データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「核兵器のない世界」に向けた日米共同ステートメント

[場所] 東京
[年月日] 2009年11月13日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府(米国政府)は、「核兵器のない世界」における平和と安全の達成についての新たな国際的関心及びコミットメントを歓迎し、また、そのような世界を実現する両国政府の決意を確認する。両国政府は、この文脈において、最近行われた核不拡散及び核軍縮に関する国連安保理首脳会合、国連安保理決議第1540号及び第1887号並びに米国政府が共同提案国となって日本国政府が国連総会に提出した「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」決議を歓迎する。

 核兵器の全面的廃絶を達成するという挑戦を認識しつつ、日本国政府及び米国政府はこの目標を達成するための条件を整えるために積極的に取り組む。両国政府は、日本国及びアメリカ合衆国並びにその他の米国の同盟国の安全保障をいかなる形においても損なわないことを確保しつつ、国際の安定及び安全を促進するような方法によって、核軍縮・核不拡散に関する以下の具体的行動をとる決意を表明する。

 ● 核軍縮

 米国政府は、ロシア連邦との交渉を通じ、START後継条約の早期締結を引き続き追求する。日本国政府は同交渉の進展を歓迎し、早期妥結についての期待を表明する。日本国政府及び米国政府は、すべての核兵器保有国に対し、核軍縮の過程における透明性、検証可能性及び不可逆性の原則を尊重するよう要求する。米国政府は、国家安全保障政策における核兵器の役割を低減させることをコミットし、日本国政府及び米国政府は、他の核兵器保有国に対し、同様の措置をとるよう要請する。

 ● 核不拡散/原子力の平和的利用

 日本国政府及び米国政府は、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の重要性を再確認し、また、2010年NPT運用検討会議が、NPTを強化し、国際不拡散体制におけるNPTの中心的役割を再確認し、NPTの3つの柱である核不拡散、原子力の平和的利用及び核軍縮のそれぞれについて現実的で達成可能な目標を勧告することに成功するよう協力する。このことは、とりわけ、国際原子力機関(IAEA)の保障措置を強化し、NPTの脱退規定の濫用を防止し及び広く受け入れられ得る核燃料サイクルの多国間アプローチを確立するための措置を含む。日本国政府は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指すとの米国政府の意図を歓迎し、また、日本国政府及び米国政府は、CTBTの早期発効を達成するために協力する。日本国政府及び米国政府は、CTBTの発効及び国際不拡散体制の再活性化によって日米安全保障同盟が強化されるものと確信する。また、両国政府は、兵器用核分裂性物質生産禁止条約の即時交渉開始及び早期妥結を追求することを決意する。日本国政府及び米国政府は、拡散の危険を高めることなく各国が平和的な原子力にアクセスできるようにするため、共同で及び他の国々と協力して、核燃料供給保証を含む民生原子力協力のための新たな枠組みを推進する方法の探求に取り組む。また、揺りかごから墓場までの核燃料管理がこの枠組みの重要な要素の一つとなり得ることにつき一致する。

 日本国政府及び米国政府は、北朝鮮及びイランがそれぞれの国際的義務を確認し、遵守することが引き続き極めて重要であることを宣言する。最近の北朝鮮によるミサイル発射及び核実験が示したように、北朝鮮による核兵器の追求は引き続き北東アジア及び国際社会全体の平和と安定に対する重大な脅威である。日本国政府及び米国政府は、不可逆的かつ検証可能な朝鮮半島の非核化及び2005年9月の共同声明の目標に対するコミットメントを再確認する。両国政府は、これらの目標を達成する上で六者会合が引き続き最も有効な枠組みであることを強調し、北朝鮮に対して直ちに無条件で六者会合に復帰することを要請する。両国政府は、国連安保理決議第1718号及び第1874号を完全に履行することにつき一致し、すべての国連加盟国に対し同様の行動をとることを要請する。

 イランの核活動、特にコム付近の新たな濃縮用施設の建設が最近発覚したことは、イランの核計画の性質に関する国際社会の懸念を強めた。日本国政府及び米国政府は、イランにはこの問題に関する国際的信頼を取り戻す責任があることを強調する。両国政府は、国際的な不拡散体制が危機にさらされることを許さない。両国政府は、国連安保理決議に基づく対話と交渉を通じて包括的で長期的な解決を追求するというコミットメントを再確認し、この目標を達成するためにデュアル・トラック・アプローチを追求していくという強固なコミットメントを表明する。

 日本国政府及び米国政府は、IAEAがその重要な任務を遂行する上で必要とする資源、権限及び検認能力を引き続き有することを確保するために協力する。両国政府は、検認のための国際標準であるべきとの見解を共有している追加議定書の遵守を普遍的なものとするための取組を促進し、また、保障措置、核セキュリティ及び原子力安全の最も高い基準を遵守して行う原子力の平和的利用を奨励する。両国政府は、この文脈で、12月にIAEA事務局長に就任する天野大使の選出を歓迎する。

 日本国政府及び米国政府は、核不拡散、保障措置及び核セキュリティに関する協力を拡大する。この協力には、核物質の測定及び検知に関する技術、核鑑識、人材育成、原子力エネルギーに関心を有する国々に対する訓練及び基盤整備支援、並びにIAEA保障措置に対するそれぞれの加盟国サポート・プログラムの調整等の分野を含み得る。

 ● 核セキュリティ

 日本国政府及び米国政府は、米国政府が開催する2010年核セキュリティ・サミットの成功に向けて協力すること及び核セキュリティを強化するための地域的な取組を促進することを約束する。この点に関し、日本国政府は、2010年1月に東京において、アジア諸国を対象とした核セキュリティ会議を開催する。米国政府は、この取組及び日本国政府が12月に核セキュリティ・サミットに向けた次回準備会合を開催することを歓迎する。

 日本国政府及び米国政府は、国連安保理決議第1540号の完全な履行、核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブの推進、G8グローバル・パートナーシップの拡大及び延長、拡散に対する安全保障構想(PSI)の強化並びにメガポート・イニシアティブの下での更なる協力に向けて協力する。両国政府は、核テロリズムの脅威が引き続き存在することを認識しつつ、両国政府は民生用の核物質及び原子力施設が最も高いレベルの防護を得ることを確保するとのコミットメントを再確認する。両国政府はまた、世界のすべての脆弱な核物質の管理を4年以内に徹底するための取組を支援することを約束する。