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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第一次海部内閣の組閣に際して(海部内閣総理大臣)

[場所] 
[年月日] 1989年8月11日
[出典] 海部内閣総理大臣演説集,90−118頁.
[備考] 
[全文]

問 総理、それでは内閣記者会と海部首相の記者会見を始めさせて頂きます。

 時間も限られていますので、おおよそ一時間ということをめどに進めたいと思います。

 昨日、海部内閣が発足いたしましたが、就任の感想、また、新内閣組閣に当たっての総理としてどのようなところに重点を置いて組閣したのか、このような点についてお願いいたします。

総理 昨日、親任式、認証式が終わりまして、正式にスタートをいたしました。非常に責任も大きいし、決意を新たにいたしております。

 新内閣を作るに当たって、どんなことに重点を置いたかということは、私はやっぱりこれから一番必要なことは、まず、対話と改革だと思っておりますから、清新にして対話の出来る人、そして、また、取り組まなきゃならん政策課題にきちっと改革努力を続けていけるような人、そういったことを念頭に置いて、私なりの意見を述べながら、新内閣をスタートさせたところであります。例えば、一般に言われることで、私はそうだとは必ずしも思いませんけど、永田町の考え方は、国民との間にずれがある。それはやはり風通しをもう少しよくした方がいいではないか。あるいは、真の男女平等の世の中に、日本の議会や内閣には女性の声が反映していないではないかと。いろんな批判等もございましたので、思い切って今回は女性の閣僚も就任してもらう。民間人の率直な考え方を取り入れて、特に、対話ですからこちらからの一方的な説明だけじゃなくって、率直に台所の声や、生活の皮膚感覚の伴った意見等も入ってくるような、そんな内閣にしたい。党内には有能な人材がいっぱいいらっしゃるけれども、やっぱり若い人も中堅の人も、あるいは経験を持った方も、みんなそれぞれの立場からご協力を願ってやらなきゃならん改革は、政治改革もある、税制改革もある、行政改革もある。農政の分野でも改革がある。教育の分野でも改革がある。いろんな前向きの前進をしながら改革努力を片付けて、国民の皆さんのご期待や要望に応えていけるような内閣にしたいとこう思っていたしました。

問 ただいま、台所の声を聴くということだったんですけれども、何か直接、お考えがあるんですか。主婦の感覚で・・・。

総理 それはこの前の参議院選挙の反省にもつながるんですけれども、税制改革の中のいろんなテーマがありました。今まで税に対する国民の皆さんの世論の指摘は、税金が高すぎる。あるいは不公平である。ところがそれを今度は、なるべく公平な税負担に改めるとともに、諸外国と比べて高すぎると言われた税を低くしていこうという努力もしたり、減税先行ということも、今年度分だけとらえても、二兆六千億からの減税を先行させて、そのことを訴えたんですけれども、残念ながらご批判は参議院選挙の結果となって現れている。どこに原因があったんだろうかということを考えてみると消費者の立場、台所を預かるご家庭の主婦の皆さんの立場、というものからくる痛税感といいますか、消費税というものに対して、ご批判があり、そういった角度の生の声もやはりいろいろと聴いたり調べたり、また、その立場の生活を経験もしていらっしゃる方の声も聴いて、いろいろな議論の時に、大切にしていかなければいかんということです。

問 総理の自民党総裁としての任期は十月の末と、党則ではそうなっているわけですが、当然、総理としては再選あるいは続投というお考えも心の片隅にあるんじゃないかと思います。党内の一部では暫定政権に終わるのではないかと、そういった厳しい見方もありますが、その点について、政権担当の決意などを、お聞かせ頂きたいと思います。

総理 党則でいきますと、ご指摘のように十月末までの任期が私の任期になっております。しかし、暫定か本格かということの分け方は、数字で長いか短いかということではなくて、その間、全力を挙げて取り組むか取り組まんかという、質の問題だと私は受け止めております。だから、全力を挙げて取り組まなきゃならんし、私が自民党総裁に立候補しました時の決意の中でも、そのことは申し上げています。今、非常に重要な時でありますから、全力を挙げて取り組んでいく考えです。今日までの先輩方の積み重ねてきた英知を受け継いで頑張っていきますと言っておりますから、期間じゃなくて、全力を挙げて取り組んでいくということで評価をして頂きたいと思っております。先のことはまだ考えておりません。今日、一日一日、一生懸命頑張って、責任を果たしていきたいと思っております。

問 政権発足の過程ですが、いわゆる、その竹下支配だとか、院政だとか、いろいろ言われているわけですが、総理の場合は、小派閥の出身だということで、指導力を発揮できるのかと、こういった懸念もあると思うんですが、この点はどうお考えですか。

総理 私の所属しておった派閥が小さかったというご指摘は、その通りですけれども、今回は従来の自民党の派閥力学とか、数の論理によって、あるいは話し合いによって、というような選考のされ方じゃなくって、この大変な時だから、みんな志す者が政策、政見を述べ合って、両議院議員総会で、しかも地方の代議員の方も入ってもらって、決めようということで、選挙で決めて頂いた、極めて珍しい選ばれ方だと、私は思っております。で、その時、共に立候補して、戦った林候補も石原候補もいろいろな所の話し合いの中で、みんな三分の一の可能性はあったわけですから、誰がなったとしても、我々が今ここで国民の皆さんに訴えたことに責任を持って、助け合っていこうじゃないか。協力しようという基本はきちっとしてありますから、そのことについては、私は率直に、必要な時には、協力も要請しますし、また、党挙げていろいろなご理解を頂いていけるものだと思っております。

問 消費税について、お伺いいたします。総理は昨日の初閣議の後、談話を出され、その中で消費者、納税者の意見を聴いた上で、国民の納得の得られるよう、思い切った見直しを行うという方針を明確にされてましたけれども、その具体的な方法、手順などについて、お伺いしたいと思います。

総理 最初にも申し上げましたように、我々の方では十分検討して、これならよい、よかれと思ってやった消費税が、あのような結果を見ております。世論調査なんか見ましても、いろんな結果が出ておりますが、導入前の問題について、これは、率直に、ごめんなさいと言いますか、いろいろなことがございました。けれども、前の売上税の時は、国会が混乱して、議長さんの斡旋が入って、結果としては廃棄となり、その時に議長斡旋で野党と与党の話し合いの中で、ああいった消費税の為に、直間比率を見直したり、いろいろな税制改正に努力をするということを示してきたんですから、導入部分の問題、その他については、いろいろありましても、これはひとつ、確かに説明の足りなかったところや、至らなかったことは、お詫びをしておこうと思います。しかし、重要な国の税収を確保する為の問題ですから、我々はいいと思ったことがいけないと言われた以上は、どこをどう改めていったらいいかということを、謙虚に反省をして、出来るならば、そのところを改革していくのが、私は正しい政治的な判断だと思うんです。

 過日、自民党の全国代表者大会が開かれたときも、参議院選挙の結果について、それぞれの地方の声も聴いてみたんですが、消費税の見直しの問題も随分出ておりました。これは、私はやっぱり、その目的をもう少しはっきりして、頂いたお金は福祉目的に使いますと、いうようなことにするのも、一つのご議論だと思います。また、いろいろな立場のご意見を聞いてますと、それじゃその地方へ回っていく約四〇パーセントの譲与税のことは、あれは一般財源として期待をしたものだから、地方の問題をもう少し考えてほしいという声も、確かにございますから、地方の代表者会議もだいたい八月の終わり頃までには、県連の意見をまとめて、どんどん声が出てくると思います。それから政府税調でも、見直し委員会、フォローアップ委員会というんですか、それを作ってもらって検討が進んでおります。自由民主党の税制調査会にも、再検討見直しの議論が始まっておりますから、私の希望としては、なるべくこれらのところの作業も急いでもらって、具体的にどこをどうするかということを、お尋ねしたいと思うんです。

 指摘されておる問題点は、たくさんあることは知っています。例えば、食料品の問題にしても、あるいは教育の問題にしても、医療の問題にしてもいろいろあることは聞いておりますが、どこでどうするかという具体的なことは、今、議論願っておるところの結論が出てきてから、同時にその時には、やっぱり消費者の立場や家庭の台所を預かっていらっしゃる主婦の立場や、いろいろな意見を十分踏まえて、ご理解と納得の頂けるような見直し改正をしたい、という気持ちで作業を進めていきたいと思っています。

問 その消費税ですけども、候補の中にも、お産とか、生鮮食品、こういったものは非課税にすべきだと、ある程度明確に打ち出された方もいましたが、総理としては、今どういうお考えですか。

総理 確かにその通りでしたね。具体的に、お産の問題とか、言われました。生鮮食料品もというご意見もございました。いろいろ調べてみると、確かにお産の問題なんかも、保険の適用があるかないかによっていろいろ違うということがあって、薬でも薬局で買うと消費税がかかるが、病院でもらうと保険の適用があれば消費税がかかっていないとか、いろいろな接点の難しい説明を聞いたり、自分で勉強したりしておると、すべてに納得して頂ける線はどこなんだろうかということを、もうちょっと私は、自分で納得できるように勉強してから言いませんといけないなあと思いました。総裁選挙中の発言では、私はそういう具体的なことが言えませんでした。それをもっともっと研究して詰めていきたいと思うんです。だから、出来ないことは、あんまり言っちゃいけないな。生鮮食料品の中で例えば何か一部分だけでも出来るなら、線引きが、と思いましても食料品は生鮮食料品だけではない、加工食料品もある、中身は食料でも外の包みは食料じゃないものはどうするんだとか、いろいろ言われると、どこで決断するか。最終的には政治決断、政治判断ですけども、もう少し実際の方々の意見を聴いてやらなければならんと思うんです。けれど、いずれにしても皆さんのご理解と、納得を頂きたいと思いますから、そういう方向で検討を早めて頂くように各関係にお願いをしています。

問 それから税率の問題ですけども、竹下元総理も、宇野前総理も、三パーセント、自分の内閣では変えないと言って約束をなさっておりましたが、海部さんはその点はお考えですか。それから、この秋には臨時国会が開かれますと、野党側は社会党を中心に当然、廃止法案をぶつけてくると思うのですけども、これについての対応策を考えていますか。この二点をお願いします。

総理 三パーセントという税率は、国際的に見ても非常に低いものだと思います。今の日本の経済情勢の中で、これは守っていくべきものの当然の数字だと、私はこう受け止めております。ただ、言えることは私はそう思っているし、出来るだけその状況が続いていくことが望ましいということでありますから、検討の中でそれを変えようということは、今は、まったく考えておりません。

 それから、第二のご質問ですが、国会が始まると野党から消費税廃止法案が出るだろうということです。これは、選挙中に土井委員長なんかも、消費税廃止、国会に法案を出して廃止する、ということを公約としておっしゃっているわけですから、出てくるだろうと思っております。そこで、出てきた時には、今、自民党としてはやはり所得と資産と消費と、このバランスのとれた税の公平な負担を国民の皆さんにお願いをしたい。こうしないと今のこの高齢化社会を控えて、たくさんのお金もかかるわけでありますし、いろいろな意味で直接税と間接税の比率を是正せよということも、議長のこの前の斡旋にもございましたし、必要なものだということは思っておりますから、消費税を廃止ということには、どうしても、今、踏みきるわけにはいきません。消費税のスタイル、作ったものは必要なんですということは、ご理解願いたいと思うんです。ご理解を願いたいから、我々は見直そうとしているんです。

 だから、そこの違いを踏まえて、消費税廃止法案が出てきました時には、我々は、いろいろな面でご質問もさして頂こうと。例えば、社会党の方では消費税を廃止しても、財源はこれとこれとこれがあるから困らないと。これとこれで行くんだと、こうお書きになっておりますが、私の記憶に誤りなければ、報道の中にも土地増価税の話なんかが出ますが、あれもちょいちょい出る話ですけれども、現実に売買をして所得の入っていないところに、土地の評価額だけで税を上げていくということになりますと、どうなんだろうかな、その固定資産税が上がったり、地代、家賃が上がることになるわけですが、そういった物価上昇というものには、消費税さえやめればいいだろうかという素朴な、率直な私の疑問もありますので、聞いてみたいと思います。

 それから、総合課税制度にして、すればおさまるということも書いてあったんですが、総合課税制度にするには、私もちょっと心配することは、総背番号制度というようなことになってきますと、個人のプライバシーとか総合的にきちっと把握する方法は、あれしかないんじゃないかということは、確か税制特別委員会の議論の中でも、そういうものに入ることは極めて慎重でなければならんというご議論も野党筋からあったことを私は、思い出すんですけども、いろんな問題があります。最終的にそんなものに頼らなくったって、赤字公債でいいじゃないかと簡単にいわれれば、これは今、その大変膨大な百六十二兆前後の公債を今、年度末に持とうとする。

 これから次の世代にあまり無責任に赤字をおいていっちゃいかんので、財政再建というのを一生懸命やってきたわけでありますから、今、なんか利子計算をするとですね、一時間に確か十三億円位の利子を払わなきゃならんという程の負担ですから、もうこれ以上増やすこともできないでしょうし、ですから、その辺の財源措置と言いますか、既に歩みを始めたものを止めた時の財源措置を国民の皆さんが、それでもいいんだとおっしゃるのかどうか、そこもひとつ十分に我が党の議論の中に組み入れてもらって、要するに分かりやすく中味の論争をしていくということも、これからの新しい時代の政治には必要なことだと思っておりますから、そういう対応をしていきたいと、また、これは、国会の議論にお願いすることですから、党にお願いすることになると思うんですけれども、そういう対応をしていきたいと、思っております。

問 次に、リクルート問題について質問します。昨日の総理談話でも、課題の第一に、政治の信頼の回復というのを変えなければならないという、現在の国民の政治不信は相当なものだという、そのきっかけになりましたこのリクルート事件というものを、今日、振り返って総理自身どのように総括されておられるのか、その辺からお話を聞きたいと思います。

総理 リクルート事件というのは、特に、政治とお金の関係について、大変な問題を提供したと受けとめています。大変悲しいことですが、刑事的な責任を追究される方まで出てきたということです。このことについては、厳しく受けとめて反省しますとともに、やはり大切なことは、二度と繰り返してはならないということでありますから、政治行政の面で職務の公正、廉潔、こういったものをきちっと、これを機会に立て直していかなければならない、と考えています。

問 それだけ、刑事犯には刑法犯にはかからなかったけれど、これだけ広範囲に政界に一企業のお金がばら撒かれているということに、国民はかなりの衝撃を受けたと思うんですね。総理自身が、その永田町の論理と国民の論理の乖離を埋めなければならないと、総理自身一千四百五十万円の献金を受けてたことは明らかにされてるわけですが、今、国民はこの問題を、刑事事件とは別に、これだけ巨額の献金がなされていたこと、もしくは株を含めてばら撒かれていたことについて、どう受けとめていて、それが永田町論理とどのように乖離しているとお考えなんでしょうか。

総理 一言でいうと、政治にお金がかかりすぎるということに対する不信や不満が出てきたろうと私は反省もいたします。今日まで、そういったことについて、私自身の政治資金の集め方の中にも、顧みると、今日このような社会的問題を起こすことが当時から分かっておったならば、これは私も担当者も当然、そういったことには、お願いしなかったろうと思いますが、極めて残念だったことは、それに気が付いていなかったことだと、自ら不明を恥じます。今後は厳しく戒めてやっていかなければならんと思います。

 しかし、根本問題にかえって考えますと、私が政治にお金がかかりすぎておるということを言いましたが、今の政治には確かに国民の皆さんの感覚よりも大きなお金を必要としている。これは、日常の後援会活動のあり方、あるいは私どもの事務所に秘書、その他のスタッフがずいぶんいること。通信交通費にも普通のご家庭の皆さまにご理解頂けないようなお金がかかっておるということ。お金がかかるからいるだけのお金は、政治資金規正法に基づいて、通常の政治資金の集め方で集めて、それを届けなさいというのが、今日までの仕組みであったわけですけども、こういった問題を根本的に再発させないことと、国民の皆さんの政治と金に対する不信を取り除いていくためには、私たち自身が血を流しても、政治がお金と不信な関係を持たれないように制度仕組みを変えていかなきゃならんということです。当面の対策として、政治資金規正法の改正案が国会に既に上程されております。

 これは、リクルート事件の政治とお金に対する反省に立って、党が政治改革推進本部を作って、政治改革大綱というものを決めましたけども、その中に、政治資金の今までの許されておったあり方では、感覚がずれておるといって批判をうけたわけでありますから、いろいろ難しい問題がありましたが、透明度を高めると言いますか、限度額を低く、百万円だったのを六十万円まで下げて、そして、皆、届出をするとか、いろんな努力もしておるわけであります。

 けれど、それだけですべて政治とお金の関係が片づくと思いませんから、いるから集めようということじゃなくって、そのいる方ももう少し何とかお金の少ない、お金のかからない政治行動とか、選挙とかいうものは出来ないだろうか、ということを考えていくわけです。

 ですから、先が長くなって恐縮ですけれども、いろいろな使い道の制限、きれいな選挙の制限、例えば、もう一本出してある公職選挙法改正案は、寄付行為の禁止とか、政治をお金との関係できれいにしていくための努力も出ております。

 また、この間もアメリカの政治学者と対談しましたら、政治にお金がかかるということが悪いことだという前提で、我々はものを言っていないんだと。国民のために政治をやるのにお金がかかるならば、それは個人に任せておくと、お金を集めなきゃならんといういろんな努力も出るだろうから、もうちょっと別の角度からスポットを当てて、例えば、アメリカの場合には、ご承知のように、議員の秘書は十数人分を国費で費用は面倒を見る。それだけでもずいぶん助かるわけですし、あるいは通信交通費も沢山かかるのは、国会報告、政治連絡の場合には、全部国が持つ。いろいろな恩典があって政治的な資金というものは、個人にかかる分を政府の方で出してあげましょうというのもあるようです。

 ですから、そういったようなこと等も参考にしながら、出来ればそういった部分の公費負担も出来るならば、個人がお金をあんまり使わなくてもいいような方に仕組みが変わっていくわけです。

 そこで、一度長いメモリで党の政治改革に出ておりますことは、結果として今の激しい個人の後援会で、お金を使ってやるような選挙制度を考えていくのは、大切なことではないか。政策本位の選挙が出来るように、あるいは個人の事務所じゃなくて、政党本位の選挙が出来るように選挙制度の仕組みも考えなきゃならん。その前に定数の基本も考えなくてはならん。いろんなことが盛りだくさん政治改革大綱には書いてありますから、そういったことをみんな含めて、一つ一つ順を追って片付けていく努力をしています。これがお金と政治にまつわる問題を、今度のリクルート事件を反省にして、党が取り組んでいる政治改革の一つの流れだと、このように受けとめてください。

問 それに関連しまして、政治に金がかかるというお話なんですけども、多分議論になっているというのは二点あって、政治改革、政治の制度の見直しの問題、政治倫理の問題があって、たぶん総理がこの間、連日のごとく使われている一般国民の論理によれば、政治に金をかけすぎているんではないかと。政治に金はかかるということは確かに認めようと。しかし、これは選挙の公営かなんか、ずいぶん変わってきてますね。この間、その制度いっぱい、もしくは制度の抜け穴を使ってまで、政治に金がかかるんじゃなくて、金をかけているというところに、かなりの不信感があると思うんです。だからの制度の改善なり、制度問題の中に全部、この問題をわい小化してしきれない問題があるように思うんですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。

総理 ご指摘のとおりであって、私も総裁選挙に臨む時の私の考え方の中に、やっぱり政治改革の第一は政治倫理の確立であると。よく使われます言葉に、「信なくば立たず」という言葉がありますけれども、これは政治家一人一人が自らに厳しく言い聞かせて、自らの政治倫理を確立していかなければならんという、入口の政治姿勢の問題であります。私はそのことは、まず申し上げさして頂きたいと思います。

 そして、これは、結果としてですけども、もし、その政治倫理に反するような疑われるようなことがあった時には、そういったことについてどうするのか。党の政治倫理綱領にも、我々はもうすでに、政治倫理綱領というものを国会で議決したり、行為規範というものも決めておるんですけども、なかなか政治倫理審査会というものが、具体的な働きをしていないというご批判もありますから、これは必ずしもそういったことが次々起こるというような前提では決してないんですけれでも、二度と起こらないようにしますけれども、こういった政治倫理審査会というものをもう少し改正を行って、実効を挙げるようにしていくということが書いてありますから、この問題も共にやっていかなくてはならん。その中で、今ご指摘のように、政治に必要以上に金をかけすぎておるぞと。お前の日常の態度は、後援会活動に金を使いすぎておるぞと、これは個人の政治家としての倫理の枠を越えているんじゃないかと、いうようなことがあれば、ご指摘も頂き、ご注意もし、議員同士それは戒めていかなければならん。

 そのために、今、出してあります公職選挙法の改正案を国会で議論して通して頂ければ、寄付行為の禁止とか、いろいろな問題について、必要以上に金をかけちゃいかんという歯止めもかかっている改正案ですから、そういった問題や考え方については、国会の審議を通じて、出来るだけ早いところでこの法案を通して頂くと、まず、そういうご指摘に対する歯止めと言いますか、ブレーキと言いますか、そう言った役を果たすと、私は思っております。

問 今回の党の役員ならびに内閣の人事をみますと、総理を含めまして、五人の閣僚、それから党の三役のうちで、幹事長と総務会長が、献金とか、パーティー券など何らかの形でリクルートとの関係が明らかになっているんですけれども、総理は組閣に当たって、このリクルート問題というのは、あまり配慮されなかったのかどうか。それから、もう一点、自民党内からも、やはりけじめをつけるべきだという声さえきかれるんですけれども、総理ご自身は、けじめはもう必要はない、というふうにお考えなんでしょうか。この二点についてお願いします。

総理 最初の方のご質問は、自由民主党が総務会でけじめ小委員会を作って、刑事的な責任を問われなくっても、これはいけませんよというけじめ小委員会の決定が出ました。要するにけじめについては、社会的問題が起こってからも、なお、引き続いて政治資金として受け取っているということは、これは、政治家の倫理の問題として、よくありませんと。それ以前のことで、規正法に基づいて届出をしているのは、これは通常の政治資金としてお認め頂きませんと、それぞれの人が多くの個人や多くの企業から善意の浄財として、政治資金を受け取って政治活動をやっているわけでありますから、その辺のところの許されることと許されないことというのは、ひとつご理解を賜りたいと思うんです。そして、そのことについては今度の組閣に当たりましても、候補者になった方に、もしあった時には自主的に申告してください。けじめは党のけじめ委員会の決めた線ですよと、お願いをして、それに基づいて皆さんがここで申し上げられたと思うんです。これは、通常の政治資金であったとご理解をして頂きたいと思います。

 そして、本当に我々がけじめをつけていくためには、二度と再びこのような事件を起こさない、あるいは、二度と再びこのような疑惑を受けるような問題を党として防いでいくためには、どうしたらよいかというのが、政治資金規正法の改正であり、これを明確にしていこうということであり、同時に将来にわたっては、政治倫理審査会を拡大強化しながら、再発を防止していきます。

 それから閣僚の資産公開も今日決めましたけれども、全国会議員の資産公開も、これは政治倫理確立のために、法律として用意をして、近く提案が出来るようになっていくと思います。そういった、一連の努力を通じて、分かりやすい、きれいな政治資金の流れというものが定着していくわけでありますから、その成果に私は期待をして、そういったことをきちっと解決して進んでいくことが、この問題に対する反省と、将来厳しく、自らも含めて戒めていきますと言っておるのが、基本的な考え方でございます。

問 選挙中に、現在、宇野内閣の時に出した政治資金規正法について、こういうのを出しているということを盛んに訴えられていますが、それが今度の参議院選挙の結果になったと、つまり、それでは不十分だというのが国民の声だというふうには受け取られませんか。

 それは、むしろ、この選挙結果を受けて、もっと透明度を増すようにするとか、あるいは三木さんが昔、作られたような企業献金をなくす方向とか、こういうものを盛り込んだものに出し直されるお考えはありませんか。

総理 法案が出ておりまして、野党の方のご意見もありましょうから、このことは、臨時国会の議論を通じて、明らかにしていきたいと思います。ただ、企業献金全部なくしたらどうだとおっしゃると、政治行動というものが、そこで全く出来ないような状況になっても、これはいかがなものかなと思います。企業というものの政治献金が、すべて悪だという捕え方になってしまいますと、これはいささか見解を異にするんではないか。出来るだけ努力はしていきますけれども、今後の議論を通じてそういった問題は検討を進めていきたい。ただ、国会に出してあります法律は、党としても出来る限りの努力をして透明度を増している内容だと、ご理解頂きたいと思います。

問 それは、野党との交渉の中では野党側に歩み寄る用意があると思ってよいのですか。

総理 今から用意があるといわれても困るんですけれども、ご議論を通じて、十分それで考えてみたいと思うんです。

 いろいろな政治資金の集め方には問題がありますし、出の方にもいろいろな問題があるわけですから、そういったことを踏まえて、分かりやすく、きれいな政治資金に持っていく、ということの努力はいたしたいと思います。

問 リクルート問題で中心となったリクルート・コスモスという会社は不動産を扱う会社ですが、せめて土地問題を扱う国土庁長官のポストには、リクルートとはつながりのない方を選ぶべきではなかったかという指摘が党内の一部にもあるんですけれども、これについてはどういうふうにお考えになりますか。

総理 申し上げたように、リクルート・コスモスと政治資金の面で関係があったからということよりも、むしろそういったことに、自分自身の立場を明確に自覚されて、疑いを持たれないような行政をきちっとやってもらう、そういったことによって、自らの今後の行動によって明らかにされていくと、私は期待しております。

問 他に、総理ご自身がリクルートとの関係がないかどうかということで、五十二年の講演会の話が、たびたび報道されておりますけれども、あの講演会のというより講演料というのは、講演なさった国会議員の方に代々、支払われているようなことになっていますけども、お調べになりましたでしょうか。

総理 調べてみましたけれど、本当に講演したのかどうか、よく私の所では分かりません。なにか一説に、七月の、確かあの頃は参議院選挙の真っ最中であったと思うんですが、ずいぶん古い、十何年前のことでありますし、方々へ講演に行っておったという経過もありまして、ご指摘を受けて調べてみたけどもよく分かりませんでした。

問 ロッキード事件で、収賄が認められた方を、復党されたばっかりの、副幹事長に起用されたわけですけども、これはもう、ああいうロッキード事件はもうすでに過去のことだし、もう国民は何も忘れたろうというような、そういうお考えですか。

総理 いやいや、忘れたろうなんていうことは決して思っておりません。

問 起用されたお考えは、どういったことからですか。

総理 これは、党の仕事に就かれたということですから、私は最終的にその結果の報告を受けましたが、あの方も法的な手続きをきちっと終わって、それから復党をされて、そういった経験と反省を生かして、今後は、きちっとやって頂くということを考えて、副幹事長の陣容の中に入っていらっしゃる。これも、やっぱり今後、政治活動を見てご批判を頂きたいと思います。間違いのおこらないように私もよく注意をして協力をしてまいります。

問 アメリカとヨーロッパで本日の朝、ちょっと大きく報道されているんですけど、総理の地元の新聞では、また、女性問題とか取り上げておりますけども、外国からみるとこういう報道が事実であったら、また前の政権と変わらないかという、見方があるんですけども、その地方新聞にも報道されていまして、総理はたぶん内容をご存知だと思うんですけども、それについてちょっとコメント頂きたいんです。完全に否定なのか、あるいは何かどうしてそういう報道が今さら出てきたのか。

総理 私自身がびっくりしておりますけども、まったくそのような事実はございません。はっきり申し上げておきます。そして、あのような無責任な情報を流したり、無責任な記事をかかれたことには、もう不愉快というところを通り越して、私は、憤りに近いものすら感じます。

 早速あの新聞に対しては、私は、事実無根である、取り消しと謝罪を求める、ということを正式に通知いたしました。

問 法的に訴えるわけですか。

総理 いやいや、事実無根であるんですから、まず事実を取り消して、天下にはっきりわかるように謝罪をしてもらわなければいけません。

問 次に、政治改革について具体的なことをお伺いしようと思っておりましたが、相当政治改革まで入っておりますので、一つお伺いしたいのは、総理が非常に尊敬しておられた三木さんが、長年、温めておられた政治倫理法、それから選挙浄化法、こういうものを見ますと、今、先程指摘もありましたけれども、現在、その自民党が出している政治資金規正法の改正案とか、それから公職選挙法の改正案、やはりちょっと緩すぎるんではないかという感じがします。

 それから、総裁に就任された時の記者会見で、イギリスの腐敗防止法、これに総理は言及されておるんですが、これもご存知のように、こんど自民党が出しているような、あのたぐいのものではなくて、相当厳しいものですね。で、これから政治改革を本格的にやられようという総理が、この辺までを目指して、やろうとしておられるのかどうか、その辺をお聞かせください。

総理 私は、非常に厳しい状況になるかも知れませんけれども、イギリス人の一八八三年の腐敗選挙防止法というようなものの考え方、あれが英国の選挙をきれいにしたと言われておりますから、日本の場合にも、そういうことが必要なんではないかと、それは思っております。ですから、公職選挙法の改正案でも、あれがきちっと守られれば、相当なことが書いてあると思うんですが、いかがでしょうか。

 今の要するに寄付行為の無制限、先程ご質問があったように、お金をお前達は使い過ぎておるんじゃないかというようなご指摘、それも今後は厳しくできないようにきちっとしていきますし、それから罰則もきちっとつけてまいります。論議の中で、もう少し厳しくということになるなれば、またよく相談をしながら、どうしても改革できなければ、そちらの方に進んでいかなきゃならん。ご指摘のとおりだと思います。

問 常に、この自民党の出すいろいろこういうような改正案が、尻抜けであるというふうに野党から言われるのは、やはり罰則規定がちょっとあいまいであると、例えば、その腐敗防止法にしても、三木さんの言っておられた政治倫理法にしても、違反した場合の罰則が非常に厳しい。例えば、被選挙権を一定期間奪うとか、そういうことがあるわけですね。やっぱり、そういうところに踏み込まないと、なかなかこれは守られないんじゃないかという感じがするんですが。

総理 守られるように改正強化をしていかなければいかんということは、私もそうだと思います。十八世紀の発想で、悲しいことですけども、やっぱり罰則が付いていないと、今の公職選挙法でも寄付禁止のことなんかは、ずいぶん、沢山書いてあるんですけども、残念ながら罰則が伴っておらんから、いろいろな抜け道みたいな行為も行われるというご指摘はそのとおりです。抜け道を塞いで、罰則を付けてやっていこう。それがないと前進がないと、そういう考え方で、この公職選挙法の改正も出ておりますし、政治資金の規正法もそれは出ておるわけですから、今度は相当、中味をお読み頂くと厳しいものだと、私は受けとめておりますし、更に政治改革大綱の中に示されている中長期目標なんかも、全部達成していったら、必ず政治不信が解消される思い切った政治改革になると、こう考えております。

 その後の議論を通じて、一歩前進、二歩改革、改めるにはばかることなかれ、という気持ちで取り組んでいきます。

問 それでは次に、選挙制度の改革についてお伺いします。

 先程から、少し、中身が出てますけども、いろいろ問題点が指摘されていますなかで、具体的な改革案、例えば、小選挙区制の導入など具体的な改革案についてお聞かせください。

 それと、前内閣では、来年秋の国会開設百周年に向かって抜本的な改革を行いたいとしていましたが、スケジュールなど、この二点お聞かせください。

総理 おっしゃいましたように、来年十一月が国会開設百周年ですから、せめてその時までに中長期の長い目標の、青写真だけはきちっと示したいというのが、スケジュールの合意事項となっております。

 その中には、ご承知のように国会で決議がされております定数是正の問題や、あるいはもう一つ、四百七十一の定数是正の問題ですが、それから一票の格差、これは一対三ということをもっとこう考えたらどうかと、いろいろな議論等もあるわけです。そこから入って、いわゆる本則に戻るというんでしょうか、本則に戻る定数是正をやりながら、更に小選挙区制度というものを議題に検討せよというのは、やっぱりお金のかからない選挙というよりも、むしろ、政策本位の論争で選ばれるような選挙の仕組みにしたいということ、それから我々は戦後ヨーロッパ、アメリカに追いつき、追いこせで一生懸命やってきましたけども、追いつき、追いこせの目標は経済力をつける豊かな社会ができるような追いつき、追いこせだけで、政治制度とか選挙制度とかいうようなものをお手本にして、追いつけ、追いこせの目標にあんまりしていなかったという。

 ところが、欧米諸国を見ると、それぞれ少しずつ違いますけども、小選挙区制になっておって、政党本位の選挙が行われておって、我々が個人後援会で個人の組織でやっておる選挙じゃなくて政党の支部が選挙もやっておる、そういうことも一回、今日のこの段階で思い切って考え直してみるべきではないかと、やれば、結果として政策本位の選挙ができる。

 そうすると、これも期待が甘いと言われるかもしれんが、結果として今の派閥争いの一番厳しい問題の選挙区に、同じ政党の複数が出て、政策がまったく同じなんですから、ほかの問題で争う、というようなことが改まっていくんじゃないか。

 まあ、派閥は選挙の時の応援だけじゃありませんけど、外の人事の問題とか、お金の問題とかいろいろ弊害は指摘されますが、一番根本の政治家誕生のその瞬間の選挙にはもっと政策論争の選挙をやろう。それは結果として、選挙区制度が日本が特別なので日本には派閥という特別なものがおこるんじゃないかという指摘がずいぶん海外の方からはございます。

 しかし、正直に言いますと、アメリカの小選挙区制はお金がかからないとは断言できない。お金がかかるという面もあるから、それもよく反省しろと言われていますから。そういったことも考えながら選挙区制度を変えるだけではいけませんから、それならば、公的扶助をきちっとする政党法なんかも考えて、アメリカのようにいろいろ政党資金が出るようにするとか、候補者選考の過程をもう少し考えていくとか、いろんな問題がありますから、このことを来年の十一月までに全部詰めきってしまって選挙区制度変えると大混乱が起こりますから、党の政治改革推進本部のときも、これは本部長が言われたことですが、青写真は来年の十一月頃までに完成するが、実際出来るまでにはかなりの準備期間や距離が必要であるということでした。

 けれども、それを中心に検討をし、考えていこうというテーマのひとつになっていることは事実です。大綱に示されておるわけですから、これは党議で決定されておるわけですから、その方向の議論にまたなっていくだろうと、こう思っています。

問 政治改革に関連して、国会のあり方ということで質問したいのですが、一般的に日本の国会はよくわかりにくいということがあって、一例として、国対政治の弊害が言われますが、その国会の再活性化のためにどのような具体的なことをおやりになるつもりですか。

総理 私も国対委員長経験者といたしまして、国対政治がわかりにくいというご批判を受ければ、顧みてなる程あれはあのテレビや皆さんのいらっしゃる前で国対はやりませんので、ああいったことが密室政治というご批判を受けたのかなあという気もしますし、もっと率直にずばり申し上げさしていただくならば、自由民主党の本部は朝の八時から各省の方を呼んで法案の勉強会やいろんなことやっておりますが、ああいったことは全然国会の場の議論にならないで、党内の手続きでほとんど終わって、委員会の本当の与野党の論議になる時は、自民党の発言者は数が少ない、見ていらっしゃる国民の皆さんの方からすると、いつも演説やっている人は野党の人ばっかりで自民党の人はあんまり演説もやらないし、質問もしない、なにしてんだと、ご批判も確かにあったかと思います。私も過去五年間の間に二度予算委員会の代表質問に出してもらいました。だから私は文句言えませんが、そのために、他の予算委員の人は全部質問しないでじっと座っているわけです。だからもうちょっと国会の委員会を本来のものに戻して、そこで、良いこと、悪いことの討議をして、ここがいけないならここはこう修正したらどうかとか、いろんな法案内容の議論も国会でおやり願うようにしたらどうかと、こんなこと思います。

 それから、もうひとつは委員会中心主義の国会ですから、委員長の委員会整理権といいますか、日本の国会で一番分かりにくいのは、特に国民の皆さんや外国の方から言わせると、審議拒否とか、単独採決とかそういったことは良くないというご批判がずいぶんきます。

 私も議員運営委員長をしておるときに、与野党の代表で英国へ参りまして、英国の国会ではこういったことがあるかという質問したら、それはないというんです。どういうことかといいますと、ちょっと正確な言葉かどうか知りませんが、英国では委員会の委員長とか議長の持っておる権限の中に、クロージャー、あるいはギロチンというような制度があって、もう討議が対立して平行線だなと思ったら、あと何時間は発言してもよろしいが、あと何時間たったら採決をします。だから反対の方は反対の理由を明確に述べてくださいということを宣告すると、そこで討論打ち切りで採決になりますから、その間に言うべきことは言っておかなきゃならん。

 それからクロージャーというのは、対立する党の方から動議を出して、もうこれは議論が出尽くしたから締め切ってくださいということを国会の中でやるわけですから、どこに問題点があって、何に反対されておって、この法案は長引いておるのかということ等も分かってくると思いますから、そんな考え方なんかも少し取り入れて、とことん議論をし、議論をし尽くした時にはルールに従って投票で決めるというようなことをしていかなきゃならんだろう。

 ですから、これはご努力願っておる国対委員長や私自身も経験者として言いにくいんですけども、国会法にもいろいろあまり出ていない、国対委員長会談というので国会の委員会の場以外の所で決まっておった難しい問題の処理がもう少し国会の委員会の中で、理事会などもあっても、なかなかこれも国会法にも正確にその機能その他が載っていない、むしろそういう所できちっと決めていただくべきではないかと。あるいは、議長の諮問機関の議員運営委員会ということも、もう少し分かりやすく、この問題で、こんな議論をしているんだということを、これは皆さんの方からも国民の皆さんに分かるように問題点をお知らせ願っているんですが、もうちょっと詳しくお知らせ願うようにするとか、いろんなことが国会改革については、我々の反省とともに、なんか与党には与党なれあいなものがあって、発言者が六人権利があっても、一人でやめて審議を促進しなさい、中味のいい悪い議論よりも早く上がった方がいいんだというような立場に立っての考え方を改めていくことが大切ではないだろうか、率直にこう思っております。

問 それでは次の質問です。靖国神社の参拝はされないということを官房長官からお聞きしておりますが、その参拝しない理由をお聞かせ願いたいと思います。

総理 従来の経緯を顧みまして、いろいろな面の総合的判断にたって、今回は自主的に参拝しないということに決めました。

問 更に関連しますが、憲法改正論についていろんな論議があると思うんですけれども、総理自身はどういうようなお考えをお持ちかお聞かせください。

総理 憲法は平和主義とか、基本的人権尊重主義とか、私の今の日本の新憲法の持っている精神は評価いたしております。そして、憲法のものの考え方は、国民の皆さんの中にも定着していると思います。ですから、今、憲法を改正しないで平和主義や基本的人権主義をきちっと踏まえながらやっていきたいと思っております。

問 続きまして、大嘗祭についておたずねします。何時どこで行うお考えですか。

総理 大嘗祭は、ご承知のようにいろんな問題がございますので、即位礼検討委員会が六月にできまして、内閣官房副長官の所でいろんなことを想定して、今、検討を始めてもらっているところです。もう少しそれについて検討といいますか、これを踏まえて判断するときには、決めなきゃならんと思いますが、今は検討中というふうにお考えいただきたいと思います。

問 この前の参議院の結果で、初めて参議院で保革逆転が行われたということで、これからの国会運営が、がらりと変わるんじゃないかということもあります。先程、国会改革について少しお話になったんですが、総理は、対話と改革の政権にしたいということで、その点では消費税の強行採決をされたとき、委員長席に座られたということで申し上げにくいけれども、やや言行不一致の点があるんではないかと、これは過去の問題とすれば、今後はまあ強行採決はしないということなのか、野党との対話の姿勢というのをどういうふうに筋道つけていかれるのか、国会運営の基本姿勢をお伺いしたいんですが。

総理 ご指摘のように参議院で保革逆転になっているというのは、まったく新しい政治情勢だと思います。私自身の首班指名の時も異なった議決があり四年振りに両院協議会という場を経て、ご指名願ったということも国会運営の移り変わりといいますか、厳しい状況になったということをひしひしと感じました。

 あれは、民意を反映した選挙の結果でありますから、私は謙虚に受けとめていかなければならん状況であって、国会運営が厳しくなるなあということは、ご指摘の通りであります。

 厳しい状況であるから、じゃ強行採決でなんでもかんでもやっていこうというのは、まったくそんなことは考えておりませんし、特に参議院においては、そういったことは物理的にも不可能になってきているわけです。

 ですから、ここはやっぱり対話を続けて粘り強く野党とも議論をして、先にちょっと触れましたように議論が尽きない時には、どうするかという方法論についても、この際大きくなった野党の皆さんにももう一回お考えをいただいて、そういう時はどうするんだ、先進民主主義諸国の議会運営の今日まで蓄積した英知をいっぺん借りてみるとか、日本も委員会中心主義でありますから、委員会でどんな問題も結論が出ないときは、ちょっと心配なことになってきますので、粘り強い対話を通じて物事をまとめていくようにしたい、こういったことを私の基本として、国会運営に臨んでいきたいとこう考えております。

問 臨時国会については既に九月中旬ということを総裁会見の時おっしゃってたと思うんですが、この辺のメドについてお聞かせください。

総理 まだ、いつということは決まりませんので、九月の中旬という言い方をいたしました。だいたいそんな頃までにはいろいろと情勢も分かってくるだろうと思います。

 それは、我が方は既に提案しております公職選挙法の改正案とか、政治資金の規正法、これは是非せっかく我々が政治改革への第一歩として作って決めた法案ですから、是非審議をして通していただきたいと思っておりますし、資金公開の法律も準備ができ次第、これは提案したいと思います。

 野党の方にも選挙中の公約に従って、消費税廃止法案は当然国会の場にお出しになると思いますので、出てきたらそれに対しては、先程いいましたように、我が党の考え方もぶつけて議論もしてもらわなければなりません。その判断を国民の皆さんにしていただかなければならん立場でありますから、当然、当面のテーマとなるのは自民党サイドから出ていく政治改革を中心とした法案の成立、野党からくる消費税廃止を目的とする法案に対する考え方の違いを議論する、そういう国会になっていくんではないかと、こう思っておりますが、まだしばらく日にちがありますので、どう変わっていくかちょっと見通しは立ちませんが、そういう考えです。

問 次の質問ですが、参院選で自民党は過半数割れになったのを踏まえて、野党側は早期解散を主張しています。一方、自民党の方も、例えば、年内あるいは年明けと、いろんな議論があるわけですけれども、いずれにしてもあと一年足らずで任期が切れるわけです。その場合、総理自身はこの解散、総選挙という問題については、現状でどんなふうな腹づもりでいられるのですか。

総理 現状では、まったくそのことを考えてはおりません。おっしゃるように来年になれば任期もくるわけですが、その前にやらなければならんことは、この間の参議院選挙の結果を踏まえて、政府、与党としは、その厳しい反省に立って何もしないで、もう一回また選挙をということはやや無責任であって、これは、それを踏まえて変えるべきところは変える。改めるべきところは改め、そして、こう議論を通じて国民の皆さんに、あの選挙の結果、どのようなことが国会の議論の中で起こってくるのか、やっぱり政治の改革と消費税の抜本的な見直しというのを、私たちは反省に立って自覚をして、出しておるわけですから、これについての出来る限りの成果を挙げ、そして国民の皆さんの理解と納得の頂けるような制度仕組みに変えていくことです。

 これが非常に大事なことだと思いますし、同時に政治の改革というのを、思いきってやろうというこの姿勢も知って頂きたいと思います。また、聞いていらっしゃる国民の皆さんの方からは、消費税を廃止して、その後のいろいろな問題は、どうなるんだろうかと。こうして廃止しますよという、野党の廃止法案についての中味も十分聞いて頂くことの方が、いいと思っておりますので、これらの論争を臨時国会ではしっかりやって、どちらの言ってることが、どうなんだというご判断を皆さんにも見ておって頂きたいし、我々も出来るだけ改革の努力をしていくというふうに受けとめてください。

問 次に経済運営についてお伺いします。景気は順調に拡大しているようですが、物価対策、あるいは金融政策について特段のお考えはおありでしょうか。

 それと来年度予算なんですが、今月中に各省の概算要求が出そろいますが、来年度予算の基本的な考え方をお聞かせください。

総理 基本的なことを申しますと、経済運営というのは、例えば、最初にご指摘になった物価の問題も一時いろいろ心配されましたが、例えば、先月と先々月の二カ月間、物価の一番変動する東京都区部の消費者物価の数を見ておりましても、対前月比でまいりますと、〇・一、〇・二パーセントとこれは安定横ばいよりも下がったという結果も出ておりますので、心配されておった物価の問題は安定的になってきた。これは物価というのは、なにものよりも優先するご家庭に対しては大切なことですから、物価安定ということには今後も十分に意を注いでやっていかなければならんと思っています。

 また、経済運営の中でやはり外需、内需とこう分けて考えますが、内需主導型の問題に移り変わっていかなきゃならん。だいたい内需主導にだんだん変わりつつあるという傾向はお認め頂けると思うんですけども、一番問題の日米間の黒字解消の問題は、努力によっていくらか改善は見られつつありますけども、率直に申し上げて、まだ今現在、五百億ドル近くの日本の対米黒字があるんです。

 これについては、経済全体に響くわけですから、それぞれ構造問題協議を通じてよく話し合って、理解と納得を求めながら、更に改善していくように努力をして、落ち着かせていかなければならんと思っております。

 それから金融の問題は、今景気を刺激、積極的に刺激していかなければならないということはございませんが、まったく別の面で国民の皆さんの大きな要望のひとつに、まじめに働いたら都市の生活者が家くらいは持てるようにしたいというご希望がある。この夢が今なんか暗いものになって、とてもそんなことは出来そうにないぞと思っていらっしゃる、それは土地の価格の問題で、住宅確保の夢を見るならば土地の価格をきちっとしなければならん。

 土地基本法に基づいていろんなことが出てまいりましたけれども、その中のひとつに金融の正常な流れの期待がこちらにあるわけですから、あんまり土地価格の暴騰の方に金融が向いていかないようにいろいろお願いをするとか、規制、そういったことを通じてやっぱり日本経済全体が安定的に伸びていくようにならなきゃならんだろうと、私はそのように考えております。

 他は、中小企業に活力を持ってもらうとか、あるいは設備投資の問題等も非常にいい傾向にあると見ておりますので、そういった方面のことが更に前向きに伸びていくように、積極的な考え方を常に持っていたいと、国民生活に不安を与えないようなことにしていかなくてはならんと思っております。

問 それから、行政改革ですが、行政改革の取り組み方についてお聞かせいただきたいのと、新行革審が来年三月に最終答申を出して、解散するわけですが、その後どうなさるお考えでしょうか。

総理 行政改革はなんというんでしょうか、小さな政府を実現をして、今日までも定員の削減の目標はだんだん達成をしてまいりましたし、なるべく無駄を省いていこう、地方に対するいろいろなご指摘、ご指示もありましたから、それにはきちっと従ってやっていかなくてはならんと思います。

 ただ、出ている問題の中で、やっぱり東京に一極集中している官庁の付属機関を地方へ出して、そして東京と地方との格差是正というんでしょうか、有効に利用していくというような問題とかですね、いろんなことがあると思います。

 行革審の指摘されることは、この答申を尊重して出来るだけ取り組んでまいりますが、行革審が結論を出された後どうするかということについては、また、その時の実情を踏まえて検討していくべき問題で、今からその後も更に作るとか、新々行革審にするとかどうとかいうことまでは考えてはおりません。出来るだけその間にやることはやりたいという気持ちでございます。

問 総理は長年教育問題にも取り組んできたわけですが、大学入試については来年から新テストの導入とかいろいろありますが、教育問題にどのように取り組むのかお伺いしたいと思います。

総理 大学入学試験の制度というのが、今の教育を歪めているといいますか、問題提起しているひとつの関門であることは間違いありません。

 大学入学試験に通るために高校以下の教育の中で、なんか忍術のような受験技術を身につけることが、必要以上に大切にされる。私はやっぱり教育というのは人々の個性や能力をうんと引き出して、結果として、この社会の活力になってもらうような人材を教え育てていくのが教育だと思います。だから、試験の点数だけじゃなくて、もっと創造力といいますか、人間の能力というものを別の方に、点数だけに支配されない方に持っていくのが大切だと思っておりますから、なるべく大学の入試試験の制度というのは、一時試験の時には、高校における勉強の到達度を見る、それが済んだら大学がこの人を自分の学校に預かったらこれだけのことが出来るぞということを見極めるために、受験生の方で自分の能力を主張して、僕は一課目でも結構だと思います。専門的な能力を本試験で見るということにして、一次試験と二次試験、新テストはまさにそういったことを願いとしているものであります。だから、やはりいたずらに点数だけにこだわらない、学歴だけにこだわらないで人間の資質や個性を伸ばすような教育をして、心豊かなたくましい人々を社会に送り出すために、教育は基礎基本に立ち帰らなきゃならんと。あんまり時間もありませんので簡単に申し上げると、意を尽くしませんけどもこういうことであります。

問 農業政策についてお伺いします。参院選の敗北の原因が、自民党の農業政策に対する農民の不満、反発にあったことは総理もそう思っていらっしゃると思いますが、その中でも、とりわけ自民党が進めてきた急激というか、一方的というか、自由化政策及び十年以上続いてきた米の減反政策に代わる新しい農業の基本政策みたいなものが、示されていないというふうな点にあると思うんですが、総理の農業問題に対する基本的な考え方を。

総理 農業問題につきましては、おっしゃるように十二品目の自由化の問題とか、いろいろございました。けれども、それは日本が国際社会の中で孤立して日本のことだけ考えておっていいのかという立場から、いろいろな議論があって、この問題については、確かにそれに関連する農家の皆さん方にいろいろなご迷惑をかけるわけでありますから、それに対する対応として、たしか千六百四十億ぐらいのものを用意して、それに対応するいろいろな援護、援助策というものもしてきたつもりであります。融資枠とか子牛の育成の問題とかいろいろございました。

 しかし、国際化時代にこの問題を年度的にくぎってあと三年目からでしたか、自由化になるものについては、関税なんかの問題で急激な変化がないように措置をいたしてきました。

 ただ、自由化の問題で残っているのは、お米の問題でありますが、これも衆参両院で決議がありますように、お米の自給力は自らの国で自らの国の自給をする、ですからいろいろな面でこれを自由化しろといわれても、それは受けるわけにはいかないとか、不可能だということを国会で決議等もあります。この問題は、ウルグアイラウンドの場で議論することになると思いますから、そのものの考え方、その立場に立って主張はしていかなきゃならんと思います。

 広く農業、農村という面でとらえてみますと、確かに今の日本の農業というものは、第二種兼業農家といって農業収入以外の所得のある農家がだんだん増えてきました。

 私が初めて国会に当選してきた頃の、約二十七、八年前ですが、農業基本法の目指したものは、都市と農村との格差の是正、同じレベルの豊かな生活をということを目標において、米だけに頼らない総合農政ということでやってきたんでありますが、今、結果として、都市と農村の生活の格差は縮まってきたとか、あるいは、ついこの間の報道によると、農業所得の方が都市の勤労者所得を上回ったというような、絵解きというんですか、絵の書いた記事も載っていましたが、中を十分調べると、それは第二種兼業農家のことであって第一種の農家、専業農家の方の所得、その他はまだまだ行き届いておらんという面も残っております。

 私は、それらのことを踏まえて、生活の質を高めていく、農村が、農村として豊かに暮らせるようにするとともに、ただ単にその経済上のお金の問題じゃなくて、農村に文化施設をもっと散在さしていくとか、あるいは、それを中心に農家の心豊かな生活もできるとか、いうふうに向けていかなきゃなりませんし。

 また、農村を農業だけとしてとらえないで、農業をしている田畑というものが、国土保全のために果たしている役割とか、あるいは緑と空間が人間の心に与えている役割とか、いろんなものを考えますと、これからの日本の農業というものは、日本の農村とともに大切にされていかなきゃならん、ある意味では、日本はお米の文化といわれるぐらいいろいろな係わり合いが多いものでありますから、豊かな農村というものは大切な目標のひとつであると思っております。

問 米の自由化に関して高原長官が検討すべきであるというように発言されておられますが、これは従来の国内需給の堅持という方針とは違うような気がするんですけども。

総理 お米の自由化については、もう既に今日まで大部減反政策の努力なんかも願ってきたんですけども、それでもなおかつお米の問題につては、国内の需給力で十分間に合ってやっていけると、例外的に一パーセント程、焼酎の原料といったでしょうか、輸入しておる面がなんか例外的にあるようですけど、それは特例でありますから、全体として今、自由化に踏み切るということは国会の両院でも決議がしてありますから、需給力に従ってやっていくと、そういうふうに私はいたしたいと、きちっとそれらの背景を踏まえて言うべきことは言って、理解してもらうように、それがやっぱり対話の重要なひとつだと思います。

問 土地対策の関連ですけれども、都市の土地の値段を上がらないようにするだけではなくて、下げるという方向に政策を誘導されるお考えはございますか。

総理 これは難しい問題でいろいろと議論をしておりますが、下がる方法も確かにあるということをいろいろ研究している人や、検討している方から聞きます。現実に下がりつつあるというのもあるわけです。思いきった発想の転換をやって公共的な施設に二階、三階、四階という高層のものを作るとか、あるいは東京に集中している政府機関の地方移転の問題もいろいろ努力をしておりますけども、それもやっぱり住宅供給のための一助でありますし、そういったことができていけば下がると思います。

 それから、これはもうちょっと奇想天外な夢かも知れませんが、私の友人なんかで、もう少し気宇広大な夢を描いて東京湾に人工島でも作って、そこに土地を提供したら相対的に土地の値段は下がるんではないかと、しかもそれは公共投資にもなって素晴らしいぞという案もありまして、そういったこともいろいろ検討していきたい。本当に土地が下がるならばいろいろなことを考えていかなきゃならんと思います。

問 時間が大部超過しましたので、恐縮ですけども、外交問題について最後に一括して質問させてください。

 まず、総理の訪米の時機と目的、それから天皇陛下の中国、韓国へのご訪問についての政府の考え方、更に日ソ関係への政府の取り組みならびにゴルバチョフ書記長の来日問題についての三点をお聞かせください。

総理 最初の問題につきましては、私はいつも申し上げてきましたように、わが国外交の座標軸は二つあって、ひとつは日米を機軸にして、自由と民主主義を大切にするEC諸国との三角形関係の中の一員として、日本は役割を果たしていかなければなりません。

 もうひとつは、アジア地域の一員であると言ってきましたが、日米が機軸であることはこれは大事ですから、アメリカの都合もありましょうけれども、これは、諸般の事情を検討して、私は出来るだけ早い機会に実現をしたいと、こう思っております。

 それから二つ目の陛下の中国、韓国ご訪問のことはどうかといわれますと、これはいろいろな国際的な問題と絡むことで、かつてあの訪韓をご計画なさったこともございましたが、実現していないということもあります。これは、もう少し情勢を見て検討させていただかないと、今ここで、あるとかないとか、いつ頃がいいとか、そんなことは軽々しく申し上げられない問題でございます。ただ、我が国としては、中国とは基本的に中国の開放政策、発展政策をいいことだと見ておるわけですし、それから基本的に仲良くしていかなければならん国であります。

 韓国ともこれは友好関係を続けていきたい、正に隣国でありますからいろいろ大切な相手国であることは間違いございません。

 ソ連については、ソ連もやはり日本にとってはたいへん重要な立場の国であります。けれども具体的におっしゃったゴルバチョフさんの問題ですけども、私どもの期待は基本的にソ連との間では、北方領土問題を解決して、平和条約をきちっと締結したいというのが基本的な願いであります。ゴルバチョフさんが訪日されるというならば、これは歓迎いたします。で、来年になったらゴルバチョフさんがいつ訪日されるかということを、日ソ間で検討するというところまでは合意が出来ているわけです。私としては、ゴルバチョフさんの訪日が実現するということは、日ソ関係の中でひとつの節目になると思っておるわけです。

問 これからの日中関係について、どうお考えになりますか。

総理 中国とも長い歴史があって、日中は基本的に共同声明の線に従って長いおつき合いをこれからも続けていこうと、基本的に将来いつまでも大事な国だと思っております。

 ただ、この間起こりました天安門の問題については、人道上の見地からいろいろ申しましたけども、しかし、現在中国の採っている政策というものは、私たちは好意を持ってご協力をしていかなきゃならん、そして、中国との関係がより友好的に深まっていくような方向で努力していきたいと思っております。