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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・PIF首脳会議首脳宣言 「沖縄イニシアティブ より豊かで安全な太平洋のための地域(開発)戦略」

[場所] 
[年月日] 2003年5月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.日本と太平洋諸島フォーラム(PIF)メンバーの首脳は、5月16-17日、沖縄において第3回首脳会議を開催するために集まった。日本、フィジー、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、マーシャル、サモア、ソロモン、トンガ、及びバヌアツからは首脳が、クック諸島からは副首相が、オーストラリア、ミクロネシア、ニュージーランドからは外務大臣が、キリバスからは国家評議会議長が出席した。ツバルからも出席した。首脳会議では、小泉日本国総理大臣及びPIF議長であるガラセ・フィジー首相が共同議長をつとめた。

2.日本及びPIFの首脳は、1997年の第1回太平洋・島サミットにおいて形成された相互に利益をもたらすパートナーシップの重要性を想起した。アジア太平洋地域において安全で、安定し、持続可能な環境が得られることを確保すべく、協力を継続するとの約束を再確認した。日本とPIFの首脳は、2000年の宮崎宣言で表明された「共に語る未来」を実現するとの決意を表明した。首脳は、この点に関し、国際社会がこの地域への支援を継続することを呼びかけた。

3.PIF首脳は、小泉総理、日本政府及び日本国民に対し、首脳会議の開催と暖かなもてなしについて、謝意を表明した。首脳は、沖縄県知事及び沖縄県民に対して、その暖かいもてなしに謝意を表するとともに、繁栄の継続を祈念した。

4.首脳会議は、2000年の第2回首脳会議で採択され、その後日本・PIF関係の強化に大いに貢献した宮崎イニシアティブについて、日本が提出したその実施状況に関する報告書に満足の意を表しつつ留意した。宮崎イニシアティブに基づき現在も継続中の多くの作業は、この沖縄イニシアティブの下で継続される。また、この沖縄は、太平洋地域の持続可能な開発に沖縄自身のイニシアティブで貢献する意思があることを表明した。

5.首脳会議は、地球規模の、及び地域の環境が政治的に不確実であり、経済的には停滞しているという背景のもとで開催された。多くの太平洋島嶼国は、国民総所得の緩やかな低下に苦しみ、援助受取額は横這いのままか若しくは低下している。さらに、これら島嶼国は、文化的多様性を守りつつも、グローバル化から得る利益を最大にするよう努力する一方で、国土の狭小性、地理的遠隔性、脆弱性という自然条件に起因する弱点を克服するという特に困難な作業に直面している。

6.首脳会議は、日本とPIFが、莫大だが無尽蔵ではない資源を保有する広大な太平洋を含む、多くのものを共有していることに留意した。また、日本とPIFは、アジア太平洋地域の将来の世代のための安全かつ持続可能な環境の維持を確保しつつ、モノ、サービス、資本、人材、知識の積極的な流れをもたらすような安全かつ安定した地域を共に必要としている。

7.こうした背景のもと、首脳会議では、「沖縄イニシアティブ:より豊かで安全な太平洋のための地域開発戦略及び共同行動計画」を決定した。これらは、以下の原則や約束を地域的なイニシアティブとして具体化すべく作成されたものである。

 1)2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」における成果

 2)国連ミレニアム開発目標

 3)日本が提唱している「人間の安全保障」や「平和の定着」のイニシアティブ

 4)PIF首脳及び閣僚によって承認された太平洋地域の政策の枠組み

 5)開発パートナーである他国政府や市民社会を含む組織との更なる協力

8.首脳会議は、以下の5つの重点政策目標を掲げ、付属の共同行動計画において、日本とPIFが共同で取り組むイニシアティブを列挙した。

 1)太平洋地域の安全保障の強化

首脳会議は、太平洋地域の一体性に対する伝統的な軍事的脅威のみならず、テロリズムやその他の国際犯罪、更には自然災害、経済的混乱、汚染された環境、疾病など人間の安全保障上の懸念に対処する必要性を認識した。

 2)より安全で持続可能な環境

首脳会議は、ゴミ処理、環境及び天然資源の保護並びに持続可能な利用、地球温暖化、脆弱性、災害対策を優先項目として確認した。

 3)教育及び人材育成の改善

首脳は、地域の人的資源の潜在性を発展させ実現することにおいて、初等及び基礎教育の強化を優先させることととともに、高等教育及び遠隔学習の重要性について決定した。

 4)保健及び衛生の改善

首脳会議は、エイズ、マラリア、リンパ性フィラリア症及びその他の感染症並びに糖尿病の蔓延との闘いをめざして共に行動することを決断し、防疫措置のための活動を引き続き支援していくことを約束した。首脳会議は、太平洋地域においてSARSが発生する可能性があることへの懸念を共有し、この問題に警戒を怠らずにいることにした。

 5)より活発で持続可能な貿易及び経済成長

首脳会議は、観光分野を含む貿易・投資を促進するための作業を引き続き支援していくこと、及び、太平洋島嶼国の経済面及び貿易面の実施を改善していくためのその他の手段を模索することを決定した。

9.小泉総理は、共同行動計画を通じて、太平洋におけるこれら5つの政策目標の達成を支援していくとの日本国の意図を再確認した。PIF首脳は、太平洋島嶼国に対する日本国の具体的な約束に対する謝意を改めて表明すると共に、共同行動計画の実施に関する彼ら自身の約束を確認した。

10.首脳会議は、地域開発戦略及び共同行動計画の実施に関するハイレベルによる見直しを毎年行うことを決定した。