように、臨時国会、そして通常国会での与野党のねじれは非常に激しく、状況は予断を許しません。

 今後の政治日程の中で、民主党との大連立あるいはその前提となる政策協議ということも再び想定されておられるのでしょうか。もし、大連立というものができるとすれば、それは衆議院選後ということなんでしょうか。その点をお伺いいたします。

(福田総理)

 私が、今、考えておりますことは、政策課題を実施するということ。それと同時に、これから御審議を願う、20年度予算案をなるべく早くというか、3月前に成立させたい、そういう思いでございます。その思いは、国民の生活に悪い影響を与えるようなことがあってはならないということであります。

 そういうことでございますので、それを実行できるようなことであるならば、私はいろいろな方策を講じてまいりたいと思っております。

 ただいま、大連立というお話もございましたけれども、大連立をするのか、しないのか、それは政策課題を実行できるような体制を組めるのかどうか、この1点にかかっているわけでありますので、私は大連立ということを最初から考えて、何かしようと、そういうことではなく、政策実行をするために、どういう体制が望ましいかということをまず考えたいと、このように思っておるところでございます。

 そのためには、当然のことながら、野党第一党の民主党とも十分な話し合いをするという機会を数多く持たなければいけないというふうにも思っているところでございます。

(質問)

 内閣改造についてお伺いします。

 総理は、昨年の中国での内政懇では白紙ということでありましたけれども、そういう党内の意見にはもっともなところがある。具体的なことは年明けだとおっしゃっています。

 正月休みも終わりまして、通常国会前の内閣改造について総理の方針が固まっていましたら、お伺いしたいと思います。

(福田総理)

 内閣改造につきまして、昨年の12月29日でしたか、中国で記者懇談会がございました。そのときに申し上げましたのは、私が改造するか、しないかを含めて白紙だと、こういうことを申し上げたので、しかし、その翌日には改造するというふうな報道が一斉に流れたわけであります。これはどなたのいたずらか知りませんけれども、私の申し上げたこととは意に反することであると、こういうふうに思っております。

 では、今現在どうするかということになりますけれども、正直申しまして、今の閣僚の皆様は、本当に一生懸命政策課題に取り組んでいただいているところでございます。

 それから、就任してまだ日にちが浅い方もございます。これから実力を発揮しようという方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれない。いろいろなことを考えまして、私は今の閣僚の皆さんに引き続いてやっていただきたいと考えております。

 実際問題いいまして、こういうように、再度国会が延長され、そして次の通常国会もすぐ開会するということで、その間隔も非常に短いということであります。そういうときに改造すべきかどうかということもいろいろ考えていたわけでございます。勿論、改造した方がいいという御意見もたくさんございました。そういう御意見もよくお聞きしながら、その中には現状でこういうふうにしたらいいのではないかといったような積極的な前向きな御意見もございましたから、そういうことは大いに取り入れさせて、よりよい充実した内容をこれから実行していこうと考えております。

(質問)

 総理、昨年の民主党との党首会談でもテーマになりましたけれども、自衛隊派遣に関する恒久法について伺いたいんですけれども、先ほど民主党との大連立政策協議ということが話題になりましたけれども、これは新テロ特措法が週内にも成立しますけれども、それが成立した段階で間を置かずに政府として検討に着手されるお考えはあるんでしょうか。

(福田総理)

 この恒久法は、もう数年前から議論されているんです。国会でも是か非かということは議論されております。むしろやった方がいいのではないかということであります。

 なぜかと申しますと、今、暫定措置法という形でもって今回のテロ新法もお願いをしているわけでございますけれども、この暫定法で、このような形で毎回国会で御審議をいただきながら実際に自衛隊の活動をするということは大変時間もかかりますし、むしろこういうような国際平和協力というふうな形であるならば、むしろもう少し積極的に、そして迅速に活動できるような体制があってもいいのではないか。そのためには、そういうことが可能になるような恒久法というものを整備してもよろしいのではないか。こういうふうな意見というのは前からあったわけでございまして、私もそのような考え方を持っておるわけでございます。

 いずれ、またどういうような国際情勢の中で、また国際平和協力部隊が、自衛隊がその中に加わってやるということもありますし、いろいろな活動があると思いますので、いろいろな活動を想定しながら、どのような仕組みがいいのかということは国会で十分議論していただきたい。こう思っております。

(質問)

 総理、先ほどサミットでは地球温暖化対策が主要テーマになるという御指摘がありましたが、今月はダボス会議への出席も検討されているようですけれども、サミットでは、具体的に数値目標なども含めて、どのような成果を上げることを目標として、そのために議長国としてどう指導力を発揮していくお考えですか。

(福田総理)

 まず、昨年12月のバリ島の会議でもって排出国はすべてこの枠組みに参加するということが決まったわけで、これは大変大きな進歩だと思います。そうであるからには、これから温暖化対策としてどういう取組みをするかということが、どの国々とも自由に話し合いができるというベースができたんだと思います。

 それを受けて、今度の夏のG8サミットでございます。そこでは勿論、主要排出国すべてが十分な議論をして、どうあるべきかということを考えていく。そして、その方向性を決めていくということになります。

 ダボス会議という話がございましたけれども、1月の下旬にダボスで定例の会議がございますけれども、そこで私どもといたしましては、その枠組みがどういうふうなことになっていくのかということは、まだはっきりと明確に示されているわけではございませんから、軽々なことを申し上げるわけにはいかない。と申しますのは、G8の議長国という立場でございますから、その辺は枠組みをしっかり守って、そして、その中で最善の方法を生み出していく、それをとりまとめる議長国として慎重に対応していきたいと思います。

 ただ、日本は世界に冠たる省エネ先進国ということで、エネルギーの使用効率も世界で一番いいんです。ですから、そういうことはしっかりと世界に訴えていくという必要はあると思います。その上でG8サミットをどういうふうに成功させていくかということを考えていかなければいけない。その間に主要国とは話し合いを十分していかなければいけない。また、中国、インドというような途上国とどういう対話をしていくことが必要なのかということはこれから考えていきたいと思っております。

(質問)

 年金問題についてお尋ねします。総理は先ほど年金記録の問題について、政府の対応をおわびされましたが、国民世論の中には参議院選挙の公約に照らして、政府がいつまでに、どういう手順で、どこまでこの問題に対処されるかということに対して疑問がまだ残っているかと思います。その点についてお尋ねしたいというのが1点です。

 もう一点は消費税の問題でして、基礎年金の国庫負担の引き上げを控えて、恐らく今年は消費税の引き上げの議論が避けられない年になるんではないかと思いますが、具体的な税率の問題を含めて、今年中に政府の側から議論を提示するお考えがあるかどうか。その2点についてお伺いします。

(福田総理)

 まず年金でございますけれども、今回のような極めて基礎的な記録問題をどういうふうに解消していくかということが大事だと思います。これをきちんとやらないと、年金制度に対する信頼が失せてしまうことになりますので、これはしっかり記録の照合等を今やっておりますけれども、一件一件丁寧にやっていきたいと思っております。そのために、年金記録をしっかり管理する体制を構築しなければいけないと思います。

 また、平成22年から新たに日本年金機構がスタートするわけであります。この年金機構がスタートするに合わせて、新たな組織を国民の信頼に足るようなものにしていかなければいけないことになります。また同時に、国民が、いつでも自分の年金記録を確認できるような仕組みをつくっていかなければいけないと思います。

 現在は「ねんきん特別便」というものを順次送付いたしておりますけれども、これは今年中に終わるかどうかわかりませんけれども、今、加入して受給しているような方々に対しても、すべての年金受給者に対しても、そういう特別便を送付していくということを考えて、御自身の記録と十分確認していただくということも考えております。

 それから、年金全体のことにつきましては、社会保障の中核的なものでございますので、このことについてどういうふうな在り方が一番いいのか、先ほど申し上げましたけれども、これ以上にないという年金制度を組み立てていかなければいけない、そういう観点もございます。また、他の社会保障との兼ね合いということもありますから、総合的に考えるべき問題もあろうかと思います。いずれにしても、先ほど私が申し上げた社会保障を検討する国民会議において、年金の問題も取り上げていきたいと思っておりまして、そういう幅広い視野から議論をお願いし、この夏ぐらいまでに中間報告していただきたい。それで秋までに最終的な報告をいただきたいと思っておるところでございます。