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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米安全保障協議委員会(「2+2」)文書 在日米軍の再編の進展

[場所] 
[年月日] 2011年6月21日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

クリントン国務長官

ゲイツ国防長官

松本外務大臣

北澤防衛大臣

閣僚は,現下の変化する地域の安全保障環境に鑑み,抑止力を維持し,日米同盟の能力を強化するために,沖縄を含む日本における米軍のプレゼンスの重要性が高まっていることを強調した。

閣僚は,沖縄を含む地元への影響を軽減するとのコミットメントを再確認した。それは,日本における米軍の持続的なプレゼンスの確保に寄与することとなる。

閣僚は,2006年の再編のロードマップ以降多くの分野において達成された重要な成果を賞賛し,その目的の実現に向けた進展を継続していくことを決意した。

1.沖縄における再編

(a)普天間飛行場の代替の施設

・ SCCの構成員たる閣僚は,ロードマップの鍵となる要素である普天間飛行場の代替の施設の重要性を再確認した。

・ 閣僚は,2010年5月28日のSCC共同発表において確認されたように代替の施設はキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置されることを想起しつつ,普天間飛行場の代替の施設に係る専門家検討会合(以下「専門家会合」という。)の分析に基づき,位置,配置及び工法の検証及び確認を完了した。

・ 閣僚は,代替の施設を,海面の埋立てを主要な工法として,専門家会合によって記されたようなV字型に配置される2本の滑走路を有するものとすることを決定した。それぞれの滑走路部分は,オーバーランを含み,護岸を除いて,均一の荷重支持能力を備えて,1800mの長さを有する。閣僚は,環境影響評価手続及び建設が著しい遅延がなく完了できる限り,この計画の微修正を考慮し得ることを決定した。

(b)沖縄における兵力削減及び第三海兵機動展開部隊(ⅢMEF)の要員のグアムへの移転

・ SCCの構成員たる閣僚は,西太平洋において米軍が地理的に分散し,運用面での抗堪性があり,かつ,政治的に持続可能な態勢を実現するための,より広範な戦略の一部として,ⅢMEFの要員約8000人及びその家族約9000人を沖縄からグアムに移転するとのコミットメントを再確認した。

・ 閣僚は,2009年2月17日のグアム協定の締結及び日米双方がとった財政措置を含むこれまでの具体的な進展に留意した。閣僚は,ロードマップ及びグアム協定の規定及び条件に従って移転を着実に実施するために必要な資金を確保するとのコミットメントを確認した。

・ 米側は,地元の懸念に配慮しつつ,抑止力を含む地域の安全保障全般の文脈において,沖縄に残留するⅢMEFの要員の部隊構成を引き続き検討する。

(c)閣僚は,普天間飛行場の代替の施設及び海兵隊の移転の完了が従前に目標時期とされていた2014年には達成されないことに留意するとともに,日米同盟の能力を維持しつつ,普天間飛行場の固定化を避けるために,上記の計画を2014年より後のできる限り早い時期に完了させるとのコミットメントを確認した。

(d)土地の返還

・ SCCの構成員たる閣僚は,嘉手納以南の施設及び区域の返還はロードマップに記されたように着実に実施されることを再確認した。

・ 閣僚は,沖縄に残留するⅢMEFの要員の部隊構成の検討の結果を反映して,できるだけ早く,統合のための詳細な計画を完成させ,公表することを決定した。

・ 閣僚は,沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の計画及び措置を着実に実施することの重要性を更に強調した。

(e)再編案間の関係

・ SCCの構成員たる閣僚は,沖縄からグアムへのⅢMEFの要員及びその家族の移転は,普天間飛行場の代替の施設の完成に向けての具体的な進展にかかっていることを再確認した。グアムへの移転は,嘉手納以南の大部分の施設の統合及び返還を実現するものである。

(f)閣僚は,双方がホテル・ホテル訓練区域に関する更なる措置を含む沖縄における影響の緩和のための更なる方法を引き続き探求することを決定した。

(g)嘉手納における騒音の軽減

・ SCCの構成員たる閣僚は,嘉手納飛行場の主要滑走路の反対側に海軍駐機場を移転する計画の進展を歓迎し,また,騒音規制に関する1996年の合同委員会合意へのコミットメントを再確認した。

2.米陸軍司令部能力の改善

・ SCCの構成員たる閣僚は,第1軍団(前方)の発足を含めたキャンプ座間における米陸軍司令部の改編を歓迎した。

・ 閣僚は,また,日本の2012会計年度までの陸上自衛隊中央即応集団司令部のキャンプ座間への移転についての,これまでの着実な進展を歓迎した。

・ これらの進展は,米陸軍及び陸上自衛隊による調整された司令部能力の向上に寄与することとなる。

3.横田飛行場

・ 閣僚は,共同統合運用調整所(BJOCC)が,日本の2011会計年度末までに運用を開始することに留意した。これは,情報共有を含め,二国間の司令部の調整の強化における重要な前進となるものである。

・ 閣僚は,航空自衛隊航空総隊司令部の横田への移転の重要な進展を歓迎した。

・ 閣僚は,横田空域の一部について,2008年に管制業務が日本側に返還されたことを歓迎した。

4.厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機部隊の移駐

・ 閣僚は,空母艦載機の岩国飛行場への移駐に必要となる施設の整備及び航空管制の手続を含む訓練空域の調整に関するこれまでの進展を歓迎した。

・ SCCの構成員たる閣僚は,日本の2012会計年度中の岩国飛行場における民間航空の再開に向けて作業することを決定した。

・ 日本政府は,新たな自衛隊の施設のため,馬毛島が検討対象となる旨地元に説明することとしている。南西地域における防衛態勢の充実の観点から,同施設は,大規模災害を含む各種事態に対処する際の活動を支援するとともに,通常の訓練等のために使用され,併せて米軍の空母艦載機離発着訓練の恒久的な施設として使用されることになる。閣僚は,長年にわたる問題の解決は,同盟への極めて重要な前向きな貢献となると認識した。

5.訓練移転

・ 閣僚は,移転先にグアムを含める2011年1月の航空機の訓練移転に関する合同委員会合意を歓迎した。

・ 閣僚は,日本国内及びグアム等の日本国外において,二国間及び単独の訓練の拡大も含め訓練移転の更なる選択肢を検討することを決定した。

6.施設の共同使用

・ SCCの構成員たる閣僚は,沖縄を含む日本国及び太平洋地域にある米国の施政下にある領域において日米の施設への二国間のアクセスの拡大を促進するための共同使用に関する作業部会の設置を歓迎した。このステップは,より緊密な二国間の調整,相互運用性の向上及び地元とのより強固な関係に寄与する。

7.環境

・ 閣僚は,環境に関する合意に係る作業部会の設置を歓迎し,返還前の環境調査のための米軍施設・区域への合理的な立入りに関する合意の検討を加速することを決定した。

(了)