データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 宮澤内閣総理大臣による年頭記者会見

[場所] 
[年月日] 1993年1月1日
[出典] 宮沢内閣総理大臣演説集,665−675頁
[備考] 
[全文]

 記者 まず最初に、宮澤政権の一年間を踏まえて、新年の課題、それにどう対応していくか。特に、総理は改造後、「変革と実行」というキャッチフレーズをおっしゃいましたけれども、これは具体的にどういうことを考えてらっしゃるのか。特に、内閣改造後も、各種世論調査などでも支持率がなかなか回復しないという状況の中で、国民の政治不信が非常に根深いことを示している訳ですが、その政治不信解消に向けて、今後どういうふうに行動されていくのか、決意のほどをまずお伺いしたいと思います。

 総理 まさに今おっしゃったように、変革と実行の第一は政治改革です。昨年中、緊急改革は成立した訳ですけれども、抜本改革については、私どもの党の大体の方向は決まった。これを、この間の党首会談でも、各党とも恐らくいろいろな案を用意されて、そしてガラス張りの中で議論をしようじゃないかと、お互いの土俵の問題でもあるから、私もそれがいいだろうと思うんですが、私としては、やはり長年あった問題が、ちょうど一八八三年にイギリスで腐敗と不正行為防止法ができて、今日のイギリスの議会政治が出来上がったような、それに匹敵するようなやはり時期に、我々の政治もきたというふうに思っているんです。ですから、この改革に成功して国民の信頼を回復しなければならない。これは、与党、野党の問題でもあるけれども、日本の議会政治全体の問題だというふうに思っていますので、今年の課題、来るべき国会の最大の課題は、まずそれだと思います。

 それからもう一つは、国内問題で言えば、この景気回復、不況克服の問題である訳ですが、対外問題は後でお話もあるでしょう。国内問題で言えば、その二つについて改革と実行をやりたいというのが、新年の最大の課題だと思っています。

 記者 今、その政治改革についてのお話がございましたけれども、先の党首会談で、総理は、抜本改革案に沿って政冶改革関連法案を通常国会に提出するという考えを示されましたけれども、それはいつ頃法案としておまとめになるのか、その目途をお伺いしたいのと、それと、特に単純小選挙区制については野党の反対が強い訳ですが、野党側の理解をどのようにして得ていかれる考えなのかをお伺いしたいと思います。

 総理 この間の党首会談では、社会、公明、民社とも、政治改革の必要はもとより強く認識しておられて、公明、民社は、ひとつこれは国会の場でガラス張りでやろうではないかと。社会党党首は別にそれについては言われませんでしたが、いずれにしても、これは選挙区制の問題にならざるを得ないし、それは、言わば選挙を戦う者にとってはお互いの共通の土俵の問題ですから、これは、みんなで十分に議論をした上で土俵を決めなければフェアでないということになるでしょう。そういう意味で、これからの国会における議論の推移の中から、そういうことで一応みんなで合意しようということを探さなければなりません。

 私どもは、私どもの案の中に選挙についての公的な助成という問題もあって、政党が主体になる選挙というものが、やはり大事だというふうに考えている訳ですが、その一環としてああいう選挙区制を考えている訳ですけれども、それについても賛否の議論がありましょうから、一応そういう場を通っていかなければならないと思います。

 記者 政治改革の問題と言いますと、もう一つ大きな問題として、やはり政治倫理の問題がある訳ですが、先の臨時国会で、いわゆる竹下元首相が絡む皇民党事件について、それなりの審議がなされて、自民党の方では、役員会で事情聴取をして、一応調査を終了させようというふうにしているようですが、総理は自民党総裁として、党の調査というのはこれで十分だというふうにお考えなのか、あるいは今後も続けていかれるのか、さらに竹下氏に議員辞職を促すという考えはお持ちなのかどうかについて、お伺いしたいと思います。

 総理 国民が今一番いらいらしておられる問題の一つはこれです。不況もあるけれども、どうもああいう事件についての解明がてきぱきいっていないじゃないか、政府はどうしているのか、国会のいろいろご審議もあったけれども、これも真相を十分解明するに至らなかった、そういうふうに思っておられる国民が多いし、どうしてもっと早く、こういうの、てきぱきいかないのかと、こういう気持ちが強いですね。それは、やはり法律というものはそういう面を持っているし、国会の審議についても、それはおのずから国会なりの見識に基づいてやっておられることだから、なかなか一刀両断にやってしまえという訳にいかない部分はこれは、国民も分かっておられながら、それでもいらいらしていると、こういうことと思います。

 国会の審議が済みましたから、私どもの党としても、もう少し型式張らずに、ご本人からお話を聞いて、真相の発見に努めたいというのが、この間二時間ばかりかけて、竹下さんにもおいで願って、我々の党の努力をした訳です。国会と違ってざっくばらんにいろいろお尋ねもし、お答えもあって、一応党としては最善を尽したと私は思っているのです。勿論、なにか新しいことがあれば、またそれについてということはあり得ましょうけれども、党としてはできるだけのことをやって、公党としての考えを明らかにしたというふうに私は思っているんです。

 記者 それと、内政のもう一つの課題と言いますか、最大の関心というのは衆議院の解散問題ですが、衆議院の任期があと一年余りという時期になって、ずばり総理に、解散総選挙というものをいつ頃というふうにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。

 総理 これは全く今は考えていない。一年といってもなかなかいろいろなことがあって長い過去を振り返ってみてもそうですが、ですから、今どうというふうに、具体的に考えていません。正直その通りです。

 記者 それでは引き続き、外交の方について少し伺っていきます。まず、新年早々ASEANを訪問されるわけですので、アジア外交についてお伺いします。

 まず、ASEAN訪問ですけれども、ポスト冷戦後の日本の果たすべき役割という観点から、今後のアジア外交について、どうお進めになるお考えなのかをお伺いいたします。

 それから、韓国でも新しい大統領が誕生しました。韓国訪問のお考えはあるのかどうか、また、北朝鮮との関係も含めて、韓国の、半島全体との外交政策をどう進めていくお考えか、この二点をお伺いいたします。

 総理 昨年、就任早々に韓国にまいりました。そして、今年はお正月にASEANに行きたい。これはやはり、なんと言ったって日本はアジアの国ですから、よって立つそういう自分の地域を大事にしなければならないというのは、当たり前のことですが。

 今度、私はASEANでしたいと思っていることは、この地域が次の世紀にかけて非常に明るい世界で、もしかしたら一番明るいスポットだということば大変にうれしいことなんですが、その中で日本がなにをなすべきなのか、日本になにをしてほしいというふうにこれらの国が考えておられるかを、直接聞いてきたいと思っているんです。

 勿論、日本からの投資というのはプラザ合意以後非常に増えて、そしてこれらの地域が工業化のテンポを速めつつある。それは大変いいことだし、今後も是非そうあってほしいんですが、政府として、政府援助という形でいろいろやってきましたが、この地域全体の共通の、例えばインフラみたいなものがあります。通信だとか、交通だとか、訓練だとか、留学生だとか、そういったようなものまで含めて、これからそういう明るいアジアをさらに明るくするために、日本はなにをしたらいいんですかということを、各国の首脳から聴いてきて、できるだけそれに努めていきたいというのが一番の目的であるんです。それは、いわゆる一国対一国の問題もあるでしょうし、全体の地域についての問題も、あるいはあるのではないかと思っています。

 それから、韓国のことは、先般の大統領選挙があって、これは大統領の金泳三さんにも申し上げたんですが、誠に立派に、不正だとか無効だとかいう声が全くない選挙が行われて文民政権ができることになったというのは、これは、韓国が世界に誇っていいことだと私は申し上げたし、そう思っています。

 昨年私は訪韓いたしましたし、それから暮れに近く、盧泰愚さんに京都においで願ったりしたので、勿論、今後とも新政権と密接に接触をしていって、両国間の問題は勿論ですが、これから両国が一緒になってアジアのため、世界のためになにをすべきかという、未来指向的なご相談をしようじゃないですかと言うつもりでおります。

 朝鮮民主主義人民共和国の問題は、例の核兵器についての疑念が十分すっきりしていないものですから、両国の交渉がちょっと進捗しない状況になっていて、今年こそは、この点について北朝鮮民主主義人民共和国に事態をはっきりしてもらうことを、強く私としては希望したいと思っています。

 記者 引き続きアメリカとの関係ですけれども、クリントン新政権も、国務長官初め、ようやく内閣の全体像が出てまいりました。今年、アメリカを訪問される時期について、新しい向こう側のスタッフの顔ぶれがそろったことですし、なにか状況変化と言いますか、進展があったのかどうか。できれば併せて、クリントン新政権への顔ぶれへの評価も伺いたいと思います。

 総理 なるべく早く会っておいた方がいいというのが、国内で皆さんがおっしゃっていることで、それは私も分かっているんですが、ようやくここで閣僚の顔ぶれが決まって、どうもいろいろ聞いていると、まず国内の政権基盤というものをしっかりすることに重点を置きたい。殊に、経済、あるいは財政等々が一番緊急の問題であるし、いつもそうですが、新しい大統領というのは、いわゆるハネムーンのうちに国会に自分の考えを伝えるということが、一番受け入れられやすいものですから、そういうことを考えておられるようなんです。

 したがって、対外関係は大事ではあるんだが、そのことをまずやらせてほしいというお気持ちのようで、どこに対してもそういう考えを持っておられるようだから、それはそれでよく理解のできることです。ですから、一応仕事が一段落したところで、それではというふうに思っているんですが、いつになりますか。ですから、今、具体的なご相談に入っていないんです。できるだけサミットで初めてということもいけないし、どっかとは思っているんですが、まだ具体的に打ち合わせが進んでいません。新政権は、いわゆるアメリ力の縮図とも言うような、各方面を代表した、優れた人たちを閣僚に登用されたという人事ではないかと思って拝見をしています。

 記者 それから、今年最大のイベントと言いますか、東京でのサミットがある訳ですけれども、これについて、どういった基本的なお考えで、準備として会議に臨まれるおつもりか。併せて、ロシアのエリツィン大統領をこの会議にお呼びになるお考えがあるのかどうか。

 総理 世界景気が、アメリ力がちょっと良さそうですけれども、我が国はご承知の通り、ヨーロッパは悪いということですから、やはり先進7か国が共同して世界景気、殊に失業問題が深刻な国が多い訳ですから、これをどうするかというのが、もともといつもサミットの課題です。

 それから、今おっしゃったように、旧ソ連の動向というのが誠に見通しが難しい。それに対して我々がどうしたらいいのかという問題があります。これは、昨年のミュンヘン・サミットではIMFを間に立ててというか、IMFに処方せんを書いてもらって、それを応援しようという発想でずっときましたけれども、ついに一九九二年中には書けなかったんです。この間の人事異動などを見ていても、それでは九三年にそんなら書けるのか、経済の実態を見ていても容易なことではなさそうです。そうかといって我々がなにもしないで済む訳ではないんですから、どういうふうにしたら民主主義とか市場経済への支援ができるかというのは、やっぱりサミットの大事な課題になると思います。

 それから、私としては、やはり発展途上国の問題というのは、サミットでもう少し取り上げていっていい問題ではないかというふうに思っています。あと、軍縮であるとか、毎年問題になる問題が当然ありますけれども、アクセントはその辺でしょうか。

 記者 エリツィン大統領についてはどうですか。

 総理 これはさっき申しましたこととの関連もあって、これからロシア共和国がどういう道を歩んでいくかが、ちょっと分かりにくいんです。ただ、今度の人事異動で、コズイレフ外務大臣が留任されることになったと思うのですが、それは一遍延期になっておりますエリツィン大統領の訪日、これはどっちみちこの年末の最高会議が済まなければ難しいとは思っていましたけれども、それについての一つのいい材料と申すことができるかもしれません。そういうこととの関連もあります。したがって、エリツィンさんとサミットとの関係というのは、今はまだなにも決めていない。日本が議長国になりますが、しかるべき時に他の六か国の考えも聞かなければなりませんけれども、今、私としてはなにも決めておりません。

 記者 最後の質問になりますが、コメの問題についてお伺いいたします。交渉の状況はまたどうもいろいろ変化があるようですけれども、今年一年の日本の交渉の態度として、やはりドンケル・ペーパーの修正も求めていくということに、いささかも変化がないのか、あるいは、いずれかの段階で、包括的な関税化を受け入れるという決断をするというふうにお考えなのか、この辺のお考え方はどうでしょうか。

 総理 この前、十二月十二日に申し上げた通り、結局あれから後、貿易交渉委員会が開かれました。アメリカとECが十か月いろいろやっていたその間に、我々としても我々の主張を正式にする機会がなかったんですが、初めてその機会がありましたから、我々としては、一昨年の暮れのドンケル・ペーパーというものについて、我々は我々の修正を求めるということを明確にした訳です。それは、アメリカもECも当然いくつかの点について、農業についてもそうでしたが、農業以外のものについてもそういう主張があって、各国から、当然のことですがあれについての修正を求めた、我が国も求めた。これで我々の交渉対応というものが、まず明確になった訳です。つまり、輸出補助金であるとか国内所得保障というのは生産国の問題であって、いわゆる国境措置というもののバランスが崩れているというのが、我々の主張である訳ですから、そういう主張をした。そこで、クリスマスになって、一月の半ばにもう一遍交渉委員会を開きましょうということになっていますけれども、あちこちからたくさんの修正が出てきました。

 我々としては、この前も申した通り、もとよりウルグァイ・ラウンドというのは成立させなければならない。しかし、かねて我々の主張していることは、今度正式に申したように、これは一つ考えてもらわなければならない。各国がいろいろな修正の案を出しておりますから、その中で、実際上は一月の中旬ぐらいから詰めに入っていく。しかし、非常にこの問題が複雑になってきていますから、三月一日でしょうか、二日でしょうか、いわゆるアメリ力のファースト・トラックと言われるものとの関連は、政権交代もあって必ずしも明確ではありません。しかし、我々は、いわゆる一昨年の暮れのドンケル・ペーパーというものについては日本はこういう修正を求める。ただしそれは、もとよりウルグァイ・ラウンドをなんとかして仕上げなければならないとこういう考え方に基づくものであると、そういう立場です。

 司会 それでは、幹事社からの質問は以上です。あとは各社自由に質問をしてください。

 記者 今のコメの問題で伺いたいんですけれども、引き続きジュネーブでは従来の方針にのっとって、ドンケル案の修正を求めていくということだったんですけれども、依然ジュネーブでの態勢は、特に日本は修正を求めている例外なき関税化については厳しいということで、国内においても国会決議などもあって、引き続き従来の方針で望むのか、あるいは変えるのかと、そこでいつも議論がとまってしまうんですが、交渉は交渉として進むとして、コメの論議、今後コメをどうしていくのか。あるいは、もし本当に体勢となって関税化が日本に導入された場合には、本当にコメの生産者側はいわゆる壊滅的な打撃を受けるのか。そういうことも含めて、一体今後コメづくりをどうしていくのかというそういう論議を、政府としても積極的に進めていくお考えというのはあるんでしょうか。

 総理 ジュネーブの今の状況は、幸いにして、私は日本がウルグァイ・ラウンドをだめにしたというような状況にはなっていない。いろいろな見方があるでしょうけれども、アメリカとECの交渉は非常に長引いて、ちょっとタイミングが崩れたというようなこと。あるいは、その結果そのものにもECの中にもいろいろな議論があるとか、あるいは農業以外について、アクセスのことについても、知的所有権の問題についても、あるいは今後のガット体制のこれからのことについても、いろいろな異論が出てきていて、我が国が私が心配したような立場に立っていないのは、これはいいことだと思っているんです。しかし、この中で、みんなの異論をいろいろに整理していって、お互いに協力しながらラウンドを作り上げていこうということに変わりはないです。

 何度も申しますように、我が国としては、農林省が、新しい食糧、農業、農村の在り方という施策について新しいスタートをいたしますが、そういうことで、これからの農政、コメについての基本を考えていくということであろうと思うので、ウルグァイ・ラウンドがどういう状況になってきても、日本でコメを作られる農民、あるいは日本の農村というものが脅威にさらされるというようなことは絶対にあってはならない訳ですから、そういうことは最も大事な問題だとして、今後とも考えていかなければならんと思っています。

 記者 自民党内から、今後の景気見通しについてかなり厳しいというふうな見方も出ている訳ですが、昨年政府案が決定された訳ですけれども、今年の景気対策についてはどのようにお考えでしょうか。

 総理 昨年の八月の総合経済対策というものの効果が、かなりの部分は実は今年になって出てくる。昨年は三、四か月しかありませんでしたから、実際は三か月だったんですが、今年になって現れて出てくる。その上に今度の予算が乗っていきますから、かなり大きな経済刺激になることは確かです。

 今度の予算はあれだけ公共投資に重点を置きましたし、財投にしても、地方単独にしても一二パーセントというような大きな数字ですし、生活関連は七パーセント余りということですから、こなしていけるかなという問題も片方であるぐらい、大きな景気刺激策になると思います。勿論、財投は弾力条項がありますから、要ればさらに自然に追加することもできるし、政府としてはここで全力を尽した訳ですが、日本の経済というのは市場経済ですから、やはりそれを起爆剤にして民間経済が動いてくれなければいけない訳で、その役割は、今度の予算は最大限果たしていると思います。

 そこで、実際に企業をやっている人が景気がよくなったなと感じられるのは、後になってあそこが底だったと思われる時期から、半年ないし十か月は遅れるのがいつものことですから。殊に今度の場合、底を打っても、あとかなり長いこと、鍋底のようなと言いますか、フライパンのようなと言いますか、急に経済活動が活発になるというようなことではありませんから、そういう面は、やはり政府もよほど気を付けていかないといけないと思っていまして、できるだけ早く今度の予算を成立させていただいて、執行をしたいというふうに思っていますけれども。政府としては、いつでも機動的に対応できるように、絶えず注意して見守っていきたいと思っています。

 記者 政治改革の問題をお聞きしたいんですが、去年の佐川急便で最も衝撃的だったのは暴力団の幹部の関与だった訳ですが、その内容も、金丸さんの問題だけでなく、戦後の保守政治を見ますと、時折り暴力団、あるいは暴力団に影響力を持つ右翼の大物幹部と保守党の幹部との関係というのが出てくる訳ですが、総理は長い間、保守政治を見つめておられて、この点をどう考えておられるでしょうか。それから、今後この点について、どう対処すべきと考えているんでしょうか。

 総理 暴力団というものについての国民的な受け取り方というのが、かなり長いことあいまいであったんではないか。義賊などという言葉があったりして、芝居になったりなんかするようなところがあったものですから、それがこの間の暴力団法によって、初めて法的に明確になったと思います。これは初めてのことなんです。今までいろいろ言われていたけれども、法律上はっきりしたということは初めてのことで、これでいろいろなことの国民的な認識も変わっていくだろうと。

 私がさっきイギリスの腐敗及び不正防止法ということを申したのは、あのときにイギリスの選挙に買収がなくなったばかりでなく、いわゆるアンダーワールドというものが、あのときからなくなるんです。ですから、やはりそういう時期に日本もきていると思います。国民が厳しい態度をこれに対して取るということは、今度ああいう法律ができたということが、私は非常に大事な契機になると思っています。

 記者 社会党の田辺さんがお辞めになられて、一連の自民党の中でも羽田派ができたり、また社会党の中でもシリウスの会というような、いろいろな動きが出ていますが、いずれも我々は政界再編への動きというふうな形でとらえていて、次の選挙の前後にはそういう動きが非常に出るのではないか。以前に総理にお聞きしましたときに、なかなかそういうところまでは、自分の考えとして、まだなかなかいかないんじゃないかというようなことをおっしゃられたと思うんですが、現時点で政界再編の動きということについてどう考えておられますか。

 総理 こういうふうに思っています。新しい党ができて、どういう政綱を掲げるかということを整合的に考えると、これは容易なことではない。ただし、政治改革をやりますと言えば、これはだれも異存がない、また国民的な支持を受ける、そういうことが契機になろうとしているのではないか。それに対して私どもがしたがって真剣にならなければならないことは、政治改革は私どもが率先してやりますと、具体的にはこうだと、そういうことでなければならないというそういう見方をしています。

 記者 先ほど解散総選挙ということについて全くお考えになっていないと言われましたが、今年の非常に大きなイベントとしては、自民党総裁選と言うか、総理の自民党総裁としての任期が九月末に切れる訳ですが、総裁選についての対応ということ。それから今、昨年末ですが、首相公選論というのが自民党の中でも出てきたんですが、その辺についてはどういうふうにお考えをお持ちでしょうか。

 総理 改選時期のことは私は実は余り考えたことがないんで、全力投球してみます、ということに尽きてしまうんです。

 それから、総理公選論のことは、世界の民主主義の先進国がいろいろに考えて、いろいろ異なった制度をとっています。我が国の場合ですと、これは憲法に関係あることではないんですか。十分考えてみたことは、実はないんですけれども、そういうご議論があってもいいだろうというぐらいな見方をしています。しかし、実際にやるとなれば、メリット、デメリットをいろいろに議論していかないといけない、簡単な問題ではなさそうに思います。

 記者 今日はどうもありがとうございました。