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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 細川内閣総理大臣による年頭記者会見

[場所] 
[年月日] 1994年1月1日
[出典] 細川内閣総理大臣演説集,191−210頁.
[備考] 
[全文]

○細川総理 明けましておめでとうございます。

 一九九四年の年頭にあたりまして、間近に迫った二十一世紀を見据えて、我が国がこれから何に向かって、どのように進んでいくべきか。今日は私の思いを率直に申し上げてみたいと思います。

 昨年は国民の皆様方の熱い期待の中で、政治の閉塞状況が打ち破られ、連立政権が誕生した画期的な年でありました。それはいつの間にか古くなってしまった日本の政治、経済、社会の仕組みを根本的に新しく作り変えていかなければならない、歴史の必然であると申し上げてきたところでございます。ですから、私達の新政権は、歴史的な使命として、「日本の変革」という大きな歴史の回り舞台を回していく責任があるということを、今、あらためて強く感じているところであります。

 変革が求められている背景には、様々な要因がありますが、ここでは大雑把に二つの点に限って申し上げたいと思います。

 まず一つには、日本が世界に例を見ないスピードで高齢化社会を迎えつつあるということであります。人口構成からみて、最も活力のある時期から、最も大変な時期へと移り変わりつつあるのが、まさに今我々が生きているこの時期であるということであります。

 二つには、これまで日本の社会を築いてきた基本的な理念の変更が迫られているということであります。例えば、明治以来の欧米に追いつき追い越せという経済拡大至上主義を超えた新しい行動理念というものを構築していかなければならないと思います。

 今、世界の国々の人々が本当に日本に住んで暮らしてみたいと思うだろうか。私は時々そんなことを考えてみたりするんですが、確かに日本は安全な社会生活、高い所得水準、長い寿命など世界に誇りうる多くの特質を持っております。そして、これから多少の痛みを伴うものであっても自ら進んで改革を推し進めていくことによって、より世界に誇れる社会の実現を確かなものにすることができると。私はそのように確信をしている次第です。

 そこで、私は、二十一世紀初頭に向けて、三つの具体的な提案をお示しをしたいと思います。

 まず第一に、高齢化が活力に結び付く社会の構築についてであります。

 二十一世紀における高齢者というのはちょうど私自身を含む世代のことでありますが、日本が、文字通り世界一の長寿国になっていく中で、私たちがお互い、元気である限り働き、楽しみ、あるいはまた社会に貢献するという気持ちを持ち、また同時にそれを支える社会的基盤を今から整えておくということが必要であります。

 そのためには、まず、本人が希望すれば、少なくとも六十五歳、あるいはそれ以降も働くことができる社会の仕組みを作り上げていくということが肝要であると思っております。そこで、雇用保険からの給付の創設などによりまして、高齢者の雇用の継続をサポートしてまいります。また、六十五歳まで現役で働き得る社会に向けて年金制度の改革やパート労働者への社会保険の適用を進めてまいります。同時に、女性が働きやすい環境を作り、将来を担う子づくりを支援していくために、新たに育児休業給付を設けるほか、保育所の改革などを進めてまいります。

 それから、老後の最大の心配は、寝たきりになった場合の介護のサービス、費用の問題であろうと思いますが、そこで「高齢者保険福祉推進十か年戦略」、いわゆるゴールドプランを見直して、ホームヘルパーなど介護サービスの充実を思い切って推進してまいりたいと思います。また、医療保険を見直すとともに、付き添いを必要としない看護体制を積極的に推進をし、あわせて、介護のために仕事をやめなくても済むように、介護休業法の制定の検討を含めて、介護休業制度の充実を図ってまいりたいと思っております。

 さらに、医療福祉の観点と国際的な貢献の観点を踏まえて、がんなどの難病の解決の見通しが立てられるように、新たにがん克服新十か年戦略を策定したいと考えております。

 高齢化社会は、我々自身が正面から取り組んでいくことで、活力のある明るい社会になると思いますし、今申し上げた考え方に沿って総合的な「高齢社会福祉ビジョン」を作成したいと考えているところです。

 第二に、豊かで質の高い生活基盤の構築についてであります。

 私たちは、お互い毎日の暮らしのことを考えてみたときに、地方に住んでおりますと、大都市と比べて働き場所が少ないとか、文化や教育の水準が十分でないと感じることが多いし、また、都会に住んでおりますと、住宅問題や通勤地獄など、生活にゆとりがないと感じてしまうことが多いわけです。私はそれぞれの地域が主体的に魅力ある地域づくりを進めることが基本だと思いますし、そのためには、地方分権のための法律の制定も視野に置きながら、地方の行政改革と一体となった地方分権に関する大綱を今後一年程度を目途にぜひ策定したいと考えております。

 同時に、地域の実情に合った生活環境を中心とする社会資本の整備を積極的に進めてまいります。例えば、現在下水道は人口五万人未満の市町村では、一割程度しか普及しておらず、全国でみても半数以上の人が利用できない状況にあるわけでございますが、今後、全国レベルで九割以上の人が下水道を利用できるようにしてまいりたいと思います。また、農村集落の道路舗装率も現在の中都市並に引き上げることを考えてまいりたいと思っております。

 また、各地方の拠点都市を道路や鉄道や航空で結ぶ効率的な高速交通ネットワークは、多極分散型の国土の形成に不可欠であります。例えば高速道路などの、いわゆる高規格幹線道路網を二十一世紀の初頭までに、現在の約六千キロから一万四千キロへと延長いたしまして、全人口の九十八%がインターチェンジに一時間以内に到達できるようにしてまいりたいと考えております。

 次に私は、二十一世紀の豊かな住まいづくりを目指す「住まい二十一計画」というものを提案をいたしたいと思います。この計画では、住宅の一人当たりの広さを三割増加させて、四十平方メートル{原文はm二乗の記号}にすることが可能となるような改革に取り組みますとともに、地域の街づくりと一体となった住宅づくりを進めてまいります。そのために、国際的に高い住宅の建物のコストを大幅に引き下げて、当面、これまでの水準の三分の二ぐらいで家が建てられるようにするという目標をもって、住宅産業の思い切った改革や住宅輸入を含む競争の促進を進めてまいりたいと考えております。また、土地の有効利用も大きな課題ですし、そのためには、土地利用の高層化の観点から、土地利用に係る規制の在り方について、積極的に検討してまいります。

 加えて、一人当たりの土地公園面積を三倍にすることなどを目指して「緑三倍増計画」を策定し、美しい街づくりを促進をしてまいりますとともに、交通混雑を緩和するという観点から、複々線化をはじめとする都市鉄道の能力の向上による快適な通勤の実現を図るなど、生活者の視点に立った生活基盤の整備を進めてまいりたいと考えているところです。

 第三に、創造性にあふれた個性豊かな社会の構築についてであります。

 私はこれからの世の中を考えますと、多様な個性をいうものが豊かに伸びていくことにより、独自の文化や経済活動が生まれ、新たな活力の源泉になるのだろうと思っております。このことは同時に、日本が国際社会の責任ある一員として行動し、貢献していく上でも、重要な要素だと考えております。

 その観点から、まず、私は、日本が諸外国に比べて遅れているとされる先端技術研究の促進を図らなければならないと思います。それには、宇宙とか生命、物質、エネルギーなどの分野での基礎的な研究があると思いますし、優秀な研究者の育成や研究施設の整備などの基盤の強化を図りながら、二十一世紀を睨んだ重要な研究開発に対して、重点的に資金の配分をしていきたいと思っております。

 また、文化や芸術の振興につきましても、将来を担う若手の芸術家の育成や、創造的な芸術公演活動、さらには地域の特色のある文化活動などへの助成を拡充し、「文化を発信できる社会」を作り上げることを目指していきたいと思っております。同時に、諸外国と自由に対話できるお互いの多様性を理解しあえる環境を築くことも重要でありますし、そうした観点から、例えば十万人の海外留学生の受け入れなど真に意味のある国際交流というものを促進をしていきたいと考えているところです。

 それから、次に創造性あふれる経済活動の典型的な例として、情報産業というものがありますが、情報通信技術の急速な進歩によって、世界中の番組をいつでも見ることができ、家庭では医療や行政サービスを受けることができるような社会というものを、二十一世紀のはじめにも実現することが可能になってきました。そこで、民間事業者による通信ネットワークの整備の加速化と新しい産業の展開に向けた通信・放送分野の規制緩和などを、総合的に推進していく必要があると思っております。

 しかし、こうした活力のある豊かな社会の実現ということは、決して容易なことではございません。これまで述べてきた社会保障の充実や社会資本の整備、創造性にあふれた社会の実現などを進めていくためには多額のコストが掛かりますし、我々自身もそれ相応のコストと責任というものを分かち合っていく必要があることは、言うまでもないところでございます。それなくしては、我々のめざす二十一世紀の社会を実現していくことはできません。

 その際、我々は、負担の高さゆえに、社会の活力が失われることのないように、二十一世紀初頭の高齢化のピークの時期においても、国民負担率を五十%以下にすることを決意し、そのためのできるだけの工夫をしていかなければならないと思っております。そのためには、まず徹底的な規制緩和を中心とする行政改革や、歳出の抜本的な見直しなどを進めていかなければなりませんし、特に規制緩和につきましては、流通あるいは住宅・土地など、生活に密着した分野、さらには情報通信など、新規の産業、雇用の創出に寄与する分野など、効果ある規制緩和を大胆に推進をしていかなければならないと思っております。

 しかし、こうした努力を行いましても、二十一世紀に向けた活力ある豊かな社会を実現するためには、我々一人一人の負担がある程度増えていくことはどうしても避けられないことだと思っております。現在は、一人の高齢者を五人の働き手が支えておりますが、二十一世紀のピーク時には、約二人で支えなければならないことになってまいります。ごく単純に考えますと、そのための負担は倍以上にもなるわけで、今後、高齢化の進展に伴う社会保険料の増加や、社会保障だけではなく、社会資本の整備などに必要な税負担の増大ということもどうしても避けて通れない課題だと思っております。

 そうした観点から、今の税体系というものを見ますと、個人所得課税のウェイトが大きいために、負担の多くの部分を働き盛りの世代が担っております。このままでは、高齢化社会を支えるこの世代に余りに大きな負担を求めることになってしまうわけで、今後とも働き盛りの世代のやる気や社会全体の活力が十分に発揮されるためには、このような国民の負担の在り方を見直し、所得と消費と資産のバランスの取れた税制にしていくことがどうしても必要だと考えているところであります。

 そこで、私は、税制調査会からお示しいただいた公正で活力ある高齢化社会の実現を目指した税制改革の基本方針に沿って、国民合意の税制改革を一体として推進することが最善の選択ではないかと考え、国民各位の御理解を是非ともお願いをしてまいりたいと考えているところでございます。

 最後に、国際的な側面に触れておきたいと思います。

 我が国の繁栄は世界的な自由貿易体制が維持されて初めて可能であり、先般ウルグアイ・ラウンドが実質的に合意されたことは、誠に意義深いことであったと思います。しかし、一方、今回の合意の国内的な影響につきましては、当然のことながら、十分配慮してまいらなければなりません。特に農業に携わっておられる方々が、安心して営農にいそしむことができるように、万全を期するとともに、食糧自給率の低下に歯止めをかけることができるように、我が国農業の確たる将来展望を切り開いていかなければならないと思っております。

 外国からの声に耳を傾けますと、我が国は依然閉鎖的であるという声や日本の貯蓄が多過ぎて、投資が少な過ぎるといったような批判も聞こえてまいります。勿論、このような批判の中には、誤解に基づくものもありますが、改善すべきところは、積極的に改善していかなければなりません。高齢化社会を前に積極的な社会資本の整備を進めていくことも、諸外国のためではなくて我々自身のためでありますし、そのためにも、後の世代に負担を残さないような財源の確保というものを前提として、公共投資基本計画の配分の再検討と積み増しを含めた見直しを行ってまいりたいと考えているところであります。

 私は、以上申し述べてまいりましたような施策を推し進めていく中でおのずから、国際的に開かれた日本の経済社会を実現していくことができるものと確信をいたしております。

 これまでに申し上げた経済、社会の変革というのは政府だけでできるものでは、もちろんございませんし、改革には、痛みが伴うものであります。また、我々が採り得る選択の幅は極めて限られたものでありますが、国民の皆様方と力を合わせて、進んで困難に挑戦し、痛みを分かち合いながら共に理想と希望に満ちた時代を築いてまいりたいと希っている次第です。

 今年は、バブル後の、いわゆるストック調整も進み、景気の本格的な回復を期すべき年であります。今日お話したビジョンを目標として掲げて、あわせて当面の経済運営に万全を期すことによって、新年の経済は必ずや明るいものになると信じております。

 国民の皆様方にとりまして、本年が実り多い年となりますように、心より祈念をいたしております。

 ありがとうございました。

 − それでは、質問に入ります。まず、今のビジョンに関連して、総理に一点お伺いいたします。

 税制改革については、これまでの論議の中で、単純な増減税ではなくて、将来のビジョンを示すべきだという意見があったわけで、そういう意味では今回のビジョンというのは、そういう線に沿ったものだと受け止めていいかと思うんですが、端的に言いまして、二十一世紀を展望した場合、消費税の税率アップ、これは避けられないということについて、今回のビジョンは国民に理解を求めたというふうに受け止めていいんでしょうか。

○細川総理 消費税の問題について、ただ単に申し上げたということではございません。もっと中期的にこれからの、まさに私がお示しをした二十一世紀ビジョンというのは、その言葉のとおり二十一世紀のどジョンということでございますから、もう少し長い目でもってこれからの経済社会のあるべき姿というものについてお示しをしたわけでありまして、高齢化が進んでいく中で、どうしてもこれは負担の増というものは避けて通ることができない。負担を避けて通るということであれば、社会保障は引き下げざるを得なくなりますし、また、一方で、借金に依存するということになれば、我々の世代はいいですけれども、我々の子供や孫たちには大きなつけを残すということになるわけですし、一方で、高齢化社会が進んでいく中で、働き盛りの世代に大きな負担を掛ける、過重な負担を掛けるということで、さっきもちょっと申し上げましたが、果たして社会の活力というものが失われずにやっていけるだろうか。あるいはその働き手の人たちのやる気が失われてしまうことがないだろうか。そういうことを考えると、どうしてもそこで税制調査会の答申などでも言われているように、あるいは平岩研究会の報告などでも指摘をされておりますように、公正で公平な受益と負担の関係というものを築いていかなければならないと思いますし、よく言われるように、所得と資産と消費のバランスの取れた税体系というものを考えていかなければならないだろうと。そういう意味で、ちょっと長くなりましたが、二十一世紀に向けて、受益と負担のあるべき姿ということを申し上げたところでございます。

 − 重ねてお伺いしますけれども、総理は、国民合意の税制改革を一体で進めていくと、このようにおっしゃったわけですけれども、これは当面する所得税減税と消費税率の将来の引き上げを念頭に置いてそういうことをおっしゃったんではないでしょうか。

○細川総理 今も申し上げたこととちょっと重複するかもしれませんが、これから高齢化社会を迎えていくに当たって、どうしても負担の増というものは避けて通れない。それを避けて通るということは、無責任な話だと思います。しかし、そうした点について、具体的にどうしていくかということにつきましては、総合的な観点から税調の答申などを踏まえて、今、政府与党の協議会で御議論をいただいているところでありますし、予算編成までには一月半か一月もうちょっと遅くなりますか、そのころの予算編成の時期までには結論を出していただくということになっておりますから、その協議の結論というものを踏まえて、政府としても態度を決めさせていただきたいと思っております。

 − 今、消費税の引き上げについては、余り明確なことを総理はおっしゃいませんでしたけれども、先ほど示されたビジョンを聞いておりますと、税調の答申に沿って、税制改革を一体となって進めていくというふうにおっしゃっているわけなんで、消費税を将来引き上げざるを得ないということを言われたことは明白だと思うんですけれども、はっきり言えない背景には、やはり社会党などに反対が強いという側面があると思うんですが、今日の論理で社会党などを説得する自信はおありなのかどうかというところを伺いたいと思います。

○細川総理 大変厳しいお尋ねですが、まず、いろいろな基本的な税制改正というものを進めていく際に、前提になることが幾つかあると思います。それは歳出の合理化ということもそうでしょうし、不公平税制の是正というようなこともあろうと思います。税制の改革の中でも、勿論、直間比率の是正を含めた抜本的な税制改正ということは、基本的な大きな考え方の一つの柱だと思いますが、どういう結論になるかということは、これはまさに繰り返しになりますけれども、各党を含めた協議会で御議論をいただいているわけでありまして、そこで負担は避けて通ると議論はできないわけですから、何らかの結論はそこで出していたたげるであろうと思っているところです。

 − 今日は中長期的なビジョンに重点を置かれたお話もされましたけれども、今年の年頭においては、国民は目の前の緊急の経済対策をどういうふうに取られるのかという話は一番総理から聞きたいと思うんですが、その緊急対策についてはどういうふうにお考えなんでしょうか。

○細川総理 緊急対策につきましては、もとより今まで数次にわたる経済対策というものを進めてまいりました。そして、これから第三次補正あるいは来年度の当初予算という十五か月の切れ目のない景気刺激というものに配慮した予算編成をすることによって、必ず景気の展望が、経済の展望が開けてくるようにしてまいりたいということを申し上げているわけで、予算編成の時期までには勿論、経済対策も決まってくるわけでありますし、具体的な経済対策、その税制の問題も含めて、必ず国民の皆様方の御期待に添えるような姿にしてまいりたいと思っているわけです。

 − 今の質問と関連しますけれども、国民が関心を持っている所得税減税の規模とその財源をどうされるんでしょうか。

○細川総理 それについては、現時点では申し上げられません。まさにこの政府与党の御協議の場で今、御議論をいただいているところですから、一月の中旬ぐらいまでには、その姿が見えてくると思います。

 − 中長期の中で、六十五歳以上の雇用も確保するとおっしゃっているんですが、現に失業率が高まっていて、潜在失業者も増えています。当面の、九十四年に失業率をどれぐらいまで押し下げることができるか。更に九十四年の経済成長率でどれぐらい総理自身は見込んでおられるのか。お教えいただきたいと思います。

○細川総理 経済の見通しについては、これも年が明けてから中旬ぐらいの話になるわけですから、その時点で明らかにしなければならない。また、明らかにお示しをすることができることだと思っておりますが、雇用の問題につきましても、先般から国会の御答弁などでも申し上げておりますように、雇用対策について、労働省を中心に、できる限りの対策を打ち出してきております。確かに今、雇用の状況というものが非常に深刻な状況になっているわけで、私としても、大変懸念をしておりますが、このペーパーでも申し上げましたように、それから先般の会見のときにも申し上げましたが、雇用対策について、政府としてあらゆる手立てを動員して取り組んでいくということでございます。私自身が雇用対策本部の本部長になって、この問題に全力を挙げて取り組んでいくということを申し上げているところです。

 − 総理、先ほどの減税のお話に関してなんですが、昨日も加藤寛さんが総理にお会いになって、減税を実施するとしても、将来の増税を同時決定すべきだと。いわゆる一体的処理ですが、減税と同じ法律に将来の増税も明記すべきだという主張をなさっているわけですが、政府税調の答申を最大限尊重するという総理としては、この同時決定の立場は堅持されるわけですか。

○細川総理 それは政府税調の答申は、政府として尊重してまいらなければならないことは当然でございますが、そのことも踏まえて、今、政府与党の協議会で御議論をいただいているわけでございますから、恐らくその答申というものをしっかり踏まえた方向というものがお示しをいただけるだろうと思っております。

 − 今、総理の一番最後の部分で、今年はバブル後のいわゆるストック調整も進んで、本格的な景気回復を目指すというお考え、御認識をお示しになられていますけれども、そのストック調整が本当に進んだのかどうかということを考えますと、実際今回の不況の中には、金融機関が持っている不良債権という問題が非常に大きいと思うんです。これは今までの景気後退とは違うんじゃないかと。そういったところに、今までと違うところで、今までの手法で景気回復を目指すのでは、どうも不十分じゃないかと。もっと思い切った公的な資金の導入でありますとか、ないしは減税をする場合にでも赤字国債を使うとか、そういう今までの非常にノーマルな手段ではない、むしろアブノーマルな手段が今回の不況の局面では必要ではないかと。そういう議論があるんですけれども、こういったことについてはどういうふうにお考えでしょうか。

○細川総理 垂れ流し的な赤字国債を出すということについては、これはよくよく慎重でなければならないということを再三にわたって申し上げてまいりました。ただ、土地の流動化対策の問題については、今おっしゃったようなことも含めて、これも先般来申し上げてきているわけですが、政府としても真剣に考えてまいりたいと思っております。まだ具体的な方策が今あるわけではありませんが、何とかいい知恵がないかということで、今、一生懸命研究をしているところです。

 − 消費税、また繰り返しになりますが、総理は一貫して与党内の議論を待つというお考えのようですが、今のままでいくと、やはり総理決断という場面もある程度想定せざるを得ないかなという気も持っているわけですが、その場合、総理は決断をされて、しかも財源手当については、真正面に向かったような対応をされるお心構えはございますか。

○細川総理 これはまだ今の時点では大変申し訳ありませんが、何とも申し上げられません。政府与党でどういう御結論が出るか、その辺の方向づけというものを踏まえて、将来に向けて誤りのない決断をしたいと思っております。

 − 高齢化社会に向けて、総理は国民の負担を覚悟するとおっしゃたんですが、高齢化社会で必要とされる人材と、介護ケアに関するようなことを考えますときに、規制緩和によって、かなり浮いた人材、例えば各地の運輸局とか各地の出先の事務所とか、かなり浮いた人材を役所の壁を超えて、そういう老人介護のケアに向けることによって、少しでも国民の負担は減らしたまま公務員の転換とか、そういうことによって賄うというお考えはお持ちになられませんか。

○細川総理 それも一つのアイデアだと思いますが、具体的にそこまでは考えておりません。

 − いろんな多岐にわたるビジョンだと思うんですけれども、今のいわゆる縦割行政と言われている中では、実現するのはなかなか大変ではないかという印象を持ちました。この中にも行政改革の必要性を訴えられていらっしゃいますけれども、具体的にこの内容の肉づけというのはどこでやっていくんですか。

○細川総理 これは勿論、各省庁で下ろしてやっていっていただくということになると思いますが、勿論、省庁にまたがるものもありますから、それはそれなりに調整をしてやっていかなければならないと思いますが、ここでお示しをした方向というのは、勿論、これは私の考えを取りまとめさせていただいたものであって、与党の主だった方々にも、与党の代表者の方々にも事前にそのあらましはお示しをしておりますが、今後、与党の中でも十分御論議をいただき、しっかりした肉づけというものの作業をこれからの予算の編成なり何なりの中できちっとしていっていただきたいと思っているわけです。

 勿論、このビジョンというものは、今まで各省庁が出してまいりました経済計画とか、例えば生活大国五か年計画とか、あるいは全国総合開発計画であるとか、それぞれの省庁が出してまいりましたそうしたものも踏まえたものでありますし、平岩研究会とか税制調査会とかいろいるなものがありますが、そうしたものを踏まえて、それと整合性のないようなものは、ないと思っておりますから、更にそれを踏み込んだ形で私なりに取りまとめて申し述べているということでありまして、その肉づけに当たって、それはこういう方向で是非進めていってもらいたいということで、これから各省庁にお願いをしていくということになると思います。

 − 多少くどい質問になりますけれども、消費税を巡る大蔵省と社会党の関係を考えますと、この問題については、最終的にはやはり総理のリーダーシップというものが厳しく問われてくると、そういう性格の問題ではないかと思うんですけれども、その点今一度お願いします。

○細川総理 最終的にはそれは米の問題でも何の問題でもそうだと思いますが、最終的には私がそれは判断をしなければならないことだと思います。それは当然のことだと思いますが、しかし、とにかく大事な問題でありますから、どういう受益と負担の関係というものが望ましいかということについて、さっきも申し上げましたように、くどくなりますが、とにかく高齢化が進んでいって、負担の増大が避けて通れないというときに、負担はいやだ。社会保障がこれ以上低下するのは困ると。一体どういう判断を国民の皆様方が選択をされるか。ある程度の負担はしても、社会保障の水準がこれ以上下がらないようにしていくことが大事であるというふうに判断をされるのか。

 あるいは、もう負担はいやだから、所得保障の水準が下がってもいいというふうに判断をされるのか。あるいは今の一番の働き手の人たちの負担がうんと増えてしまってもいいという、社会の活力が失われていいというふうな判断をされるのか、そこのところで、いずれにしても私たちは、その幾つかの選択肢の中から判断をしなければならないわけですから、勿論、すべての方がその一つの方向に御賛同をいただくということはなかなか難しいことだと思いますが、しかし、少しでも広範な国民の合意が得られるような形で、今、与党の中でも御議論をいただいているわけで、その中から、こういう選択肢の中でどれを選んでいただけるでしょうかという、そういうことが示されることになるでしょうから、そういう作業を経た上で、私なりに最終的に判断をしなければならないのではないかと思っているわけです。

 − 今おっしゃった最終的な判断に関してなんですが、時期について、先ほど政府与党の協議が一月半ばごろにでも結論を出すでしょうからと申されましたが、その時点で例えば連立与党内の話し合いがつかなかった場合には、その一月半ばという時期、あるいは一月中を時期として、総理は決断をされるということでよろしいんでしょうか。

○細川総理 判断がそこでまとまらないということでは困ると思っております。何とかまとめていただくように是非御努力をいただきたいと思っているわけです。

 − 政治改革法案なんですけれども、参議院の審議は閉塞状況に陥っておりますけれども、総理はこの問題の打開のために、御自身で指導力をどういうふうに発揮されていくお考えなのか、その辺をお伺いしたいと思います。

○細川総理 年明け早々に御審議を始めていただきたいというのが、まずもっての私の率直な気持ちでございますが、とにかく参議院に送られてきてから、もう四十日以上になるんでしょうか。勿論、間で補正予算の審議などもありましたし、またウルグアイ・ラウンドの問題なども出てきましたから、そうした問題もあって、なかなか参議院での審議が順調にいかなかったということはよく理解をしておりますが、しかし、年が明けてからも相当な審議日数が確保されているわけですから、是非、この五年間掛けてできなかった政治改革というものが、今度の国会で是非成立させていただくことができるように、私としてはできる限りその審議の促進のために、政府としても、動けるところはできる限り努力をしてまいりたいと思っております。

 基本は飽くまでもこれはやはり国会の方で、与野党で詰めていただくということが基本でありましょうし、政府としても、その合意の中で積み上げられてきた協議の中で一定の合意が得られるならば、その合意というものを尊重することはもとよりやぶさかではございません。

 − 最終的に大幅な修正といった形で強く指揮するようなお考えはございませんか。

○細川総理 今申し上げたことと同じお答えになるのかもしれませんが、何よりもやはり各党間の間で、与野党の間で合意を積み上げていただくということが、まず一番基本的なことであると思っております。

 − 政治改革法案に関連しまして、選挙制度改革と、腐敗防止、これを切り離して処理すべきではないかという声が、再び浮上しているように思うんですけれども、これについて総理はどういうふうにお考えでしょうか。

○細川総理 これは国会でも再々申し上げておりますが、やはり車の前輪と後輪のようなものであって、今の中選挙区制の下における同士討ちといったような、利益誘導型の選挙がまかり通っているという現状を改めていかないと、腐敗防止の話だけしても、なかなか政治がよくなるということはないと思いますし、政治腐敗防止の話も、それから選挙制度の話も、やはり四法案を一括して成立をさせていただくということが政治改革のためにはどうしても必要だと、私はそう思っております。

 − 政治改革の行方と絡んで、解散論が与党の中からも出ているんですけれども、現在の不況の中での解散ということについては、総理はどのようなお考えをお持ちですか。

○細川総理 そういうことは全く考えておりません。

 − 経済に戻るんですが、総理は一月半ばの与党の話し合いの中で結論ということをおっしゃったんですが、そうすると、その場では緊急経済対策だけではなくて、中長期、特に二十一世紀をにらんだ問題、税のみならず、すべて含めて、国民負担率全体の問題ですね。こういうことを含めて、長期の話も一緒に話し合ってもらおうということになるんですか。

○細川総理 長期の話も念頭に置きながら、来年度の予算の編成を取りあえずしなければならないわけですから、そういう姿になっていくと思います。

 − 先ほど解散は全く考えていないというお話でしたけれども、先の会見で、総理は今国会の政治改革法案の成立について、腹をくくっているという表現をなさっていましたが、そうすると、もしできなかった場合は、どういう腹のくくり方があるんですか。

○細川総理 腹の内はまだ申し上げるわけにはまいりません。いろんな腹のくくり方があるだろうと思います。

 − 内政沈降型に今はなっているわけでございますが、一月のヨーロッパ訪問も中止されまして、二月に日米首脳会談がありますが、今年の外交日程は総理御自身はどう描かれていますか、まず概略的なもの。

○細川総理 今年はとりあえずは二月の中旬に日米首脳会談というものがありますし、日米包括経済協議という大変困難な問題があるわけですが、その問題を今、大変困難な交渉、協議ですが、一生懸命詰めているところで、その成果を恐らく日米首脳会談では確認をし合うというのが今度の主要な重要なテーマだと思います。それ以外には当面差し迫ってのことは、外交日程というのは考えておりませんが、当然七月にはサミットが開かれるわけですが、それまでの間のことは、今のところ具体的な日程としては検討しておりません。

 − 中国から訪中要請が大分あるようですが、訪中についても同じことですか。

○細川総理 中国からもヨーロッパからも、幾つかの国から招請が来ておりますが、まだ具体的な日程は決めておりません。

 − 話しはがらりと変わりますけれども、佐川グループからの一億円の借入金問題ですが、年明けの国会でも野党が追及する構えを見せていますけれども、総理としては、先に衆参両院に提出された新しい資料、これで説明は足りているとお考えですか。

 また、この提出された資料を訂正したり、修正されたりするお考えはございませんか。

○細川総理 今、更に追加して何かお出しできるものがあるかどうか、今、鋭意その作業をいたしております。その辺は補強的に何か出せるのか、出せないのか、その辺はまだ現時点では確たることを申し上げられません。しかし、基本的に借りたものを返したのかどうかということについては、十分、先般御提出をした資料で、そのことについては、その疑念について氷解をしていただけるのではないかと、私自身としてはそう思っております。しかし、更に御疑念があるというお話もございますから、何とかそこのところで補強的な資料が出せるならばと思って、今、いろいろ作業をしているということでございます。

 − 今の問題は、借金をお返しになったかどうかということ以外に、借りられたお金は知事選の出馬準備の費用に当てられたとか、使われた目的が総理がおっしゃっていることと違うのではないかという疑念もあると思うんです。その点はいかがなんでしょうか。

○細川総理 これも国会で再三申し上げてきたことですが、その借用の目的は前から申し上げているとおり、政治的な目的で借用したものではございません。

 − くどいようなんですけれども、消費税のことをもう一度お聞きしたいんですが、先ほど総理が冒頭で述べておられたビジョンは、聞いていますと、要するにこれだけのことをやりたいんだから、どうしても消費税というのは上げざるを得ないんだぞと。こういうふうにしか、素直に読んでいくと読めないんですけれども、聞いていた国民の方は、何となく靴の上からかゆいところをかいたような感じでしか残らないと思うんです。総理は、与党の協議に任せていると今までずっとおっしゃっておりますけれども、総理御自身は、いずれは消費税というのは上げざるを得ないんだということを思っているのかどうなのか。そこははっきりさせた方が、国民の皆さんも分かりやすいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○細川総理 おっしゃることは分かりますが、しかし、私が先にどういう考えを持っているかという一定の方向をお示しをするというのは、ちょっとそれは順序が逆なんじゃないかと思います。今、その協議会の中で、どういう選択を国民の皆様方にしていただけるかということをきっちり議論をしていただいているわけですから、それを踏まえて、私として最終的な判断をさせていただくということが手順として適当なのではないかというのが私の考え方です。

 − 所得税減税について、昨年の秋以来、政府税調の答申、議論を待ちたいとおっしゃいまして、十二月になって突然、また、政府与党の経済問題協議会というのをお作りになって、そこでの議論をまた待つという今の御姿勢なんですが、久保田長官も、減税問題というのは政治決断なんだと記者会見でおっしゃっていますが、国民から見ると、総理大臣のこの問題についてのリーダーシップがどうも不足しているし、時期もずれているんではないかという声があるんですが、いかがでしょうか。

○細川総理 それは減税問題について、国民の皆様方の強い御期待があることは十二分に承知をしておりますが、しかし、一方で、先ほど来繰り返し申し上げますように、財源の問題に目をつぶって、後々の世代に、我々の子供や孫たちにつけを回してしまって果たしていいのかどうか。そのことについては、やはりよくよくこれは考えてやっていかなきゃならないんじゃないかというのが私の一貫した考え方でありまして、何よりもやはりその点については、勿論、タイミングということも期を失してしまったらこれは大変だということも重々承知しながら、しかし、できる限り与党の中の御理解を得ながら話を進めていかなければならない。それもまた御理解をいただかなければならないことではないかというふうに思っております。

 − 総理は、常々垂れ流し的な赤字国債は好ましくないというふうにおっしゃられてきましたけれども、同一法案に増減税を書き込むというのは理想的なんでしょうけれども、そうでない場合、例えば短期の赤字国債で与党の中で合意ができて、将来的にそれを担保するんだと。財源を担保するんだという与党の合意ができた場合、それは垂れ流し的な赤字国債というふうにお考えになりますでしょうか。

○細川総理 そういう点も含めて、是非いい知恵を出していただきたいということを、まさに今作業をしていただいているわけで、その辺について、私は何か知恵が出てくるんじゃないかというお願いもしておりますし、また、期待も持っているわけです。

 − 減税、消費税の問題もそうなんですが、会見を聞いている我々だけではなくて、国民も、いろいろ与党とか役所との調整というものは大変なんだろうと思うんですが、総理のお言葉から率直さとか、国民に考えを示して進めていくとおっしゃっていた政治スタイルが、最近徐々に薄れているのではないかと。それがリーダーシップがないという批判にもつながっていると思うんですが、御自身は今の置かれた状況の中で、その点どういうふうにお考えになっていますか。

○細川総理 おっしゃることは分からないでもありませんが、しかし、連立八党という、かつての政治状況の中では考えられなかった状況の中で、舵取りをしていかなければならないわけですから、米の問題のときもそうでしたが、各党の違った考え方の方々の合意を最後まで、ぎりぎりまで得る努力をしながら、そして国際社会の中で日本が孤立してしまわないように、ぎりぎりまでの努力をして粘りながら、私の執務室からサザランドさんのところに電話を掛けて、もう一時間待ってください、もう二時間待ってくださいと言いながら、各党の合意が得られるのを待ちながらウルグアイ・ラウンドの交渉も最終的にあのような形で決断をさせていただいたわけで、それを私が早くすぱっと決断をして物を言ってしまったら、それは連立八党も壊れてしまうでしょう。連立政権は崩壊してしまうでしょう。そういうことが果たして今の日本の政治の中で望ましいことであるのかどうか。それはやはり少し、もっと早く決断をしてやってもらいたいと。こう見ていただく、こうおっしゃっていただく国民の皆様方のお気持ちはよく分かりますが、しかし、さまざまな、かつてのというか、今までの内閣であれば、一内閣で恐らく一つの課題と言われていたようなものが、今は七つも八つも十も、一遍にここに降り掛かってきているわけですから、その難しい問題を一つ一つ処理していくに当たって、これは自民党の単独政権であっても、こうした問題については、党内で恐らくさまざまな御議論があっただろうと思います。それがまして今は八党ということでございますから、その中でさまざまな御議論があることは、これはやむを得ないことでありまして、そこはやはり粘り強く少しでも各党が歩み寄れるように。勿論、広範な国民の合意というものがどの辺のところでうまく煮詰まっていくのかということをよく見極めながら判断をさせていただくしかしようがないんじゃないか。私はそこのところは是非国民の皆様に御理解をいただきたいところだと思っております。

 − 細川内閣が国内問題ばかりを取り上げている中で、日米関係を無視しているという考え方がありますけれども、その点についてどう思いますか。

○細川総理 日米関係は、先ほどもちょっと申し上げましたが、経済問題、大変困難な問題を抱えております。しかし、二回にわたるクリントン大統領との会談を通じて、日米関係というものが、世界の中で、国際社会の中でいかに大きな位置づけを占めているかということについて、お互いの認識は更に深まってきていると思いますし、日米包括経済協議が当面の日米間の問題であるわけですが、こうした困難な問題につきましても、例えばミクロの問題で、自動車とか自動車部品とか政府調達とか、あるいはまた保険の問題とか、アメリカの対日輸出の努力、競争力の強化、そういった問題についても、それはいずれも優先的な問題として取り上げられている問題ですが、こうした問題についても、何とかいい結果が得られるようにということで、国内問題、さっきから申し上げているようなさまざまな、一つの内閣でその問題を片づけていくには余りにも大きな問題が山積をしているわけですが、そうした問題は問題として、日米関係における今、申し上げたような重要な課題について、何とかいい方向にいくようにということで努力をしつつありますし、また、二月の首脳会議までにはいい結果が得られるようにしていかなければならないということで、私は両方とも百%満足がいくということにはならないかもしれませんが、何とか納得の行くところで、お互いに解決をしなければならないと思っております。

 当面のミクロの問題以外の問題で、例えば地球環境の問題とか人口とかエイズとか、そういった問題についても、クローバルな協力、国際社会の中での日米のしっかりとした関係を更に深めていくということが、いかに国際社会の中で大きな意味を持っているかということについても、日米間では、クリントン大統領と私との間でもしっかりした意思の確認をしておりますし、そうした点について、今のところ揺らいでいろようなことはないというふうに私は認識をしております。

 − それでは、時間でございますので、これで年頭の総理会見を終わります。ありがとうございました。