データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 自動車問題に関する日米紛争の解決,日本側新聞発表用文書「自動車交渉のこれまでの経緯」

[場所] 
[年月日] 1995年5月17日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,1322−1323頁.
[備考] 
[全文]

自動車交渉のこれまでの経緯

1.94年5月にFW協議*1*を再開して以来,我が国は誠意をもって米国政府と協議を重ね,9月末には橋本通産大臣がカンター代表と精力的な議論を行ったものの,合意に達することができなかった.この直後に,米国は本件に関連して,米国通商法301条に基づく調査を開始した.米国のFederal Register(10月13日付)によれば,同調査の中心は,我が国の自動車補修部品の規制が市場参入に対する障壁となっているかという点であった.(*1*編者注 日本経済パートナーシップのための枠組みに基づく協議)

2.我が国としては,米国通商法301条に基づく協議でないとの確認を行った上(カンター代表もこの点については認知)で,米国側との協議を本年1月以来再開し,合意に向け最大限の努力を行ってきた.特に,ディーラーシップ問題及び補修部品の規制緩和の問題については,5月初頭の交渉で「政府の責任の範囲内」において,国際ルールとの整合性を確保しつつ最大限の提案を行ったところ欧州委員会高官は,欧州においてはディーラーシップの専売制をとっており,又,欧州のメーカーは日本市場においてかなりの実績を上げてきており,何ら問題がないと発言.先日,ブリタン副委員長が来日した際には,自動車・同部品分野の規制緩和に関する協議において十分な進展があったと述べている.

3.それにもかかわらず合意に至ることができなかったのは,米国政府が2つの事実上の数値目標−(イ)部品購入目標,(ロ)外国車を扱うディーラー目標−に最後まで固執したためである.我が国としては,米国が二つの事実上の数値目標を取り下げ,5月10日及び16日の発表を取り下げれば,いつでも協議を行う用意がある.

4.かかる状況において,米国は5月10日には,米国通商法301条及び304条に基づき,日本の政策等が米国自動車補修部品の我が国市場に対する参入を制限している趣旨の決定を行うとともに,16日には,我が国からの高級車の輸入に対して,5月20日より関税額の決定を留保し,100%の関税賦課に関し6月28日に決定を行う,又,そうなる場合には5月20日まで遡及して100%の関税を賦課する旨の発表を行った.

5.我が国は,同月17日に,米国にガット22条1及び紛争解決了解4条に基づく協議要請を行い,WTO手続を開始した.本日,両国政府は,日本の協議要請に基づき,第一回協議を行った.

6.次回協議については,ハリファックス・サミット後にガット22条1に基づく協議を再び行うべく,引き続き米側と日程を調整することとなった.