データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両首脳への第七回報告書

[場所] 
[年月日] 2008年7月5日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」は、規制改革を通じて経済成長を促進するための二国間フォーラムとして2001年に始められた。イニシアティブは毎年、広汎な分野別及び分野横断的な事項を扱い、成果は首脳への報告書を通じて年一回報告される。このイニシアティブの下での報告書はこれで7回目となる。

 イニシアティブは、日米両国政府間の双方向の対話である。2007年10月の両国政府間での要望書の交換の後、このイニシアティブの下に設置された4つの作業部会は、知的財産権、税関・流通、競争政策、貿易投資関連措置、領事事項、医療機器・医薬品、商法、特殊法人の民営化及び電気通信を含む通信分野等主要な分野における改革について議論を行ってきた。2008年5月には、このイニシアティブの下に提起された一連の問題を前進させるため上級会合も開催された。

 作業部会及び上級会合の後、各政府の要望に対する前進を記録し将来採られることになる措置につき詳述するために、この首脳への報告書は作成された。

 日米二国間の議題に加え、この報告書は、両国政府により継続的に行われている知的財産権の保護及び執行に関する地域的、世界的な取組みについても強調している。両国政府は、二国間、地域及び多国間の議論の場における協力を引き続き向上させていく決意を確認する。

 日米両国政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認するとともに、いずれかの政府の要請に基づき、双方の都合の良い時期に、この報告書に含まれている措置を取り上げるために会合する。

目次{前2文字下線あり}

日本国政府による規制改革及びその他の措置{前21文字下線あり}

Ⅰ.電気通信・・・3

Ⅱ.情報技術・・・6

Ⅲ.医療機器・医薬品・・・14

Ⅳ.金融サービス・・・24

Ⅳ.競争政策・・・29

Ⅵ.商法及び司法制度改革の実現・・・37

Ⅶ.透明性・・・43

Ⅷ.その他の政府慣行・・・46

Ⅸ.民営化・・・52

Ⅹ.流通・・・57

米国政府による規制改革及びその他の措置{前20文字下線あり}

Ⅰ.ダンピング防止措置・・・60

Ⅱ.税関・流通・・・60

Ⅲ.領事事項・・・66

Ⅳ.投資関連規制・・・75

Ⅴ.特許制度・・・76

Ⅵ.政府調達・・・78

Ⅶ.輸出関連規制・・・80

Ⅷ.基準及び規格・・・82

Ⅸ.州別規制の統一化・・・84

Ⅹ.域外適用・・・87

ⅩⅠ.競争政策・・・87

ⅩⅡ.司法制度・法律サービス・・・88

ⅩⅢ.海運・・・89

ⅩⅣ.金融・・・90

ⅩⅤ.電気通信・・・91

ⅩⅥ.情報技術・・・94

ⅩⅦ.医療機器・医薬品・・・97

日本国政府による規制改革及びその他の措置

 福田総理は、2008年1月のダボス会議において、日本が対日投資促進のための改革等の市場開放努力を一層進める旨を表明した。日本政府は、福田総理のこの基本方針をふまえ、諸政策に取り組んでいる。

 こうした取組には、2008年6月に経済財政諮問会議が「経済成長戦略」を策定したときに是認された一連の新しい政策も含まれている。「経済成長戦略」は、世界と共に発展するオープンな国という方針に沿って成長力の強化を追求するものである。この戦略は、対日投資有識者会議が2008年5月に対日投資の抜本的な拡大のために提言した措置も組み込んでおり、その後2008年6月に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2008」に盛り込まれた。

 日本国政府は、その他にも改革志向の措置を検討・追求している。経済財政諮問会議のもとに設立された「構造変化と日本経済」専門調査会は、2008年7月、グローバル経済の中で我が国が目指す10年後の経済社会の姿を描き、そこへの道筋を示す報告書

を発表した。これに加え、規制改革会議が、2008年末までに予定されている第三次答申に向けた「中間とりまとめ」を2008年7月に発表した。日本国政府は、経済財政諮問会議、規制改革会議及び対日投資有識者会議における議論や提言をふまえ、引き続き、積極的に規制改革を推進していく。

Ⅰ.電気通信{前6文字囲み線あり}

A.競争促進{前6文字下線あり}

1.2007年10月、総務省は、急速な市場変化に的確に対応するため、2006年9月にブロードバンド市場における公正競争環境整備の具体的な行動計画(ロードマップ)として策定した「新競争促進プログラム2010」を改定した。これに基づき、総務省は、(1)指定電気通信設備制度(ドミナント規制)の見直し、(2)接続料算定方式の見直し、(3)移動通信市場における競争促進、(4)ユニバーサルサービス制度の見直し、(5)ネットワークの中立性の確保に向けた環境整備、(6)消費者保護策の強化等の施策を検討し、結論を得たものから順次着実に実施している。

2.2008年5月、総務省は、MVNO(既存の移動通信事業者の無線ネットワークを活用して多様な移動通信サービスを提供する事業者)の新規参入促進に関して、「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を再改定した。このガイドラインは、「モバイルビジネス活性化プラン」に基づくものであり、同プランは、多様なビジネスモデルの出現を促進するオープン型モバイルビジネス環境を整備し、モバイルビジネス市場の一層の活性化を実現することにより利用者利益の向上等を図る観点から、2007年9月に総務省により公表されたものである。

3.総務省は、指定電気通信設備の範囲やNTTグループに係る累次の公正競争要件の有効性について定期的に検証する競争セーフガード制度の運用を2007年度より開始し、2008年2月に2007年度の検証結果を公表するとともに、同結果に基づき講じるべき措置についてNTT東西に要請を行った。この要請は、NTT東西の子会社が、NTT東西及びドコモから受託した業務に関して入手した情報の目的外利用の禁止について周知・徹底すること等を通じて、電気通信事業の公正な競争の確保を図るものである。

4.2008年度以降の加入光ファイバの接続料については、2008年1月に情報通信審議会に諮問され、現在、2001年度から2007年度までに適用された接続料と比較してNTT東日本については9.1%、NTT西日本については2.8%削減されたNTT東西の申請について、同審議会で審議が行われているところである。

B.固定接続{前6文字下線あり}

1.長期増分費用方式(LRIC){前14文字下線あり}:総務省は、2008年度以降に適用される長期増分費用方式に基づく接続料の算定方法について、パブリック・コメント及び情報通信審議会の答申を踏まえ、2008年2月に接続料規則を改正した。また、同年3月、総務省は、これに基づき算定された2008年度の接続料を認可し、当該接続料は同年4月から適用されている。その結果、GC接続は3分あたり4.53円で前年度比3.4%の減少、IC接続は3分あたり6.41円で前年度比2.1%の減少となった。

2.次世代ネットワーク(NGN){前14文字下線あり}:「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方」については、情報通信審議会における審議及びパブリック・コメントの手続を経て、2008年3月に答申が行われた。同答申では、NTT東西のNGNを第一種指定電気通信設備に指定することが必要であること、同ネットワークにアンバンドル義務を課すことが必要であること等が提言されている。

C.移動体通信{前7文字下線あり}

1.NTTドコモの接続料は過去10年以上にわたって継続的に引き下げられており、発信者課金制度を採用する先進国の中で最も低いレベルまで下がっている。2008年3月、NTTドコモの接続料は、グループ会社内及び会社外に適用される接続料の平均の接続料は1分間11円であり、前年度と比較して2.1%引き下げられる旨、総務省に届出があった。

2.2008年3月、総務省は、販売奨励金について通信部分と端末部分を明確に区別するため、電気通信事業会計規則を改正した。また、2008年4月、電気通信役務の原価の適正化が図られることを目的として、併せて接続料及び卸電気通信役務の原価の適正化が図られることを期待し、改正された会計規則の適正な運用の確保等を図る「電気通信事業における販売奨励金の会計上の取扱いに関する運用ガイドライン」を公表した。

3.2007年11月、総務大臣は、NTTドコモの電気通信回線設備と日本通信の電気通信設備との接続の件に関して、裁定を行った。裁定では、利用者料金の設定は、「エンドエンド料金」とし、日本通信に利用者料金設定権を認めるのが相当であること等が示された。

D.先進技術及びサービスの促進{前17文字下線あり}

1.2007年12月、総務省は、地上テレビジョン放送のデジタル化により空き周波数となるVHF帯の90‐108MHz及び170‐222MHz並びにUHF帯の710‐770MHzの周波数帯について、移動体向けのマルチメディア放送等の「放送」、公共の安全確保に係るブロードバンド通信が可能な「自営通信」、携帯電話等の「電気通信」、及び「高度道路交通システム(ITS)」で使用できるよう、周波数割当計画の変更を行った。

2.2007年12月、総務省は、2.5GHz帯の周波数を使用する広帯域移動無線アクセスシステムの導入のため、ワイヤレスブロードバンド企画株式会社及び株式会社ウィルコムの開設計画を認定した。

E.電気通信機器の貿易の促進{前14文字下線あり}

1.相互承認協定{前6文字下線あり}

a.2008年1月1日、「適合性評価手続の結果の相互承認に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(MRA)が発効した。日米両国政府は、本協定の早期の実施に向け、技術基準に関する研修を含めた準備を進めている。

b.電磁両立性(EMC)に関する情報技術(IT)機器及び産業科学医療用(ISM)機器に係る適合性評価結果の受入れについての取決めのもと、2008年5月末までに、58の日本の適合性評価機関(CAB)がFCCによって承認され、19の米国のCABが情報処理装置等電波障害自主規制協議会(VCCI)によって承認されている。

2.2007年10月、総務省は、認証を受けた工事設計に基づく小電力データ通信システム(無線LAN)について、空中線を追加又は変更するための工事設計の変更について新たに認証を受ける場合に、登録証明機関の判断により変更を行う前の認証番号と同一の文字等を定めることができるよう、規定の整備を行った。

Ⅱ.情報技術{前6文字囲み線あり}

A.IT及び電子商取引の政策立案{前17文字下線あり}

1.IT政策計画の策定{前9文字下線あり}:日本国政府は、IT及び電子商取引政策の策定及び実施において民間部門からの多様な意見を求め、考慮する。2007年7月、IT戦略本部は、新たなIT重点計画を内閣官房のウェブサイトに掲載し公表した。IT戦略本部は、引き続き、パブリック・コメントの手続きを行うことにより、民間部門の構成員が参加するIT新改革戦略評価専門調査会を含め、関心を有する者から意見を求めていく。IT戦略本部は、2008年夏に新たな重点計画を公表する予定である。

2.民間部門からのインプットの促進{前16文字下線あり}:IT戦略本部は、重点計画案についてパブリック・コメントの期間を設ける予定である。日本国政府は、引き続き、パブリック・コメントの手続きやその他の方法を通じて、IT及び電子商取引政策の立案における初期及びその後の段階において、民間部門の関心を有する者がインプットできるよう有意義な機会を提供していく。また、日本国政府は、引き続き、IT及び電子商取引に係る審議会や研究会の設置及び活動について、民間部門が情報を速やかに入手し、それらに積極的に参加できるよう有意義な機会を提供していく。

3.技術的中立性の助長{前9文字下線あり}:日本国政府は、技術提供者や利用者が必要性に応じた最適な技術を選択できる柔軟性を確保することにより、選択肢及び競争的な市場環境を促進するよう、IT分野に関連する法令、規制及びガイドラインを施行していく。また、日本国政府は、引き続き、国際標準化活動において民間部門と緊密に連携するとともに、適切な場合は、IT及び電子商取引の政策、ガイドライン及び規制の立案に際して、既に確立されている国際標準を使用していく。

4.国際整合性の推進{前8文字下線あり}:日本国政府は、国境を越える電子商取引を促進するための環境を醸成することが重要であると理解している。日本国政府は、引き続き、電子商取引及び関連するインターネット技術に関する政策及び法的枠組みと国際慣行との調和を図るよう努めていく。

B.知的財産権の保護強化{前12文字下線あり}

1.エンフォースメントシステム{前13文字下線あり}:

a.法定損害賠償制度:日本国政府は、知的財産推進計画2008に従って、著作権の保護を強化し権利者の損害立証責任を軽減するため、侵害行為に対する法定損害賠償制度の利用可能性を含め、時宜を得た方法で更なる措置の検討を継続し、その審議プロセスに関する最新情報を米国に提供する。

b.著作権保護期間延長:日本国政府は、知的財産推進計画2008に従って、著作権保護期間延長について、国際的な動向や権利者・利用者間の利益の均衡等の関連要因を考慮しつつ時宜を得た方法で検討を継続し、その審議プロセスに関する最新情報を米国に提供する。日本国政府は、レコードの保護期間の延長について、他のすべての著作物と同等とすべきとの米国政府の懸念を認識する。

c.職権の付与:日本国政府は、著作権法における著作権侵害罪を公訴する際の被害者(権利者)の告訴要件を見直すべきか否かについて検討を行った。2007年度の審議の結果、文化審議会は、見極めを行う前に、社会的な影響等の様々な要因を慎重に検討する必要があることを確認した。また、文化審議会は、被害者(権利者)の告訴要件が捜査の大きな障害になっているという認識はないことを確認した。日本国政府は、職権の付与が著作権侵害罪の効果的な捜査・起訴を促進するための重要な手段であるとの米国政府の見解に留意する。

2.オンラインパイラシー{前11文字下線あり}:日本国政府は、その法制度について米国政府との間で情報交換を行った。日本国政府は、プロバイダー責任制限法に基づく、オンライン上の侵害防止策について説明した。日本国政府は、オンライン上の海賊版の違法な譲渡をより効果的に防止するための措置の法的な影響について検討を行っている。

3.デジタルコンテンツの保護{前14文字下線あり}:日本国政府は、政府活動における著作権侵害を禁止するため、ファイル交換技術の濫用等に対応し、また、政府により使用されているソフトウェア、その他のデジタルコンテンツ資産を含む知的財産を保護する適切な内部規則や通達を策定している。日本国政府は、デジタルコンテンツの保護について、米国政府と引き続き情報交換を行うとともに、日本の著作権制度におけるデジタル化・ネットワーク化の影響に関する将来の検討において権利者の意見を考慮する。日本国政府は、国際条約との整合性を保ちつつ、私的使用の例外を引き続き適用する。

4.IPマルチキャストに係る法定実施権{前17文字下線あり}:日本国政府は、今般の法改正はIPマルチキャスト放送による同時再送信が円滑に実現されるよう、著作権保護にも適正な考慮を払いつつ、必要最小限の範囲で権利関係の見直しを行ったものであり、著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)及び実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)の規定に則ったものであることを確認した。また、日本国政府は、米国政府が、新たな技術やビジネスモデルについて、市場を基盤とした解決策に委ねていることの重要性を認識する。

5.出版社に影響を与える著作権保護の例外{前18文字下線あり}:日本国政府は、関係団体を通じて教育機関、教員及び学生に対する著作権法第35条の「教育例外条項」のガイドラインを公表して例外となる実例を提示し、改正著作権法における例外条項の範囲を明確にした。日本国政府は著作権法第35条の適用が著作物の通常の利用を妨げず、権利者の正当な利益を不当に害さないこと、また、科学・技術・医学又は教育分野の出版社に影響を与える例外の追加が提案された場合も同様の観点から慎重に検討することを引き続き確保し、その検討過程では権利者の意見を考慮する。日本国政府は、市場を基盤とした解決策を奨励する米国政府の立場を認識する。

6.技術的保護手段{前7文字下線あり}:日本国政府は、アクセスコントロールの無断回避、および技術的保護手段の回避を目的とした、装置又はサービスに関するあらゆる形態の取引に対する、民事上・刑事上の有効な救済措置規定に関する米国政府の懸念を認識する。また、日本国政府は、引き続き、米国政府に「アクセスコントロール」に関する検討についての最新情報を提供する。

7.特許手続{前4文字下線あり}:

a.12か月のグレースピリオド:日本国政府は、米国政府と、12か月のグレースピリオドについて、引き続き多国間の交渉の場で、制度調和のパッケージとして議論していく。

b.特許出願審査:各特許出願は、最初の拒絶理由通知において、全ての拒絶理由が通知されるべき旨を規定する審査基準に従って審査される。

8.商標{前2文字下線あり}:日本国政府は、米国政府と、商標三極及び他の関連会合を通じて、引き続き、商標関連事項について緊密に連携していく。

C.知財権の保護及び執行における日米協力の強化{前24文字下線あり}

1.日米両国政府は、2007年4月に行われた日米首脳会談において、知的財産権分野における日米協力を強化していくことを確認し、世界における知的財産権の保護及び執行を強化するべく、緊密な協力を継続している。

2.これまでの日米間の協力は、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)についての協議の推進、日本経済産業省と米国商務省間の共同イニシアティブの下で東南アジアの模倣品・海賊版対策を促進させるため、本年4月タイにおいて日米欧間の官民会合を開催したこと、特許審査ハイウェイ(PPH)の本年1月の完全実施等の国際特許制度の効率化及び調和の取組、及び2007年のアジア太平洋経済協力(APEC)での水際における知的財産権侵害に係る取締りの改善や特許取得手続の効率化を図る取組等、数々の具体的な成果をあげている。なお、日本国政府は、中国の知的財産権保護・執行に関する措置に関し米国政府によって提起された世界貿易機関(WTO)紛争解決手続に第三国として参加している。

3.日本国政府は、世界規模で知的財産権の一層の保護を促進するため、二国間、地域、及び多国間フォーラムの場において、米国政府と引き続き協力する。

4.日本国政府は、強力な模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)を構築するため、米国政府と引き続き連携し、2008年末までに交渉を終えることを目指して議論を加速していく。

5.日本国政府は、APECの場を、アジア・太平洋地域における知的財産権の保護及び執行の強化に関して米国政府と緊密に協力する主たるフォーラムとして引き続き活用し、本年のAPECにおける更なる成果を確保するため米国政府と緊密に連携し、また、その他のWTOを含む適切な国際フォーラムの場においても知財権保護を前進させるために引き続き協力する。

D.プライバシー{前8文字下線あり}

 2007年6月、国民生活審議会(以下、「審議会」という。)は、個人情報の保護に関する法律(以下、「プライバシー法」という。)の施行状況を見直すため、「個人情報保護に関する取りまとめ(意見)」(以下、「取りまとめ」という。)という報告書を公表し、施行状況を改善させるための採り得べき措置の将来的な検討、及びプライバシー法に対する過剰反応を抑制するための要望について強調した。

1.審議会における部会は、プライバシー法の施行状況に関する次なる措置を検討するため、新たな期の議論を開始した。個人情報の保護に関する基本方針の見直しが2008年4月に行われた。また、過剰反応を抑制するための広報啓発活動等の措置が講じられると共に、審議会は、ガイドラインの共通化の試みを検討しているところである。内閣府は、審議会の意見を慎重に検討していく。

2.審議会は、取りまとめにおいて、日本国政府が様々な実施ガイドラインの共通化のための必要な措置を講ずるべきであることを強調している。2008年4月、この意見に照らして、内閣府は、政府一体となって統一性と一貫性を目指した個人情報の保護を促進することを目的として、24分野37のガイドライン(2008年4月1日現在)の共通化に関する議論を開始し、今後、様々な事業分野の実情を考慮しつつ必要な措置を講ずる。

3.日米両国政府は、各人の個人情報の実効的な保護を行いつつ、国境を越えるデータの効率的な流通を確保することが重要であるという考え方を共有している。これらの原則及びプライバシーに関する柔軟な方針形成の価値を認識しつつ、日米両国政府は、経済協力開発機構(OECD)やAPEC等の多国間の枠組みに引き続き参画し、プライバシー等の課題に関する情報交換や合意形成を行う。

E.医療におけるIT及びeアクセシビリティー{前24文字下線あり}

1.医療におけるIT{前8文字下線あり}

a.新グランドデザイン:厚生労働省は「医療、健康、介護、福祉分野の情報化グランドデザイン」(新グランドデザイン)を施行する。新グランドデザインは、レセプト(診療(調剤)報酬明細書)の原則完全オンライン化など、医療ITが達成できる事項に関する日本のビジョンを示している。

b.医療ITの使用に対するインセンティブ:2008年4月1日、厚生労働省は、例えばPACS(医用画像情報システム)の使用について診療報酬を引上げるなど、情報共有を促進する革新的な医療ITの使用に対する医師及び医療機関のインセンティブを増加させた。このインセンティブの増加により医療ITの開発が刺激され、患者の健康の増進や医療提供体制の効率化をさらに進めることができる。

c.政府が支援する医療ITプロジェクトにおける業者への参加奨励:日本国政府は、幅広く適格な業者が、医療情報システムを開発または紹介する政府支援プロジェクトに参加することを奨励する。各府省は、医療情報システムの開発または紹介のための政府支援プロジェクトの本格的着手や参加募集に先立ち、これらに関する情報を各府省のホームページに引き続き掲載する。経済産業省は、政府支援プロジェクトの調達について同省のホームページに情報を掲載し、幅広く適格な業者の参加を受け入れることとしている。また、経済産業省は東海エリアで支援した医療情報システムの調達に関する情報を、同省のホームページに掲載した。

d.政策立案における透明性の向上及び利害関係者の参画:日本国政府は、民間企業を含む利害関係者に対して、医療ITについての提言、政策及び規則に関する見解を表明し、医療IT関係の作業部会や検討会へ参加するための有意義な機会を引き続き提供する。例えば、将来新グランドデザインの見直しが必要になった場合、厚生労働省は国民や利害関係者と幅広い議論を行う。

e.国際標準との調和の促進:日本国政府は、技術的中立の原則に十分に留意しながら、医療情報システムの標準化への取組が、国際標準との調和を促進することを確保するよう努める。厚生労働省と経済産業省は、医療情報システムの相互運用性の試験である「コネクタソン」を支援し相互運用性を推進する。経済産業省は、日本における医療情報システムの相互運用性の発展を目指す取組の一つであるコネクタソンに関する情報をインターネット上に公開した。厚生労働省は、コネクタソンに使用されるツール開発に対し、財政的支援を実施している。また、経済産業省は、厚生労働省および総務省と連携して実施する新しい医療ITプロジェクトに関する情報もインターネットに公開した。新プロジェクトでは、個人が健康情報を容易に収集・保有し、健康増進のために効果的に活用するための情報基盤を構築する。

2.eアクセシビリティ{前10文字下線あり}:日本国政府は、年齢や身体的障害に伴うデジタルディバイドを減少することが重要であることを理解している。関係府省は、国内規格の策定、国際標準化活動の促進及び適切な措置の推進に取り組んできている。日米両国政府は、アクセシビリティへのそれぞれのアプローチの理解を強化するための努力の中で、現在及び将来のeアクセシビリティ政策や活動に関する意見交換を継続していく。日米両国政府は、適宜情報交換を深めていく。

F.政府のIT調達改革{前11文字下線あり}

1.基本指針の徹底{前7文字下線あり}:2008年秋までに、内閣官房は「情報システムに係る政府調達の基本指針」(基本指針)の遵守状況及び実施状況に関する報告書を公表する。各府省の調達機関は、基本指針に基づきIT調達を実施している。総務省は、基本指針の実施についてよりよい理解を促すための実務手引書を作成・配布した。内閣官房は、毎年度、基本指針の改定を決定する際の判断に資するため、基本指針の進捗状況を把握するフォローアップ調査を行う。調査結果は内閣官房のウェブサイト上に掲載される。

2.公共とのコミュニケーションの改善{前16文字下線あり}:各府省の調達機関が遅滞なく「情報システムに係る政府調達事例データベース」(データベース)に登録することが求められる登録情報について、2009年4月1日までに、基本指針に基づき、調達計画書、調達仕様書、入札公告及び調達の実施に係る情報等の事項を含むものとするよう拡充する。日本国政府は、各府省が参照できる調達事例を蓄積し、政府のIT調達に関する指針の遵守状況を把握するため、データベースを用いる。2007年度に、総務省は、各府省から10件のIT調達に関する調達計画書の提出を受け、現在、分析を行っている。各府省は、80万SDR(1億4,000万円)を超える価格の情報システムを調達する場合には、調達計画書を作成することが求められており、日本国政府は、当該金額を超える全ての調達について、各府省が確実に調達計画書を作成することとする。データベースは、随意契約の使用状況を含むIT調達の現状を明らかにするために用いられる。

3.知的財産の所有権{前8文字下線あり}:経済産業省は、政府出資のソフトウェア開発に関する知的財産権を受託者に帰属させることを可能とした、2007年4月改正の産業技術力強化法を実施するとともに、各府省にも実施することを要請している。各府省は、自らの判断で2007年4月改正の産業技術力強化法を実施することができる。2007年8月、経済産業省は「ソフトウェアに係る日本版バイ・ドール制度に係る運用ガイドライン」を制定し、各府省に周知している。経済産業省は、知的財産権の帰属など契約に定めるべき事項をはじめとして、改正後の産業技術力強化法との適合性を高めるために利用できる情報をウェブサイトで公表している。経済産業省は、ベンダーと各府省の責務を明らかにした契約モデル条文もウェブサイトで公表している。なお、総務省が策定した「情報システムに係る政府調達の基本指針実務手引書」においては、必要なときには、経済産業省作成のガイドラインを参照すべき事が記載されている。

4.ベンダーの法的責任の制限{前14文字下線あり}:2008年度に、総務省は、政府のIT調達契約においてベンダーの法的責任が明確に定義され、適切に制限されるべきことが基本指針において求められていることについて、他の政府機関の理解に資するための活動を行う。2007年9月、総務省は、政府のIT調達契約においてベンダーの法的責任が明確に定義され、適切に制限されるべきことが基本指針において求められていることについて、他の政府機関の理解に資するため、実務手引書に契約書の記載例を追加した。

5.一般競争入札の推進{前9文字下線あり}:2007年8月10日の閣議決定により、独立行政法人は原則として一般競争入札によることとし、各法人ごとに、随意契約見直し計画を策定することとされた。日本国政府は、独立行政法人の随意契約の見直しの取組状況を取りまとめることとしている。日本国政府は、競争入札の利用に関し、基本指針について地方公共団体にも周知している。

6.遡及の除外{前5文字下線あり}:日本国政府は、基本指針における契約の遡及適用の禁止を徹底する。総務省は契約の遡及適用に関する苦情を受け付け、関係機関に連絡等を行う窓口を運営している。

Ⅲ.医療機器・医薬品{前10文字囲み線あり}

A.日本の医療制度改革{前11文字下線あり}

厚生労働省及び中央社会保険医療協議会(中医協)等の審議会が日本の保健医療制度改革を検討し実施する際には、米国業界を含む業界は、厚生労働省に対して意見を表明することができ、厚生労働省はその意見を考慮するものとする。

B.医療機器及び医薬品の価格制度の改革及び関連事項{前27文字下線あり}

2008年4月の価格制度の改正を踏まえ、日本国政府は、以下のように革新的な医療機器及び医薬品の開発について考慮する。

1.医薬品{前3文字下線あり}

a.米国業界からの意見表明の機会の促進:2007年に日本国政府は、米国業界を含む産官学の代表が、医薬分野のイノベーション及び産業の国際競争力の強化を促進する政策に係る見解を共有するため、3回の官民対話を開催した。日本国政府は、医療機器業界(米国医療機器業界を含む)を含めるために当該枠組みを拡大し、新たに拡大された「革新的創薬等のための官民対話」の第1回を2008年4月24日に開催した。官民対話は、現時点においては、年に1〜2回開催される予定である。また、厚生労働省は、引き続き中医協の薬価専門部会の委員については、国籍に関係なく適当な候補者を選出する。

b.市場拡大再算定:厚生労働省は、米国政府が、市場拡大再算定制度について強い反対を引き続き表明していることに留意する。厚生労働省は、米国業界を含む業界と、市場拡大再算定の問題について引き続き議論を行う。

c.頻回改定:厚生労働省は、中医協が保険償還価格改定の頻度の問題を議論する場合、米国業界を含む業界が、厚生労働省及び中医協に対して意見表明する機会を引き続き提供する。厚生労働省は、米国政府が、医薬品及び医療機器の保険償還価格が毎年改定されうるいかなる制度にも強い反対を表明したことに留意する。

d.適切な比較薬の使用:新薬の薬価が外国平均価格よりも低くなる場合がある状況を考慮して、厚生労働省は、原則として、薬価基準に収載されて10年以内のものであって後発品が収載されていないものを比較薬として用いることについて、2007年12月に同意した。

e.外国平均価格調整制度:イノベーションの適切な反映を確保するため、厚生労働省は、外国価格が汎用されている価格本の最新の年版に収載されていない場合には、一般に入手可能な最新の外国価格を利用する。

f.薬価制度改革:厚生労働省は、保険償還価格制度が革新的な医薬品への患者のアクセスを容易にすることを確保するため、米国業界を含む業界の意見を考慮する。厚生労働省は、特許期間中又は再審査期間中の医薬品の経済的利益を改善するよう薬価算定制度を見直す業界提案を含め、日本の薬価算定の見直しに関する提案に対する意見を表明する機会を、米国業界を含む業界に引き続き与え、厚生労働省はその意見を考慮するものとする。

g.薬価算定組織での意見表明の拡大:2008年2月に、中医協は、製薬企業が補正加算を希望しているか否かに関わらず、最初の薬価算定組織の会合で薬価についての意見を表明することができることについて同意した。

h.新薬の処方期間:厚生労働省は新薬の処方期間に関する業界側の提案について留意する。

i.医薬品の適切な使用のための処置及び検査に関する保険の適用:厚生労働省は、医学の専門家やその他関係者の意見を踏まえ、医薬品の適切な使用のために必要とされる処置及び検査の公的医療保険における適切な保険適用について引き続き考慮する。厚生労働省は、医薬品の適切な使用のために必要な処置や検査に関する米国業界を含む業界の見解について議論する用意がある。

2.医療機器{前4文字下線あり}

a.機能区分:2008年の保険医療材料制度改革において、厚生労働省は、臨床上の利用実態等を踏まえた製品差を反映し、既存の機能区分の精緻化と新しい機能区分の追加を行った。2008年4月、供給が著しく困難な医療材料における機能区分については償還価格の引き上げも可能とすることとした。厚生労働省は、機能区分について米国業界を含む業界からの提案について議論する用意がある。

b.医療機器の外国平均価格参照制度:厚生労働省は、FAPルールが内外価格差を縮小したと認識している。2008年の保険医療材料価格制度改定において、厚生労働省は、業界が提出した比較国4カ国のデータのみを使用し、最大価格引き下げ上限を25%に維持し、該当性を検討する機能区分を減らして、段階的に価格引き下げを行った。厚生労働省は米国業界を含む業界に対して、外国平均価格参照制度が適用される機能区分の数、最大価格引き下げ制度や価格計算に用いるデータ等、外国平均価格参照制度における構成要素に関する意見を表明する機会を提供する。厚生労働省は米国政府が将来FAPルールをさらに厳格に適用すべきではないという見解を表明したことに留意する。

c.材料価格:厚生労働省は米国業界を含む業界に対して、日本における医療機器価格制度改革に関する提案について意見表明する機会を引き続き提供する。

d.イノベーションの評価:2008年の保険医療材料制度改革において、新規及び改良型医療材料の開発や実用化に対するインセンティブを高めるために、厚生労働省は補正加算を見直し、有用性加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)を統合し、新たに改良加算を設けた。

2008年の保険医療材料制度改革において、厚生労働省は、医療材料の有用性を評価するために二つの新しい方法を創設した。その結果、他の製品と比較して低侵襲である医療材料や成人用の製品より小型化、軽量化された小児用医療材料は有用性を評価されることとなった。厚生労働省は、画期性加算については加算率の下限を40%から50%に引き上げた。厚生労働省は革新性の評価について米国業界を含む業界からの提案について議論する用意がある。

e.C1及びC2の価格算定:2006年の保険医療材料制度改革以降、患者の医療機器への迅速なアクセスを促進するため、C2区分の保険収載時期を年4回とした。2008年(保険医療材料制度改革においては、)C1区分と分類された医療機器について「保険適用開始月の3ヶ月前の末日までに決定されたものに限る」、とされていたものを「保険適用開始月の1月前の末日までに分類されたものに限る」と大幅に短縮した。加えて、2008年の保険医療材料制度改革以来、製造販売業者は、その意見を、医療機器の機能区分案が決定される前に表明できることとした。従前は保険医療材料専門組織において、製造販売業者はその意見を機能区分案の決定後にしか表明できなかった。厚生労働省はC1及びC2の価格算定について米国業界を含む業界の提案について議論する用意がある。

f.体外診断薬:2007年に厚生労働省は体外診断薬に関する問題について米国業界を含む業界と勉強会を開催し、2008年の医療機器価格改定において勉強会での提案のいくつかを取り上げた。2008年の診療報酬改定において、日本国政府は病院における外来迅速検体検査の技術料及びその他の検査料を引き上げた。厚生労働省は、引き続き米国業界を含む業界に対して意見を表明する機会を提供する。

g.画像診断装置:2008年の診療報酬改定において、中医協は冠動脈CTと心臓MRIについて加算を設けることを決定した。厚生労働省は画像診断に係る先進的な装置及び技術について引き続き適切に評価する。

3.血液製剤{前4文字下線あり}:厚生労働省は、米国業界を含む業界と血液製剤に関連した償還価格の問題について引き続き議論する用意がある。

C.医療機器及び医薬品の制度及び関連事項{前22文字下線あり}

日本国政府は革新的な医療機器及び医薬品の日本への導入の遅れを解消するために努力している。日本国政府は2008年度中に以下の措置を講じることにより、規制制度を改善する。

1.医薬品{前3文字下線あり}

a.医薬品の世界同時開発の推進:医薬品の世界同時開発を促進するため、厚生労働省はガイドライン「国際共同治験に関する基本的考え方について」を2007年9月に通知するとともに、治験を実施する環境を改善するための努力を行ってきている。日本国政府はドラッグラグを解消するための手段として、医薬品の世界同時開発を支持する。厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(総合機構)は世界同時開発への日本の参加を促進するために、米国業界を含む関係者と引き続き意見交換する。

b.治験の改善:2007年4月より実施している「新たな治験活性化5カ年計画」に基づき、厚生労働省は10カ所の中核病院と30カ所の拠点医療機関を選定するなど、治験を推進し、実施する体制の強化を図るための方策を講じているところである。さらに、厚生労働省は、治験の円滑な実施を確保するため、治験審査委員会についての規定を含め、GCPについての省令を改正した。総合機構は新薬についての治験相談を2007年度の約280回から年間約420回へ増加させる計画である。

c.民族的要因についての研究班に関する業界との協力:国立医薬品食品衛生研究所は、日中韓の臨床データにおける民族的要因を評価するための研究班の委員に米国業界を含む業界からの専門家を任命した。厚生労働省は、通常の治験で業界が取得する適当な臨床データを提出するよう米国業界を含む業界に奨励する。

d.手数料とパフォーマンスについての業界との対話の継続:総合機構と厚生労働省は、米国業界を含む業界と、手数料並びに治験相談、審査及び承認の実施について、引き続き意見交換する。総合機構は審査と治験相談のパフォーマンスについてのデータを米国業界を含む業界に引き続き提供する。

e.医薬品審査担当者の増員:厚生労働省は総合機構が2010年3月31日までに236人の医薬品審査担当者を増員する計画を実施すること並びに総合機構が医薬品の承認審査及び治験相談を実施する体制を改善するために一層努力することを確保する。2008年5月1日現在、総合機構には276人の医薬品と医療機器の審査担当者がいるが、前年比では医薬品審査担当者63人、医療機器審査担当者7人の計70人の増員となっている。2008年5月1日現在、総合機構には241人の医薬品審査担当者がいる。2008年4月1日現在で総合機構の審査担当者のうち、22名が医師、10名が生物統計担当職員である。厚生労働省は、総合機構が臨床経験のある医師、生物統計家の雇い入れを増やすことで、その専門性を広げることを奨励する。2007年10月より、総合機構は業界から新しく採用された審査担当者が、総合機構への採用前5年以内に在職した企業に関連する案件を除き、採用直後から全ての業務に従事できるようにした。2008年2月1日現在、総合機構には16人の製薬企業出身職員がいる。

f.未承認薬使用問題検討会議について:厚生労働省は米国業界及び米国政府に対し未承認薬使用問題検討会議の運営について説明した。

g.承認後変更の審査期間短縮:厚生労働省と総合機構は、製造変更を含む一部変更に係る審査時間を短縮することについて、米国業界を含む業界と意見交換する。厚生労働省と総合機構は、承認後の変更に関連するものを含め、総合機構の審査業務を引き続き改善する。

h.厚生労働省の承認処理時間の短縮:厚生労働省は、最終的な承認を与えるまでの新薬申請処理時間を短縮することについて、米国業界を含む業界と意見交換する。

i.ワクチン審査の改善と推進:厚生労働省はワクチンのガイドラインを作成し、ワクチン使用を推進するため、勉強会を設置した。日本国政府は米国業界を含む業界と、ワクチン審査の改善について引き続き意見交換する。

2.医療機器{前4文字下線あり}

a.審査と承認に関する作業部会:厚生労働省、総合機構及び米国業界を含む業界は、例えば加速安定性試験データの利用、一部変更承認申請や軽微変更届出が必要な事例の明確化、また、一部変更承認審査中の一部変更承認申請を可能とすることの可能性を含む、諸事項に関して議論する実務レベルの作業部会を設置した。厚生労働省と業界は、審査と承認の合理化及びデバイスラグの軽減のため、原材料の安全性と生物学的適合性を確保するための情報に関する要望について議論を継続する。厚生労働省は2007年9月に軽微変更の事例に関する通知を発出した。厚生労働省は業界に対して、簡易な変更に当たって承認が必要な場合と企業による届出で足りる場合について明確にする。厚生労働省と総合機構は米国食品医薬品庁が採用しているリアルタイム審査手続きが、事前審査や承認が必要となる変更のうちの一部に使用できるかどうか検討している。

b.総合機構のパフォーマンス目標:厚生労働省は、米国業界を含む業界に対し、総合機構の審査期間を着実に改善するためのパフォーマンス目標及びユーザーフィーに関する事項を含め、次期中期計画に関する意見を申し入れる有意義な機会を継続して提供する。総合機構は、米国業界を含む業界が総合機構の業績を評価することを可能にする情報の公開を継続する。総合機構は2008年4月に医療機器審査担当者を35人に増員した。

c.加速安定性試験データ:厚生労働省は、科学的な証拠により妥当とされた加速試験方法による、医療機器の承認のための加速安定性試験データに関する通知を発出する考えである。その通知には、そのようなデータの適切な利用の事例が含まれる。

d.業務機密情報の保護:厚生労働省は、新医療機器の申請書の添付資料概要が承認後に厚生労働省により公表される際は、企業の業務機密情報が保護されることを確保する。総合機構は、米国業界を含む業界と相談しつつ、業務機密情報の公開の取扱いに関するガイダンスを作成している。

e.原材料のデータ要求:2007年度に政府と業界の作業部会が、審査と承認の合理化のため、日本の医療機器の原材料のデータ要求に関する議論を開始した。厚生労働省は、安全性に十分配慮した上で、原材料要求のさらなる合理化のために米国業界を含む業界と継続して協働する。

f.外国製造業者認定:厚生労働省と総合機構は、速やかな処理を目差し、企業が有効な申請を行うことを促すため、和文及び英文で、外国製造業者認定の申請に関する企業への説明文書を公表した。厚生労働省は米国業界を含む業界と外国製造業者認定に関する企業の懸念と提案に関して議論する。

g.製造所の調査プログラムの効率化:総合機構による製造所の調査プログラムの効率を改善するため、総合機構と厚生労働省は、QMS適合性調査の合理化に向けて米国業界を含む業界に意見を求める予定である。

h.体外診断用医薬品の承認:2007年度に厚生労働省、総合機構及び米国業界を含む業界は、体外診断用医薬品の有効期間の設定や規制への取組に関する事項を含む、体外診断用医薬品についての意見交換を行う実務レベルの作業部会を設置した。

D.血液製剤{前6文字下線あり}

1.厚生労働省は、年2回の話し合いの場を通じて、米国業界を含む業界に対し、需給計画、「献血」及び「非献血」表示要求並びに血液製剤のその他の規制項目について話し合う有意義な機会を引き続き提供する。

2.一部変更承認の迅速化:厚生労働省と総合機構は、血液製剤の一部変更申請の審査時間を短縮することについて、米国業界を含む業界と意見交換する。

E.一般用(OTC)医薬品{前13文字下線あり}

医薬品販売制度改正に関して、厚生労働省は、2007年4月に一般用医薬品のリスク分類の告示を行った。厚生労働省は、2009年6月までに表示内容等を含む他の一般用医薬品販売制度に関する省令を策定・改正し、施行する。厚生労働省は、制度の策定・実施その他の問題について、米国業界を含む関係者と意見交換を行う。

F.栄養補助食品{前8文字下線あり}

1.規制分類と表示{前7文字下線あり}

a.日本の栄養補助食品制度は、CODEX委員会の栄養・特殊用途食品部会(CCNFSDU)によって策定されたガイドラインの考え方に従い設定され、国民の実際の栄養摂取量を勘案して決定されている。厚生労働省はCCNFSDUでの検討結果を踏まえ、引き続き保健機能食品制度の改善に努める。厚生労働省は栄養補助食品の新たな規制分類に関して米国議会及び業界の関心が高まっていることについて認識している。厚生労働省は米国業界を含む業界と、透明かつ科学的な原則に基づいた健康強調表示制度に関して相互の立場についての意見交換を継続していく。

b.厚生労働省は米国業界を含む業界に対して情報提供のための適切な機会を提供することを継続し、栄養補助食品に関連する規則の策定や見直しの際にはCODEX委員会によって策定されたガイドラインを勘案する。厚生労働省はCODEX委員会の栄養・特殊用途食品部会(CCNFSDU)での検討状況に基づき、引き続き特定保健用食品制度の改善に努める。

c.厚生労働省は市場開放苦情処理体制(OTO)の勧告に基づき、国立健康栄養研究所データベースから的確な情報を消費者に対して提供するシステムを2008年度中の早期に構築するため、引き続き業界と協働していく。

2.健康食品安全規制{前8文字下線あり}

a.2007年6月に、厚生労働省は健康食品の安全性を確保するための検討会を立ち上げ、米国業界を含む利害関係者に情報提供するための機会を提供した。

b.公平性かつ透明性確保のため、厚生労働省は健康食品に関する安全規則の策定・改定・施行の際には米国業界を含む業界へ情報提供するための適切な機会を引き続き提供していく。

c.厚生労働省は、検疫所での事前相談を通じて、新しい原料が食品原料、医薬品又は食品添加物として指定される手続きを明確にする。厚生労働省は、業界団体と意見交換を行い、新しい原料の申請手続や分類基準について照会をするための機会を引き続き提供していく。

3.食品添加物{前5文字下線あり}

a.日本国政府は、可能な限り最も効率的な方法で、食品添加物の指定を行うよう引き続き努力する。

b.日本国政府は、食品添加物分野における国際的調和の重要性を認識している。(51ページ参照「Ⅷ.その他の政府慣行:G.3.食品添加物」)

c.厚生労働省は、安息香酸やソルビン酸といった天然物由来の物質が食品添加物として分類されたため、貨物が検疫所に停留させられることの手続きを引き続き改善する。その改善段階においては、検疫所職員の訓練の強化や、食品に関してこれら天然由来の物質が食品の中に生起することの調査研究・事例を職員及び輸入者が参照できる中央集約的なデータベースの整備を含む。また厚生労働省はこの問題に対して体系的に取り組んでいくための提案を検討していく。

d.厚生労働省は、必要かつ適切と考えられる場合には、追加情報の要請について引き続き文書で提供していく。事業者が検疫所において問題を解決できない場合には、事業者はその支援を得るために厚生労働省の関連部署に連絡をとることがある。

4.輸入問題{前4文字下線あり}

a.厚生労働省は、文書及び情報の共有化を改善することによって、検疫所における手続きの効率化を促進している。

b.厚生労働省は、事前相談における指導の一貫性を確保するよう努めている。厚生労働省は、事業者が事前相談の内容について照会を求めた際には、事業者が事前相談を行った日時と相談した検疫所についての情報を検疫所に提供さえすればよいということを約束する。事業者が要望した場合には、検疫所は、日時及び検疫所の名称とともに事前相談の際に受け取る説明書に押印をする。

c.原則として、検疫所に提出される食品の輸出届出書に含まれる情報に関しては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき、公衆に対して公にならない。厚生労働省は、検疫所が、輸入者に対して情報を要求する目的を説明する。検疫所は食品衛生の観点から必要最小限の情報のみを輸入者に対して求め、厚生労働省は今後も検疫所間における実施の一貫性を確保するよう努める。厚生労働省は、すべての原料を正確かつ包括的に公開することや資料を要求しないよう確保する。

d.ビタミンを基にしたほとんどの栄養補助食品は、12.5%の関税を課されるHSコード「2106.90.295」に分類され、ミネラルなどの他の多くの栄養補助食品は、15%の関税を課されるHSコード「2106.90.299」に分類される。対照的に、これらの成分が関税区分「3003」や「3004」の下で医薬品として輸入される場合には、無税となる。日本国政府は、医薬品と同じ成分を有する栄養補助食品類を含む関税水準の問題について、WTO交渉において引き続き、包括的に対応する。日本国政府は、この問題について、米国政府と引き続き議論していく。

G.化粧品及び医薬部外品{前13文字下線あり}

1.医薬部外品{前5文字下線あり}

a.薬用化粧品中に含まれる有効成分リスト(含量及び製品カテゴリー)の公表について、厚生労働省は米国業界を含む業界から提供された情報を精査した後、2008年末までにリストを公表する。

b.2008年3月、厚生労働省は医薬部外品添加物リストを公表した(薬食審査発第0327004号)。本リストは厚生労働省のウェブサイトで入手可能である。厚生労働省は、医薬部外品承認申請における添加物の評価も含め、医薬部外品の規制について、米国業界を含む業界と引き続き意見交換する。

c.米国業界を含む業界が、新たな承認基準を提案した際には、厚生労働省は注意深く検討する。

2.広告及び表示{前6文字下線あり}

a.厚生労働省は、化粧品の効能の拡大に関する表記も含め、化粧品の効能についての表記について、米国業界を含む関係者と引き続き意見交換を行う。

b.厚生労働省は、業界が提案する「乾燥による小じわを目立たなくする」という標榜を現行の規範内において受け入れることの可能性について引き続き意見交換をする。そして、結論が出た後、厚生労働省は、時宜を得た方法で、業界及び地方公共団体にその結果を伝達する。

c.厚生労働省は、数値を用いた広告を認める業界の自主基準の作成について、米国業界を含む業界との意見交換を継続する。

3.他の透明性及び規制手続{前11文字下線あり}

a.厚生労働省は、全国医薬品等広告監視協議会(六者協)に関して、例えば、その会議の終了後や、六者協の際に開催される業界主催のイベントにおいて、業界団体に意見交換の機会を提供するなど、米国業界を含む業界と意見交換を行うとともに透明性を高めるための取組を継続する。

b.厚生労働省は、米国業界を含む関係者からの意見と要望を考慮して改訂した生理処理用品基準を2008年4月に施行した。

c.厚生労働省は、2009年末までに化粧品の輸入手続きを合理化する方策を考案すべく米国業界を含む業界と協働する。

d.厚生労働省は、リソースの制約の範囲で可能な限り、規制や通知の遅滞のない公表に関し、そのウェブサイトを引き続き改善する。

Ⅳ.金融サービス{前8文字囲み線あり}

A.総論{前4文字下線あり}

 日米両国政府は、競争力の強い金融・資本市場は持続的な経済成長、効率的な資本配分、雇用創出及び改革に寄与する重要な要素であることに同意する。金融庁は「金融・資本市場競争力強化プラン」を2007年12月21日に公表し、米国は金融商品取引法等の一部を改正する法律の成立を含む、このプランに基づく当初の措置を歓迎する。また、2008年4月、内閣官房都市再生本部は、内閣官房の計画に盛り込まれた取組を実施する役割を担う「国際金融センター拠点フォーラム」の設立を含む、「国際金融拠点機能強化プラン」を発表した。米国は日本国政府の金融・資本市場の競争力と魅力を向上する取組を歓迎し、すべての関係者との意見交換の継続を勧める。

B.特定措置{前6文字下線あり}

1.信用情報機関{前6文字下線あり}:改正貸金業法は、消費者金融会社による信用情報利用の拡大や信用情報機関の強制的な使用を求めている。様々な消費者金融会社の信用情報機関を通じて、金融庁は、消費者保護や金融システムの安定を目指し、消費者金融会社の厳格で精緻な根拠に基づいたリスク評価と健全な信用引き受けの促進のため、完全な信用情報が利用可能となるように取り組んでいる。銀行等の金融機関や信販を含めた信用情報機関のあり方を検討するに当たり、金融庁はまずは今回の法改正後の多重債務問題の動向を注視していく。

2.ファイアーウォール規制{前11文字下線あり}:銀行と証券の間のファイアーウォール規制については、金融審議会における議論や外国金融機関を含む市場関係者からの意見聴取等を踏まえ、金融庁が昨年末に公表した「金融・資本市場競争力強化プラン」において、利益相反管理のための体制整備を求めた上で、役職員の兼職制限の撤廃や法人顧客に係る非公開情報の授受の制限の緩和を行うこととしている。このため、関連法案を本年3月に提出し、当該法案は6月に成立した。規制の細則については、今後の政令・内閣府令の策定に向けた作業の中で明確化を図ることとしている。その際には、ファイアーウォール規制について、外国金融機関を含む市場関係者との対話の継続に引き続き努める。

3.金融コングロマリットの規制{前14文字下線あり}:金融コングロマリットの経営構造やグループ企業間の情報の共有については、2007年12月に「金融・資本市場競争力強化プラン」が公表されたが、同プランには、銀行・証券間の非公開情報の授受に係る制限の緩和や、役職員の兼職規制の撤廃等、いわゆる「ファイアーウォール」の見直しを目的とした複数の措置が打ち出されているところ。金融庁は、同プランの策定過程において、外国金融機関を含む利害関係者との意見交換を緊密に行ってきたところであり、今後とも、金融コングロマリットの監督指針の改正作業や、その実施にあたり、これらの利害関係者との意見交換を継続する。

4.確定拠出年金{前6文字下線あり}

a.日本国政府は、老後の所得保障、労働流動性の促進、投資教育、退職後の設計をあらためて重要視する観点から、日本の確定拠出年金制度の重要性を認識している。

b.厚生労働省の企業年金研究会において現在の企業年金の検証が行われ、確定拠出年金制度を改善するために、2007年7月に「企業年金制度の施行状況の検証結果」が報告された。その報告書には、拠出限度額の控除、マッチング拠出の導入の容認、現在の拠出限度額の検討、中途引き出しの要件の検討、公務員の確定拠出年金制度への加入に関すること、投資助言の提供が盛り込まれている。

c.経済財政諮問会議の臨時議員や民間議員は、確定拠出年金制度の改善を提案し、次の点の改善を要求している。マッチング拠出の容認、公務員、主婦及び企業年金のない企業の従業員を含む加入対象者の拡大、確定拠出年金制度のポータビリティーの改善、加入上限年齢及び加入期間の制限の緩和、確定拠出年金制度に係る税制の検討が挙げられている。

 さらに、2008年6月10日に経済諮問会議は、マッチング拠出の導入等について検討し、その結論を2008年中に得るという提案を含む経済成長戦略を公表した。

d.2007年の通常国会において、被用者年金制度の一元化等を図るための改正法律案を提出し、その中において、確定拠出年金法の改正事項として、個人型確定拠出年金の中途脱退要件の緩和等を盛り込んでおり、現在継続審議中である。

e.厚生労働省は、これまでに導入された様々な制度や規制の施行の進展に十分配慮しつつ、関係者と協議を行いながら、税制の問題に関する確定拠出年金制度の改善に向けて引き続き努力を行っていく。

5.投資顧問サービスと投資信託の規制の枠組みの調和{前24文字下線あり}:金融商品取引法では、投資助言業務、投資一任業務及び投資信託に関する業務を行う者を金融商品取引業者とし、行う業務によって異なる登録要件が適用されるものの、基本的には同一の規制が適用されることとなった。また、監督当局の管轄を整理することによって、投資運用業を行う者については金融庁の管轄となった。金融商品取引法以前は、日本証券投資顧問業協会と投資信託協会は異なる法律に基づく自主規制機関であった。金融商品取引法では両協会とも金融商品取引業協会と位置付けられており、法律上は自主規制機関とされているが、実際に両協会が統合するか否かは、各協会によって自主的に判断されるべきことである。

6.投資信託の併合及び償還{前12文字下線あり}:投資信託の併合については、2007年9月に施行された「信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」により可能となった。投資信託の併合及び繰上げ償還を含む投資信託の解約については、「投資信託及び投資法人に関する法律」にその手続きが定められており、受益者の権利内容に重大な影響を与えるものであることを考慮し、受益者の半数以上かつ議決権の3分の2以上の賛成を得ることや反対する受益者が受託者に対して受益権の買取りを請求できること等の異議手続きを履行することを前提として認められている。

7.ファンドの純資産価値の算定における重大性の基準{前24文字下線あり}:現在の重大性基準については、既に個別の基準を設けている投信会社も相当数存在している。重大性基準を設けるか否かは最終的には、各投信会社が各自の判断による。一方、基準価額の算定過誤が生じる原因は様々であり、重大性基準の内容については投信会社の善管注意義務、忠実義務等の法令との関係について整理する必要があることから、現在、投資信託協会において、重大性基準のあり方について実務者による検討が行われている。

8.大量保有に係る機関投資家の開示ルール{前18文字下線あり}:大量保有報告制度の特例報告については、2006年にその見直しが行われ、2007年1月より新制度が施行された。金融庁は、株式の大量保有等の取引にかかる実務の動向等を注視してきたところであり、今後も、関係者の意見等を踏まえつつ、状況を注視していく。

9.グローバルカストディ{前13文字下線あり}:グローバルカストディ業務は金融商品取引法、社債等の振替に関する法律、銀行法において以下のように規定されている。

a.有価証券の保護預かりや決済については、金融商品取引法に基づき内閣総理大臣の登録を受ければ行うことができる。当該有価証券がペーパーレス化されたものである場合には、社債等の振替に関する法律に基づき内閣総理大臣、法務大臣、財務大臣に届出をすれば行うことができる。

b.保管する有価証券に係る利金等の授受、保管有価証券の貸付け、保管有価証券に係る権利行使等の業務については、法令上特段の規制が設けられていない。

c.なお、現行の制度下では、銀行(邦銀・外国銀行支店)は、外国銀行の業務の代理又は媒介として有価証券の保護預り、顧客からの指図に基づく有価証券の取引に関する決済、当該保管している有価証券に係る利金等の授受、指図に基づく当該保管している有価証券の第三者への貸付け若しくは当該保管している有価証券の指図に基づく権利の行使を行うことはできない。

 また、2008年6月に可決された金融商品取引法等の一部改正法における銀行法の一部改正において、銀行が当該銀行の子会社等たる外国銀行の営むこれら業務の代理又は媒介を行うことを可能とする措置を講じることとしている。このような規定に基づき、金融庁及び米国政府はグローバルカストディ業務に関する規制枠組みについて議論を行った。金融庁としては、我が国の法規制に対する理解を共有するため、関係者との対話に引き続き努める。

C.透明性{前5文字下線あり}

1.ノーアクションレター制度及び一般法令照会制度{前23文字下線あり}:金融庁は、2007年7月に「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」を改正した。改正後のノーアクションレター制度について、記者レクや金融庁広報誌に掲載するなど積極的な周知活動を行っている。2007年7月の制度改正後、2件の回答を行ったが、回答までの平均日数は16日であった。また、ノーアクションレター制度を補完するものとして、一般法令照会制度を導入した。2005年4月から一般法令照会制度が導入されて以来、同制度を利用して2007年に1件回答を行った。金融庁としては、ノーアクションレター制度及び一般法令照会制度の一層の活用に向けた努力を引き続き行っていく。

2.検査過程の透明性{前8文字下線あり}:金融庁(検査局)及び証券取引等監視委員会事務局(以下「監視委員会」という)では、検査過程の透明性の向上のための取組を行ってきた。金融庁では『金融検査に関する基本指針』や、『検査マニュアル』を公表しているほか、『検査基本方針及び検査基本計画』や、『金融検査指摘事例集』、『意見申出事例集』を作成・公表してきた。同様に、監視委員会は『証券検査に関する基本指針』や、『金融商品取引業者等検査マニュアル』を公表しているほか、『証券検査基本方針及び証券検査基本計画』を毎年、『金融商品取引業者等に対する検査の結果指摘した事項のうち主なもの』を四半期ごとに公表してきた。

 また、金融庁では、検査局バックオフィスの幹部が検査官を同席させずに被検査機関から意見を直接聴取する『オンサイト検査モニター』を通じ、被検査機関と意見交換を行う機会を設けており、以前希望制だった『オンサイト検査モニター』は、2007年7月より原則全件実施に改められた。また、検査結果の通知の前後に書面で被検査機関の意見を受け付ける『オフサイト検査モニター』を通じて、被検査機関の意見を聴取する機会を設けている。さらに、検査官と被検査機関が十分な議論を尽くした上でも認識が相違した場合には、被検査機関が意見を申し出ることのできる制度である『意見申出制度』を導入している。同様に、監視委員会においても、バックオフィスの幹部が検査官を同席させずに被検査機関から意見を直接聴取する『オンサイト検査モニター(意見聴取)』を通じ、被検査機関と意見交換を行う機会を設けているほか、検査終了後1か月間の間、書面で被検査機関の意見を受け付ける『オフサイト検査モニター(意見受付)』を通じて、被検査機関の意見を聴取する機会を設けている。また、検査によって確認された事項について、検査官と被検査機関が十分な議論を尽くした上でも認識が相違した場合に被検査機関が監視委員会に意見を申し出ることのできる『意見申出制度』を実施している。金融庁及び監視委員会は、これまでも、検査の透明性を確保するため、上記の措置を含む所要の制度整備を実施してきたところであり、今後ともベター・レギュレーションの推進に向け、引き続き制度の適切な執行・運営を図っていく。金融庁は、検査プロセスが金融機関やマーケットにとって重要な関心事項であることを認識し、引き続き、外資系金融機関や業界団体と様々なレベル・形態で対話の機会を持っていく。監視委員会においても、引き続き市場動向及び(または)検査プロセスを通じて認識した問題について、内外の金融機関やその業界団体と議論する機会を持っていく。金融庁及び監視委員会は引き続き金融業界及び業界団体とのオープンな意見交換を実施していく。

3.金融・資本市場競争力強化プラン実施に際する透明性の確保{前28文字下線あり}:金融庁は、「金融・資本市場競争力強化プラン」やその関連法案の策定過程において、外国金融機関を含む市場関係者との頻繁な意見交換を通じて提供された情報や意見を活用してきたところであり、同プランの目的達成のために、引き続き市場関係者との対話の継続に努める。

Ⅴ.競争政策{前6文字囲み線あり}

A.独占禁止法の遵守及び抑止力の改善{前19文字下線あり}

1.独占禁止法の執行及び抑止力の強化{前17文字下線あり}

a.日本国政府は、2008年3月、独占禁止法改正法案を国会に提出した。当該法案は、不当な取引制限において主導的な役割を果たした事業者に対し、課徴金算定率を従来の5割増(例えば、主導的な役割を果たした大規模製造業者に対する課徴金算定率の10%から15%への引上げ)とすること、また、排除措置命令及び課徴金納付命令の双方の除斥期間を、それぞれ3年から5年に引き延ばすことを盛り込んでいる。

b.独占禁止法改正法案は、カルテル及び談合行為に関与した事業者に対する刑事罰と行政処分の併科を認める現行システムを維持している。

2.課徴金減免制度の活用{前10文字下線あり}

a.公正取引委員会は、課徴金減免制度について事業者の積極的な利用を促進するとともに、以下のとおり同制度を積極的に活用している。2007年度において、公正取引委員会は、74件の課徴金減免申請を受理した。これにより、課徴金減免制度が導入されてからの申請件数は約180件となった。公正取引委員会は、2006年1月以降において事業者が課徴金減免申請を行った事件のうち、2008年2月のマリンホースに係る国際カルテルに対する措置を含め、22件において法的措置を採った。

b.独占禁止法改正法案には、同一企業グループ内の複数の事業者が一定の要件を満たす場合に、これらの者による課徴金減免の共同申請を認め、共同申請者に同一の順位を割り当てることが盛り込まれている。

c.独占禁止法改正法案には、課徴金減免制度の適用対象事業者数を現在の3社から5社まで拡大し、3番目から5番目の申請者は30%の課徴金減額を受けることが盛り込まれている。他方、公正取引委員会による立入検査前のできるだけ早期に申請しようとする事業者のインセンティブを確保するため、調査開始日以降の申請は最大で3社までに限定し、また、1番目の申請者(課徴金の全額免除)と2番目以降の申請者が受ける恩恵との間に、引き続き大きな差を設ける。

3.刑事執行による抑止力の強化{前13文字下線あり}

a.公正取引委員会は、「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」に基づき、独占禁止法の刑事規定に違反する疑いのある事件の調査に対して、また、独占禁止法に違反する悪質かつ重大なカルテル事件に関与した企業及び個人に対する刑事告発に対して、引き続き、高い優先度を与える。

b.検察庁は、公正取引委員会が刑事告発を行う事件について、引き続き、適切に処理を行う。

4.競争促進的単独行為に対する意図しない抑止の最小限化{前25文字下線あり}

a.独占禁止法改正法案は、排除型私的独占、優越的地位の濫用、及び一定の共同の取引拒絶・差別対価・不当廉売・再販売価格の拘束を行った事業者を課徴金の対象としている。公正取引委員会は、このような課徴金制度の対象範囲の拡大により、適法な事業活動が萎縮することを避けるため、法運用の透明性・予見可能性を確保することが重要であると考えている。このような観点から、独占禁止法改正法案は、課徴金の対象となる共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束及び優越的地位の濫用について、違反となる具体的な要件を明確化している。

b.加えて、公正取引委員会は、改正法が施行される前に、課徴金の対象となる排除型私的独占に該当する行為を明確化するため、ガイドラインを公表することとしている。公正取引委員会は、ガイドラインを取りまとめるに当たって、ガイドライン案を公表し、パブリック・コメントを求め、これらのコメントを考慮する。

5.独禁法の適用除外の見直し{前12文字下線あり}

a.2007年12月5日、公正取引委員会は、国際航空分野における独占禁止法の適用除外を維持するための合理的な理由を説明することは困難であるとした、政府規制等と競争政策に関する研究会の報告書を公表した。

b.2008年3月25日、日本国政府は、国土交通省が、国際航空における航空会社間の運輸協定に関する独占禁止法の適用除外制度について、2008年中に検討を開始することを決定した。

c.国際海運分野における独禁法適用除外制度が引き続き必要か否かについて、2007年、交通政策審議会海事分科会国際海上輸送部会の中で検討を行い、慎重な検討の結果、同年12月、競争的な市場を確保する観点も踏まえ、安定的な国際海上輸送確保の観点から、更に専門的な検討を行う必要がある、との答申が提出されたところである。国土交通省としては、当該答申で示された4つの検討の視点(各国の動きと我が国に与える影響、市場の変化、船社の巨大化の進展等、船社間協定は安定的なサービス提供のために機能しているか、我が国経済に与える影響)を踏まえ、今後、さらに検討を行う予定である。

6.独占禁止法遵守に向けた指針の提供{前16文字下線あり}

a.2007年9月28日、公正取引委員会は、知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針を公表した。

b.前述のとおり、独占禁止法改正法が施行される前に、公正取引委員会は、排除型独占禁止法に該当し得る行為類型に関するガイドラインを公表する。

7.企業結合の事前届出手続の改善{前14文字下線あり}:独占禁止法改正法案は、会社の株式取得について、合併等の他の企業結合と同様に事前届出制を導入することを規定している。また、同法案は、企業結合に係る届出基準を、原則として企業結合集団の国内売上高の合計額とすること等を盛り込んでいる。この改正については、国際競争ネットワークの「企業結合の届出・審査手続についての行動規範」及びOECDの「合併審査に関する理事会勧告」と整合的なものとなっている。

8.公取委の職員及び資源の強化{前14文字下線あり}:公正取引委員会は、人員と予算を着実に増やしている。公正取引委員会事務総局の人員は、2009年3月末には、合計795名となる予定で、2008年3月末に比べ、30名の増員となっている。公正取引委員会は、今後も引き続き、研修や実務経験の蓄積等を通じて職員の審査能力及び経済分析能力の向上を図り、適切な形で体制強化を図る。

B.公正取引委員会の行政及び審査手続の公平性及び透明性の確保{前32文字下線あり}

1.現行の審判制度の見直し{前11文字下線あり}:日本国政府は、公正取引委員会の審判制度に対する国民の信頼及び透明性を促進することとしている。これに関して、

a.独占禁止法改正法案の附則は、公正取引委員会の調査及び執行手続における対象者が独占禁止法の目的の実現に矛盾しない形で手続上の公正性を与えられることを確保する観点から、日本国政府が、現行の事後審査型審判制度について、全面にわたって見直しをするものとし、2008年度中に検討を行う旨規定している。諸外国の産業界、法曹界からの意見を含め、提出されるすべての関係者の意見が検討される。日本国政府は、その検討結果に基づいて、実務的に可能な限り速やかに、所要の措置を講ずる。

b.2008年5月20日に経済財政諮問会議に提出された対日投資有識者会議の報告書は、外国からの直接投資を「飛躍的に増大」させるため、日本国政府による強力な措置を求めている。当該報告書は、その中の一つとして、公正取引委員会の審判手続について、中立公正性を確保する観点から全面的に見直し、また、独占禁止法に基づく審査の適正手続の在り方について、国際的水準との調和、国内の他の制度との整合性、我が国と諸外国との司法制度の在り方の相違等に留意しつつ、検討することを提言している。

2.公正取引委員会の手続に対する国民の信頼及び透明性の向上{前28文字下線あり}:公正取引委員会は、同委員会の審査及び審判手続に対する国民の信頼及び透明性を促進することとしている。これに関して、

a.公正取引委員会は、排除措置命令又は課徴金納付命令の名あて人となるべき者に対して、最終的な決定を行う前において、排除措置命令又は課徴金納付命令の名あて人が、同委員会が使用しようとしている証拠を検討し、同委員会に対して意見を述べ、及び証拠を提出することができる期間として、同委員会が書面により排除措置命令又は課徴金納付命令の内容を当該名あて人に通知してから原則として2週間程度を与えることとしている。しかしながら、同委員会は、事前説明に要する期間といった要素も考慮しつつ、事前通知から回答までの期間を事案ごとに適切に設定してきている。また、公正取引委員会は、職権又は申立てにより期限を延長することができる旨規定している公正取引委員会の審査に関する規則に基づき、正当な理由がある場合には、当該期間の延長を行ってきており、引き続き、当該場合には期間の延長を行う。

b.現在、公正取引委員会の審判官7名中4名が公正取引委員会の元からの職員ではない法曹資格者である。また、公正取引委員会は、個々の審判に対する審判官の合議体には、少なくとも1名の当該法曹資格者を含むようにしている。公正取引委員会は、審判官の合議体に少なくとも1名の当該法曹資格者を含むことを規定するため、公正取引委員会の審判に関する規則を改正する。

c.独占禁止法は、審判事件について、当該事件の審査官であった者その他当該事件の審査に関与したことのある者を、その審判官に指定できない旨規定している。当該規定に加えて、公正取引委員会は、審判手続の公正性及び透明性を一層確保する観点から、特定の事件において、公正な審判手続を妨げるおそれがある利益相反を有する者が審判官を務めることを回避するための規定を設けるため、公正取引委員会の審判に関する規則を改正する。

d.公正取引委員会は、警告の発出やその名あて人の名称を公表する際の公正性を確保する手続を含め、警告の発出に関する手続について公正取引委員会の審査に関する規則に規定する。

3.弁護士と依頼者間のやりとりの秘密性{前17文字下線あり}:公正取引委員会は、弁護士とその依頼者との間におけるやり取りであって、当該依頼者から求められた法的助言の提供に関するやり取りを含んだ書類について、原則として弁護士とその依頼者との間の秘密情報とすることが意図されていることを考慮しつつ、当該書類に国家公務員法第100条、場合によっては独占禁止法第39条により保護される秘密情報が含まれる場合には、これらの規定に従って、当該書類を適切に取り扱うこととする。

C.談合対策{前6文字下線あり}

1.談合に対する罰則強化{前10文字下線あり}

a.日本国政府は、談合等の不正行為を防止する観点から、2008年2月に予算決算及び会計令及び地方自治法施行令を改正した。この改正により、2008年3月以降の契約に関して、国及び地方公共団体の発注機関が談合等の不正行為を行ったと認めた者に対して一般競争入札への参加を禁止することができる期間の上限が、2年から3年に延長された。

b.国土交通省は、国土交通省発注の公共工事において、重大な独占禁止法違反行為等により告発された、又は役員・使用人が告発・逮捕された事業者が、談合事件の首謀者であった場合や独占禁止法違反行為を行わない旨の誓約書を提出したにもかかわらず違法な談合行為を行った場合に、当該事業者に対して行う指名停止の最低期間を(12ヶ月から)15ヶ月に延長する措置を2007年9月に講じた。

2.利益相反の禁止{前7文字下線あり}

a.国家公務員の再就職に関する規定を含む国家公務員法等の一部を改正する法律が、2007年6月に成立した。同改正法には、国家公務員の求職活動・あっせんの規制や退職職員の現職職員に対する働きかけの規制が含まれ、これらの規制に係る不正行為について刑罰が定められており、同刑罰関係規定は同年12月27日より施行されている。

b.また、内閣は、退職職員から現職職員に対する働きかけについて規制するほか、当該規制に違反した者については罰則を設けることとした地方公務員法改正法律案を、2007年5月に、国会に提出した。

3.官製談合の防止{前7文字下線あり}

a.公正取引委員会は、入札談合等関与行為防止法に基づいて発注機関に対して行う改善措置要求に関し、発注機関に対して行った当該改善措置要求の内容、発注機関による入札談合等関与行為の概要及び該当条項を引き続き公表していく。また、入札談合等関与行為防止法は、公正取引委員会の改善措置要求を受けた発注機関が、必要な調査を行い、その調査結果及び講じた改善措置の内容を公表することを要求している。

b.入札談合等に関与した職員に対して懲戒処分を行うこと及びとられた懲戒処分を公表することについては、各発注機関の裁量に委ねられているが、入札談合等関与行為防止法は、発注機関に対し、当該職員の行為が懲戒処分に該当するかどうかについて調査を行い、当該調査の結果を公表することを要求している。したがって、発注機関は、入札談合等に関与した職員に対して、厳格な措置を講ずる必要がある。

4.行政上の措置減免の拡大{前11文字下線あり}:国土交通省、総務省及び財務省は、「公共工事の入札及び契約の適正化に関する法律」に基づき、2007年9月1日時点の公共工事の発注者による入札契約の適正化の取組状況について調査を行い、2007年12月19日に調査結果を公表した。同調査結果によれば、国においては、18機関中10の機関で行政措置減免制度(課徴金減免制度の適用があるときの指名停止措置の軽減措置)を導入していた。後の調査によれば、内閣府(一部)、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、防衛省、会計検査院、及び最高裁判所が同制度を導入している。さらに、2008年6月20日、環境省が同制度を導入した。これにより、行政措置減免制度を導入した国の機関は合計で11となる。

5.調達慣行の改善{前7文字下線あり}

a.上記の国土交通省、総務省及び財務省が行った、公共工事の発注者による入札契約の適正化の取組状況についての調査結果によれば、国の機関の約8割が公共工事において総合評価方式を導入している。また、国土交通省においては、2006年度は約9割(金額ベース)の公共工事を総合評価方式を活用して発注した。

(1)2008年3月、総務省及び国土交通省は連名で地方公共団体に対し、公共工事における総合評価方式活用の拡充について要請を行った。また、日本国政府は、2008年2月、地方公共団体が行う公共工事における総合評価方式の導入・拡充を図るため、その手続きの簡素化を内容とする地方自治法施行令の改正を行った(2008年3月施行)。2007年9月1日時点で、全ての都道府県及び政令指定都市並びにその他の市町村の24.3%が公共工事において総合評価方式を導入している。

(2)日本国政府は、総合評価方式を活用した公共工事の発注を拡大するため、「公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議」等の機会を通じて、引き続き、国及び地方公共団体の発注者による総合評価方式の導入を促進する。

b.総務省及び国土交通省は、地方公共団体に対し、一般競争入札の拡大、電子入札の導入等により、公共工事の入札及び契約の一層の適正化を進めるよう、引き続き奨励した。上記の調査結果によれば、2007年9月1日の時点で、地方公共団体の55%が一般競争入札を採用し、21%が電子入札を導入している。

c.公益通報者保護法は2006年4月に施行された。国・地方の行政機関は、内部職員からの談合事案を含む法令違反に関する通報を処理するための窓口を設置している。2008年3月31日時点では、国、都道府県においては100%の機関が、また、市区町村においては35.5%の機関が、通報・相談窓口を設置している。

 内閣府においては、全国各地での説明会やシンポジウムの開催、各種広報資料の配布、地方公共団体職員向け研修会の開催など様々な手段を通じて、地方公共団体が効果的な内部通報制度を整備することの重要性について、引き続き周知啓発に努めていく。

Ⅳ.商法及び司法制度改革の実現{前16文字囲み線あり}

A.効率的な組織再編と株主価値の推進{前18文字下線あり}

1.近代的な合併手法の円滑化{前12文字下線あり}

a.2007年5月に施行された「合併等対価の柔軟化」に関する会社法(2005年制定)の規定が導入された結果、外国会社は、三角合併により、日本の会社のすべての株式を取得することが可能となった。これらの規定は、三角合併の制度を機動的な組織再編及び対日直接投資の促進のための効果的な手段とするために規定されたものである。

b.2008年5月20日に経済財政諮問会議に提出された対日投資有識者会議の報告書は、外国からの直接投資を「飛躍的に増大」させるため、日本国政府による強力な措置を求めている。特に、三角合併の実績が1件にとどまっていることの原因分析や、今後の国境を越えるM&A円滑化のためのM&A手法(三角合併を含む)に関する制度や税制の実現についての検討など、国境を越えるM&Aの促進のための措置を提言している。

2.買収防衛策における株主利益の保護{前16文字下線あり}

a.2008年6月10日に公表された経済成長戦略において、経済産業省、法務省及び金融庁が買収防衛策の導入・発動等の在り方について2008年夏までに整理・明確化することなどにより、公正かつ透明性の高いM&Aの環境を整備するとの記載がなされている。また、同年6月27日に閣議決定された基本方針2008においても、上記の経済成長戦略の内容が盛り込まれた。

b.2005年5月27日に、経済産業省と法務省は共同で、「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を策定した。その中では、最も重要な原則の一つとして、株主意思に依拠すべきとの原則をうたっており、買収防衛策は、その導入に際して、株主の合理的な意思に依拠すべきであり、現経営陣の保身目的で濫用されてはならないと明記している。

c.i.経済産業省は、日本企業の実態や、近時の司法判断を踏まえ、経営者の保身ではなく、企業価値ひいては株主の利益の向上というまっとうな目的に合致した買収防衛策の利用・発動の在り方について、「指針」を明確化させた報告書をまとめるべく、企業価値研究会において、株式持合いも含めた買収防衛策の見直しを検討させている。

ii.企業価値研究会は、経済成長戦略の内容を踏まえて6月30日に取りまとめられた報告書において、敵対的買収は、経営者に規律を与えたり、株主の利益を向上させることなどにより、株主及び被買収者双方に積極的効果があり得るとの結論を出した。また、企業価値研究会は、買収防衛策はその発動により、買収に賛成する株主から買収に応じる機会を奪うことになるため、原則として発動されてはならないとも結論づけている。

 また、企業価値研究会は、経営者は、株主の利益の視点に立った買収提案の適否とともに、買収防衛策の導入又は発動が企業価値ひいては株主の利益を向上させるか否かに関し、責任ある判断をする責務を負うとしている。

d.2007年11月、東京証券取引所は「企業行動規範」を制定し、上場会社の買収防衛策の導入に際して尊重すべき事項を以下のとおり規定した。

(i)買収防衛策に関して必要かつ十分な適時開示を行うこと。

(ii)買収防衛策の発動及び廃止の条件が経営者の恣意的な判断に依存するものでないこと。

(iii)株式の価格形成を著しく不安定にする要因その他投資者に不測の損害を与える要因を含む買収防衛策でないこと。

(iv)株主の権利内容及びその行使に配慮した内容の買収防衛策であること。

東京証券取引所は、金融庁の「金融・資本市場競争力強化プラン」を踏まえて、株主の権利保護の観点から「企業行動規範」の実効性を一層高めるため、2008年度に「企業行動規範」の見直しを行う予定である。

e.2006年12月に施行された改正後の公開買付制度は、買付対象者に対して意見表明報告書の公表を義務付けている。当該報告書では、公開買付けに関する賛否等に関する意見のみならず、意思決定に至った過程等を具体的に記載することが義務付けられており、また、対象者が役員の利益相反を回避するためにとった方策について開示することが求められている。

f.日本国政府は、公開買付けについて、金融商品取引法の規制を遵守することを通じて、役員の利益相反が回避されることを期待しており、引続き新制度の実効性を注視していく。

B.コーポレート・ガバナンスの強化{前20文字下線あり}

 日本国政府は、企業の不正行為の防止及び企業の競争力・収益力を向上させるに当たって、強力かつ効果的なコーポレート・ガバナンスの仕組みが重要であると認識しており、我が国におけるコーポレート・ガバナンスを強化するための施策を講じている。

1.例えば、金融庁は、閣議決定に基づき、2007年12月21日に「金融・資本市場競争力強化プラン」を策定・公表している。同プランは、コーポレート・ガバナンス強化の観点から、

(1)内部統制報告制度導入後、同制度のレビューを適時に行い、その結果を踏まえ、必要に応じ、内部統制に係る基準の見直しや更なる明確化等を検討する、

(2)東京証券取引所の企業行動規範の拡充等、取引所におけるコーポレート・ガバナンス強化に向けての取組みを推進する、

(3)上場企業のガバナンスを強化することを目的とした法制の整備のあり方等について、幅広く検討を行う、

等の幅広い措置が必要であるとしている。

 金融庁は、関係省庁との連携を図りつつ、速やかにこれらの幅広い検討を行っていく。また、海外の事業者を含む利害関係者の意見を参考にしていく。

2.積極的かつ適切な議決権代理行使の奨励{前18文字下線あり}

a.東京証券取引所は、2007年11月上場規程の改正を行い、株主総会における議決権行使を容易にするため、株主に対して株主総会招集通知(株主総会における議決権行使のための参考書類を含む)を会社法で規定されている株主総会の2週間前という期日よりも早期に送付するよう努めるよう上場会社に対して要請した。金融庁は、これらの円滑な議決権行使を促進するための証券取引所の取組を支持している。

b.厚生労働省は、厚生年金保険法及び確定給付企業年金法において、年金基金の資産運用管理者が受託者責任を課されており、受託者責任には議決権をもっぱら受益者の利益のために行使する義務が含まれると解釈している。厚生労働省は1997年及び2002年の年金基金の資産運用管理者の役割及び義務に関するガイドラインの見直しを含め、年金基金の資産運用管理者の受託者責任に関する厚生労働省の立場の認識を広め、年金基金運用管理者等のこの点に関する見解を注視していく。

c.日本国政府は、投資運用業者は、「金融商品取引法」及び「投資信託及び投資法人に関する法律」により、投資信託財産として有する有価証券に係る議決権行使の指図を行うことが必要とされていることを確認する。また、投資信託協会においては、投資運用業者に対し、議決権行使に係る基準の作成及び公表、並びに当該基準に基づく議決権行使を義務付ける業務規定を定めている。

d.金融庁は、「金融商品取引法」の下で業務を行う投資運用業者は、専ら受益者の利益のために議決権を代理行使すべきとする忠実義務や善管注意義務を負っており、この受託者の義務に違反することにより受益者に生じた損害について責任を負うと解釈している。

3.社外取締役を通じた株主利益の保護{前17文字下線あり}

a.「社外」取締役の定義について、日本国政府は、我が国における人材の状況や、会社法においては厳格な開示の規律の下で社外取締役の選任が株主の決定にゆだねられていること等の様々な要素を考慮の上、現行の定義の相当性その他これに関連する論点を継続的に検討してきたところである。

b.金融庁は、上場会社のコーポレート・ガバナンス向上の観点から、「金融・資本市場競争力強化プラン」に基づき、東京証券取引所を含む各取引所に対して、社外取締役と、上場会社、その親会社、子会社、及び大株主との関係に関する情報を含むコーポレート・ガバナンスに関する報告書の作成を上場会社に要求し、当該報告書の内容を公表する取組など、上場会社のコーポレート・ガバナンスの強化のための最大限の努力を払うよう一層促していく。東京証券取引所は、コーポレート・ガバナンス報告書に基づいた上場会社のコーポレート・ガバナンスの現状についての分析を公表した。

c.東京証券取引所は、2008年3月に公表した中期経営計画において「上場会社のコーポレート・ガバナンス向上への支援の強化」を基本戦略の一つとして掲げた。続いて、2008年5月27日、東京証券取引所は「2008年度上場制度整備の対応について」を発表した。その中で、東京証券取引所は、2008年度において、(1)上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備、(2)上場制度総合整備プログラム2007のフォローアップの2つのテーマを中心に取り組むこととしている。

(i)東京証券取引所は、上場会社のコーポレート・ガバナンスの向上は、今後の日本の証券市場の健全な発展のための大きな鍵のひとつであると考えており、コーポレート・ガバナンス関連の課題に対応する施策(企業行動規範の整備を含む。)の進展を2008年度の最重点課題として位置づけている。解決を意識すべき問題としては、次のようなものが挙げられる。

・大幅な希釈化を伴う新株式等の発行

・不透明な第三者割当てによる新株式の発行

・多くの株主の株主権を奪うような株式併合

・取締役、監査役の独立性に関する問題

・不適切な方法による買収防衛策の導入

(ii)東京証券取引所は、国内外の投資家やその他の利害関係者から意見聴取することなどにより、2008年末までにコーポレート・ガバナンス向上に関する種々の課題について調査し、実施しようとする総合的な施策について具体的な計画を作成する予定である。

4.少数株主の十分な保護の確保{前13文字下線あり}

a.日本国政府は、市場の公平性・透明性の向上を通じて、投資家の信頼を得られる活力ある金融市場の実現に努めていく。この点、日本国政府は、金融庁による「金融・資本市場競争力強化プラン」の実施の一環として、すべての投資家の権利の保護の観点から、既存の法令の妥当性について注視していく。また、日本国政府は、上場企業の少数派の投資家が不当に不利な立場におかれないために、取引所が自主規制ルールをより実効的なものとすることを促していく。

b.2007年6月、ジャスダック証券取引所は、親会社を持つ上場企業が、親会社と関係を有しない社外取締役、社外監査役を選任するように述べた文書を公表した。また、東京証券取引所も、支配株主を有する会社の上場についての東証の考え方を述べた文書を公表している。東京証券取引所は、最近の上場規則の実効性確保手段の多様化を踏まえて、2008年5月27日公表の「2008年度上場制度整備の対応について」に記載のとおり、企業行動規範の見直しの他、2008年度中に株主、特に少数株主の権利保護に向けた具体的な計画を作成する予定である。

c.2007年9月4日に、経済産業省はMBOに関する指針を公表した。経済産業省は、MBOや類似の取引において少数株主の利益の十分な保護が確保されるよう、指針の有効性について注視し続けていく。

C.日本において適法に事業を行う外国企業に対する保護{前26文字下線あり}

1.現地法人化手続{前7文字下線あり}:外国の経済界及び法曹界のニーズにかんがみ、法務省は、外国会社を日本の会社に転換することを認める簡易な手続を導入する場合の法的問題点を調査した。法務省としては、会社法の観点のみならず、法制度全体の観点から、そのような現地法人化手続が非常に複雑な問題を含むものであると考えている。法務省としては、必要に応じて外国の経済界及び法曹界から情報提供を受けつつ、上記のニーズを満たし得る実行可能な解決策があるかどうかにつき、引き続き調査することとしている。

2.会社法第821条の影響に関するモニタリング{前22文字下線あり}:日本国政府は、会社法第821条が外国会社に与える影響を引き続き注視し、我が国における外国会社の適法な業務に対して悪影響が及ばないようにするために必要がある場合には、第821条の改正を検討していく。

D.司法制度改革の実現{前11文字下線あり}

1.専門職法人および支所設立の容認{前16文字下線あり}:法務省及び日本弁護士連合会は、2008年末までに結論を得ることを目標として、外国法事務弁護士による専門職法人の設立に必要な措置について調査し、提言を行うための「外国弁護士制度研究会」を設置した。

2.弁護士に対するインターナショナル・リーガル・パートナーシップとの自由な提携の容認{前43文字下線あり}:法務省は、弁護士がインターナショナル・リーガル・パートナーシップのメンバーになることの法的な影響について、その有無も含め真摯に検討を続けていく。そのため、法務省は、2008年度中、日本で業務を行っている外国弁護士事務所からのヒアリングを行うことを含め、インターナショナル・リーガル・パートナーシップの実務について、鋭意、調査研究を行う。

3.裁判外紛争解決手続(ADR)の促進{前17文字下線あり}

a.日本国政府は、外国法事務弁護士、外国弁護士及び弁護士資格を有さない者が、準拠法又は紛争の内容にかかわらず、仲裁法に基づく仲裁手続において主宰者となることが認められていることを確認する。

b.日本国政府は、仲裁以外のADR手続において、その業務が裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に基づいて法務省によって認証されたときは、外国法事務弁護士、外国弁護士及び弁護士資格を有さない者は、認証された業務にかかるADR手続の主宰者として業務を行うことができることを確認する。

c.日本国政府は、外国法事務弁護士が、ADR業務について法務省の認証を受けているか否かにかかわらず、外国法事務弁護士の権限の範囲内で、又は、外国法事務弁護士の権限の範囲外のADR手続にあってはケース・バイ・ケースで、ADR手続の主宰者となることができることを確認する。

d.日本国政府は、外国法事務弁護士が、日本で行われるいかなる国際ADR手続においても、少なくともその代理が外弁法と矛盾しない範囲において、当事者を代理することが認められていることを確認する。

e.法務省は、日本で実施されるあらゆる国際的ADR手続において、外国法事務弁護士が、より高い法的確実性をもって主宰者となることができるための措置、あるいは、当事者を代理することができるための措置を適切に講じることができるかどうかについて調査を続ける。

Ⅶ.透明性{前5文字囲み線あり}

A.市民参加による政策策定–審議会等{前18文字下線あり}

1.日本国政府は、審議会等に関する強い透明性基準を策定することにより、日本における審議会等の透明性やアクセスを高めるべきという米国政府の見解を認識しているが、審議会等についてはそれぞれの設置法令や、1999年4月の審議会等整理合理化に関する基本的計画に関する閣議決定等にしたがって、各府省において運営がなされているところである。具体的には、これらの法令に従って、議事録の公開を原則としたり、利害関係者からの意見を聴取する機会を設けるよう努めるなどして運営がなされているところである。

 日本国政府は、2008年末までに、1999年4月の閣議決定の遵守状況を客観的に評価するため審議会の運営について広く調査を行うという米国政府の要望に留意した。日本国政府と米国政府は、審議会等の透明性についてのベストプラクティスについて、引き続き情報交換を行う。

2.審議会等のリスト及びそのメンバーリストについては、電子政府の総合窓口(http://www.e‐gov.go.jp)により、電子的にアクセスが可能になっている。

3.日本国政府は、今後とも、引き続き、審議会等の透明性やアクセスに関する上述の取組を推進していく。

B.意見募集(パブリック・コメント){前20文字下線あり}

1.日本国政府は、改正行政手続法に基づく意見公募手続によって、命令等の制定過程における透明性の向上・公正の確保のため、意見提出にとって意義ある機会が効果的に提供されることを確保する必要性を認識している。

a.行政手続法では、各府省庁が一般からの意見提出のための意義のある機会を提供するために原則として30日以上の意見提出期間を設定すること、及び命令等を決定する前に提出された意見を十分に考慮することが規定されている。総務省は、可能な場合は30日以上の意見募集期間を設定することをベストプラクティスとして、各府省庁に対し奨励する。

b.日本国政府は、改正行政手続法に基づく意見公募手続の意義ある実施のため、その実施を含め手続について一般に更に周知するとともに、一般からの質問や疑問に対応することが重要であると考えている。さらに、総務省は、引き続き、各府省庁における意見公募手続の実施状況について年次調査を行い公表していくとともに、関係府省庁と密接な連携を図り、必要に応じ制度のよりよい実施を奨励していく。

2.日本国政府と米国政府は、可能な場合は、各府省庁は法律案について意見提出の機会を提供するよう努めるべきという米国政府の要望について意見交換を行った。

C.規制及びその執行における透明性{前18文字下線あり}

 日本国政府は、法の適用に関する情報や様々な基準を提供することにより、法や規則の解釈や解説の容易な入手を確保するとともに、民間部門が規則について十分な情報を得ることの重要性を理解する。日本国政府は、2008年末までに日本の各省庁が一般的に適用される規則の解釈を市民に入手可能なものとすることを義務付ける必要があるかどうか調査し、分析することを求めるとする米国政府の意見に留意する。日本国政府はまた、規制を作成する際には恣意的で一貫性のない解釈を防ぐために、平易な言葉の使用を推進していく。

D.透明性に関する日米協力{前13文字下線あり}

 日米両国は、APEC各メンバーの国内法体系においてAPEC透明性の基準が完全に実施されること、及び、APECの透明性に関するモデル措置を将来の貿易協定の参考として活用することを、引き続き各メンバーに対し協力して働きかけていく。また、アジア太平洋地域におけるビジネスや投資環境の改善に資する高い基準での透明性を促進するため、日本国政府は、その他の方策を通じて、米国政府との協力を強化していく。

E.日本法令の外国語訳{前11文字下線あり}

2008年3月28日、日本政府は、内外の有識者の意見も勘案の上、翻訳整備計画(2006年度から2008年度)を再改定した。この改定の結果、当初の計画に約100本の日本の国内法令の英語の翻訳が追加され、3年間で合計約300本の法令が翻訳されることとなった。同計画に従い、日本国政府は、2008年4月の時点で約120本の法令を英語に翻訳しており、順次、内閣官房のウェブサイト(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hourei/data1.html)で公開している。日本政府は、今後とも継続して、利害関係者にとり極めて重要な法令を、適切な時期に翻訳していく所存である。なお、2009年度以降は、法務省が本計画の主要な部分を引き継ぎ、新たなウェブサイトを立ち上げることとなっている。

F.策定規制の実施{前9文字下線あり}

 日本国政府は、利害関係者が十分に変更に対応できるよう、施行前に十分な余裕を持って施行日を設定することで、引き続き、最終規則の公表からその施行日まで合理的な期間を確保する。各省庁は最終規則の公表後、可能な限り早く、実施ガイドラインや規則といった説明書類を利用可能とできるよう努力してきており、今後とも努力を継続していく。

Ⅷ.その他の政府慣行{前10文字囲み線あり}

A.保険商品の銀行窓販売{前12文字下線あり}

1.日本国政府は、2007年12月22日に、銀行等の保険販売の全面解禁を実施した。

 銀行等の保険販売に関する弊害防止措置については、金融庁により深刻な法令違反が認められておらず、強力な銀行等による保険販売チャネルは、強い消費者保護と整合的であることが示された。銀行等の保険販売は、2001年以降、弊害を見極めつつ段階的に解禁してきた。この過程において、国内外の利害関係者と意見交換等を行い、その過程で表明された幅広い意見等を踏まえ、より一層の消費者等の保護を図るため、関係内閣府令等を改正し同日(2007年12月22日)に施行した。なお、金融庁では、全面解禁後においても、引き続き銀行等の保険募集についてモニタリングを行うとともに、消費者等の保護・利便及び利益の観点から、弊害防止措置等について、概ね3年後に、所要の見直しを行うこととする。

2.日本国政府は、銀行等の保険販売に関する規制が、消費者保護を確保するとともに、特定の商品や販売方法、サービス提供者を優遇することなく公平に実施されることが重要であると考えている。

3.金融庁は、中小金融機関の営業形態等に配慮して、その保険募集制限先の範囲を緩和するとともに、事業資金の融資業務と保険募集業務の担当者分離規制を緩和するための特例措置を講じた。

 日本国政府は、中小企業の従業員に対する、中小金融機関による第三分野保険商品の販売に関して1,000万円の限度額見直しという当面の措置を講じた。この措置を米国政府は歓迎している。

4.金融庁は、銀行による保険販売の規制を検討する過程で、国内及び外国の保険会社や銀行、保険募集人の団体、中小企業者の団体、消費者代表を含む幅広い利害関係者からの意見を考慮し、保険業法の関係政省令の改正案及び保険会社向けの監督指針をパブリック・コメントに付した。

 金融庁は、銀行による保険募集の状況のモニタリング及び、市場慣行規則の更なる見直し、制定、実施を行なう過程においては、要望により、保険会社(外国保険会社を含む。)、銀行、その他の幅広い適切な関係者から有意義なヒアリングの機会を確保することとしている。

B.共済{前4文字下線あり}

1.いわゆる無認可共済については、2006年4月1日に施行された改正保険業法により、法の適用範囲が拡大されて、無認可共済がその対象に含められ、少額短期保険業者制度が導入された。この制度見直しの検討過程において、金融庁は金融審議会を開催し、外資系保険会社とも意見交換を行い、政令府令改正案をパブリック・コメント手続に付した。改正保険業法は、その施行日から5年以内(即ち、2011年4月まで)に、金融庁が少額短期保険業者について見直しを行う旨規定している。この見直しを行うにあたり、金融庁は、必要に応じて、その検討に関する情報や、外資系保険会社を含む保険会社や他の関係者が意見を表明する有意義な機会を提供する。

2.制度共済に関し、日本国政府は、日本国政府が制度共済に対して金融庁が所管する競合他社と同一の法律、要件、基準を適用し、また、同一の監督者によって監督することで、共済と他の民間企業との間の平等な競争条件を確保し、近い将来、金融庁以外の省庁が規制する各共済の規制と監督の整合性を評価し、民間の保険サービス提供者を監督する際の金融庁の基準との適合性を判定するための検討が行われるべきであり、またそのような検討は、利害関係者に対して意見表明や意見交換を行う有意義な機会を与えるなど、透明な形で行われるべきという米国政府の見方について米国政府と議論を行った。日本国政府と米国政府は規制改革及び競争政策イニシアティブにおいて、関連する問題について引き続き議論を行っていく。

C.保険契約者保護機構(PPC){前16文字下線あり}

1.2006年4月1日に施行された改正保険業法により、保険契約者保護機構(PPC)制度において、保険会社が破綻した場合における資金援助の財源としての政府補助の存続期間が延長された。また、改正法は、2006年4月1日から3年以内にPPCの財源制度についての見直しを行うと規定している。

2.日本国政府と米国政府は、契約者保護機構が、現行制度が再検討される際に、より効率的で持続可能なセーフティネットシステムがつくられることを確保するため、事後拠出方式への移行を含む最後の手段として使われるべきであるとの米国政府の要望について議論した。

3.この見直しを行うにあたり、金融庁及び日本国政府の関連審議会等は、民間の利害関係者(外資系保険会社を含む。)に対して、その見直しに関する情報を提供するとともに、法案を準備するための関連審議会の審議において、意見表明や意見交換の有意義かつ的確な機会を提供する。

D.外国保険会社事業の現地法人化

1.日本国政府と米国政府は支店現地化について議論を行った。日本国政府は、以下について認識している。

a.米国政府の立場は、次のとおりである。日本国政府は、日本において支店方式で営業を行なっている外国保険会社が、日本法人又は別の外国保険会社に事業を移行したい場合、保険契約者、債権者を保護し、途切れのない形で事業を移行できるよう、健全な保険会社間での包括移転にかかる販売停止規定の撤廃を含めた、必要な措置を講ずる。

b.米国政府は、日本国政府に対して、来年中に、詳細について検討し、またこの問題について対処するため米国政府及び外国会社を含む産業と、更なる協議を行うよう要望する。

2.日本国政府の立場は次のとおりである。わが国の保険業法の包括移転規定における保険契約販売停止規定は、移転対象契約と同種の保険契約を新たに契約する者の保護を図るとともに、移転対象契約の範囲を明確にするためのものである。

3.また、(1)外国会社の日本法人化、(2)全ての債権者に対する情報開示、公告およびみなし承認についての法定手続きの新設、(3)金融庁認可と債権者の承認を受けた取引について、譲受会社に、譲渡会社(支店)の全ての資産と債務を承継することを認めることに関して、保険会社の組織変更・組織再編についても、わが国会社法の手続に拠る(準ずる)べきであると考えている。

4.「みなし免許」の付与については、譲受会社が譲受前と同一の条件と取引方法を履行できることの証明の検証は、新たな免許の審査と同様であり、「みなし免許」を付与する法的意義は少ないものと考えられる。

5.日本国政府は、外国保険会社の具体的に現地法人化に関して支障があるのであれば、個別に相談に乗ることとする。

E.領事関連{前6文字下線あり}

1.再入国許可制度{前7文字下線あり}:規制改革推進のための3か年計画(改定)(2008年3月25日閣議決定)は、新たな在留管理制度の構築を前提として、諸外国における高度人材向けの処遇の在り方や在留資格ごとの特性なども踏まえつつ再入国許可制度を見直すこととしている。再入国許可制度の見直しは、遅くとも新たな在留管理制度の構築を規定する新法令の施行までに措置する予定である(遅くとも2009年通常国会までに関係法令案提出)。

2.外国人家事使用人のための特定活動査証{前18文字下線あり}

a.日本国政府は、外国人家事使用人の入国に係る規定が海外から管理職を起用するためのビジネス・アビリティに影響を及ぼしているという米国政府及び多くの在日外国人投資家の懸念があることから、外国人家事使用人のための特定活動査証の発給要件の見直しについて米国政府が強い関心を寄せていることを認識し理解している。

b.家事使用人の雇用主である外国人については、事務所の長又はこれに準ずる地位にある者に加え、一定の要件が必要となるが、これらの要件に該当するか否かについては、当該外国人が属する事務所の規模、部下の数、事業所内における雇用主の権限等の諸要素及び雇用主の個人的事情等を個別に勘案して判断している。

c.外国人家事使用人の入国に係る規定は、我が国の外国人労働者の受入れに係る政策判断の上に設けられているものである。現行の規定の範囲内でなくとも、特に人道的に配慮すべき事情がある場合には、個別の事情を勘案して入国を認めた事例もある。

d.日本国政府は、これらの規定が日本の貿易及び投資に与える影響について、米国政府及び利害関係者と更なる議論を行うことを歓迎する。

F.構造改革特区{前8文字下線あり}

 日本国政府は、これまでに214項目の構造改革特区提案を実現しており、今後その制度を継続して推進していく。特区において成功した特例措置については、可能な限り早く全国展開(2008年3月現在、123項目の特例措置が全国展開された)に向けて必要な措置をとり、地方自治体や国内外の企業を含むその他の関係者にも意見を聞きながら、特区制度の拡充を図っていく。これらの場合において、評価・調査委員会が特区の特例措置について評価し、もし地域活性化への効果が大きいと判断した場合には、その特例措置は継続されることになる。また特区制度についての情報は引き続き可能な範囲で英語でも提供される。特区制度における医療分野の特例措置に関しては、日本国政府は引き続き現在の状況を見ていき、拡大に向けての要望があった場合にはそれについて検討する。

G.農業関連の政府慣行{前11文字下線あり}

1.有機農産物{前5文字下線あり}

a.有機農産物に使用される農業資材の評価について:日本国政府は、リグニンスルホン酸塩及び重炭酸カリウムについて米国政府から提出された科学的データの精査を終了し、米国政府によって特定された3資材のリストからこれら2資材を除外する可能性について消費者の見解を得るため、2008年5月16日に消費者説明会を行った。日本国政府は、これら2資材の使用を許可するか否かについて最終的な決定を行うため、2008年7月1日までにパブリック・コメントを始める。また、日本国政府は、フミン酸についても、上記2資材と同様のプロセスを進めるため、米国政府から提出された資料の精査を実施している。

b.有機農産物における使用禁止資材の残留基準の設定について:日本国政府は、有機農産物における使用禁止資材の残留基準の設定については何らかの多国間の場で議論されるべき問題であるとの見解を米国政府に説明した。日本国政府は、関連する国際基準設定機関であるコーデックスは既に有機農産物における農薬の残留基準の問題についてガイドラインを示しており、このガイドラインはゼロトレランスを支持していないという見解を米国政府が持っていることについて認識している。両国政府は、米国政府の懸念を解決するため、コーデックスの場での更なる協議に加えて、コーデックスのガイドラインを踏まえ、2国間での議論を継続していく。

2.残留農薬基準{前6文字下線あり}

a.輸入製品の残留農薬の監視強化について、日本国政府は、米国における残留農薬規制制度の有効性を考慮し、問題となった製品についての米国の残留農薬基準が日本の残留農薬基準と同等若しくはより低い場合には、問題のあった特定の違反者(輸出業者)に対してのみ措置を講ずることに同意した。これは、日本国政府が、米国の制度が日本で求められる保護の水準と少なくとも同等の保護の水準を確保していると判断したことによる。

b.米国の残留農薬基準が日本の残留農薬基準より高い場合の違反については、ケース・バイ・ケースで判断されると日本側は説明した。米国政府は、日本国政府が、全般的な政策として、強化検査要求を違反輸出者に限定することに合意することを引き続き要請した。

c.日本国政府と米国政府は、米国の残留農薬基準が日本の残留農薬基準より高い場合について、その取り扱いの解決策を得るための協議を継続する。

3.食品添加物{前5文字下線あり}

a.日本国政府は、国際的に(例えば、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)によって)安全性が確認され、かつ汎用されている食品添加物46品目及び香料について、指定の検討を進めており、厚生労働省は、2003年以降これまでに、食品添加物13品目及び香料15品目について、食品安全委員会の評価結果を受けて、その使用を認めた。

b.ポリソルベート類を含む6品目の指定については、2008年4月30日に告示され、日本での使用が認められた。米国等諸外国は、これらの添加物につき、検討プロセスの促進を要望していた。厚生労働省としては、残りの物質についても、引き続き検討プロセスを迅速に進めるとともに、可能な限り効率的にプロセスを進められるよう食品安全委員会と引き続き協働していく。

c.また、日本国政府は、バレルアルデヒド及びイソバレルアルデヒドについては、食品安全委員会における評価が終了し、厚生労働省は近々、薬事・食品衛生審議会でこれらの香料についての審議を開始する予定であることを報告した。

d.日本国政府は、日本の関連機関による審議が迅速かつ円滑に進められるよう、必要な場合には、関係データの提出等に関し、貿易パートナーに協力を要請する。

4.動物性食品{前5文字下線あり}:日本国政府は、米国政府と協力して、これらの問題の科学に基づいた解決に向けて努力する。

5.植物防疫:世界的に分布する病害虫に関する再検討{前23文字下線あり}

a.2008年5月20日、日本国政府はチューリップヒゲナガアブラムシ(Macrosiphumeuphorbiae)に関しWTOに通報を行った。その結果、チューリップヒゲナガアブラムシは、消費用のレタスに関して検疫の対象とならない害虫として扱われることとなる。

b.日本国政府は、国際基準に基づき、米国政府にとって優先的な関心事項である残る2種の害虫、即ちワタアブラムシ及びマメクロアブラムシの検疫上の位置付けを決定するため、病害虫危険度解析(PRA)を引き続き実施する。日本国政府は、世界的に分布する病害虫の分類を国際基準と調和させるための努力を継続する。

Ⅸ.民営化{前5文字囲み線あり}

A.郵便貯金・郵便保険に対する対等な競争条件{前22文字下線あり}

1.日本郵政株式会社、郵便事業株式会社(以下「郵便事業会社」という。)、郵便局株式会社(以下「郵便局会社」という。)、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」という。)及び株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」という。)の財務情報は、他の民間企業と同様に、会社法、銀行法、保険業法、その他の関係法令を含めた規制の下で開示され、また、公開資本市場において取引される場合は、金融商品取引法の開示規制を受ける。金融庁は、銀行法及び保険業法に基づくゆうちょ銀行及びかんぽ生命に対する監督・検査について唯一の権限を持ち、金融サービス又は保険商品の販売に従事するときを含め、他の銀行や保険会社に適用されるものと同じ基準を適用する。従って、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命には、リスク管理条件及び金融庁の完全な監督を含め、民間の金融機関と同様の免許、情報開示、監督の基準に適合するための措置がとられる。このため、金融庁は監督局に1名の参事官及び11名の職員による新しい室を設置した。さらに、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命に対する監督を強化するため、金融庁は、かんぽ生命の監督を担当する参事官1名、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の監督を担当する職員4名を従事させることとなっている。日本国政府は、金融庁が、他の銀行や保険会社に適用されるあらゆる規制の下でゆうちょ銀行及びかんぽ生命を適切に監督することを引き続き確保していく。ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵政株式会社及び郵便局会社の相互の取引関係は、アームズ・レングス・ルールを含め、銀行法及び保険業法の義務に服する。銀行法及び保険業法の下での会計規則の適用にあたっては、これらの4会社は、銀行法及び保険業法の「特定関係者」の要件に該当する。

2.郵政民営化を規定している法律上、郵便局会社がゆうちょ銀行以外の民間銀行と銀行代理店契約を締結すること、またかんぽ生命以外の民間保険会社と生命保険募集委託契約を締結することは可能である。郵便局会社のネットワークを利用する点において、ゆうちょ銀行と他の民間の銀行及び金融機関との間で、また、かんぽ生命と他の保険会社との間でそれぞれにイコールフッティングは現に確保されているところである。日本国政府は、郵便局会社とゆうちょ銀行及びかんぽ生命との関係が、アームズ・レングス・ルールやその他の民間企業に適用される規則に則った公正なものとなることを確保する。また、郵便局会社が、銀行代理業者又は保険募集人として預金・貸出・為替・保険商品の販売等の代理又は仲介を行う場合、その職員を含め、他の銀行代理業者又は保険募集人と同様、金融庁の監督を受ける。

3.郵政民営化関連法は、損益が明確にされることを確保し、他の事業により影響を受けるリスクを排するため、新たに設立される郵政金融会社と非金融法人との間の事後的な内部相互補助を防止するように設計されている。郵政民営化関連法により、日本国政府は、旧勘定及び旧契約と2007年10月1日以降の新勘定及び新契約とを分離する観点から、ゆうちょ銀行・かんぽ生命とは別に独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(公社承継法人)を設立した。ゆうちょ銀行やかんぽ生命が破綻した場合の旧勘定及び旧契約については、預金保険制度及び生命保険契約者保護制度の対象外とされている。預金・再保険の契約については、実施計画の中で定められていた。実施計画については、内閣総理大臣及び総務大臣が認可の段階で内容を審査した上で、両大臣は、郵政民営化委員会の意見を聴取し、財務大臣にも協議を行い認可した。このプロセスにおいて、日本国政府は、預金・再保険契約を通じてゆうちょ銀行・かんぽ生命に対して旧勘定及び旧契約から生じた利益を不当に移転しないことを確認した。また、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、独立行政法人通則法に基づき、再保険契約の財務結果を含む毎年の財務諸表を、日本の一般会計原則に従い、独立した会計監査人による監査を受けて作成し、公表することとなる。民営化関連法は、承継された旧勘定及び旧契約から生じる資産運用は、2007年10月から預金及び再保険契約により、ゆうちょ銀行とかんぽ生命に委託されることを規定している。2007年10月以降、これらの預金及び再保険契約は、銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の検査・監督に服することとなり、商業ベースの取引となる。金融庁と総務省は、それぞれの権限の下で、預金・再保険契約を通じてゆうちょ銀行・かんぽ生命に対して不当に再保険契約による収入及び旧勘定並びに旧契約から生じる利益が移転しないことを確保する。

4.日本郵政公社は、2007年9月30日の財務諸表を独立した会計監査人による監査を受けて作成し、公表した。独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構に承継された資産及び負債は、評価委員会の公正基準による評価を受け、評価委員会の議事録及び会議資料が公開された。内部相互補助に関しては、4つの子会社において、会社法、保険業法及び銀行法の規定に基づき、独立して監査委員会と会計監査人、あるいは監査役会と会計監査人が監査業務を行うこととなっている。

5.2007年10月1日以降、ゆうちょ銀行が受け入れる預金及びかんぽ生命が募集を行う生命保険商品には政府保証は付されていない。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命は、利用者等に、民営化された郵政金融機関の金融商品に政府保証がない旨を説明してきている。加えて、日本政府は、政府保証が存在しないことを説明する政府広報を行ってきた。民営化以降、「政府保証がある」といった虚偽のことを告げてそれらの商品を販売する行為は、銀行法及び保険業法において禁止されている。金融庁は、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命による実際の販売方法がこれらの法律を遵守しているかどうかモニタリングしている。日本政府は、政府保証の存在についての誤解が生じることのないように、必要な取組みを行っている。

6.独占禁止法は、他の民間会社に適用されているのと同じ根拠に基づき、また、同じ基準に従って、日本郵政グループ会社(日本郵政株式会社、郵便事業会社、郵便局会社、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命)に対して引き続き適用される。この点において、公正取引委員会は、これら5社の業務を引き続き注意深くモニターしていく。公正取引委員会は、これら5社の運営及び郵政民営化に関連する競争政策の論点について、同委員会としての考え方を、適切なときに引き続き表明していく。

7.日本国政府は、社会・地域貢献基金は、社会・地域にとってその実施が真に必要であるが、民間企業では実施困難なサービスに対して資金を交付するものであり、郵便局会社、郵便事業会社、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命を不当に優遇するものではないことを再確認する。

 また、地域貢献業務にあたっては、郵便局会社は、実施計画を作成し総務大臣の認可を受けるとともに、認可後遅滞なく当該計画を公表することが義務付けられている。さらに、計画期間の終了後3ヶ月以内に、郵便局会社は、地域貢献業務の実施状況に関する報告書を公表することが義務付けられている。

 上で述べたとおり、日本国政府は、地域貢献業務の適正な実施及び基金の設置・運営の透明性を確保するための措置を講じる。

B.競争条件及び新商品導入{前13文字下線あり}

 ゆうちょ銀行及びかんぽ生命は、銀行法及び保険業法等の民間金融機関と同じ法令が適用され、これに加えて、移行期間中は郵政民営化法による業務制限が課されている。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の民営化当初の業務範囲は日本郵政公社と同一のものであった。業務範囲の拡大は、内閣総理大臣(権限は金融庁長官に委任)及び総務大臣が、郵政民営化委員会の意見を聴取した上で、決定するという透明・公正な手続きを経なければならない。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の業務範囲の拡大について主務大臣が決定を行う際は、適正な競争関係及び両社の経営状況が考慮されることとなる。かんぽ生命による新たな又は変更された保険商品の導入、ゆうちょ銀行による新たな元本無保証型商品又は新たな貸付業務の導入は、上記のプロセスを通じて審査されている。ゆうちょ銀行及びかんぽ生命が新商品を販売する際には、リスク管理やコンプライアンス態勢等、民間金融機関と同様の義務や基準に服さなければならない。上で述べられている通り、郵政民営化プロセス全体を通じ、日本国政府により、郵政金融機関と民間金融機関との間の対等な競争条件が確保されている。日本政府は、郵政金融機関の業務範囲の拡大において、対等な競争条件が常に確保されるべきであると認識している。民営化のプロセスと実施は日本のWTO上の義務、特にGATSの内国民待遇原則に従うべきという考え方を米国政府が有していることを日本国政府は知っている。

C.宅配サービスに対する対等な競争条件{前20文字下線あり}

1.郵便事業会社が行う国際物流事業に係る貨物の通関手続きについては、他の民間会社と同様の申告納税制度が適用される。日本国政府は、国際郵便物に係る通関制度について見直しを行い、20万円超の国際郵便物に対して原則として申告納税方式を適用することを、2009年3月末までに実施することとしている。この期日までに申告納税方式を適用させるため、この新たな方式の導入に向けた準備が進められている。例えば、郵便事業会社は、処理行程の見直しを進めるとともに職員への訓練を行っている。

2.日本郵政公社によって提供されるEMS及び類似の国際エクスプレス・デリバリー・サービスに係る通関の規則と手続は、民間エクスプレス業者が提供する類似の貨物に対するのと同様に適用されるべきであるとの米国政府の考え方を、日本国政府は知っている。

3.郵便事業会社によって提供されるEMS(と類似の国際エクスプレス・デリバリー・サービス)とその他の商品との間で内部相互補助が起こらないことを確実にするために、必要な全ての公開措置を行うべきであるとの米国政府の考え方を、日本国政府は知っている。

4.郵政民営化委員会は、郵便事業会社による国際物流業務の拡大に係る申請を検討するにあたって透明性が重要であることを認識し、パブリックコメントを受け付けるとともに2008年5月14日に在日米国商工会議所を含む利害関係者からのヒアリングを実施することにより様々な関係者から意見を求めた。郵政民営化委員会は、2008年6月11日の会合において、EMSの取扱いを含む外国の業界から提起された点のいくつかを論点整理の項目に含めた。

5.民営化後各社及び郵便事業会社のEMSサービスを含む民営化後各社の関連業務に対する国土交通省の監督は、民間事業者に適用される基準と同じ基準に従ってなされている。

D.透明性{前5文字下線あり}

1.日本国政府は、適切な方法により一般公衆に対し郵政民営化に関する法律、規則、ガイドライン及びその他の情報を提供することを含む郵政民営化プロセスにおける透明性の確保の重要性を認識している。郵政民営化委員会は、郵政民営化の諸問題に関して利害関係者より意見を聴取する機会を提供してきた。郵政民営化委員会の委員長は、郵政民営化プロセスにおける委員会の審議の透明性の重要性を考慮し、委員会が必要と判断した場合には、引き続き利害関係者より意見を聴取する機会を設ける旨を表明している。郵政民営化法において、郵政民営化委員会は3年ごとに郵政民営化の進捗状況について総合的な見直しを行うことが規定されており、その第1回目の見直しの期限は2009年3月までとなっている。この見直しは包括的であるべきであり、かつ、銀行、保険、エクスプレス貨物市場における改革の影響及びこれらの分野における新しい日本郵政グループ各社と民間企業との間の対等な競争条件に関するものを含め、全ての利害関係者が意見を表明する機会を含むものであるとの米国政府の見解を、日本国政府は知っている。郵政民営化推進室、総務省及び金融庁は、民間部門の利害関係者に対し、その要請に基づき、新しい日本郵政グループ各社と民間分野との間の競争条件に関するものを含め、関係職員と意見交換を行う機会を引き続き提供する。日本国政府は、郵政民営化委員会の独立性を認識しつつも、郵政民営化委員会の透明性の重要性も認識している。

2.日本国政府は、行政規則、行政決定、行政ガイドライン及びその他の措置の準備及び施行に関し、行政手続法に基づくパブリック・コメント手続の必要に応じた活用及びその他の方法により透明性を確保する。行政手続法については、日本国政府は、パブリック・コメントが行われた場合には、提出された意見を十分に検討し、適切であれば、措置案を最終決定する前にその意見を反映させることを保証する。

3.郵政民営化委員会議事規則のもと、郵政民営化委員会は、議事要旨及び詳細な議事録を適時に公開してきた。郵政民営化委員会は、これまでの会合ごとに、事前の議題の公開、会合後の記者ブリーフィングを行ってきた。郵政民営化委員会事務局は、郵政民営化についての委員会の議論における透明性を維持するための郵政民営化委員会の努力を引き続き支援する。例えば、郵政民営化委員会事務局は、委員会の各会合前に、会合の議題を引き続き公開する(関係するウェブサイトでの公開を含む。)こととする。

4.両政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認するとともに、いずれか一方の政府の要請に基づき、郵政民営化関連法の施行に伴い発生する諸問題について取り上げるために、双方の都合の良い時期に会合する。

Ⅹ.流通{前4文字囲み線あり}

A.空港着陸料及び使用料{前12文字下線あり}

日本国政府及び米国政府は日本の空港使用料に関して意見交換を行った。

B.税関手続の効率性向上{前12文字下線あり}

1.2段階方式の輸入通関申告{前14文字下線あり}:日本国政府は2008年に関税法を改正し、日本のAEO制度に通関業者を含めることとした。当該制度により、貨物引取申告と納税申告を分離して行うことが可能となっている。

2.輸出の事後申告{前9文字下線あり}:日本国政府は、輸出の事後申告に関する米国政府の見解に留意する。

3.申告のための通関事務所の選択の自由{前19文字下線あり}:日本国政府は、NACCSの利用者が急送貨物の通関申告を行う際、貨物が物理的に蔵置されている場所に限定されるのではなく、便のよい任意の税関官署で行うことが認められるべきとの米国政府の見解に留意する。

4.臨時開庁手数料とNACCS料金の引き下げ{前23文字下線あり}:日本国政府は税関の臨時開庁手数料を廃止し、申請手続きを簡素化した。

C.免税輸入限度額{前9文字下線あり}

日本国政府は、現行の免税輸入限度額を引き上げるべきとの米国の見解に留意する。

D.宅配車両向け駐車スペース{前15文字下線あり}

1.2006年6月に施行された新駐車対策法制については、交通渋滞、交通事故及び違法駐車台数の減少など、期待された効果を発揮している。

2.新駐車対策法制の最も重要な狙いの一つは、放置車両を減少させることにある。駐車監視員は標章を取り付ける前に、車内やその周辺における運転者の存否を確認するよう、また、標章をとりつける前に運転者が戻ってきた場合には、警告にとどめるよう指導されている。貨物の積卸しを目的とした5分以内の車両の停止は、法律上許容されている。

3.警察庁は、米国業界を含む業界からの緩和措置に関する要望について認識しており、貨物自動車に関するものを含めた駐車規制及び駐車許可手続きの運用の見直しについて各都道府県警察に対し指示している。

4.各都道府県警察においては、適当な場合、やむを得ず道路上で荷捌きを行う必要のある貨物自動車について駐車禁止規制の対象から除くほか、必要な駐車需要に応じることができるようにするため、貨物自動車用のパーキングメーターの設置などを行っている。

5.日本国政府は、都市部の施設と交通管理を改善するため、引き続き以下に取り組む。

a.関係機関が連携し、停車帯など荷捌き用にも活用できる駐車スペースの確保を推進する。

b.地方公共団体が、一定の用途・規模の建築物を新築、改築するときに、商用車等のための駐車施設を設ける条例を定めることを推奨する。

F.大規模小売店舗に関する法{前14文字下線あり}

1.中心市街地活性化法は、市町村が地域のニーズを踏まえ、策定・実施する計画を通して中心市街地における都市機能の増進と経済活力の向上を目的とするものであり、大規模小売店舗の出店計画を制限するものではない。

2.日本国政府は、中心市街地活性化法の影響についての評価を同法附則に基づき10年以内に行う。その過程で法の運用と影響についての意見を公表する。

3.日本国政府は米国政府に対し、2007年11月30日に全面施行された改正都市計画法の影響について、時宜を得た方法で、民間部門及び他の関心を有する団体の意見を考慮した上で、評価を行い公表する予定である旨説明した。日本国政府は未だ評価の範囲と時期を決めていないが、改正の総合的な影響を評価できるように、評価の過程の中で、全ての利害関係者の意見を求めることを確保することが重要であるとする米国政府の考え方を、日本国政府は知っている。

米国政府による規制改革及びその他の措置

Ⅰ.ダンピング防止措置{前14文字囲み線あり}

1.米国政府は、米国のダンピング防止に関する法律、規則及びその他の措置がWTO協定上の義務に整合的なものとなることを確保する。

2.2006年2月8日、継続的ダンピング及び補助金相殺法(バード修正条項)の撤廃を規定する2005年赤字削減法が発効した。2007年10月1日より前に通関した産品に係る税については、バード修正条項が廃止されていないものとして、同条項に基づき分配される。2007年10月1日以降に通関した産品については、最終的に確定した税が、影響を受けた米国製造業者に対し分配されることはない。日米両国政府は、税の分配に関する問題について協議した。

3.WTO(DS322)における「ゼロイング」問題に関しては、米国政府は、履行のために講じた措置の有無、又は協定整合性に関して、日米両国が意見の相違を有することに留意する。

4.米国政府は、熱延鋼板紛争におけるWTOの勧告及び裁定を履行する法律が成立するよう、引き続き、議会と緊密に協力していく。この点に関し、米国政府は、2005年7月20日のDSB会合で検討された、譲許の停止の承認を求める日本の決定に関する二国間了解に留意する。

5.米国政府は、その他特定の米国のダンピング防止に係る問題に対する日本国政府の懸念について、自国の見解を説明した。

Ⅱ.税関・流通{前7文字囲み線あり}

A.海事テロ対策{前8文字下線あり}

 米国土安全保障省(DHS)と日本国政府のカウンターパートは、日米次官級経済対話の下に設置されている「安全かつ円滑な貿易」スタディグループにおいて、サプライチェーン・セキュリティ・イニシアティブに関する問題に対処してきている。これらの意見交換には、テレビ会議、及び2007年11月のDHSによる東京訪問が含まれる。東京訪問の際には、日本国政府、及び日本の産業界に対して、世界のサプライチェーンに対する重層的な安全戦略、及びリスクマネージメント・アプローチを促進するために複数存在するDHSの安全に関するイニシアティブが如何にして築き上げられたのかについて説明した。情報収集、及び国際的な協力が、成功裏にサプライチェーンの安全を保つための鍵であることを認識し、DHSは、「安全かつ円滑な貿易」スタディグループを通して、それらの問題についての生産的な対話を継続することを期待している。

1.米国向けコンテナ貨物100%検査要求{前20文字下線あり}

a.SAFEPort法で求められているとおり、DHSは、セキュアフレイトイニシアティブ(第一段階)の下で行われている取組の詳細、またそこから学んだ教訓について、議会に対し報告書を提出した。同報告書は、民間企業、海外のパートナーからの意見を盛り込んでいる。また、同報告書は、日本国政府に提供された。

b.DHSは、議会で可決された法律に対応する。議会の要求を満たすため、DHSは、コンテナ貨物100%検査に向けて、第一段階の放射性物質/核物質の検知の際に直面した課題を克服し、現実的なアプローチを取ることに全力を傾ける。

c.米国政府は、日本がコンテナ貨物100%検査が国際貿易や経済活動に与えうる影響について深刻な懸念を有していることを認識している。DHSは、米国内外のパートナー、貿易・産業関係者と協力し、コンテナ貨物100%検査が、責任ある合理的な方法で、国際貿易のサプライチェーンと円滑に一体化するよう全力を傾ける。DHSは、「安全かつ円滑な貿易」スタディグループを通して、引き続き日本国政府と建設的な議論を行うことを期待している。

2.C‐TPAT(Customs‐TradePartnershipAgainstTerrorism){前50文字下線あり}

a.C‐TPATは、パートナーとして認める輸入者に対して、強固なサプライチェーンの見返りとして、手続を容易にするという恩恵を与えることにより、引き続き進化していく。今日、C‐TPATは、パートナーとして認める輸入者に対して恩恵を与える3段階のシステムが設立されている。C‐TPATがパートナーと認める輸入者に対する目に見える恩恵には、以下のものが含まれる。

1)ターゲティング・スコアが低減される可能性(より少ない検査)。

2)簡易検査の可能性(先頭検査)

C‐TPAT認定輸入者は、実現可能な限り、全ての輸送形態に対し、「先頭検査」を受けられる特権が与えられている。

3)サプライチェーン・セキュリティ専門官の任命(税関国境保護局(CBP)内のコンタクトポイント)。

4)サプライチェーンに混乱が生じた場合の簡易プロセスの可能性(業務復旧)。

5)北部及び南部国境における専用レーン。C‐TPAT認定輸入者により輸入された物品を輸送する運送業者は、FAST(FreeandSecureTrade)プログラムの下で、それらの専用レーンを使用できる。

6)口座ベースの手続(例えば、毎月もしくは2ヶ月に1回の支払)、及び将来的なCBPのプログラムを行う資格がある。

7)保険料の減額、より良い在庫管理、より少ない貨物盗難、及び従業員による盗難、収益の増加、CBPとの連携による企業イメージの維持・浸透。

b.C‐TPATが恩恵を与えるに際し、CBPとC‐TPATプログラムはSAFEPort法を遵守しなければならない。C‐TPATプログラムは、引き続き、新たな恩恵の創設に努めるが、現在、そして今後創設される恩恵は、同法の精神に則って管理されなければならず、また思慮深く創設されなければならない。

3.マニフェスト船積24時間前提出規則{前19文字下線あり}

a.日本国政府との協議の中で、DHSは、24時間ルールは、事前の貨物申告を求めるだけであって、コンテナ自体の物理的な存在は求めていないということを含め、24時間ルールを実施するDHSの義務について、説明してきた(併せて、柔軟的な方法として、直前の貨物マニフェストの変更は、熟慮された上で許可される旨説明してきた)。米国政府は、24時間ルールがリードタイムを長くし、物流効率に影響を与える可能性があることについて、日本国政府が表明した懸念に留意する。

b.米国政府は、日本国政府によって行われたAEO制度の拡充(特定輸出者に加え認定通関業者が、貨物が保税地域に物理的に存在する前に輸出申告を行うことを認める)を歓迎する。この制度の拡充によって、日本の海港において既に延長されてしまっているリードタイムが短縮されることが期待される。米国政府は、日本国政府が日本の産業界と協力し、これらの変更に取り組んだことを評価する。米国政府は、日本の産業界が、24時間ルールの要求を満たしつつ、貿易の流れへの影響を最低限に抑えるために取り組まなければならない技術的な物流上の問題があることを理解している。DHSは、これらの問題に関し、「安全かつ円滑な貿易」スタディグループを通して議論を継続していく。

c.CBPは、2008年1月2日、“10+2”実施規則案を官報に公表した。DHSは、日本国政府からのコメントに感謝する。実施規則策定の過程において、DHSは、日本国政府、及び日本の産業界のコメントを含む、パブリック・コメント募集期間に提出された全てのコメントを慎重に考慮した上で、安全と自由な貿易の流れのバランスのとれた現実的な実施規則を策定する。

B.商品プロセス費(MPF){前15文字下線あり}

 米国の商品プロセス費は、提供された役務の概算の費用にその額を限定している。米国政府は、商品プロセス費に関する日本国政府の要望に留意する。

C.バイオテロ対策{前10文字下線あり}

1.2002年公衆衛生安全保障及びバイオテロリズム法(バイオテロ法)は、米国食品医薬品局(FDA)に対し、第307条(輸入食品発送の事前通知)を含む同法の4つの規定を履行するための規則を制定する権限を与えた。FDAと税関国境保護局(CBP)は、2003年10月に事前通知に関する暫定最終規則案を共同で発表し、バイオテロ法で定められているとおり、同規則が2003年12月12日に発効する一方で、関係者に対し、同最終規則案の規定についてコメントを提出する追加的な機会を与えた。FDAとCBPは、執行にかかる裁量の行使についての履行指針を2003年12月に発表した(この履行指針は、最近では2005年11月に改訂された)。FDAは、最終規則を制定していく中で、暫定最終規則案に対する意見募集期間に受け取った、日本国政府からのコメントを含むすべてのコメントと共に、履行指針が取り扱う分野について、これら規則が貿易に与える影響を可能な限り少なくしながら、バイオテロ法やその立法過程と整合し同法の目的を達成する規定を策定するという目的のもとに、慎重に検討している。

2.米国政府は、2003年12月にFDAが最初に発表した履行指針(最近では2005年11月に改訂された)において、非商用差出人から非商用目的のために米国に輸入され又は輸入のために提供される食品については、FDAやCBPは基本的に規制措置をとらないこととしており、それらの輸送手段が国際郵便であれ宅配便であれ、FDA及びCBPは、事前通知が行われていなくても基本的にそれら食品の輸入を差し止めないこととしていることに留意する。

http://www.cfsan.fda.gov/~pn/cpgpn6.html参照。

3.FDAの目標は、事前通知に関する最終規則をできるだけ速やかに発表することである。最終規則案は現在、米国政府内部で検討中である。

4.在日米国大使館は、日本の食品加工業者、郵便その他の宅配サービス業者及び一般の日本国民が、バイオテロ法の履行について高い関心を有していることを認識し、評価している。在日米国大使館は、日本政府からの要望に応じて、大使館のウェブサイトにバイオテロ関連の規則及び手続きに関する情報を追加するとともに、本件に関する追加的な質問に回答する大使館のコンタクト・ポイントを明示した。

D.米墨間の通関手続の迅速化{前14文字下線あり}

1.2007年3月、ブッシュ大統領は、国境における遅延に関する広範、且つ相互関係のある問題に対処するため、米国国境円滑化作業部会(U.S.BorderFacilitationWorkingGroup)を立ち上げた。各省から構成されるこのグループは、メキシコ側のカウンターパートと会議を行い、特定の通関手続地におけるインフラ、及び人材配置を改善するための、一連の具体的な方策を確認した。それらの方策には、800人の新たな職員の雇用、開庁時間の調整、”信用できる旅行者(trustedtraveler)”用レーンの追加、自動車検査ブースのパイロットプロジェクトの実施が含まれる。

2.オタイ・メサを含むいくつかの場所において、税関国境保護局(CBP)は、過去2〜3ヶ月の間にFAST(自由且つ安全な貿易プログラム)レーンを2レーン追加し、商業用レーンを計10レーンに増やすことができた。しかしながら、通関手続地の多くは連邦政府の所有ではなく、州、地方自治体、民間企業に所有されているため、いつもこのように迅速にレーンを増やすことができるわけではない。また、多くの米国の通関手続地の拡大には、土地の空き状況による制限がある。オタイ・メサの施設の開庁時間は、メキシコ側が閉庁しているのに米国側のみ開庁することはできないので、メキシコ政府と協力して設定している。

3.米国の通関手続地の検査員は、日々脅威に接しており、検査員は、細部に渡る警戒・注意を必要とする検査を行っている。他の省庁と同様に、CBPは、限られたリソースで、その使命とサービスのバランスをとらなければならない。CBPの最重要事項は、テロ対策である一方、CBPはその前身の省庁の伝統的な使命も果たす責任がある。

4.国境における待ち時間は、時期(休日や季節)と曜日、そして一日の時間帯によって大きく異なる。最も正確な現在の待ち時間予測は、CBPのウェブサイトに掲載されている。(http://www.cbp.gov/xp/cgov/travel/wait_times/)米国政府は、米国の税関手続を出来る限り迅速、且つ円滑にすべきとの日本政府の要望に留意する。

E.酒類に関する規制{前10文字下線あり}

1.蒸留酒容器の容量規制{前10文字下線あり}:米国政府は米国において販売される蒸留酒製品の容量規制に関する日本国政府の懸念に留意し、また日本国政府の当該規制の改正要請について留意する。米国政府は日本国政府に対し、連邦政府第27編70.701(c)に基づき、何人にも認められている容量に関する規制を改正するための嘆願書提出の手続ならびに規則に関する情報を提供した。日本国政府は、望む場合には、連邦規則第27編第70部に示された手続を始めることで、プロセスを開始することができる。

2.米国への輸入酒類の表示承認証明{前15文字下線あり}:米国政府は見本市や販売促進のための商用サンプル用酒類の輸入に関する日本国政府の懸念について留意する。連邦規則第27編27.49及び27.74に規定される現行の規制は、表示承認証明書(COLA)なしではごく限られた量のサンプルの輸入しか認めていない。米国政府は2007年3月29日に、見本市用又は商用サンプル用を目的とする場合において、COLAがなくても、一定の条件を満たせば、免許を有する輸入者によるサンプル用酒類の輸入が許される旨の、酒類タバコ税貿易管理局通知(TTB)「見本市あるいは販売促進又はその送付のためのサンプルの輸入」を発出した。TTBは量に関して上限を設定していないが、当局は申請について、ケース・バイ・ケースで審査し、その量が販売サンプル用として適切な量であることを満たしていなければならないことに留意する必要がある。本通知は改正ではなく、長期間行われていた実務を明確化したものに過ぎない。輸入された飲料製品の入国条件が満たされれば、輸入された製品は米国税関・国境警備局の通関において問題を有しない。これはCOLAを通じて通関した製品にも、あるいは長期間行われていた実務を通じたCOLA免除の承認をうけた製品にもあてはまる。

3.酒類の消費場における販売許可:米国政府はカリフォルニア州およびニューヨーク州における日本産しょうちゅうの小売に関する日本国政府の懸念について留意する。連邦酒類管理法によれば、酒類の小売は主に州法の管轄下におかれる。

a.米国政府は日本国政府に対し、日本国政府にはカリフォルニア州政府およびニューヨーク州政府に対して、日本産しょうちゅうをビール及びワインの免許をもって消費用に販売することを許可する、又はビール及びワインの免許をもって小売場で消費できるよう、それぞれの州法の適用除外又は改正を嘆願する選択肢がある旨情報提供してきた。

b.酒類の小売は主に州法の管轄下におかれるものの、米国政府は、日本国政府から提出された要望をカリフォルニア州およびニューヨーク州政府に対して伝えた。

c.ニューヨーク州において、法案(S.6991/a.10116)が州議会に提出された。この法律は、ワインの消費場用販売免許が与えられた者に、ある種の低アルコール飲料の販売を認めるよう、酒類管理法を改正する可能性がある。この法律案において、「ある種の低アルコールの蒸留酒、スピリッツ、蒸留物及びその他の酒類」とは、農産品から製造された、アルコール分が24度を超えないあらゆる蒸留酒、スピリッツ、蒸留物及びその他の酒類を意味する。

Ⅲ.領事事項{前6文字囲み線あり}

A.査証(ビザ)手続{前12文字下線あり}

1.「ビザ免除プログラム近代化」条項{前22文字下線あり}:9.11委員会勧告実施法(「9.11法」)第711条は、既存のビザ免除プログラム対象国及びビザ免除プログラム参加希望国に影響を及ぼすビザ免除プログラムに対する4項目の必須のセキュリティー強化措置(電子渡航認証システム(ESTA)の使用、米国との渡航者情報交換に関する合意、空白旅券及び発行済みの紛失盗難旅券についての米国への通報に関する合意、最終国外退去命令が発出されてから三週間以内の市民の本国送還)につき規定している。法律の要求事項を実施するにあたり、米国政府は、合法的な渡航を円滑化させつつ、「安全な国境とオープンなドア」という二つの目標につき適切な考慮を払う。

a.ESTAシステムの詳細についての日本政府の要請に対し、米国政府は、2008年6月、ESTAシステムの実施方法について説明を行った。国土安全保障省はまた、ESTAが求める事項について情報提供をするため、影響を受ける全ての渡航者や利害関係者に対する包括的なアウトリーチ計画の立案を目的に、国務省及び商務省と緊密に協力している。

b.米国政府は日本政府に対し、ビザ免除プログラムに適格であり続けるために、2009年10月までに上記のその他の必須の措置を実施するよう要請した。これらの要請事項を満たす現時点での合意、取決め、慣行は考慮に入れられることとなる。

c.また、9.11法には、3つの裁量的セキュリティー要素(空港セキュリティー基準、エアー・マーシャル・プログラム、渡航書の基準)がある。国土安全保障省は、既存のビザ免除プログラム対象国に対し、認定を継続するために法律で義務付けられた2年ごとの国別見直しを実施する際、これらの裁量的措置を考慮に入れる。例えば、日本は、国土安全保障省税関国境警備局の成田空港における出入国助言プログラム(IAP)への参加と国際民間航空機関(ICAO)の基準の遵守を通じて、9.11法に定められている空港セキュリティー基準の一部を既に満たしている。

d.国土安全保障省は、各ビザ免除プログラム対象国に対し、上記の新しいセキュリティー条項に適合する意図を記した了解覚書(MOU)への署名を求めている。国土安全保障省はまた、各ビザ免除プログラム対象国に対し、既存の取決めや合意がビザ免除プログラムに関する法律の新しいセキュリティー要件を満たさない場合、強化された情報交換の取決めを実施することを求めている。

e.国土安全保障省職員は、日本国政府の代表と会談し、ビザ免除プログラムのMOU文書及び新しいビザ免除プログラムのセキュリティー要件につき議論を行った。また、コンプライアンスについての国土安全保障省の期待についても議論された。

2.ビザ更新手続の効率化{前12文字下線あり}:

a.米国国務省は、2004年7月、生体情報ビザの発行及びほぼ全ての申請者の面接という要件が課せられたこと等の理由により、米国内におけるビザ更新を停止した。米国法上、国務省のビザ担当部門は、米国内において生体情報を収集することが出来ず、また、国内においてビザに関する決定を行うことが出来ない。

b.米国政府は、ビザ保持者に対する本決定の影響について日本政府により提起されている懸念を認識している。米国政府は、ビザの国内更新を再開する計画を有していない。米国政府はこれらの懸念に対処するため、ビザの国内更新以外の選択肢について研究している。

c.米国政府は、申請者は国土安全保障省に対し滞在延長を申請することによって、ビザの更新をせずに米国内の滞在を延長することが出来る旨説明した。ただし、申請者は、米国を発つ際には、米国外の米国大使館乃至は総領事館でビザを再申請することが必要となる。米国政府は、この米国法上の要求がビジネス渡航に影響を与えるおそれがあるという日本政府の見解を認識している。

d.米国政府は、申請者は自国において新しいビザを申請することが慫慂されるが、ビザの面接を予約すれば第三国において申請してもよいことを説明した。米国政府は、特定の第三国におけるEビザの更新を許可するとの日本政府の要請を認識している。

e.在日米国大使館及び総領事館におけるビザ申請処理は効率的且つ円滑である。東京におけるビザ面接予約の平均待ち時間は1日から2日であり、東京の米国大使館は、承認済のビザの発行のため、一般的には追加的に一日求めている。現在のところ、待ち時間は、日本に所在する他の米国総領事館と同様である。第三国における待ち時間は、国務省領事ウェブサイトを通じて明確である。

f.米国国務省は、申請者のビザ更新の一助となる新しい手続立ち上げの最終承認を求めている。これらの手続によって、ビザ申請者が居住国乃至は国籍国に物理的に居て、且つ、これらの国で申請書の提出がなされるとの条件の下、ビザ申請に対する決定を行う大使館や総領事館に実際に行かなくてもよい形でビザ申請が可能な人の数が増えるであろう。この変更についての具体的で重要な部分が機能すれば、米国国務省はこのプログラムを公表する。これらの手続が適用されるためには、申請者は、10本指の指紋の提出及び領事官による面接を済ませていなければならず、以前と同じ種類のビザを、有効期限満了後12ヶ月以内に申請しなければならない。米国政府は、米国国内の申請者が国際郵便によって日本においてビザの更新申請を許可されるべきであるという日本政府の要請を認識している。

3.在日米国公館におけるビザ手続の改善{前19文字下線あり}:

a.米国政府は、札幌及び福岡の米国総領事館における月ごとの非移民ビザの申請手続を開始することによって、日本におけるビザ・サービスを拡大して欲しいという日本国政府の要請に対応した。札幌では、1ヶ月に2日間の予約日があり、計25の予約を受け付けて需要に対応しており、福岡も同様のスケジュールである。

b.米国政府は日本に5つの非移民ビザ申請受付公館を置き、他国と比べて非常に好ましいレベルにある。更に、東京における予約のための待ち時間は、観光・ビジネスビザは1日であり、学生・交流ビザも1日である。

c.現在、名古屋の米国総領事館においてビザ申請を受け付ける計画は無い。名古屋は東京から163マイル、大阪から81マイルの距離であり、これら三都市は、高度に発達した鉄道及び高速道路のネットワークにより繋がっている。米国政府は常に、日本の5つの非移民ビザ申請受付ポストを含め、全ての海外ポストにおいて、良質な領事サービスの提供を追求している。

4.ビザ発給及び有効期限について{前17文字下線あり}:

a.企業内転勤(L)ビザの有効期限は、法律によって制限されている。専門知識の資格で雇用されている場合、L‐1ビザは5年に限定されており、経営・役員の資格で雇用されている場合、L‐1ビザは7年に限定されている。その期限を過ぎるとビザの更新は行えず、以降、延長はなされない。L‐1ビザに関する法律のいかなる変更についても、米国議会によってなされなければならない。

b.H‐1Bビザの有効期限は及び年間発給枠についても、米国議会によって管理されている。H‐1B非移民ビザ保持者については、法律によって最大6年の滞在に限定されている。

c.L‐1及びH1‐Bビザ保持者は、米国において、合法的永住者となるよう、自らの資格の変更を合法的に申請することが出来る。毎年、多くの非移民ビザ保持者が、米国において、自らの資格を雇用に基づく移民の資格に変更している。

d.国土安全保障省は、H‐1Bビザ保持者が、雇用に基づく移民の請求中であるか、資格変更の申請が手続中であり、且つ、労働許可申請乃至は請求が受理されてから365日を超える場合、ビザ保持者の6年という資格有効期限を1年追加することができる。

e.企業は、従業員がLビザ乃至はHビザで米国に到着した直後に、従業員を数年間に亘り米国に留めておくことを意図して、移民ビザを請求することが出来る。米国法は、外国人が移民ビザの取得を目指しながら非移民ビザで米国において働くことを許容している。

f.米国法は、合法的永住者に帯同し米国に滞在することを希望している合法的永住者の家族は、米国において合法的滞在者の身分を申請すべきであるとしている。または、合法的永住者は、滞在資格を放棄し、労働ビザを取得することが出来る。これらの制限は法律(移民の意図の推定)及び国土安全保障省規則(合法的永住者は、非移民ビザを所持することは出来ない)に定められている。

g.L‐1ビザ申請者が、都合により被用者の氏名、役職名、給与を明記した企業概要を提出しなければならないという要件に対する日本政府の要請に関し、米国政府は、日本政府のプライバシー保護についての懸念を認識しており、また、領事官が、申請者が申請しているビザの種類の要件を満たすか否かを決定するために必要な追加的情報のみを要求していることを指摘している。

B.運転免許証{前7文字下線あり}

1.RealID法{前7文字下線あり}:

a.RealID法は、「このサブパラグラフに則って発行された仮の運転免許証乃至は仮の身分証明書は、申請者の米国における合法的滞在期間のみ有効であり、もし合法的滞在期間について明確な定めが無い場合、1年間有効である。」と明確に定めている。国土安全保障省は、RealID法で用いられている用語の意味を、法文又は議会の意図と矛盾して解釈する権限を有していない。

b.米国政府は、RealID免許証の「公的目的」を真に必要最低限のものに限定するという日本政府の要請に留意している。議会によって法律の中で列挙されているRealID免許証の公的目的は、連邦政府施設への立ち入り、連邦規則に服する商用航空機への搭乗、原子力発電所への立ち入り、に厳格に限定されている。国土安全保障省は、RealID法の文言を法の目的に沿って解釈していく。

c.2008年1月1日、国土安全保障省は、2005年RealID法の運転免許証及び身分証明書の要件実施に関する最終規則を発表した。最終規則は、2008年1月29日に官報に掲載された。国土安全保障省は、2007年5月に、RealID法に関する日本政府のコメントを受領した。規則制定過程において提出された21,000件のコメント全てが、最終規則起草の際、真剣に考慮された。

d.各州がRealIDの延期を申請する期限は2008年3月31日であった。56の行政管轄区全てが、2009年12月31日までの延期を認められている。

2.国際運転免許証の取扱いの改善{前14文字下線あり}:

a.日米両国が締約国である1949年の道路交通条約に則り、米国旅行中の日本国民は、1年間に限り、日本の当局によって発行された運転免許証を用いて米国において運転することが許可されている。しかしながら、日本国民が米国の州の住民となる場合には、居住する州の居住法及び規則を尊重しなければならない。これらの居住法には、運転する権利を継続するための条件の一つとして、一定期間内に州の運転免許証を取得することが含まれる場合がある。居住による利益を求めている人に、居住を選択した行政管轄区の関連規制を遵守するよう求めることは、協定上の米国の義務と矛盾しない。

b.米国政府は、国際運転免許証乃至は外国の運転免許証が、居住要件とは無関係に短期間で失効するという州の規則について認識していない。

3.各州の制度の改善{前8文字下線あり}:

a.米国国務省は、ジョージア州に、運転免許証の手続に関する日本国政府の懸念を伝達した。ジョージア州議会は、外国人が自国の免許証を持ち続けることを許可するよう、ジョージア州法改正法案(SB488)を導入した。SB488は、ジョージア州議会両院を2008年4月11日に通過し、2008年5月18日にソニー・ペルデュー知事によって署名された。新法は、2009年1月1日に施行される。

b.米国国務省は、マサチューセッツ州自動車登録所のオンブズマン事務所に対し、運転免許証手続に関する日本政府の懸念を伝達した。オンブズマン事務所は、保証人要件は、国籍に関わりなく地域の運転免許試験を受験する全ての人に適用されると述べた。オンブズマン事務所は、マサチューセッツ州自動車登録所は外国人ドライバーのニーズに非常に敏感であり、国際的な書類を検証し、州における外国人ドライバーを支援するために非常に多くの資源を投入していることを強調している。

c.米国国務省は、ケンタッキー州に対し、運転免許証手続に関する日本政府の懸念を伝達した。

d.米国国務省は、ニューヨーク州に対し、運転免許証発行に関する日本政府の懸念を伝達した。ニューヨーク州自動車局(DMV)は、米国国務省に対し、ニューヨーク州運転免許証は、免許証に記載されている合法的滞在期間に関わらず、免許証に記載されている有効期限まで有効であることを伝えた。ただし、ニューヨーク州は、滞在を延長する又は法的地位を変更する外国人ドライバーは、そのような変更を反映させ免許証を更新するため、地域の自動車局に変更に関する書類を提出することを求めている。

C.出入国管理{前7文字下線あり}

1.出入国手続{前7文字下線あり}:

a.国土安全保障省税関国境保護局は、事前承認されたリスクの低い渡航者の手続を迅速化するため、簡易出入国審査制度(SENTRI)プログラムを導入した。SENTRIユーザーは、メキシコから米国へ入国する際、専用レーンにアクセスすることが出来る。現在のところ、米墨間の国境の両側で15万5000人を超える渡航者が同プログラムに登録している。

b.税関国境保護局は、SENTRIプログラムの下、渡航者のニーズに対応している。過去2年間、税関国境保護局は、米墨国境沿いの9つの大規模出入国港の16レーン(カリフォルニア州サン・イシドロ、同州オタイ・メサ、同州カレキシコ、アリゾナ州ノガレス、テキサス州エル・パソに2つの通路、同州ラレド、同州イダルゴ、同州ブラウンズビル等)を含む同プログラムの拠点を拡大してきた。税関国境保護局は、最近、エル・パソ出入国港におけるSENTRIレーンの時間を拡充し、イスレタ国境通路を24時間年中無休とし、平日は1日2時間、週末は1日6時間追加した。税関国境保護局はまた、2008年4月に、ラレド出入国港において新しいSENTRIレーンを追加した。

c.税関国境保護局は最近、サン・ディエゴにおける申請処理時間を18ヶ月から4‐6週間に短縮するオンライン申請・手数料支払い手続を立ち上げた。税関国境保護局は、SENTRI登録期間を、手数料を引き上げることなく2年から5年に延長した。税関国境保護局は、信頼できる旅行者(TrustedTraveler)レーンに無線周波数(RF)技術を導入することによって、本人確認を向上させた。また、この技術を、西半球渡航イニシアティブ(WHTI)の一環として出入りの多い陸上国境の出入国港全てに導入する計画である。

2.入国審査手続の一貫性{前12文字下線あり}:税関国境保護局の担当官は、米国における入国関係手続に関する全ての関連法・関連政策について十分な情報が提供され、訓練されている。

D.滞在許可証{前7文字下線あり}

1.滞在許可証更新手続の迅速化{前15文字下線あり}

a.米国政府は、滞在許可証の時宜に適った更新の必要性についての日本国政府の懸念を理解する。

b.日本国民は、法律により、全ての外国国民と同じ便益を得ている。現在、更新のための処理日数は約60日である。プレミアム処理サービス(1,000ドルの追加手数料を支払うことで、15歴日での処理を保証するもの)を要求してもよい。このオプションは、I‐129フォーム(非移民労働者の申請)の申請との関係で更新を申請する際にのみ選択できるものである。プレミアム処理サービスは、I‐129フォームと同時に申請されない独立のI‐539フォーム(非移民資格の延長乃至は変更の申込書)については利用出来ない。

2.滞在許可証の有効期間の延長・自動更新{前20文字下線あり}

a.米国政府は、滞在許可証(I‐94)の有効期限の延長に関する日本国政府の要請を認識している。米国市民権・出入国サービス(USCIS)は2006会計年度より、未処理事務除去を優先事項としてきており、未処理事務除去という目標の達成に向けて、大幅な進展を遂げてきている。

b.2003年の設立以降、USCISは、その他の措置と共に、全体の50%分の申請書や給付についての電子ファイルを拡大してきている。USCISはまた、ウェブサイトを通じて、申請者が事案の現状についての情報へアクセスしやすいように改良してきた。USCISはこれらの取組を継続していく。

c.米国政府はまた、E‐1とE‐2のビザ保持者の大半は頻繁に米国外に渡航し、そして、有効なビザを保持していれば米国への再入国に際し追加的に2年の滞在延長が与えられるという点を指摘している。

E.社会保障番号(SSN){前13文字下線あり}

1.社会保障番号取得期間の短縮化{前14文字下線あり}:米国社会保障庁(SSA)は、全てのコミュニティーにおける社会保障番号の迅速な発給の必要性を理解している。米国社会保障庁においては、非市民の入国資格をただちに確認する国土安全保障省の外国人滞在資格証明システム(SAVE)による最初の検証結果が即座に入手できるSSNカード申請数の増加が見られる。経験上、国土安全保障省は、米国社会保障庁によるSAVEの電子的な追加認証要請に対し、3‐4日以内で回答してきている。ただし、国土安全保障省が追加情報をマニュアル形式で探さなければならないために、わずかの割合で、検証に追加的な時間がかかってしまうケースが残っている。

2.労働査証保有者家族への社会保障番号発給{前19文字下線あり}:

a.社会保障庁は、非市民が国土安全保障省の労働許可を有している場合や労働していない正当な理由がある場合には、彼らはSSNを取得する資格があると認識している。標準化された作業と登録プロセスの適用を確保するため、社会保障庁フィールド・オフィスの職員は、外国人入国分類コードによって非移民SSNカード申請をどのように処理するかについての再教育訓練等を受講する。

b.場合によっては、個人の労働許可証明(EAD)の代わりに、労働許可を受けた特定個人の婚姻関係の証明を受け付けることは可能である。扶養家族(E‐1、E‐2乃至はL‐1の配偶者)がEADを取得せずにSSNを申し込む時、その人は入国資格(I‐94と外国パスポートの組み合わせ)の証明に加えて、配偶者との婚姻関係の証明を提出しなければならない。こうした状況においては、書類である。日本では、戸籍が婚姻を証明するために用いられる正式なフォームであるので、社会保障庁は、日本の戸籍を婚姻関係の証明として受理している。社会保障庁は一般的に、日本の大使館・総領事館において発行される日本の戸籍の翻訳を受理している。社会保障庁のウェブサイト(http://www.ssa.gov/pubs/10120.html)において、外国人向けのSSNに関する質問集へのリンクとともに、SSN及び社会保障カード取得のための規則についての情報を提供している。

F.居住者証明書{前8文字下線あり}

 米国政府と日本国政府との間の租税条約は、それぞれの国で認められた居住者には、源泉徴収税の税率減等の特典を与えている。米国政府は、同条約の下、源泉徴収税の税率減の適格性がある外国人であることを「自己認定」することを許可しているが、日本国政府は、条約上の特典を求める者が米国居住者であることを米国内国歳入庁(IRS)が認定することを求めている。米国内国歳入庁はこの居住認定を、フォーム6166(リストに掲載されている個人もしくは主体が、連邦所得税の対象となる米国住民であることを認定する、米国財務省の便箋に印刷された書面)で提供している。フォーム8802(米国居住証明の申請書)は、フォーム6166を申請するのに用いられる。米国内国歳入庁は、フォームの簡素化及び利用者にとり使いやすいものとするよう努力をしてきている。

Ⅳ.投資関連規制{前8文字囲み線あり}

A.エクソン・フロリオ条項{前13文字下線あり}

1.米国政府は、対米外国投資委員会(CFIUS)において、特定の外資の対米投資が米国の国家安全保障に影響があるかどうか審査する過程を改革、改善するための多くの重要な措置を講じた。2007年外国投資・国家安全保障法(FINSA)、大統領令第11858号(2008年1月23日改正)、米財務省によるCFIUS規則案(2008年4月21日)を含むそれらの改善措置によって、海外の投資家に対し有益となるような、CFIUS審査過程の透明性、及び確実性の向上がはかられた。FINSAに定められているとおり、米財務省は本年後半に、これまでにどのような種類の取引がCFIUSの審査を受け、安全保障上の考慮が提起されたかについてガイドラインを発表する予定である。

2.修正された大統領令は、CFIUSと大統領との関係及び、CFIUS議長、主要な省庁、そしてその他のCFIUSメンバー間の役割を定義しており、透明性と予見可能性を増進させるものである。また、大統領令は、取引に脅威軽減条件(riskmitigationcondition)が課される前に、CFIUSが追加的に、厳密な分析を行うことを要求している。米財務省の規則案(1991年のCFIUS規則のアップデート)は、FINSAにより修正された1950年国防生産法第721条、及び大統領令を満たすものである。米財務省の規則案により、多くの手続規則、及びどの取引がFINSAの対象となるかが明確化されるため、今後、透明性と予見可能性が増す。米財務省は、2008年6月9日まで、同省の規則案についてのパブリックコメントを受け付け、全てのコメントを検討した後、最終規則を発表する。FINSAによって修正された第721条と米財務省による規則案は、機微なビジネス情報、及び米政府の機密情報を保護するため、引き続きCFIUSに対し、CFIUSに提出された全ての情報について、厳しい守秘義務を維持するよう要求する。

3.米国政府は、投資関連規則には、透明性、予見可能性、説明責任が重要な要素であるという日本国政府の見解を共有する。

Ⅴ.特許制度{前6文字囲み線あり}

 日米両国政府は、効果的かつ実体的な特許法の調和に向け相互に支援することを再確認する。米国政府は、日本国政府との議論を喜んで継続し、この分野における日本側の要望を考慮していく。米国政府は、特許問題に関して米国議会との協力を適切に継続していく。

A.先発明主義{前7文字下線あり}

 米国は、米国の先発明主義が独特の制度であることを認識している。先願主義はほとんどの国で採用されているが、米国内では依然として議論がある論点である。米国特許法を先発明主義から先願主義へと変更する法案(H.R.1908及びS.1145)が、現在米国上下両院議会で審議されている。H.R.1908は、2007年9月7日に下院本会議を通過し、上院の対応法案は、上院司法委員会により承認された。米国は、審議の最新状況につき、引き続き適宜情報提供を行う。法改正への努力に加え、米国は、日本及び他のWIPOの先進国Bグループの国々と実体特許法条約、先願主義の観点から起草された関連規定草案に関する協議を行い、特許法の調和を追求していく。

B.早期公開制度{前8文字下線あり}

 現在米国上下両院で審議されている法案がこの問題に対応している。S.1145は、全ての係属中の出願の18か月時点での公開を求めるものであり、日本国政府の見解と一致している。H.R.1908は、出願から18か月か、二度目のオフィスアクションから3か月かのどちらか遅い方での公開を求めるとする、修正された例外規定を維持している。米国は、審議の最新状況を適宜提供し続ける。

C.再審査制度{前7文字下線あり}

 米国政府は、査定系及び当事者系の再審査では、第三者請求人の参加が制限され、特定の特許無効事由しか適用されないことを認識する。上程されている法案(H.R.1908及びS.1145)の新条項は、付与後レビューの対象を拡大する、付与後異議制度を導入するものである。

D.発明の単一性を満たさないことによる限定要求{前23文字下線あり}

 米国政府は、特許協力条約(PCT)以外の出願に適用される発明の単一性の限定基準が、PCT出願に適用されるものと異なることを認識する。米国政府は、これら基準の相違についての検討を継続するが、米国の限定基準とPCTの単一性基準のいずれかの適用を受けるかに当たり、出願人は、米国特許商標庁(USPTO)への出願を、国内出願とするか、PCT経由にするかの選択肢を有することを付言する。E.ヒルマー・ドクトリン及び特許法第102(e)条米国政府は、日本国政府がヒルマー・ドクトリン及び特許法第102(e)条に関する懸念を有していることを認識している。また、米国議会に上程された上下両院の法案が、日本国政府の視点から見て好意的にこの問題に対応していることが留意されるべきである。更に、米国は、この問題を、日本及び他のWIPOの先進国Bグループの国々との特許法調和に向けた協議において引き続き議論する。

F.先行技術の情報開示義務{前13文字下線あり}

 米国政府は、米国特許商標庁の情報開示義務(IDS)に関する日本国政府の懸念を認識し、検討を継続する。米国政府は日本国政府の見解に留意し、一方で出願人にIDS義務を課すことと、他方でより高品質、効果的、効率的な審査プロセスを促進することとのバランスの関係から、当該見解についての検討を継続する。

G.植物特許{前6文字下線あり}

 米国政府は、植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)に基づいた新規性要件と、植物特許に関する米国内法に基づいた新規性要件との間の対応について、日本国政府より表明された懸念を認識している。ここ数年の間に、こうした懸念に対応する幾つかの法案が上下院に提出されたが、成立したものはない。米国政府はこの論点について、日本国政府より表明された懸念を考慮し、引き続き検討していく。

Ⅵ.政府調達{前6文字囲み線あり}

 米国政府は、WTOの政府調達協定(GPA)の対象となる調達に対しては、連邦バイ・アメリカン法(BAA)の適用を控えている。米国政府は、GPAの対象とならない調達にのみバイ・アメリカンの優先性を適用している。

A.安全で責任のある柔軟かつ効率的な交通標準化法{前25文字下線あり}

1.「利用者のためのレガシー(SAFETEA‐LU)」は、2005〜2009年の高速道路及び交通機関に関する連邦の陸上運輸計画を承認し、高速道路及び交通機関への補助金に関する一定の制限の適用を継続させた。そのようなプロジェクトがGPAの適用基準額を上回る場合は、GPA締約国の供給業者は、入札に参加することができる。しかしGPAの附属書Iの米国の付表2の注釈5には、「本協定は、大量輸送及び高速道路プロジェクトのための連邦資金に関連した制限には適用されない」と記載されている。したがって米国政府は、それらのプロジェクトのための連邦資金に関連したバイ・アメリカの制限については、その適用を控えることはせず、よって、その制限は引き続き適用されている。

2.しかし、2007年9月、連邦運輸省公共交通局最終規則の大量輸送規則に二つの変更が行われた。これは、日本企業の参加を促進し得るものであり、また、日本国政府が提起した懸念に対応し得るものであった。第一に、部品及び従属部品の一貫性のある分類は、米国の運輸関係機関が、国外の供給元から特定の交換部品を取得することを可能にすることになる。第二に、公益免除のための手続の公表によって、国外の車両及び最終製品に関する免除手続の処理が促進されることになる。

B.国防省調達規則{前9文字下線あり}

 米国国防省(DoD)は、連邦議会により新たな国内調達制限が課されることに引き続き反対する。2008会計年度の国防授権法において、連邦議会は、10U.S.c.2533bの特殊金属に関する制限に変更を行ったが、これは、国防省に新たな柔軟性を与えるものである。例えば、新しい法律は、電子機器についてのより広範な例外を含んでおり、また、ファスナー、鋳物、及び、高性能磁石についての制限を含む、商用既製品(COTS)に関する新たな例外を設けている。特殊金属に関する制限は非常に複雑であることから、国防省は、この法律の適用について協議し、また、日本の産業に影響を及ぼすバイ・アメリカン法における規制について、一層の明確化を行うために、要望があれば日本の関係当局者と会合する。

C.米軍基地建設工事関連規制{前14文字下線あり}

 米国政府は、日本国政府の在沖米海兵隊のグアム移転に関する懸念を認識し、右に対する米国政府の見解を以下のとおり説明した。

1.現在、国防連邦調達規則補足(DFARS)では、太平洋及びクワジェリン環礁における米領土或いはペルシャ湾に接する諸国における米軍基地における建設工事に関する契約については、外国企業の入札価格が米企業の最低入札価格より20%低くない限り、米企業が受注すると規定している(DFARS236.273)。同規定は、米国軍事建設歳出法に基づく軍事建設工事関係の調達について適用される。日本政府からの直接の財政支援を受けて行われる建設工事や特別目的機関に対する融資等によって行われる建設工事は、米国軍事建設歳出法に基づく資金供与はされず、同規定の適用を受けない。

2.現在、日本政府からの直接の財政支援を受けて行われる建設工事の額は、貿易協定法(TradeAgreementAct)の適用対象となる基準額(740百万ドル)を超えることが見込まれる。米国産品の使用をコントラクターに義務付けるバイ・アメリカン法の規定は、貿易協定法の基準額以上の契約には適用されず、そのような建設工事はWTO政府調達協定の適用を受ける。このため、日本を含め、WTO政府調達協定の全ての加盟国の企業は、右建設工事の入札・契約において、米国企業と同等の条件を享受できる。

3.米国製品搬入のための米国船籍の使用が義務づけられている法令について(DFARS247.572)、1904年貨物留保法は、国防省の全ての契約における物品の輸送を対象としている。このため、日本政府からの直接の財政支援を受けて行われる建設工事に関する物品も貨物留保法の適用を受ける。

4.連邦調達規則(FAR28.1)は、連邦政府の発注する工事に対する履行保証と支払い保証のため、受注業者に対して契約金額の100%を保証として積むことを義務付けている。これは、内外無差別な規定であり、日本政府からの直接の財政支援を受けて行われる建設工事にも適用される。この点に関し、州、コロンビア特別区、準州若しくは領土の法律に基づき設立された法人、例えば、日本の保険会社の米国法人子会社等が発行する履行保証については、ボンド発行に関する米国財務基準に基づき、当局から認定されれば、有効である(31CFR223.5)。また、現金や米国債は、履行保証の付保に代わるものとして、認められている。

Ⅶ.輸出関連規制{前8文字囲み線あり}

A.輸出許可手続{前8文字下線あり}

1.2008年1月22日、ブッシュ大統領は輸出管理令を発出したが、これは、米国の国防関連の貿易政策及び貿易実務が米国の国家安全保障戦略を一層後押しすることを確保するものである。この指令に基づき必要となる改革パッケージは、米国国務省が防衛関連の機器、サービス及び技術的データの輸出許可の方法を改善し、米国の友好国、同盟国、特に、コアリション・パートナーの軍事装備品に対するニーズに一層迅速に対応することを可能にするものである。

2.輸出管理令は、資金及びその他の資源の追加、並びに、手続上の改革を義務づけているが、これは、米国軍需品リストにより管理されている品目に対する輸出許可申請の処理を迅速化することになる。この輸出管理令の結果、許可申請処理に要する時間は短縮されることになるが、米国政府は、こうした品目が不正な受領者に流れることを防ぐための既存の措置が引き続き強力かつ有効であることを確保することを約束している。

3.大統領によって指示された具体的措置には、次のものが含まれる。

a.防衛関連貿易許可の時宜を得た決定のために、追加的な財源及び情報支援が利用可能になる。

b.ガイドラインが発出されることになるが、これは、防衛関連の貿易に関する輸出許可申請について、議会に対する通報等、追加的な時間を必要とする強い理由がない場合には、米国政府に対し60日以内に決定を行うことを義務づけるものである。この点についての当初の取り組みの結果、国務省に係属中の輸出許可申請の数が2007年4月以来ほぼ50%減少した。

c.電子的許可システムは、あらゆる種類の防衛関連の貿易許可の申請を可能にし、全ての代理店が、同一の電子的情報にアクセスすることができるように改善される。

d.国務長官は、NATOその他の同盟国の二重国籍を有する者又は第三国の国籍を有する者が関係する輸出についての米国の規制を最新のものにする。

e.物品裁定(CommodityJurisdiction:CJ)プロセスの下で、国務省と商務省が関係する許可の管轄問題を迅速に解決することを可能とするために、正式な省庁間紛争解決メカニズムが創設される。国家安全保障会議も、CJプロセスを効率的で迅速なものとすることを確保するために、検討を行うこととなる。

f.輸出執行調査の実施のための手続を改善するために複数の省庁からなる作業部会が設立される。

B.再輸出規制{前7文字下線あり}

1.米国の再輸出管理の策定と実施を定める米国の法律は、いかなる特定の国にも適用除外を認めていない。しかし、産業安全保障局(BIS)は、米国の再輸出規制に関する日本国政府の要望に対応して、以下のことを行った。

a.今年初めに、日本語に翻訳した再輸出ガイドラインを同局のウェブサイトに再度掲載した。

b.再輸出規制に焦点を当てた東京でのアウトリーチセミナー(2日間)及び大阪での類似のセミナー(1日)を2008年3月に開催した。

2.米国の企業には、顧客へ品目分類情報又は輸出管理品目番号(ECCN)を提供する米国法上の義務はない。BISは、米国の輸出業者が品目分類情報を共有する別の方法を展開しており、

a.電子的な品目番号請求フォームに、申請者の品目分類の結果をBISのウェブサイトに公開することの可否を申請者に尋ねるための記入欄を追加することに取り組むことを明言し、また、

b.申請者が、過去に発行を受けた分類の結果をBISのウェブサイトに掲載させる方法の検討を開始した。

3.米国政府は、日本国政府が提起した点に鑑み、ECCN問題について引き続き検討し協議する。

Ⅷ 基準及び規格{前9文字囲み線あり}

A.メートル法{前7文字下線あり}

1.米国国立標準・技術研究所(NIST)は、引き続き、米国内の通商においてメートル法の使用及びその利益を増進する。民間団体である米国メートル法協会、及びその他のパートナーと協力しつつ、NISTは、ウェブサイトやその他のツールを通じた情報提供やアウトリーチ活動を実施し、また、国民及び業界を啓発するために毎年膨大な数の問い合わせに対応している。

2.現在、米国の州の96%が、自州の管轄権の対象となる包装にメートル法の単位を使用することを許可している。製品には、自動車用付属品、衣料品、及び、家庭用家具等、連邦の規制の対象ではないものが全て含まれている。ニュージャージー州は、包装品にメートル法の単位のみを使用することを許可することを2007年に発表したが、これによって、消費者用製品の包装にメートル法のみのラベル表示を行うことを法的に禁止している州は、2州のみとなった。NISTは、他の団体とともに、これらの残りの州に対する協力を継続する。

3.新技術は、メートル法の使用を広める機会を提供するものである。例えば、商用水素測定基準の開発のための米国国家作業部会燃料別小委員会は、商用販売及び道路標識において、キログラム単位に基づく水素燃料販売方法を提案した。これが実施された場合、米国のやり方は、販売方法という点において世界の水素市場と整合的なものとなる。

4.NISTは、引き続き、日本国政府と意見及び情報の交換を行っていく所存であり、また、適切に、また可能な範囲で、個々の問題について日本国政府と協働していく。

B.コンテナ重量制限{前10文字下線あり}

1.運輸省連邦高速道路局(FHWA)は、日本国政府に対し、米国の各州は、国際商取引(他国発又は他国向け)として運ばれるコンテナに積載された貨物を「分割不可能な積荷」とみなすことを選択することができることについて説明した。多くの州が、この選択を行っており、各州は、州の政策によって、国際商取引として運ばれるコンテナに分割不能な積荷としての許可を交付することが可能であれば、州間高速道路の輸送を許可する重量超過許可証を交付することができる。さらに、各州は、高速道路交通インフラの運用と維持に責任を持ち、どの経路が重量超過物の輸送に耐えられるかという点についての最も詳しい知識を保持しているため、現時点で重量超過物の輸送を許可する権限を保有しており、また州に留保された憲法上の権限にしたがい、今後もそれを保有し続けることになることにつきFHWAは説明した。FHWAは、港湾と最終目的地との間の商業的輸送を円滑にするための広域許可の制定について、州と協働してきており、今後も適宜それを継続する。

2.米国政府は、許可発行をより効率的なものとするべく、広域的な取り組みを継続する。FHWAの商用車のサイズ・重量チームも、連邦の重量制限について日本国政府との作業及び関連事項の協議を継続する。

C.有機農産物の同等性審査{前13文字下線あり}

 2008年5月19日、米国政府は、日本の有機認証の申請に対する前向きな評価が終了したことを公式に伝える書簡を日本国政府に提出した。両国政府は、日本の有機農産物や有機加工食品の認証プロセスにおける次の段階である現地調査を完了させるための作業を継続することに同意した。また、両国政府は、日本の有機JAS規格と米国の有機プログラムの同等性認定の可能性について検討するための作業を継続することに同意した。

D.日本産うんしゅうみかんの検疫条件の緩和{前21文字下線あり}

 米国政府は、米国フロリダ州産かんきつ類に対する植物検疫措置により確保されるのと同等の保護の水準が日本産うんしゅうみかんに適用されるよう、日本産うんしゅうみかんのカンキツかいよう病に対する検疫条件を緩和するよう日本が要請したことに留意する。米国政府は、2008年3月31日に日本産うんしゅうみかんの病害虫危険度解析の再評価のための情報を日本国政府から受理した。米国政府は、現在、米国の規則に従って、病害虫危険度評価の再評価を行うため、受け取った情報及び技術的な資料を検討しているところである。

E.BSE対策(飼料規制、サーベイランス){前22文字下線あり}

 米国政府は、日本国政府と協力して、これらの問題の科学に基づいた解決に向けて努力する。

Ⅸ.州別規制の統一化{前10文字囲み線あり}

A.環境規制{前6文字下線あり}

1.米国環境保護庁(EPA)は、工業製品に対する環境規制の調和に関する日本国政府の懸念に留意する。

2.ほとんどの連邦環境法と同様に、EPAは、各州に対し、直接的なEPAの管理に代わるものとして、州独自の固形廃棄物及び有害廃棄物処理プログラムを策定するよう奨励している。各州は、異なった廃棄物処理基準を設けることができるが、こうした基準は連邦と同等のものでなければならない(すなわち、各州はEPAと同等の環境保護基準を設定する必要があり、連邦より低い基準でより少数の業者のみを規制することはできない)。

3.水銀を含有する製品について、連邦レベルではラベル表示を要求していない。しかし、多くの州は、ラベル表示を要求しているか、又は、ラベル表示を義務づける法案を提出している。EPAは、日本国政府に、こうした様々な州レベルのラベル表示要件に関する情報を提供する。

4.EPAは、水銀管理に関する成功事例を共有することを奨励しており、この目的のために、クイックシルバー・コーカス(QuicksilverCaucus)に参加している。これは、環境中の水銀を削減するための総合的な方法を共同で開発するために、州の環境団体のリーダー達によって2001年5月に発足した団体である。コーカスのメンバーは、水銀に関連する技術的及び政策的な情報を共有することで、州、連邦及び国際的な活動を通じて、環境中の水銀削減を達成するという長期的な目標を持っている。

5.EPAは、類似する要素が多くあるものの、州毎に統一性なく増加している廃電気電子機器(e‐waste)法によりもたらされる問題について認識している。これらの法の要素には、製造業者の登録要件、ブランド責任判断(BrandResponsibilityDetermination)、返品及び市場シェアの算定、並びに、製造業者による報告が含まれている。EPAは、既存の電気製品リサイクル法をもつ州が共通の問題についての情報を共有し、州及び規制される側の双方の財政面及び法令遵守上の負担を軽減することに役立ち得る戦略を策定するためのフォーラムを立ち上げることについて、いくつかの団体と協議を開始したところである。

B.州別の建設業許可の調和等{前14文字下線あり}

 米国の連邦制度の下、連邦政府は各州内で行われる建設業許可の発行に対する権限を有していない。米国政府は、米国州建設業者許可団体協会(NASCLA)における全国建設業者許可試験プログラムを創設する取組の進捗について留意した。試験実施者は、州政府が、州の許可を発行する際の要件の一つを満たすために、NASCLA試験の利用を求めることを見越して、右試験の創設に着手した。NASCLAは、プログラムの適用範囲を、他の試験にも拡大することを検討している。2007年9月より、NASCLA試験プログラム・データベースの運用が開始され、これにより許可手続きの迅速化及び州政府間での情報共有の円滑化が図られる。米国政府は日本国政府に対し、引き続き本件に関する情報を適切に提供していく。

C.保険の州別規制の調和{前12文字下線あり}

1.米国政府は、日本国政府が連邦監督制度に関するイニシアティブに引き続き強い関心を有していることを認識している。連邦保険規制の導入については、米国の上下両院で審議が継続している。

2.米国政府もまた、米国財務省を通じ、米国金融規制構造の改革に向けた一連の提案を作成した。「金融規制構造近代化のためのブループリント」は、米国の金融規制構造の改革に向けた短期、中期、長期の一連の提案を行う報告書である。検討されている様々な規制に係る課題の中で、ブループリントでは保険の州別規制に対するいくつかの提案を行っている。米国財務省は、ブループリントを通じて、選択式連邦監督制度の創設のための連邦保険規制構造の構築を提案しており、米国財務省に設置される全米保険庁(ONI)がこの連邦規制構造を監視することとなっている。米国財務省はまた、中間段階として、保険に関する国際的課題および規制上の課題についての連邦のプレゼンスを確立するため、議会が保険監督局(OIO)を米国財務省内に設立することを提唱している。

3.全米保険監督官協会(NAIC)は、免許と監督のプロセスを調和させることの利点を認識している。州毎の実務を調和させ、監督基準と保険商品のプロセスを合理化するためのNAICの取組は引き続き進展している。

保険商品認可に関する州際協定(Compact)は、生命保険のような資産担保型の保険商品の米国内における申請、審査、承認プロセスの効率と効果を向上するための、州別規制近代化に向けた重要なイニシアティブである。協定により新たに合理化されたプロセスは、強力な消費者保護を伴う全国的な商品基準の適用によって統一性を高めることで、保険業界のマーケットアクセスを迅速化する。協定は2007年6月に運用が開始され、2008年5月時点で30の州議会及びプエルトリコが協定を採択している。

D.再保険担保要件{前9文字下線あり}

1.米国政府は、再保険担保要件に関して日本国政府が引き続き懸念を有していることについて留意する。米国政府はまた、特定の州が開始した再保険担保要件の改革に日本国政府が留意していることを認識している。米国政府は、米国政府の再保険担保要件がWTO上の約束と整合的であることを引き続き保証する。

2.米国財務省はブループリントの中で、再保険担保等の国際的な規制の課題に対応するため、議会が保険監督局を米国財務省内に設置することを提唱している。米国政府は日本国政府に対し、ブループリントや再保険の動向に関する最新の情報を提供する。

E.財産信託義務{前8文字下線あり}

 米国政府は、日本国政府の財産信託義務に関する懸念について留意する。NAICは、日本損害保険協会と当該問題について議論し、当該問題について更なる調査を行うための非公式グループを作った。米国政府は、財産信託義務について、NAICと日本国政府との間の連絡を適切に促進する。

Ⅹ.域外適用{前6文字囲み線あり}

A.制裁法{前5文字下線あり}

1.イラン制裁法{前6文字下線あり}:米国政府は、イラン政府が検証可能な形でのウラン濃縮停止を履行せず、国際義務を遵守せずにいることを懸念している。米国政府は、イラン制裁法(かつてのイラン・リビア制裁法)はイラン石油部門に対する投資に反対する米国の政策を反映したものであり、また、法の規定は同法の対象とされている活動を行った者に対して適用されるのであり、国籍による区別は無いことを繰り返し述べている。米国政府は、イラン拡散対抗法のような新しい法案が検討されていることに対する日本国政府の懸念を共有する。このような立法は包括的な外交政策を行う大統領の裁量を制限しうるものであり、行政府はその立場を議会に対して明確にしている。同法が米国の国際法上の義務と整合的な形で適用されるべきであるとの問題意識を米国議会が有していることは、同法の立法経緯が示している。米国政府は、日本国政府と引き続き対話を行うことを歓迎する。

2.1996年キューバの自由と民主主義連帯法(ヘルムズ・バートン法){前35文字下線あり}:

a.米国政府は、1996年キューバの自由と民主主義連帯法に関する日本国政府の懸念を理解する。日本国政府も言及しているとおり、同法の制定以降、大統領は、同法第3章(没収財産に関する取引を行った者に対し、民事訴訟を提起することを認める)の実施停止が米国の国益にとって必要であり、キューバの民主主義への移行を促進するとの認識に基づき、第3章の規定を実施する権利の停止を6ヶ月ごとに延長してきている。停止期間は同法306条の規定で定められており、一度に6か月を超える停止を行うことはできない。

b.直近では、2008年1月16日に、大統領が同法に則り同法第3章の実施停止期間を2008年2月1日から更に6か月延長する旨の書簡を議会に発出した。

3.地方レベルの制裁法{前10文字下線あり}:過去数年間、米国政府は、州及び地方レベルでの制裁の取組が連邦政府の外交政策を支えるものとなることを確保すべく、州及び地方行政府に働きかける多大な努力を行ってきている。米国政府は、州及び地方政府による制裁措置を真剣に受け止め、これらを念入りに見直している。米国政府は、その国際的な義務及び政策上の懸念を十分考慮し、今後も適切にこうした努力を継続する。

ⅩⅠ.競争政策{前7文字囲み線あり}

1.米国連邦反トラスト当局は、米国消費者の利益のための競争を促進する観点から、連邦反トラスト法の適用の除外及び免除の適切な範囲に関する考え方を示す機会を引き続き模索する。

2.これに関連して、2007年10月18日、連邦取引委員会(FTC)は、下院司法委員会反トラストタスクフォースにおいて証言するとともに、意見書を提出し、独立系の医薬品店が、健康保険から、より高い報酬及びより好ましい契約条項を確保するために団体交渉に従事することを可能にする反トラスト法適用除外を創設する「2007年地域医薬品店公平法」(TheCommunityPharmacyFairnessActof2007、H.R.971)に反対した。これは、米国反トラスト当局が、連邦及び州の機関に対して、提案されている適用除外及び例外に関するものを含め、懸案となっている政府活動が競争に与える潜在的な影響について助言するといった唱導活動に加えて行われたものである。例えば、FTCは、今年初め、団体交渉を許可する計画案についてプエルトリコの立法者に対してコメントする際、保険医療供給業者の様々な部門に対する反トラスト調査を除外する立法案に対して、一貫して反対することを強調した。

ⅩⅡ.司法制度・法律サービス{前15文字囲み線あり}

A.製造物責任法、懲罰的損害賠償、陪審制、及び証拠開示制度{前30文字下線あり}

1.米国政府は、不適切な製造物責任訴訟や不合理な損害賠償によって企業が過度の負担を強いられることがないようにすることを、引き続き確約する。

2.2008年2月、米国最高裁判所は、Riegel対Medtronic,Inc.事件(128S.Ct.999(2008))において意見を出し、クラスIIIの医療機器についての食品医薬品局による市場前承認は、機器の安全性又は有効性に関するもので、連邦法によって課せられる要件とは異なる又は追加的な州コモン・ロー基準に違反して、設計された、ラベルを付けられた、又は製造されたとの主張に基づく、州コモン・ロー上の不法行為請求に優位すると判断した。

B.法律サービス{前9文字下線あり}

1.3つの州‐サウスカロライナ、ノースダコタ及びデラウエア‐が、最近外国リーガルコンサルタント規則を採用した。これにより、米国で外国リーガルコンサルタント制度を持つ管轄区は合計29となった。

a.デラウエア最高裁判所規則55.2は、優良適格者である外国弁護士に対し、最低限の実務経験年数要件なしで外国リーガルコンサルタントになることを認めている。

b.サウスカロライナ(弁護士業務を管理する上級裁判所規則の規則424)、そしてノースダコタ(業務参入に関する最高裁判所規則の規則4)の外国リーガルコンサルタント制度は、直近7年のうち5年間の職務経験を要求している。ただし、この職務経験には、第三国で行った業務の経験のみならず、いかなる場所での経験も算入される。

2.米国法律家協会は、外国リーガルコンサルタントの資格承認及びその実務のためのモデル規則に基づいて、外国リーガルコンサルタント制度を採用することをすべての州に奨励することを目標に、引き続き、各州の法律家協会及び各州の最高裁判所との積極的な対話を行っていく。

ⅩⅢ.海運{前5文字囲み線あり}

A.1920年商船法及び日本の港湾に関する報告要求{前26文字下線あり}

1.日米両国政府は1920年商船法に関して意見交換を行った。米国政府は本件についての日本国政府の懸念に留意するとともに、日本の港湾状況について引き続き懸念を示した。

2.米国政府は、様々な情報源から日本の港湾状況に関する情報を入手することに関心がある旨伝えた。このような情報により、連邦海事委員会(FMC)は日米船社に課している報告要求の手続の撤廃又は修正しうることとなる。例えば、米国政府は、FMCが現在も行っている日本の港湾状況のレビューに関連して日本国政府が2006年に改正された日本の法律の翻訳につき、政府間レベルで提供することを検討していると理解している。米国政府はそのような翻訳が適切な時期に提供され、日本国籍船に対する報告要求の緩和又は撤廃につながることを希望する。

B.1998年外航海運改革法(1920年商船法第19条の改正){前31文字下線あり}

 米国政府は日本国政府に対し、1920年商船法第19条の1998年の改正はFMCに対し既に与えられている権限を明確にしたものであることを説明した。米国政府はこの問題に係る日本国政府の懸念に対し留意した。

C.新運航補助制度{前9文字下線あり}

 日米両国政府はこの国家安全保障プログラムに関して意見交換を行った。米国政府は補助対象船舶リスト及びこのプログラムに実質的な影響を与える他の変更について日本国政府に対し引き続き情報提供することにつき再確認した。新運航補助制度は透明性のある制度であり、運航補助制度に関するすべての情報は米国運輸省海運局のウェブサイトで公開されている。

(http://www.marad.dot.gov/programs/index.html)

D.各種貨物留保措置{前10文字下線あり}

1.日米両国政府は、アラスカ北岸産出原油の輸送を米国籍船のみに認めることとした法律を含む各種貨物留保措置について意見交換を行った。米国政府は、貨物留保等の措置が国際海運市場における自由かつ公正な競争の条件を歪めるおそれがあるとの日本国政府の意見に留意した。米国政府は、当該措置は、外洋航海を伴う米国の対外貿易全体の1パーセントに満たない影響しか及ぼさず、また、米国船隊に留めるためのインセンティブを船舶に与えることにより、米国商船業界に対し有益な効果をもたらしていると説明した。

2.アラスカ北岸産出原油輸送を米国籍船のみに認めるとする法律に関しては、米国政府は、2000年4月以降、アラスカ原油の輸出はないと説明した。それ以降は、アラスカ原油は、すべて精製及び国内消費のため米国西海岸市場へ輸送されている。

ⅩⅣ.金融{前5文字囲み線あり}

A.サムライ債のペーパーレス化に伴う課税問題{前24文字下線あり}

1.歴史的に米国税法は、債券の保有者がいずれ券面(債券の保有者の所有権を象徴する証書)を取得することが可能ならば、債券が無記名式と見なされることを許容してきた。無記名式に分類することの効果は、債券の保有者が米国源泉徴収税の免除を得るために、その外国人としての身分に係るドキュメントを提出する必要がないということである。

2.しかしながら、新しい日本の振替システムの下では、振替システムが存在する限り、債券の保有者は券面を得ることができない。米国財務省は最近のガイダンスにおいて、この非常に隔たりのある状況は、現行規則の下で債券が無記名式とみなされることを許すには不十分であると明言している。したがって、振替システムによるサムライ債の発行を行う場合には、記名式債券と見なされるとともに、保有者は、米国源泉徴収税免除の権利が与えられる前に、その外国人としての身分に係るドキュメントを提出することが要求される。これに対し、日本国政府は、サムライ債市場が米国の発行企業及び日本の投資家の双方にとってメリットがあるにも拘らず、米国政府の見解は、その健全な発展に重大な影響を及ぼしかねないとして、米国外向け記名債券に関するルール(FTR制度)のサムライ債への適用を求めている。

3.しかしながら、米国財務省は、FTR制度に必要なドキュメントと税務報告が、適格仲介者制度の発展の背景にある税制政策に矛盾すると判断した。米国財務省は、2006年10月のガイダンスにおいて、2007年1月1日以後2年間に発行され、かつ償還期間10年以下の債券に対するFTR制度の継続的な使用を認める規則を発出すると明言した。日本国政府は、サムライ債市場の健全な発展と調和するように、FTR制度の適用に対する制約が緩和されることを求めている。このような背景に鑑みれば、サムライ債市場の継続的発展と効率のために日本国政府から表明された懸念を米国政府が評価・共有している間は、米国政府は、適格仲介者制度を制定している規則に定められているドキュメントと税務報告を考慮して、日本からの要望と同様、最新のガイダンスによる影響の評価を続けていかなければならない。

ⅩⅤ.電気通信{前7文字下線あり}

A.端末機器市場における競争{前14文字下線あり}

1.米国政府は、連邦通信委員会(FCC)がナビゲーション装置(セットトップボックス)の市場における選択を確保する観点から、連邦通信法629条をどのように施行していくかということに関して日本国政府との対話を継続する。2007年6月、FCCは、双方向ナビゲーション装置の供給のための競争的な市場を促進する合理的な技術条件を確立するための規則策定に着手し、現在、公開記録に示された提案を評価中である。ケーブル業界と消費者家電業界は、双方向装置のための特定の技術条件についての交渉を継続しており、FCCは引き続き同議論を監視し、ナビゲーション装置の競争市場の進展を確保するための規則を採択する。

2.デジタル放送コンバーター・ボックス・プログラムの実施:米国商務省国家電気通信情報庁(NTIA)は、コンバーター・ボックス・プログラムを順調に実施しており、2008年5月時点で1,300万枚以上のクーポンが配布されている。このクーポンは、消費者が複数の異なる事業者により製造され、競争的に供給される約85の適合機器の中から購入するために利用することができるものである。

NTIAは、クーポンプログラムの成功を確保するため、デジタル‐アナログ・コンバーター・ボックス製造事業者の自主的な参加を歓迎するとともに、これに依拠している。プログラムへの参加を希望する製造事業者は、最終規則第301条第5項に従って行うコンバーター・ボックスの試験結果及びサンプル品の提出より少なくとも3か月前までに、NTIAに対して意向通知を提出しなければならない。NTIAの最終規則は、クーポンプログラムに適合するコンバーター・ボックスのために製造事業者が順守しなければならない技術仕様及び機能を規定している。

B.ユニバーサルサービス{前14文字下線あり}

2008年1月、FCCは適格電気通信事業者(ETCs)に対する高コストユニバーサルサービス補助の金額に関するルールを含む高コストユニバーサルサービスプログラムの改革の方法について、及び逆オークション(競争入札の一形式)の実施の是非及びその方法に係る意見を求める規則制定案告示を公表した。2008年5月、FCCは高コスト支出額を2007年の水準に制限する規則を公表した。この取組みはユニバーサルサービス及び事業者間精算の包括的な改革に向けた重大な第一歩であり、FCCによるユニバーサルサービス及び事業者間精算の両方についての包括的な改革の迅速な推進を可能とするものである。

C.700MHzオークションにおける指定免許に対するオープンプラットフォーム条件及びインターネットへのオープンアクセス{前63文字下線あり}

1.米国は、700MHzオークションにおいて、Cブロックにおける積極的なネットワーク早期構築条件及びオープンプラットフォーム条件にもかかわらず、記録的な入札数及び収入を収めたことからも明らかなように、市場参加者から携帯無線機器のオープンプラットフォームに対する大きな支持を得ることに成功した。FCCによる、Cブロックへのオープンプラットフォーム条件の導入の決定を受けて、主要な携帯電話事業者の一社は、消費者が自身で選択する機器及びアプリケーションに対して全てのネットワークを開放することを約束した。

2.FCCは、ブロードバンドネットワーク管理実務及び事業者によるP2P技術の利用の制限に関することを含むインターネット関連問題について、専門家からの助言及び意見を得るため、2回の公聴会を(2008年2月にマサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学、及び同年4月にカリフォルニア州パロアルトのスタンフォード大学において)開催した。

D.電気通信機器に対する連邦政府からのローンにおけるローカル・コンテンツ条件{前38文字下線あり}

 米国通商代表(USTR)は、地方公益サービスによる通信事業に関する補助金の条件としての国内製品購入条件を差し控える権限を有している。本差控え権限は、他国が米国製品及びサービス並びに米国供給者に対して互恵的なアクセスを提供しているとUSTRが判断した場合にのみ発動される。本件の重要性を認識し、米国政府は本件についての日本国政府との対話を継続し、また、そのような差控えについて、相互アクセスの要求を扱う多国間交渉の中で検討する意思を有する。

E.衛星の輸出許可の迅速な手続及び透明性の確保{前24文字下線あり}

 2008年1月22日、ブッシュ大統領は輸出管理に関する大統領令を公表した。衛星及び衛星技術にも適用される本大統領令は、第7条A項(輸出許可手続)に詳述されているとおり、米国国務省の技術データ輸出の許可方法を改善し、米国軍需品リストにより規制される品目の輸出許可申請の処理を促進させるものである。輸出管理に関する大統領令は、決定のための資源の増加を命じ、既に平均処理時間及び未決の申請の残数を減少させている。国務省は電子申請システムを改良し、より効率的な紛争処理制度を確立する。

F.米国におけるブロードバンドの普及{前22文字下線あり}

1.2008年6月12日、FCCは第5回高度電気通信能力の展開に関する報告書(706Report)を発表した。

2.同報告書では、高速回線数(少なくとも片方向において200kbpsを超える速度を持つ線)は、2007年6月に、1億90万回線(ADSLは2750万回線、ケーブルモデムは3440万回線、光ファイバは140万回線、携帯通信は3530万回線)に達したとされている。高速回線未提供地域は、郵便番号地域でみて、2003年12月時点では6.8%だったものが、2007年6月時点では0.1%のみとなっている。

G.電気通信機器の貿易の促進{前14文字下線あり}

1.2008年1月1日、「適合性評価手続の結果の相互承認に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(MRA)が発効した。日米両国政府は、本協定の早期の実施に向け、技術基準に関する研修を含めた準備を進めている。

2.電磁両立性(EMC)に関する情報技術(IT)機器及び産業科学医療用(ISM)機器に係る適合性評価結果の受入れについての取決めのもと、2008年5月末までに、58の日本の適合性評価機関(CAB)がFCCによって承認され、19の米国のCABが情報処理装置等電波障害自主規制協議会(VCCI)によって承認されている。

ⅩⅥ.情報技術{前7文字囲み線あり}

A.著作権及び関連する権利の保護{前17文字下線あり}

1.日米両国政府は著作物の保護及びその法執行の重要性について一致した認識を有する。

2.米国政府は生の実演、非固定の著作物及び人格権の保護の重要性を認識する。米国政府は、日本国政府にとってこれらの権利の保護が重要であることを理解する。

a.生の実演の保護:米国政府は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)第14条及び実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)第6条は非固定の生の実演の保護を義務付けていることを認識する。米国政府は、非固定の生の実演の保護に関する透明性を確保する。

b.非固定の著作物の保護:米国政府は、連邦法及び州法に基づく非固定の著作物の保護に関する透明性を確保する。

c.著作者及び実演家の人格権の保護:米国政府は、連邦法及び州法に基づく人格権の保護に関する透明性を確保する。

d.ビデオ・ゲームの貸与権の保護:米国政府は、コンピュータープログラムに係わる貸与権の保護について、特にビデオ・ゲームのプログラムを重視して、日本国政府との議論を継続する。

e.放送機関の権利:米国政府は、放送機関の権利の重要性を認識し、米国法の下での放送機関の権利の透明性を高めるために、日本国政府との議論を継続する。

B.デジタル・ネットワーク化への対応{前20文字下線あり}

1.米国政府は、オンラインにおける著作物の効率的な利用の重要性を認識する。米国政府は、著作権の適切な保護を確保しつつ、オンラインにおける著作物の利用を促進するため、立法措置を含めた適切な措置を引き続き検討する。

2.米国政府は、デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)により追加された米国著作権法第1201条に規定された「アクセスコントロール」及び「コピーコントロール」について日本国政府との情報交換を継続する。米国政府は、3年毎に実施する規則策定手続により、「アクセスコントロール」の保護が、例えばフェア・ユースのような権利侵害を構成しない著作物の公共の利用に悪影響を与えないことを確保するよう適切な措置を取っている。

3.米国政府は、デジタル環境において、複製権、公衆への上演権及び頒布権を含む排他的権利を、著作物の適法な利用を促進する方法によって与えることの重要性を認識する。これらの権利の重畳適用が、オンライン上の著作物の利用が妨げられているという日本国政府の懸念の原因となっており、米国政府は著作物の円滑な利用を促進し、これらの権利の保護に関する透明性を確保する。

4.米国政府はデジタル・ネットワーク技術の進展に伴う著作権侵害に関する共通の問題を日本国政府と共有している。米国政府と日本国政府はこの問題について、適切で時宜を得た情報の交換を行う。

B.スパム対策{前8文字下線あり}

1.米国政府は、CAN‐SPAM法の積極的な執行、官民のパートナーシップ、産業界主導の技術的解決の促進、国際協力(執行における協力も含む)、消費者教育等を含むスパム対策の多面的な取組を継続する。

2.連邦取引委員会(FTC)はスパム撲滅のため、あらゆる協調的、教育的取組を行う。昨年の取組として、2007年7月にスパムの性質上の変化を研究するためのスパムサミットを開催し、2007年12月に次の段階について詳述したスパムサミットレポートを発表した。2008年4月1日、FTCは産業界、政府、消費者団体、学会からの約70人の利害関係者と共に、フィッシング詐欺対策啓蒙のための懇談会を開催した。

3.FTCはCAN‐SPAM法の違反者に対して行った31件の執行を含む不正及び不公平なスパム行為に対する訴訟手続きを積極的に遂行した。同委員会は最近、不正スパムに関する3件の訴訟を解決し、無料ではないものを無料の贈呈品として宣伝したオンライン広告会社3社に対する民事罰として、約400万ドルの過料を徴収した。

4.2008年1月、FTCは、誤解を招く件名を付し、当該送信者からの以後のメール受信を拒否する機会があることについての明確かつはっきりとした告知や有効な返信メールアドレス及び/又は送信者の有効な住所の表示を行っていない商業メールの送信等を含む、FTC法違反の不当表示及び様々なCAN‐SPAM法違反に対する250万ドル以上の過料を科す判決を勝ち取った。

5.2008年4月現在、司法省は更に3件のスパム関連の事件について訴追し、そのうち1件は有罪の申立をし、2件は告訴係争中となっている。2007年、司法省は5件のスパム関連の事件の訴追に成功し、7件の有罪の申立、及び3件の有罪判決が得られている。

6.米国政府はUSSAFEWEB法を成立させ、2006年12月に発効させた。同法は迷惑メールを含む、ますますグローバル化している国境を越える詐欺やその他消費者への有害行為に関して、FTCが国外の司法当局と十分に協力することを可能にするものである。

7.USSAFEWEB法は、FTC当局が、被害を受けた国内外の消費者のために、国境を越える事件について対処し、賠償等を含む解決策を打ち出す権限を有することを確認している。

8.2007年10月、FTCは、USSAFEWEB法に基づく国際情報共有ツールを利用して、虚偽の送信者アドレスや誤解を招く件名を含む商業メールの送信を差し止めるための初めての提訴を行った。本件は引き続き係争中である。

9.米国政府及び日本国政府は、共通の懸念分野における国外当局との情報共有を促進する、米国におけるUSSAFEWEB法の成立及び日本の改正迷惑メール法を踏まえ、違法なスパムに対処するための国際的な執行の改善のために協力して取り組む。

10.米国政府及び日本国政府は官民のスパム対策組織と協力することの重要性を認識する。米国政府及び日本国政府は、例えば、スパム対策執行機関及び産業界における利害関係者の世界的なネットワークであるロンドンアクションプランの有益な活動を認識し、国際的な対スパム執行協力を強化するための仕組みとして、同ネットワークの活動的なメンバーである両国の各機関による継続的な参加を促進する。

11.米国政府は、日本国政府と、スパム対策法令を執行しスパムに対する適切な措置をとるために、適切な場合に、かつ適切なセーフガードの下で、両国のスパム対策執行を所管する機関の間で、情報共有を促進することについて、共通の見解を共有する。

12.米国政府は、日本国政府とともに、引き続きスパムに対処するための措置を探求し検討する。

ⅩⅤ{前1文字ママ}.医療機器・医薬品{前11文字囲み線あり}

A.在米日本企業との定期会合{前14文字下線あり}:日本企業は、米国及び他国の企業と同等に、米国FDAの専門の担当官と医薬品・医療機器の申請について議論する機会を有する。

B.世界同時開発の推進{前11文字下線あり}:米国商務省は、世界同時開発を推進し日本におけるドラッグ・ラグを解消するために日本の規制当局と協力するよう、引き続き米国業界を促す。