データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米グローバル・パートナーシップ行動計画

[場所] 
[年月日] 1992年1月9日
[出典] 日米関係資料集 1945−97,1223−1230頁.Public Papers of the Presidents: George H. W. Bush, 1992-93, pp.59-65 の外務省日本語訳.
[備考] 
[全文]

日米グローバル・パートナーシップ行動計画

第2部(経済及び貿易関係)

 1992年1月に日本で行われた宮沢総理大臣とブッシュ大統領との間の会談の際に発出された東京宣言に謳われているように,日米両国政府は,両国間の経済関係が両国のみならず世界経済全体にとっても重要であり,これを円滑かつ健全に運営していくためには,経済・貿易問題を識別し,解決していくことが極めて重要であるとの認識に立脚し,日米間の主要な経済・貿易問題に関して緊要とされている以下の広範な行動をとるとの決意を有する.

1.ウルグアイ・ラウンドの成功裡の妥結

 日米両国政府は,夫々及び共同で,ウルグアイ・ラウンドを幅広い分野にわたり成功裡に妥結させるために必要な決定を行う.日米両国は,ダンケル事務局長の提案したテキストは,ウルグアイ・ラウンドを成功裡の妥結に導くための弾みをつける重要な一歩であると信ずる.ダンケル提案は,当然のことながら最終テキストではなく,日米両国政府は,現在も,文書の分析,評価を継続しているところである.更なる重要な一歩は,物及びサービスの市場アクセスの改善について交渉することである.

2.日米構造問題協議(SII)再活性化

日米両国政府は,1990年6月の最終報告におけるコミットメントを実施するとともに,市場アクセス,海外投資及び競争力を含め構造改革の障壁となり得る両国のビジネス環境に関連した事項に対処するために,新たなコミットメントを行うことを含め,政策イニシアティブを強化することを通じ,SIIを再活性化する.

3.民間協力,貿易及び投資の拡大

(1)日米両国政府は,日本の民間企業が,「ビジネス・グローバル・パートナーシップ」を通じて行っている努力を支持し,電子・電気,自動車及び機械工業の23の日本企業が1993年度には1990年度に比して世界からの輸入を全体で100億ドル増加させることを計画していることを歓迎する.

(2)「ビジネス・グローバル・パートナーシップ」は,

−輸入

−海外子会社による現地調達

−日本企業と外国企業との間の協力

を促進する.

(3)日米両国政府は,

−これまでに,日本の貿易の約50%を占める88の企業及び22の業界団体がこの趣旨を支持する旨表明しており,既にその大部分の企業が,輸入,現地調達及び協力を促進するための自主的行動計画を策定していること,

−生産,販売,製品の共同開発等に係る国際的な企業間の協力が進展していること,を同じく歓迎する.

(4)日本政府は,外国企業の便宜を図るため,自主的行動計画を策定している企業の窓口リストの提供を行うとともに,自主的行動計画のフォローアップを実施する.

(5)日本政府は,前記の民間セクターのイニシアティブを補足すべく,必要に応じ国内法上の手続が完了することを条件に,来年度に以下の助成措置を講ずる意図を有する.

 (イ)輸入拡大策

−輸入のためのインフラの集中的整備等を図るため,輸入に関連する施設や活動を全国の国際空港・港湾及びその周辺に集積させた「輸入促進地域(フォーリン・アクセス・ゾーン)」の整備を図り,輸入品に係る流通を一層円滑化する.

−日本政府は日本輸入協議会の活動を強化する意図を有する.

−「ビジネス・グローバル・パートナーシップ」等民間企業による輸入の一層の拡大のための努力を支援し,必要な輸入資金の調達を容易にするため,債務保証制度及び輸入促進クレジット・ライン制度を創設する(輸入促進クレジット・ライン制度は,早ければ今年度中にも実施されることとなる).

 (ロ)対日直接投資促進策

−日本政府は,一定の外資系企業の初期費用の負担を緩和する税制措置をとる意図を有する(欠損金の繰越期間を5年から7年に延長,5年間20%の割増償却).

−人材確保及び研修を支援する政府出資会社を設立する.

−対日投資促進融資が拡充される.

−ジェトロの投資関連情報提供サービスが強化される.

(6)米国政府は,米国企業がこれらの機会を最大限活用することを勧奨する.

(7)日米両国政府は,米国の輸入及び開発途上国の経済発展の拡大のための米国輸出入銀行と貿易保険の協調プログラムが進展を示していることを歓迎するとともに,通商産業省が同プログラムを一層拡大するために,今後数年間で約50億ドルの貿易保険の引受を行い,米国輸銀と協力しつつ100億ドル以上のプロジェクトの実現が可能となるようにする意図を表明したことを歓迎する.

(8)日米両国政府は,日米財界人会議,日本・米国西部会,日本・米国中西部会,日本・米国南東部会,日本・米国南部会,日本・ハワイ経済協議会等の会議の活動を通じた両国の財界人及び業界間の交流及び協力を促進するためのイニシアティブを歓迎し,支援する.

(9)日米両国政府は,米国民の日本に関するビジネス訓練の促進及び業界間のより広範な対話を勧奨するためのビジネス・サマー・キャンプ及びビジネス・インターンを支援する.

4.コンピューター調達

 米国政府は,日本政府による「日本の公共部門のコンピューター製品及びサービスの調達に関する措置」(以下「措置」)の開始の決定を歓迎する.日本政府は,無差別,透明及び公正かつ開放的競争の原則に立脚し,日本の公共部門による競争力ある外国系コンピューター製品及びサービスの調達拡大を目的としてこの措置を実施する.

 日米両国政府は,この措置の実施が,外国企業による販売努力が継続的に行われることと相俟って,日本の公共部門における競争力ある外国系コンピューター製品及びサービスの調達の増大に寄与することを期待する.

5.紙製品

 日米両国政府は,協力的かつ精力的な協議を通じ,1992年3月末までに,日本に紙製品を輸出する外国企業の市場アクセスを実務的に増大させるための措置につき合意する.

 なお,公正取引委員会は,紙分野における状況に関する調査を,競争政策の観点から,1992年3月末以前に着手することとした.

6.板ガラス

(1)日本政府は,日本への板ガラスの輸出努力を行う競争力ある外国企業の市場アクセスを実質的に増大させるため,以下を含む措置を実施する.

−通商産業省(通産省)は,外国板ガラス企業の日本市場における販売増加努力を促進する.

−通産省は,同省の「輸入拡大要請プログラム」の下で,日本企業の板ガラス輸入拡大努力を勧奨する.

−通産省と公正取引委員会は,日本の全ての板ガラスメーカーが1992年2月までに独禁法遵守プログラムを実施することを勧奨する.これらのプログラムは,流通システムが競争力ある外国板ガラスメーカーに開放された状態にあることを確保することをその目的の一つとするものである.

−日本政府及び米国政府は,いずれか一方が適当と認める場合に,前記の諸措置に関する情報交換を行うために会合を持つ.

(2)公正取引委員会は,競争政策の観点から,ガラス市場における状況に関する調査を1992年3月末以前に着手することとした.

(3)建設省は,外国企業に対する説明会の開催並びに建築基準法,同施行令,同施行規則及び関連告示からなる建築基準全体の英訳版を入手可能にすることにより,外国企業が板ガラスその他のガラス製建材を日本の建築基準に適合させるために行う努力に対して便宜を与える.建設省国際基準調査官は,この件に関し,外国企業に対する窓口となる.

7.半導体

 日米両国政府は,1991年の日米半導体取極の重要性を認識し,同取極に明記された措置を通じて市場アクセスの拡大及び日米企業間の長期的協力関係の発展のために,一層の努力を行う旨のコミットメントを再確認する.

8.基準・認証

 自動車以外の基準・認証に関する49件の問題提起が,OTO(市場開放問題苦情処理推進本部)のここ1ヶ月における集中的な努力により,解決され,あるいは解決されることとなった.

 これらは,工業機械,化学製品,輸送設備,加工食品,化粧品及び医薬部外品の市場アクセスを促進することとなろう.

 日本政府は,外国企業等から提起された市場アクセス問題に対して,OTOを通じて今後とも積極的に対処していく.

9.政府調達

 昨年11月,日本政府は政府調達における機会を拡大するための措置を取ることを決定した.この措置は,おおよそ4千億円から8千億円(約30億ドルから60億ドル)へと調達機会を拡大する.日本政府は,入札手続の透明化(英文公告,入札期間の延長),適用基準の引下げ(13万SDRから10万SDRへ),対象機関の拡大(28機関を追加)等の措置を1992年4月1日より実施する.

10.金融市場

 日米両国政府は,両国における金融市場の自由化並びに透明性,アクセス及び競争の増大において一層の進展を達成するために,日米金融市場ワーキング・グループの努力を強化する.

11.外国弁護士問題

 日本政府は,国際的な事案の処理において弁護士が果たす重要な役割を考慮しつつ,外国法事務弁護士に関する問題の解決のため,今後一層の努力を行う.

12.政策対話

 日米両国政府は,分野別の経済,及び貿易問題に関する早期警報機能を強化するとの観点から,特に日米次官級経済協議,日米貿易委員会,MOSS協議その他の分野別事務レベル協議を始めとする全てのレベルで,二国間の政策対話を強化する.

13.自動車及び自動車部品

………

日本側の行動

1.自動車部品

−我が国自動車メーカーは,別紙にあるとおり:

 −米国製部品購入拡大の努力目標を発表した.

 これらの発表は,我が国自動車メーカーの最大限の企業努力に対応した米国部品サプライヤーの最大限の企業努力があること,及び,米国における日系企業の生産が1990年度実績から1994年度において約50%増加するという見通しを前提として,自主的に行われた.

 発表された努力目標等をとりまとめると,以下のとおりであった.

  i)我が国自動車メーカーの在米現地工場の自動車部品調達については,在米部品企業からの現地調達が94年度には90年度の約70億ドルから2倍以上の約150億ドル(実質ベース)となる.

  ii)これを比率でみると,全部品調達額に占める米国での現地調達の割合が90年度の50%強から,94年度には,約70%となり,逆に日本からの輸入の全調達に占める割合は,50%弱から約30%にまで減少する.

  iii)こうした現地調達にあたっては,困難な状況にある米国部品産業からの調達に格別の配慮を払うこととしている.

  iv)米国製部品の日本市場への輸入金額については,1990年度実績20億ドルが1994年度においては倍増し,40億ドル(実質ベース)となる.

  v)以上,米国での部品購入額と日本への輸入額を合計すると,90年度に比べ94年度には米国製部品購入総額が約90億ドルから約190億ドルヘと約100億ドル増加する.

(以上のデータは,MOSS合意に従って日本自動車工業会が集計したデータによるものである.)

 −日本メーカー各社は,

  i)デザイン・インの推進(91年1月時点で実施中のもの332件,完了し取引を行ったもの271件)

  ii)在米R&Dセンターの拡充(現在,6社7施設 計1,400人,数年後には2,200人強に拡充)

  iii)米国部品サプライヤーとの長期的ビジネス関係の構築の支援

等の様々な努力をさらに強化していくこととしている.

−日本政府は,

 −米国部品産業の努力を支援するため,JETRO事業として行う米国部品企業等のエンジニアの日本でのデザイン・イン研修及び対日売り込みミッションに対する財政支援等(92年度予算額合計約150万ドル)を講ずる予定である旨表明した.

 −ビジネス・グローバル・パートナーシップ推進の観点から対日輸入,対日投資促進のため税制,金融面の優遇措置を拡大,強化することとしていること(外資系企業への税制特例(欠損金の繰越期間の延長,建物等の割増消却等),低利融資,債務保証制度の創設等)を表明した.

−公取委は,競争政策的観点から,自動車部品分野に関する調査を92年3月末までに開始することを決定した.

2.自動車

−日本の自動車ディーラー団体は,米国車の販売を行う用意があることを再確認する声明を発表した.

−日本の自動車メーカーは,別紙のとおり,

 −i)ディーラー契約における事前協議条項を撤廃し,ディーラーが独自の判断で並売を行い得ることを明確にした.

  ii)これまで経験のないメーカーを含め,米国車の販売拡大を支援する用意がある旨発表した.また,米国ブランド車の他,米国において生産された日本ブランド車の日本への輸入も相当程度増大する見込みであることを明らかにした.

  iii)さらに,主要メーカーが,米国車の日本国内における販売機会の拡大について協力する用意があり,その証左として,とりあえず都内の7ヶ所の展示場を直ちに米国車に提供する等の措置を講ずる旨表明した.

−日本政府は,

 −92年度において,JETROによる日本全国での輸入車展示会の実施・支援(東京をはじめ,大阪,名古屋等で開催を検討)等のための財政措置(92年度予算額約630万ドル)を講ずる予定であり,輸入車販売機会増大に向け積極的対応を図る旨表明した.

 −また,ビジネス・グローバル・パートナーシップ推進の観点から,対日輸入,対日投資促進のため税制,金融面の優遇措置を拡大,強化することとしていることを表明した.

 −基準認証問題については,1992年1月1日現在で積み残していた14の問題のうち,OTO手続きの下で6つの問題は既に技術的レベルで解決された.残る8つの問題のうち,6つは解決され,2つは解決目前である.

−公取委は,競争政策的観点から,自動車分野に関する調査を92年3月末までに開始することを決定した.

米国側の行動

 −米国政府は,米国自動車関連産業の活性化及び米国製自動車及び自動車部品の対日輸出の増大にコミットしている.

 米国政府はMOSSの過程の中で,努力を高めていく.

 −貿易不均衡に対応する努力の一つとして,自動車及び自動車部品貿易の促進のための協力的努力の利益を認識し,米国政府は,米国商務省の輸出促進プログラム及び米国商務省と通商産業省の貿易拡大共同プログラムを含め,現在のプログラムを活用,拡充していく.これらのプログラムは,必要に応じて,米国自動車関連業界のニーズに応えるよう作られる.

 −さらに,米国政府は以下の措置を直ちに講じる.

  −閣僚レベル貿易振興調整委員会の委員長として,商務長官は自動車関連の輸出促進のための措置及び米国企業の海外でのプレゼンスの向上に特別の注意を払う.

  −税制及び金融措置(ビジネス・グローバル・パートナーシップの中で発表された,低利融資及び債務保証)を含め,日本政府の輸入拡大プログラムの機会を最大限に活用するよう,米国企業を勧奨する.米国政府は,日本の自動車メーカーによって最近用意された7つのショールームを利用するよう,米国企業を勧奨する.

共同の行動

 −日本国政府及び米国政府は,

  −自動車関連貿易問題に関して今までに取られてきた種々の努力を認めるとともに,開かれた市場に引き続きコミットする.

 本問題に関し,双方はMOSS協議の枠内で協力して作業することにコミットする.

 −米国の自動車及び自動車部品の日本市場における販売機会の拡大のためのプログラムの実施を早めるため,新たな努力が払われる.日米両国政府によって1991年9月に合意されたMOCPワーク・プランの実行に特に力点が置かれる.

 これは,以下の事項を含む.

 −日米両国の自動車メーカーの部品調達調査の早期の実施

 −日本の自動車メーカーによる在米R&D施設の拡充

 −日本の自動車メーカーによるデザイン・インヘの,米国企業の参加の拡大

 −東京モーターショー等のトレード・ショーへの参加の勧奨

 −OTOの利用

 米国部品サプライヤーが日本市場における機会を最大限に活用するよう,これらサプライヤーに対する技術基盤及び流通施設の改善の勧奨

−両国政府は,

 −7月終了を目途に,自動車貿易機会に関する日米共同調査を開始し,本調査に基づいて自動車の貿易機会を拡大させる方策について共に探求する.