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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 伊勢神宮参拝時における細川内閣総理大臣の記者会見

[場所] 
[年月日] 1994年1月4日
[出典] 細川内閣総理大臣演説集,211−218頁.
[備考] 
[全文]

○司会 大変お待たせをいたしました。ただいまから細川内閣総理大臣の記者会見を始めます。

 本日の司会をさせていただきます私、県の広報課長の梅沢です。どうぞよろしくお願いいたします。

 会見時間は内閣記者会が十分、地元の記者十分とさせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 なお、先ほどもお願いをいたしましたが、内閣記者会の会見が終わりましたら、御用のない方は速やかに御退席をいただくということでよろしくお願いをいたします。

 それでは、内閣記者会の質問からお願いをいたします。

 − 内閣記者会の幹事社の毎日新聞とTBSの方から、二つほど代表してお伺いします。その後各社の質問に移らせていただきたいと思います。

 まず、政治改革関連法案に関してですが、総理の指導力を期待する声も大きいんですが、総理もよく御指名されています自民党の河野総裁とのトップ会談が、どのようなタイミングで会期中に行われるのかということ。その際の具体的な譲歩案までどの程度お考えなのか。

 更に、一部で成立がならない場合の解散論なども出ているんですが、総理は明確に否定なさっているんですけれども、その際は、それでは総辞職という選択もあり得るのかということに関して、最初にお伺いしたいと思います。

○細川総理 初めに最後のお尋ねから申しますが、この政治改革法案が成らなかった、成立をしなかった場合の責任をどう考えるかということでございますが、今、具体的に解散とか総辞職とかということにも触れてお話がございましたが、そういうことについては全く考えておりません。とにかく、この延長された国会の中で、是非、この政治改革関連四法案が成立するように、国会の方でも実りのある審議をお願いしたいと思いますし、政府としても、全力を尽くして、その成立のために努力をしたいと思っております。

 それから、河野総裁とのトップ会談の件ですが、これは勿論、委員会での論議が煮詰まって、そのようなトップ会談が持たれるということに意味があるという状況が生まれてくれば、それは喜んでトップ会談をさせていただきたいと思っておりますが、まずは、やはり委員会でどういう点について与野党の協議というものが進んでいくかという点をよく見守っていきたいと思っております。

 それだけでしたか。

 − そうしますと、法案に関する具体的な譲歩案とか、修正というのは今のところはどうなんでしょうか。

○細川総理 今のところ、その点は考えておりません。委員会で具体的な御論議が煮詰まることを期待をしております。

 − もう一問、これは年頭記者会見でも私どもから何回か聞いた話なんですけれども、景気対策につきまして、所得税減税の規模をどうお考えになるのか。経済界からは、あっと驚くような規模でなければ、効果はないんじゃないかといった声も出てきておりますし、また、この財源をどうするのかといった問題もあろうかと思います。与党内から、短期国債でこれを賄うべしといった声も出てきている訳ですけれども、その規模と、それから財源について、どんなふうにお考えなのか、改めてお伺いします。

○細川総理 規模、財源については、今、与党の代表者会議の中でも御議論をいただいておりますし、また、政府与党の経済協議会でも御論議をいただいているところで、この中旬ぐらいには、御結論を出していただきたいということでお願いを申し上げておりますから、その結論を踏まえて、政府としてもしっかり考えていきたいということでございます。それまでは、とにかく論議が煮詰まるのを見守っていきたいというふうに思っております。

○司会 それでは、幹事社からの質問を以上二問ということにしまして、以後、同行記者団の方からフリーで質問をお願いします。

 − 朝日の木之本と言いますが、細川内閣の三つの改革の一つに掲げていらっしゃる行政改革についてですけれども、今年、具体的に何をどういう形でお進めになるお考えなのか。特に国民の関心も高い情報公開法については、その制定に向けてどのような姿勢で望まれ、また、制定の目途というのが総理の頭の中にあるんでしたら、いつごろまでにというお考えをお聞かせ願えればと思います。

○細川総理 政治改革と経済改革と行政改革というのは、三つの大きな構造的な改革として、この内閣が推し進めていかなければならない大きな課題だということを再々申し上げてまいりました。

 今、お話の行政改革、これは経済改革ともかかわってくる問題が多い訳ですが、例えば規制緩和の問題については、私自身が本部長になって、行政改革推進本部というものを設置をして、本格的に腰を据えて取り組んでいきたいと思っております。今まで臨調とか行革審とかでも、規制の問題については再三答申、報告といったようなものが出されておりますが、とかく掛け声倒れに終わってきたきらいがございますし、今度は平岩研究会でも、また行革審でも、この点については勧告権を持った第三者機関を作るといったような報告もなされておりますから、政府としても、掛け声倒れにならないように、是非、政府自ら実行するという姿勢をしっかり持って、これを推し進めていきたいと思っているところです。

 前にも規制緩和元年にしたいということを申し上げましたが、その言葉どおりにこれから本格的に取り組んでいきたいと思っております。

 それから、この関連で、やはり行革審答申でPL法の、製造者責任についての報告が答申が出されておりましたが、これはこの国会に、通常国会に出させていただきたいと思っております。

 それから、お尋ねの情報公開法につきましても、早期の法制化に努力をしていきたいということです。先ほど申し上げた第三者機関で、具体的な中身を詰めていただいて、そして、早期の法制化に努力をするということになろうと思います。

 それからまた、同じく行革審の答申で出ている地方分権に関する問題につきましても、今年中に地方分権大綱というものを取りまとめる予定にしておりますが、その大綱の取りまとめの中で、立法化の地方分権基本法と、仮にそういう名前になるかどうか分かりませんが、基本的な法律といったようなものについても、立法化の推進をしていきたいと思っております。

 大体そんなところでしょうか。

 − 日経新聞の高坂です。

 防衛問題についてお聞きします。防衛大綱の見直しについて、総理は今、見直しのポイントについて、具体的にどういうイメージを持たれているのかということ。

 それから、諮問機関を総理直属という形で設置するのだという報道がなされていますけれども、そういうことも含めて、今後の具体的なスケジュール、段取りについてはどういうお考えでいらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。

○細川総理 まだはっきり詰まっている訳ではありませんが、恐らく総理の諮問機関という形になると思います。どのくらいの規模で、どういうメンバーでということはまだはつきり{前4文字ママ}しておりませんが、この夏ぐらいまでの間に、つまり概算要求が固まるころまでに考えていただいて、大まかな方向を考えていただいて、再来年度の予算、平成七年度の予算に反映出来るように見直しを進めていきたいと思っております。

 − その前に答申をということですか。

○細川総理 再来年度の予算に反映出来るようにしていきたい。何と言いましても、冷戦構造が崩壊して、国際的に軍縮という方向に向かっている流れの中で、我が国のあるべき防衛力の姿というものが、どういうものが本当に意味のある防衛力であるかということについて、基本的にそろそろ見直すべき時期に来ているのではないかというふうに思っております。その点について、先ほど申し上げた、恐らく総理の諮問機関という形になると思いますが、そこでじっくり専門家の方々に論議を詰めていただきたいということです。

○司会 時間がまいりましたので、内閣記者会の会見はこれで終了いたします。

 それでは、引き続きまして、地元記者の質問に移りたいと思います。

 − 伊勢新聞の山本と申します。

 まず、具体的な質問に入ります前に、総理が神宮を参拝された御感想と、それから何をお祈りされたかというようなことをお話し願えたらと思います。

○細川総理 厳粛な気持ちで参拝をさせていただきました。私は子供のころから数えて何回目なのか、ちょっとよく覚えておりませんが、前にお参りをしましたのは、多分参議院のころだったのではないかと思います。家内の方は、五回か六回か、もう伺っているようですが、三人の子供達が中学に入るたびに、そのお祝いの旅行ということでこちらに連れてきておりましたので、私はなかなかそのときには一緒が出来ませんでしたから、家内と子供たちが来ておりましたが、今日は本当におごそかな雰囲気の中で、厳粛な気持ちでお参りをさせていただいたところです。

 勿論、お参りを申し上げるに当たって、国家の、日本の国の安寧ということは、また、将来の発展ということ、それだけを祈念をしてきたところでございます。

 − それでは、まず、長良川河口堰の建設問題につきましてですが、これには、治水・利水両面で、また環境上、いろいろな問題が提起されていると思うんですけれども、今後、建設中止を含めて、計画全体を見直されるというお考えはございませんでしょうか。

○細川総理 昭和三十四年の伊勢湾台風以来、あのときは三回続いたんでしょうか、洪水、水害に見舞われて、その後もまた何回かの大きな災害がありました。それを受けて、沿線地域の方々からも、あるいは地元の自治体からも、是非河口堰を建設をして欲しいという強い御要望があって、防災上の観点から、治水上の観点から、また利水上の観点からも、中部圏の利水という観点からも、是非進めていかなければならないということで、今日、慎重な環境についてのアセスメントも行われた上で、計画が進められているということでございますから、今後、環境の面に十二分の配慮をしながら、来年度で完成をするという予定でございますから、そのとおりに是非、計画どおりに進めていっていただきたいというふうに思っているところです。

 先般、建設大臣も見えて、環境の面から、また、防災上の観点から、あるいは塩分等の調査についても、今後やっていこうということで、そういう調査を踏まえながら、計画どおりに建設の進捗に努めていくということで、大臣からもそういう話を伺っておりますし、繰り返しになりますが、環境の面への配慮というものを十分念頭に置きながら、六年度の完成を目指して努力をしてまいりたいと思っております。

 − 次に、原子力発電の問題でございますが、三重県でも中部電力が首浜地区に立地計画を持っています。しかし、現地では三十年来推進と反対を巡る確執が続いているという状況なんですが、このような状況を踏まえた上で、国のエネルギー政策の中で、原発についての位置づけをどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

○細川総理 一言で言えば、この問題も環境の安全面ということに十分配慮しながら進めていくということに尽きる思います{前4文字ママ}。経済性とか、あるいは環境への負荷とか、いろいろ考えなければならない問題があると思いますが、しかし、原子力というものが今の電力需要の中で、非常に重要な役割を担っているということを考えますと、どうしても地域住民の方々の御理解を得ながら、御協力を得ながら、今後とも進めていかなければならない。そういう点で今お話の原子力発電所の問題につきましても、そうした点に十分配慮しながら、今後とも政府として取り組んでいきたいと思っております。

 − 次に公共事業予算の配分についてということなんですが、六年度以降、農業、漁業などの生産基盤整備事業が抑制されるというふうに聞いておりますけれども、当県でも、七月に開催されるまつり博を契機にして、道路整備を進めるなど、地域づくりのため、公共事業の役割というのは非常に大きいと思います。

 農・漁業の生産基盤を抑制するということは、地方からも反発が強いと思うんですけれども、この点につきましては、どうお考えでしようか。

○細川総理 大事なことは、均衡のある国土の発展という観点から、多極分散型の国土の形成という観点から、今まで以上に重点的、効率的にあり張りの効いた公共事業予算の配分をしていくということに尽きるんだろうと思っております。

 生活者重視という視点に立った公共事業予算の配分の見直しということを申し上げている訳で、生活環境重視ということは、都会、地方を問わずに、生活者のニーズとして非常に求められていることだと思っておりますから、そのことが地方の切り捨てにつながるというようなことは全くないと思いますし、いずれにしても、めり張りの効いた本当に、それぞれの地域で必要とされる生活基盤の予算をしっかり考えていくということで対応してまいりたいと思っているところです。

 − 最後に、地方分権の問題についてなんですが、先ほどの内閣記者会の質問とも多少重複するかもしれませんけれども、十月の行革審の最終答申で、地方分権の推進が盛り込まれましたけれども、やや具体性に欠ける内容となっております。先ほどの、今年中に大綱を策定するというお話もありましたけれども、総理も知事経験者でもありますので、そこら辺の経験から地方分権の理想像をお話し願えればなと思っております。

○細川総理 地方分権の理想像というのは、これは一言で言えば、それぞれの地域がその歴史なり、風土なりというものを踏まえて、生き生きとした個性のある地域づくりを進めていくことが出来るような状況が出来るということが一番望ましいことだと思っておりますが、そのためには、今の地方制度というものが今のままでいいのかどうかというところまで踏み込んでの議論が必要だと思っております。

 しかし、それにはまだまだ国民的な合意も形成されておりませんし、例えば自治体のサイズにしても、どういうサイズがいいのかということを始めとして、さまざまな議論があると思いますし、また、権限とか財源の配分の問題にしても、いろいろな議論がある訳で、まだそれが収斂されているというふうには考えておりません。行革審の中などでも、さまざまな議論がございましたし、また、自治体関係者の方々の中でもいろいろな御議論があって、もう少しその辺のところを詰めていく必要があると思っておりますが、いずれにしても、先ほども申し上げましたように、地方分権大綱というものを今年中に作成をする予定にしておりますし、その中におきまして、行革審の答申などでも指摘をされている基本的な立法の作業についても、どういう形で進めていくかということが、その中で当然検討されていくことになるだろうと考えているところです。

 − 今後の具体的なスケジュールについて、もう少し詳しくということは出来ますか。

○細川総理 その分権大綱というものを年内にということですから、その中で、立法の作業というものがどこまで出来るか。私は出来るだけ何とかそれを詰められろようにお願いをしたいとは思っておりますが、まだそこまで具体的にはなっておりません。

○司会 時間がまいりましたので、この辺で細川内閣総理大臣の記者会見を終わります。ありがとうございました。

○細川総理 どうもありがとうございました。

 − 今まで自民党政権が 聴取不能 政権が変わったということで、やはり首相も恒例だからということで、参拝にいらしたという・・・・・。

○細川総理 それは皆さんどなたでも、多くのほとんどの方々が御年始というか、新年のお参りにどこかに行かれる訳で、私もそれは、お参りをするならば、何と言っても、やはりこちらに真っ先にお参りをして、明日は明治神宮の方に参拝をいたしますが、恒例でもあるということもございますが、私自身の気持ちとしても、真っ先にこちらにお参りをしたいと、そういうことで今日は伺いました。