データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ファクトシート 核リスクの低減に関する日米協力

[場所] 
[年月日] 2010年11月13日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 このファクトシートは,核リスクの低減に関する日本国政府及びアメリカ合衆国政府(米国政府)との間の議論を要約したものであり,また,核セキュリティ,核軍縮及び核不拡散の分野における両国政府の協力及び連携を深めることに係る両国政府のコミットメントを反映したものである。両国政府は,国際社会において核リスクに真剣に取り組む機運が高まっているという文脈において,本年5月に開催された核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の運用検討会議において最終文書が全会一致で採択されたことを歓迎し,同文書の結論及び勧告の実施に向けた具体的措置を追求する必要性を強調する。

核セキュリティ

 日本国政府及び米国政府は,2010年の核セキュリティ・サミットの終了時に発出されたコミュニケ及び作業計画を歓迎し,4年以内にすべての脆弱な核物質の管理を徹底するという目標を再確認する。

 日本国政府及び米国政府は,原子力技術の平和的利用において半世紀以上にわたる協力関係を有している。両国政府は,原子力技術に責任を有する立場にあり,原子力安全,保障措置及び核セキュリティを確保するための措置を発展し及び統合することを特定の目的として,科学技術協力を拡大し及び加速することを約束する。両国政府は,民生用の原子力施設の核物質及び輸送中の核物質に最高水準のセキュリティを実施するための協力活動を強化し,また核鑑識並びに核物質の検知及び測定の分野における共同活動を拡大する必要性を確認する。

 日本国政府及び米国政府は,民生用の原子力分野を主導する立場にあり,特に原子力発電利用の増加が予想されるアジア太平洋地域のような地域における核セキュリティに関する専門知識の発展及び相応の人的資源への投資を引き続き促進する。この見地から,米国政府は,核不拡散・核セキュリティ総合支援センターを設立するとの日本の取組を歓迎する。日本国政府及び米国政府は,これらの取組を更に支援するため,協力のための分野を特定し,並びに2012年の核セキュリティ・サミットに向けた具体的な成果を特定し及び調整することを支援することを目的として,二国間の核セキュリティ作業グループを設置することを決定した。この作業グループは,最も高い核セキュリティの水準及び慣行に対する両国のコミットメントに基づくものであり,核セキュリティの分野における日本国及び米国の継続的なリーダーシップを国際的に示すものである。

核軍縮

 日本国政府及び米国政府は,信頼できる抑止力を維持し,また,米国及びその同盟国の安全保障を確保しつつ,核兵器の数及び役割を低減するために行われている重要な取組(米国の核態勢見直し及び新たな戦略核兵器削減条約を通じたものを含む。)が進行中であることを認識する。この文脈において,日本国政府は,長年の消極的安全保証を強化するとの米国政府の決定を歓迎し,現時点において米国が米国,その同盟国及びパートナーに対する核攻撃を抑止することが核兵器の「唯一の目的」であるという普遍的な政策を採用する状況にはないが,そのような政策が安全に採用され得る条件の創出のために努力していくことを認識する。

 また,日本国政府及び米国政府は,多国間の核軍縮分野(包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期の発効及び兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する交渉の即時の開始並びに可能な限り早期の締結を含む。)における進展の必要性を認識する。両国政府は,2010年9月24日に国際連合事務総長によって開催されたハイレベル会合において支持されたように,軍縮会議(CD)を活性化する緊急性について確認している。両国政府は,来年においても膠着状態が打開されない場合には,他の有志国と連携しつつ,多国間交渉のためのCDの代替手段を追求する用意があることを再確認する。

核不拡散及び原子力の平和的利用

 日本国政府及び米国政府は,原子力の平和的利用を検認し,また,国際原子力機関(IAEA)の支援を必要とするとともに核不拡散上の義務を遵守する諸国に利益を拡大する上でのIAEAの役割を強調する。両国政府は,不拡散の深刻な挑戦に関し,イランが関連する国際連合安全保障理事会決議を遵守するとともに,同国の原子力計画が専ら平和的目的であると判断するために必要な協力をIAEAに対して行うことが急務であることを再確認する。また,両国政府は,北朝鮮が2005年の六者会合に関する共同声明及び国際連合安全保障理事会決議第1718号及び同第1874号に従ってすべての核兵器及び既存の核計画を放棄することが必要不可欠であることを強調する。さらに,両国政府は,IAEAがその責務を果たす上で必要な資源,権限,能力及び技術的支援を有することを確保するため,IAEA及びその事務局長と引き続き緊密に協力していく。この点に関し,両国政府は,IAEAとともに,追加議定書の普遍化を奨励し,及び米国が本年5月に立ち上げた平和利用イニシアティブを促進するための努力を調整する用意がある。

 また,両国政府は,強固な核不拡散体制の確保及び原子力エネルギーの平和的利用の促進のための効果的かつ透明性のある輸出管理の重要性を強調する。両国政府は,急を要する優先事項として,原子力供給国グループ(NSG)に対し,濃縮及び再処理に係る移転に対する規制の強化について,可能な限り早期にコンセンサスに達するよう要請する。