データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 税制改革に関する細川内閣総理大臣の記者会見

[場所] 
[年月日] 1994年2月8日
[出典] 細川演説集,259−270頁.
[備考] 
[全文]

 では、総理よろしくお願いいたします。

 会見に先立ちまして、一つお願いがあります。官邸の方から会見を二十分程度でというふうなお願いがあったんですが、質問の流れによっては若干の延長もあるかと思いますので御了承ください。

 まず、幹事社の方から三問ほど質問をさせていただいて、その後、各社からの質問に移りたいと思います。

○細川総理 あるいは冒頭に私から一言よろしいですか。恐らくお尋ねの件も含めてと思いますが、ではそうさせていただきます。

 今日、午前の与党代表者会議での合意を受けまして、昼からの拡大政府与党首脳会議で、先般来国民の皆様方が強い関心を持っておられました税制の問題につきまして政府与党としての方針を最終的に決定をさせていただきました。

 内容に入ります前に、先に私が発表いたしました国民福祉税構想をめぐる一連の政策決定の在り方にさまざまな御批判をいただいていることにつきまして、まずもって率直に国民の皆様方におわびを申し上げたいと思います。

 本日の代表者会議の合意の要旨を申し上げますと、一つは平成六年度に総額六兆円規模の減税を先行実施するということでございます。

 第二には、連立与党内に税制改革に関する協議機関を設置をする。その協議機関におきまして福祉社会のビジョン、高齢化社会の国民負担や税制の在り方あるいは減税とその財源について新税の創設も含めて協議をし、連立与党の合意を得て年内の国会において関係の法律を成立をさせるというものでございます。

 私といたしましては、昨年秋以来の税制調査会の御審議、政府与党間における精力的な御協議の積み重ねを踏まえまして、先に税制改正草案を提案させていただいたところでございますが、これに対して与党側に異論が生じましたために再度意見の取りまとめをお願いし、本日御提示をいただいたところでございます。私としては、これにより所得減税につきましては総額六兆円規模で今国会に法案を提出することに対して同意が得られ、また税制改革につきましては協議機関において私の提案した考え方も踏まえて御議論をいただくことで、抜本的な税制改革の道筋が明確になったものと受け止めまして、与党案を踏まえて政府案を作成することにしたいと、このように思っております。以上です。

 − 総理、今、国民におわびということをおっしゃられましたけれども、今回総理自らが発表された国民福祉税という構想が白紙に戻って、総理決断というのが白紙に戻ったということへの責任と、それから国民から批判が起きたということについての政治的責任があると思うんですけれども、総理のおわびというのはどの部分についておわびを、反省という言葉もお述べになっていらっしゃいましたけれども、どの部分を反省されていらっしゃるんですか。

○細川総理 一番大きな問題は、やはり政策決定過程ということだと思います。プロセスの問題だと思います。勿論、内容についての御議論もいろいろございましょうが、何よりもその手続について唐突であったとか、密室的ではなかったかとか、あるいは性急にすぎたのではないか。こういった御議論が多かったと思います。そうした点について、性急であった点は率直にそのような印象を与えたということについて率直におわびを申し上げなければならない、こういうふうに申し上げた次第です。

 連立政権の政策決定というのはどうしても政党間交渉になる訳でございますし、そういう面からの制約は確かにあるだろうと思います。その結果、議論の経過というものが従来よりも外に出やすくなって、あたかも政策が右、左に触れているような印象を持たれる嫌いが確かにあるのかもしれません。もとより、私自身の総理の発言の重みにつきましては重々認識をいたしておりますが、今後とも政策決定をしていく上で試行錯誤がいろいろあろうと思いますし、そこで何か改めるべきことがあればためらうことなく軌道修正することにやぶさかではございません。

 − それから、今回ボールがどこにあるのかといった話に象徴されるように、政府と与党の間でだれがこの妥協案を責任を持ってまとめるのかということが一時的に分からない状況があったと思うんですが、これは総理の指示が明確でなかったのではないかとか、あるいは総理の指導力に問題があったのではないかといった指摘がある訳ですが、その辺について総理はどのようにお考えになられますか。

○細川総理 私の方からは、何と言いましてもやはり与党の方でひとつ重要な問題でございますから詰めていただきたいということでお願いを申し上げました。それがまた、投げ返された形になって白紙という表現も使われた訳ですが、私の方では再度代表者会議の方で、何と言っても与党の中で議論を詰めていただかないと私の方としても一度異論が出て白紙になった訳でございますから、再度詰めていただきたいと、こういうことでボ−ルを投げ返して、またそちらで詰めていただいて今日、今申し上げたような結論を出していただいたということでございます。

 − 今後、税制改革あるいは財源問題を含めて与党内で協議をしていくということですが、具体的にどういう段取りで進められていくのかということと、もう一つは総理は先ほど私の提案を踏まえて議論をしていただくとおっしゃいましたけれども、一部には白紙に戻ったという認識もあるようですけれども、その辺はどういうふうにお考えになりますか。

○細川総理 これは与党の中で御協議をいただくことでございますから、私の方でこれからどういう段取りで協議を進めていただくかということについてはまだ承知をしておりません。しかし、今年中に成案を得るべく努力をしていただくということでございますから、一刻も早く税制改革の姿が見えてくるように、是非結論を出していただきたいと、そのように願っております。

 − では、各社からお願いします。

 − 今回の減税が景気に実際にはどの程度の効果があるかという問題なんですが、試算によると夫婦、子供二人で年収五百万円のサラリーマン世帯では年間四万円程度の減税にしかならない。それで、八百万円の年収があっても同じ子供二人の場合、年間十六万円程度の減税だと。こうなりますと、実際にどの程度景気回復に効果があるのかという疑問もあると思うんですが、ここはいかがでしょうか。

○細川総理 減税の効果というものを数量的に、計量的に申し上げるということはなかなか難しいと思います。しかし、今日こういうふうに景気が低迷をしている中で、景気回復の芽をふくらませていく。我が国の経済を、出来るだけ早い時期に本格的な回復軌道に乗せていく。そのために、あらゆる可能な政策を発動するということは内外から強く求められているところでございますし、所得税の減税はそういう観点から個人消費を刺激し、あるいはまた設備投資や生産など経済全体に波及効果をもたらすものでございましょうから、そうした観点から相当に今日の景気の回復に寄与するものであると、そのように認識をしております。

 − 先ほど総理は反省の弁を述べられましたけれども、その中で政策決定システム、政策決定のプロセスに問題があったというふうにおっしゃいましたが、この一週間の政治的空白を考えますと、今おっしゃった政治的プロセスを今後どのように変えていかれるのか。あるいは、そのけじめですね。これをどうお考えになっていますか。

○細川総理 これは先ほど申し上げたこととちょっと繰り返しになるかもしれませんが、連立政権の、そこにまさに今度の一連の政策決定過程の中にメリットというか、いろいろな議論が表に出てくるといういい面と、それからまた先ほどもちょっと申し上げたように、それが表に出てしまうために最終的な決定の前に触れているのではないかというふうに受け止められるという、その両方の面があるだろうと思います。

 今それぞれに、政策幹事会とか、政務幹事会とか、代表者会議とか、あるいはまた政府与党とか、そうした機関決定を経て大事な問題を詰めていっている訳ですけれども、今後更に今回のようなことがないように、出来る限りそこのところをしっかりしたものにしていかなければならないというふうに思っています。

 − けじめとか責任問題についてはどうでしょうか。

○細川総理 これは、今申し上げたようにやはり政党間交渉、連立政権の在り方という大変難しい問題であるというふうに私は思っておりますから、そういう中で本格的な連立政権は初めてここでスタートしたばかりでございますから、その辺について多少の試行錯誤があるということについては国民の皆様方も御理解をいただけるのではないか。今後、こういうことがないように、出来る限りお互いに譲るべきところは譲って、この連立政権というものが円滑に機能していくように出来る限り努めていきたいと思っております。

 − 金曜日に記者団と懇談しまして、同じような趣旨で発言されたんですけれども、そのときにはこういうおわびとか、そういう言葉はなかっだように感じていたんですが、このわずか数日の間におわびの気持ちになったという点についてはどういうことなんでしようか。

○細川総理 数日前に懇談したとき、勿論そういう気持ちはございましたが、まだ最終的に決着がついておりませんでしたし、いずれこの問題が決着をした段階で、方向が見えてきたところで、今回の一連の懇談についての私の気持ちというものは申し上げなければなるまいと、そのように思っておりました。そういうことでございます。

 − 国民福祉税構想そのものについては、総理は今でも正しいと思っていらっしゃいますか。

○細川総理 私なりの考え方を昨年秋以来、税制調査会、九月の三日でございましたか、税制調査会に出て、これからの活力のある高齢化社会というものにどのように対応していくか。そうした観点から、あるべき税制の在り方というものを申し上げました。また、当面の不況に対応するために減税をどのような形で実現をしていくか。その両方を満たすための条件は何かという観点から税調でも二か月余りにわたって御論議をいただき、その後また党の政策幹事会とか、あるいは経済協議会とか、代表者会議とか、そうしたところでも御論議をいただいてきた訳で、そうした考え方というものは九月以来、国会でも再々申し上げてまいりましたが、また今申し上げた税調の方にもそういう方向で是非御検討をいただきたいということで申し上げた趣旨は、所得と消費と資産のバランスの取れた税体系というものを構築をしていかなければ、これからの高齢化社会というものに対応出来ない。そういう観点から是非お考えをいただきたいということを申し上げた訳で、そうした基本的な考え方は変わっておりません。

 − そうすると、この間言われた税率七%を三年後に実施という、そういうお考えを前提に連立与党の方で協議してほしいということなんですか。

○細川総理 そうではございません。基本的な趣旨といいますか、私の意のあるところを踏まえて今後協議会で御論議をいただけるであろうということでございます。その率とか、そうしたものに今こだわるものではございません。

 − 繰り返しになりますが、そうしますと国民福祉税の構想を一たん発表された訳ですね。これについては現時点では撤回するとか、断念するということではなくて、その必要性というものは今後訴えていくと、こういうことですか。

○細川総理 いえ、これは一応政治的に凍結をされたというふうにこの前申し上げた訳ですが、また新しくそれが凍結された上に今回の党の代表者会議による御決定がなされた訳でございますから、今申し上げたように、その考え方と言うものを恐らく踏まえて御論議をいただけるであろうと、このように思っている訳です。

 − 今日の会見はこれまでのいきさつ上、総理のおわび会見、国民に対するおわび会見という性質のものだと思うんですが、総理の話を聞いていると、政治責任は重々承知しているとおっしゃりながら、これは連立政権で試行錯誤というのはやむを得ないというふうにおっしゃって、本当に反省されているのかどうか、余り伝わってこないという感じがあるんですね。

 つまり、国民の側から見ると、総理が記者会見まで招集されて国民福祉税をやりますよと明言された訳ですね。それを今、撤回されるというのは開いた口がふさがらないという感じだと思うんです。それが国民の率直なところだと思うんですが、その辺についてどうも総理は本当に政治責任を感じていらっしゃるのだろうかという疑問を今の会見を聞いていて思うんですが、それについてはどうでしょう。

○細川総理 大変厳しい、率直なお尋ねだと思いますが、これからの高齢化社会というものを迎えるに当たって、どうしてもやはりそれなりの負担というものは覚悟していただかなければなりません。こういうことは国会でも申し上げてまいりましたし、また元旦に福祉ビジョンというものをお示しをしたときにも申し上げてまいりました。そうした観点からずっと一貫してこの問題については考えてきたところでございまして、確かにその手続などについていささか唐突であった、性急であった、そうした点は否めないであろうと思っております。

 その点について、私としてはしかし一方では予算の内示もございますし、あるいはまた第三次補正も組まなければならないし、あるいは地方財政対策も打ち出さなければならないし、あるいは日米協議というものも控えている。そういうぎりぎりの後がない時間の中で決断をしなければならないという、そういう大変苦しい状況の中での判断であった。確かに性急であった点は否めないと思いますが、その点については私も率直におわびを申し上げますと共に、そういう事情もあったということも是非ひとつ御理解をいただきたいと、こう思っております。

 − 総理はしきりに手続だとか、そういうことをおっしゃいますが、手続じゃなくて国民に対して一たん発表された訳ですから、それが覆されたということが、これは日本の最高責任者の責任としてはどうかという疑問がある訳ですね。単に手続が性急であったということで免れる話じゃないような気がするんですが、総理はそういうふうにお考えにならない訳ですね。

○細川総理 先ほど申し上げましたように、私の総理の言葉の重みというものについては重々私も認識をしているつもりでございますと、こういうことを申し上げました。

 ただ、繰り返しになって恐縮ですが、やはりこれは我が国でほとんど初めての本格的な連立政権ということでございますし、その中でさまざまな御論議があって、あれは政府の提案ではなくて私の提案ということで申し上げた訳でございますが、その提案が与党によって受け入れられなかったということでございますから、過ちを改めるにはばかることなかれという言葉もございますが、その点につきましては率直におわびを申し上げて、そしてその与党の合意というものを受け入れてやらせていただきたいと、こう思っております。

 − 十一日から日米首脳会談がある訳ですけれども、今回の六兆円減税の先行一年の時限立法と、こういう決定で米側は評価するというふうにお思いですか。

○細川総理 それなりの評価はしていただけるものと思っております。

 − まず一つは、先ほどから手続に性急な点があったと。 ただ、この問題については連立与党の合意が必要だと、こういうことなんでしょうが何が問題があったかという点について我々の見ているところでも、では総理がずっと税調に諮問して以来言われていたことと、そして最後に出てきた国民福祉税というもの、その経過、そしてそれが本当に連立与党の中できちんと議論されていたとはどうも思えない。例えば、そこにいらっしゃる官房長官でも、私の知ったのは直前であったということをおっしゃっている訳ですね。そういうやり方を今後は変えていかれるということなのかということが一つです。

 それからもう一点は、今、質問がありましたように時限立法という形で、恒久的な減税でなくて時限立法という形で当座をしのいだということが実態だと思うんです。それで、それによって少なくとも六兆円の財源に穴が空く。それについては確実な財源担保策と、そして税制の抜本改革ということを年内にやられるということですが、そういうこともやはり国民に対する責任として年内にやられることにはちゃんと政治責任をかけられると、そういうことと理解していいですか。

○細川総理 後のほうのお尋ねからお答えをいたしますが、年内に税制改革を何とか協議会でお取りまとめをいただくということについて、これは政府与党一体となって最大限の努力をしていく。何としてもお約束をした期間のうちに成立をさせるということが最大の政治責任を果たすゆえんだと思っております。

 それから、今後手続などについてどういうふうに考えるのかということですが、連立政権の中の政策決定過程というものをどのように組み立てていくかということは、言うべくしてなかなか難しい問題だと、率直に言ってそう思います。昨日もこういうことがあって、改めてまたこの問題について官房長官などともお話をしていた訳ですが、さて実際に取り組むとなるとどういう手があるかなと。形の上では政策幹事会とかそれぞれある訳ですが、ただ幹事長が五人おられるようなものですから、実際には一つの党の中に幹事長と総務会長と政調会長がおられるという、そういうものと違って、政策を担当される政調会長レベルも五人おられる、総務会長もまた五人、幹事長レベルもまた五人という、そういう形で一つ一つ物事をクリアしていかなければならないという、その難しさというものはなかなかさてどうしたものかなと、率直なところ今後出来る限り改善していかなければならないことはよく分かっておりますが、そんな感じを持っているところです。

 − 今、政治責任というお言葉を使われましたけれども、それは確認したいんですが、総理の職をお辞めになるということなんですか。

○細川総理 いえ、今そういうことは申し上げておりません。これは政府与党で全力を挙げでこれを果たしていくことが政治責任を果たすゆえんであると、こういうことを申し上げた訳です。

 − 総理の政治責任というのはどういうことになるんですか。

○細川総理 それは今、申し上げたとおり、それ以上のものではございません。最善を尽くしてその成立を図るということが国民の皆様方の御期待にこたえるゆえんであると、このように思っております。

 −今回、社会党が政権から離脱することも辞さないというかなり強硬な姿勢を示した訳ですけれども、今回はこういった形で政権から離脱するということはなかった訳ですが、今後こういう連立与党の中のどこかが抜けるというような、そういった政策決定の手続ですね、そういったことは今後しないということでしょうか。

○細川総理 さあ、それは分かりません。これからどういう問題が出てくるか、その問題によってまた各党がどういうアプローチをされるか。その都度やはりこの連立政権というものを維持していくために、各党ともそれぞれ自己犠牲というものを払いながら何とかそれを取りまとめていくための努力をしていこうということをされると思います。また、是非そのようにお互いに努めていきたいものだというのが私の強い願いでございます。

 − 総理は就任以来、生活者優先、国民に目を向けた政治を実現していくと、それを標榜されておりますけれども、今回の出来事は永田町や霞ヶ関の方ばかりに目を向けられた、そのような印象が強くするんですけれども、これは総理の政治姿勢に反するものではないんですか。

○細川総理 確かに、税というのは一番国民の関心の強いテーマだと思います。

 しかし、繰り返し申し上げますように、今の働き盛りの人たちがやる気を失ってしまうような税制でいいのかどうか。これからの活力のある高齢化社会の時代を築いていくために、やはりそれなりの負担というものはしていただかなければこれからの社会というものは成り立っていかないというようなことを考えると、言いにくいこともやはり、生活者主権ということは勿論そのとおりですが、それなりのお互いに認識を持ってこれからの時代を築いていく覚悟というものは、決意というものは持たなければならないんじゃないか。そのことをやはり政治は率直に国民の皆様方にも申し上げるべきだというふうに私は思っております。

 − それは国民と共に論議するという視点が大事ではないかと思うんですが。

○細川総理 おっしゃるとおりだと思います。

 − 一方的に総理がああいう形でおっしゃるというのは、国民としても納得出来ないというのが今回の論議ではなかったと思うんですが。

○細川総理 ですから、先ほどから申し上げるように、その点について確かに十分であったと思っておりません。

 ただ、税制調査会というのは言わば国民を代表する有識者の方々によって構成されている機関でございますから、その機関に九月の三日からお願いをして先ほど来申し上げるように消費、資産、所得というもののバランスの取れた税体系と言うものをどういうふうに構築をしていくかということについて御論議をいただきたい。そしてまた、党においてもそれぞれの機関でもって御議論をいただいてきた訳でございますから、それなりの経過というものはあったというふうに私は思っておりますが、しかしもっと更に時間をかけてやるべきだという点につきましては、それも確かにおっしゃるとおりかなと、そのように思っております。

 − 今回の一連の動きを見ていますと、大蔵省という存在が政府の中でいかに大きいかというか、強いかというのが我々としては印象を受けたんですが、総理はいろいろ改革を打ち出していらっしゃいますけれども、これから各省庁の権益に切り込んでいかなくちゃいけないということだと思うんですが、いささか不安を覚えると思うんですが。

○細川総理 よくそのように言われるんですが、決してそうではない。それは財政当局として当然それなりの考え方というものはしっかりと持っております。それは当然でございますけれども、しかし今回の一連の経過の中でも、ほとんど財政当局の出番というものは最後の方のところで、昨日でしたか、一昨日でしたか、私は大蔵大臣を始めとして財政当局にちょっと官邸の方に来てくださいということで指示をいたしましたが、よく党側からの話を伺ってその取りまとめに協力をするようにということで指示をいたしました。一連の経過の中で、私は必ずしも大蔵省がそのように何か自分の主張を飽くまでも通すということでごり押しをしたというふうには感じておりません。財政当局として、それはある意味で突っ張るところは突っ張るというのは当然の姿勢だと思いますし、またそれでなければ財政当局としての責任は果たせない。そこのところはやはり十分理解しながら政治がリーダーシップを振るって引っ張っていくということが、方向づけをしていくということが大事なことではないかというふうに思っております。

 − 総理は時間を掛けたことの具体例として政府税調を盛んに挙げていらっしゃるんですけれども、政府税調というのはお役所の機関でありまして代議制ではない訳ですね。これまで税金の話は自民党政権下では党の中で延々と議論をして、官僚機構から見れば極めて効率の悪い選挙民にこびるガス抜きでとも見えたかもしれませんが、それが報道されることによって国民は一緒にどこに問題の所在があって、一緒に歩むことは出来たと思うんです。総理は、自民党政権下で延々とやられたような政党の中での長い議論というのは効率が悪いというお考えがございましょうか。

○細川総理 さあ、それはこういう連立政権下の下でどのような形でこの問題に限らず、税制の問題に限らず論議が行われるべきかということについては、先ほどもまだ試行錯誤の段階で、これからも改善をしていくべき点はいろいろあろうということを申し上げました。税制の問題についても、どういうやり方をしていったらいいのか。一応今、政策幹事会で御論議をいただいておりますし、またこれから自民党税調に相当するような、そうした機関もつくろうという話も出ておりますが、今後そうした点も含めて各党合意の上でそのような点についても考えてまいりたいと思っております。

 − よろしいですか。

 では、どうもありがとうございました。